go toとget toの違いを理解せずにやり過ごしてしまう生徒は多いと思います。もっともこれらを逆に使ったところで多くの場合問題は起こらないのですが、生徒に質問された時に答えられるようにはしておきたいものです。
まず、生徒がよく書く文から紹介します。
(1)??Could you tell me how to go to the station?
ところで、個人的にはこの文を生徒が作れたことをまず褒めるべきだと思います。見知らぬ人に道を尋ねるのだから、丁寧さに留意してcouldを使うこと、how to 不定詞が正確に使えていること、そして伝えたいことが確実に伝わることがその理由です。しかし、実際にはネイティブスピーカーはこの文を使うことがあまり多くはありません。次のように言うのが一般的です。
(2)Could you tell me how to get to the station?(駅への行き方を教えて頂けますか?)
そこで問題になるのがget toとgo toの違いです。Carter et al.(2011)やSwan(2005)によれば、get toは到着の方に重点が置かれています。一方go toは漠然と行動全体を表しますが、少なくとも到着よりは出発に焦点があると思います。そのことを明らかにするために以下の例を見てみましょう。
(3)I got to Sapporo at 10.
(4)I went to Sapporo at 10.
(3)は到着に焦点があるget toが使われているので「私は10時に札幌に着いた」という意味になり、(4)はどちらかといえば「私は10時に札幌に出かけた」という意味になります。ただし、(4)は文脈次第で到着の意味にも捉えられるでしょうし、ネイティブによって解釈が分かれるかなりあいまいな文です(よってこのような文は使わないことが無難です。もし出発を明確にするならばI left for Sapporo at 10.を使います)。しかし、ネイティブによれば(4)のもっともありうる解釈は「出かけた」という出発の意味であるようです。よってgo toは漠然と行動全体を表し、ゆえに(4)のような文では意味があいまいになるが、(到着より)出発にやや焦点があるといえるでしょう。それを踏まえながら、もう少し例を挙げておきます。
(5)I go to work by car and Lucy goes by train.(私は仕事に車で行き、ルーシーは電車で行っている。)
(6)I usually get there first.(私はたいてい最初にそこに着きます。)(例文はSwan(2005;201)より)
しかし、それだけではこの2つの違いを説明しきれているとはいえません。この2つの使い分けにはもうひとつ、重要な要素があるように思います。Swan(2005)やミントン(2012)にその記述があります。get to(を含む、getが移動の意味になる表現)は、「『目的地に行くまでの過程に何らかの困難が伴う』ことを示す言い方」(ミントン 2012;128)なのです。具体例を見ておきます。
(7)I'm completely broke, so I don't know how I'm going to get to Osaka.(無一文なので、大阪に行こうにも行きようがないんです。)
(8)(地下鉄の駅で)
A: Can I help you?(何かお困りですか?)
B: Yes, please. I'm trying to get to Shibuya.(はい。渋谷に行こうとしてるのですが。)(ミントン(2012;pp128-9)より)
get to以外にもSwan(2005;201)に「目的地へ着くまでの困難が伴う」例として以下の例が挙げられています。
(9)It wasn't easy to get through the crowd.(人混みを通り抜けるのは簡単ではない。)
(10)I don't know how we're going to get over the river.(川をどうやって渡ったらよいかわからない。)
話が少し横道に逸れましたので、get toへ戻します。これらのことから、get toは到着だけでなく、その過程についても焦点がある、といえるでしょう。そう考えれば(2)の文も説明がつきます。(2)は「駅までどのような過程を経てたどり着けばよいか」が問題になっているからです。もう一度、get toとgo toの違いの結論を整理しておきます。
get to: 到着、あるいはその過程に焦点があり、特に過程に焦点がある場合、しばしば困難が伴うことを表す
go to: 漠然と行く行動全体を指すが、どちらかといえば出発に焦点が置かれる
ただ、始めに申し上げた通り、(1)のような程度の不自然さは英語教育の中では許容されるべきだとは思います。ちなみに(1)のような文(Could you tell me how to go to the station?)を許容するネイティブの中には、これは「どのような交通手段(バスか地下鉄か、など)で行けばよいか」を聞く文としては許容される、という意見もありますが、少数派といってよいでしょう。ちなみに(2)は「どの道を通って行けばよいか」と「どの交通手段で行けばよいか」の両方を表すことができます。どちらにしてもインプットとして自然、かつふさわしいのは(1)ではなく(2)であると思います。
【参考文献】
Carter R. McCarthy M. Mark G. and O'Keeffe A.(2011). English Grammer today. Cambridge.
