法師蝉

夕暮れに羽透き通り法師蝉
スマッシュを追う先にあり六日月
ひっそりと始まる桜紅葉かな

燕去る

森を吹く風にも秋の色の濃く
秋天を映して青し播磨灘
燕はや去りにし空の広さかな

虫の夜

秋天を広々とゆく龍の雲
ヘッドフォン外せば虫の夜となり
ポストまで新たに涼しき風の中

処暑

空さらに透きとおりたり処暑の朝
頂に吹きくる風や処暑の午後
桜の葉色変え初めし処暑となる

秋茄子

秋茄子の不ぞろいなるも強靭に
あちらでもつくつくぼうしこちらでも
傾く陽花に群れたる秋の蝶

秋涼し

大空を泳ぐ心や鰯雲
朝方の雨通り過ぎ秋涼し
蝉の昼虫の夜へと移りゆく

木槿

秋暑し森を満たせる蝉の声
湯上りの夕風日ごと秋めきて
木槿咲く裏木戸抜けて出勤す

新涼

新涼に墨痕あざやか荷の届く
こおろぎがテニスボールのかたわらに
飛べ蝗天地に広く風の吹く

秋出水

秋めきて穏かにあり朝の川
秋出水救援車両とすれ違う
新涼の珈琲の香の満ちる部屋

施餓鬼会

秋野菜積んで都会へ帰りけり
施餓鬼会の玉蜀黍をいただきぬ
秋の蝶脳裏に残る翅の青