蚊帳の匂いの中に 花冠10号(2009年7月) 2009年08月28日 | Weblog 夏草を刈る香の中を北へゆく 万緑を渡りし風に吹かれおり 短夜の水平線に日が昇る 百日草高き日輪静かなる 遠い夜蚊帳の匂いの中に寝た 風鈴も城の形の城下町 地下道の階段蝉しぐれへと開く
夕焼け 花冠9号(2009年6月) 2009年08月28日 | Weblog 満月の青葉透かして昇りくる 六月の田に水音の響きおり にわか雨宿してすがし額の花 空梅雨の夕焼け長く空にあり 夏至の空夕刻青く澄み渡る 澄みし水張られプールは子らを待つ 朝の陽へすいっと飛びし夏燕
グレープフルーツ 花冠8号(2009年5月) 2009年08月28日 | Weblog 夏近しグレープフルーツ乱切りに 春筍茹でるとて火をおこしけり 一八や朝の雨戸はまだ開かず 満月は地上の若葉濡らしおり 青梅の葉陰に太る静かな午後 午後の陽は谷の若葉に残りけり 東京は窓の連なり五月の夜
蝶の昼 花冠7号(2009年4月) 2009年08月28日 | Weblog 芽吹く木へいずこも雨の降り出しぬ 咲き満ちる桜へ月の昇りくる 時はいまゆっくり流れ蝶の昼 車にも花屑の入る昼下がり 芽吹く木を透かし彼方に芽吹く山 遠き田の一枚はっきりげんげ色 クレヨンの七十二色春深し
希望なお地に 花冠6号(2009年3月) 2009年08月28日 | Weblog 初蝶の影わが影を飛び立ちぬ 生きていく限りは別離鳥雲に 播磨灘播州平野とつちぐもり 希望なお地にありいぬふぐり咲けば 家ごとに土蔵と花と春の宵 貨物列車長く伸びゆく春の昼 春風の集いしところ頂は
山の起伏 花冠5号(2009年2月) 2009年08月28日 | Weblog 本堂の開け放たれて冬終わる 猪に会いけり森に春立つ日 立春の空は梢の上にあり なだらかに山の起伏の霞かな 湯の上に大きく昇る春の月 わが内に何呼び覚ます春一番 満開の梅に目白のこぼれ飛ぶ