Swan Michael.(2005).Practical English Usage.Oxford.
ミントン T.D.(2012).『日本人の英語表現』.研究社.
まず、生徒がよく書く文から紹介します。
(1)??Could you tell me how to go to the station?
ところで、個人的にはこの文を生徒が作れたことをまず褒めるべきだと思います。見知らぬ人に道を尋ねるのだから、丁寧さに留意してcouldを使うこと、how to 不定詞が正確に使えていること、そして伝えたいことが確実に伝わることがその理由です。しかし、実際にはネイティブスピーカーはこの文を使うことがあまり多くはありません。次のように言うのが一般的です。
(2)Could you tell me how to get to the station?(駅への行き方を教えて頂けますか?)
そこで問題になるのがget toとgo toの違いです。Carter et al.(2011)やSwan(2005)によれば、get toは到着の方に重点が置かれています。一方go toは漠然と行動全体を表しますが、少なくとも到着よりは出発に焦点があると思います。そのことを明らかにするために以下の例を見てみましょう。
(3)I got to Sapporo at 10.
(4)I went to Sapporo at 10.
(3)は到着に焦点があるget toが使われているので「私は10時に札幌に着いた」という意味になり、(4)はどちらかといえば「私は10時に札幌に出かけた」という意味になります。ただし、(4)は文脈次第で到着の意味にも捉えられるでしょうし、ネイティブによって解釈が分かれるかなりあいまいな文です(よってこのような文は使わないことが無難です。もし出発を明確にするならばI left for Sapporo at 10.を使います)。しかし、ネイティブによれば(4)のもっともありうる解釈は「出かけた」という出発の意味であるようです。よってgo toは漠然と行動全体を表し、ゆえに(4)のような文では意味があいまいになるが、(到着より)出発にやや焦点があるといえるでしょう。それを踏まえながら、もう少し例を挙げておきます。
(5)I go to work by car and Lucy goes by train.(私は仕事に車で行き、ルーシーは電車で行っている。)
(6)I usually get there first.(私はたいてい最初にそこに着きます。)(例文はSwan(2005;201)より)
しかし、それだけではこの2つの違いを説明しきれているとはいえません。この2つの使い分けにはもうひとつ、重要な要素があるように思います。Swan(2005)やミントン(2012)にその記述があります。get to(を含む、getが移動の意味になる表現)は、「『目的地に行くまでの過程に何らかの困難が伴う』ことを示す言い方」(ミントン 2012;128)なのです。具体例を見ておきます。
(7)I'm completely broke, so I don't know how I'm going to get to Osaka.(無一文なので、大阪に行こうにも行きようがないんです。)
(8)(地下鉄の駅で)
A: Can I help you?(何かお困りですか?)
B: Yes, please. I'm trying to get to Shibuya.(はい。渋谷に行こうとしてるのですが。)(ミントン(2012;pp128-9)より)
get to以外にもSwan(2005;201)に「目的地へ着くまでの困難が伴う」例として以下の例が挙げられています。
(9)It wasn't easy to get through the crowd.(人混みを通り抜けるのは簡単ではない。)
(10)I don't know how we're going to get over the river.(川をどうやって渡ったらよいかわからない。)
話が少し横道に逸れましたので、get toへ戻します。これらのことから、get toは到着だけでなく、その過程についても焦点がある、といえるでしょう。そう考えれば(2)の文も説明がつきます。(2)は「駅までどのような過程を経てたどり着けばよいか」が問題になっているからです。もう一度、get toとgo toの違いの結論を整理しておきます。
get to: 到着、あるいはその過程に焦点があり、特に過程に焦点がある場合、しばしば困難が伴うことを表す
go to: 漠然と行く行動全体を指すが、どちらかといえば出発に焦点が置かれる
ただ、始めに申し上げた通り、(1)のような程度の不自然さは英語教育の中では許容されるべきだとは思います。ちなみに(1)のような文(Could you tell me how to go to the station?)を許容するネイティブの中には、これは「どのような交通手段(バスか地下鉄か、など)で行けばよいか」を聞く文としては許容される、という意見もありますが、少数派といってよいでしょう。ちなみに(2)は「どの道を通って行けばよいか」と「どの交通手段で行けばよいか」の両方を表すことができます。どちらにしてもインプットとして自然、かつふさわしいのは(1)ではなく(2)であると思います。
【参考文献】
Carter R. McCarthy M. Mark G. and O'Keeffe A.(2011). English Grammer today. Cambridge.
Swan Michael.(2005).Practical English Usage.Oxford.
ミントン T.D.(2012).『日本人の英語表現』.研究社.
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