秋旱

亀ゆらり残る暑さへ浮かび来る
川岸の深く見えたり秋旱
茎ともに吹かれておりぬ蜻蛉かな

秋口

草刈られ広場に秋の風の吹く
森に差す昼の日差しの秋めける
秋口の蟻が引きおる蝶の翅

虫の音

大気いま発熱状態の残暑
雲湧きしあたりに傾く夜半の月
虫の音のいつか始まる夜となり

秋暑し

秋暑し湧き立つ雲を仰ぎけり
風通る厨に秋茄子を刻む
潮騒の如しよ秋の蝉の声

秋草

終戦日兵らの墓に秋草を
鳴き終えて秋蝉肩にぶつかりぬ
蛍光灯消せば広がる虫の闇

墓参り

盆花となりて整う花の丈
早稲稔り初めにし道を墓参り
風少し変わりしころよ終戦日

新盆

新盆の家を訪ねて路地をゆく
盂蘭盆の甍を照らす光かな
土蔵あり法師蝉また鳴き始む

盂蘭盆

時おりは風受け塩辛蜻蛉飛ぶ
盆の池蓮を浮かべて静かなる
盂蘭盆の沖は霞し播磨灘

盆前

盆前の空藍色に暮れにけり
淡路より北摂丹波へ秋の雲
沖を去る盆台風の残す風

八月

八月や人みな何かに祈りけり
秋蝉に雨のあがるを知らされる
はや桜紅葉始まる明るき午後