「ボクセルポリゴンな日々」 - UnityでMakersとVRをつなぐ挑戦 -

Unityプログラムで3DCGアセットデータをVRや3Dプリンターで利用可能にする最新技術や関連最新情報を紹介します。

今一度「EasyRecaster」の意味を考える。

2014年02月03日 20時06分25秒 | EasyRecaster


昨年11月から12月にかけて、

MMD等の3DCGデータから3Dプリンターに直接出力することを可能にする試作プログラム

「EasyRecaster」を開発してきました。

これがその開発の要約映像です。

【論文】MMDから俺の嫁を3Dプリンター出力するプログラムを開発してみた



昨今3Dプリンターの高性能化と低価格化がアメリカを中心に進行しています。

特に今年の後半から秋にかけて、さらなる高性能な個人向けフルカラー3Dプリンターの発売(※1)や、

カラーパレットによるマルチカラー印刷及び半透明&柔軟素材との複合同時印刷が可能な新型3Dプリンター(※2)

1月中有に相次いで発表されていました。


このように3Dプリンターをめぐるハードウェアの進歩は待ったなしの勢いで進んでいきます。

現在はABS樹脂による3Dプリンター出力が主流ですが、それも今年の後半にはどうなっているかわかりません。



そんな中にあって相変わらずなのが3Dプリンターに出力するための3Dデータの現状です。

3Dプリンター出力用のデータを得る方法は、現在様々なデータ公開およびマーケットプレースサイトがリリースしています。

これらは常にデータ作成者の作品を心待ちにしているのですが、

残念ながらデータの作成者は3Dプリンターが増えたからといって増加傾向にあるわけではありません。

その理由は全く簡単な事です。

3DCGツールの使い方を勉強して3Dデータを作ろうとする人がいないからです。


それでは、何故3Dデータを作る人は未だに出てこないのか?


これも理由は簡単な事です。

3Dデータを作っても、3Dプリンターで出力したら用済みだからです。

たった数回の3Dプリンター出力のために、多大な時間と苦労を費やして

せっかくの個人の趣味のための時間を捨ててまで3Dプリンターで何かを出力する気が起きるでしょうか?

初めて買った3Dプリンターで、初めて3Dモデリングした作品を、トライ&エラーを繰り返して作ってみたものの、

初めての作品では人に見せられるほど満足の行く出来にはならないはずです。

それでも今なら僅かな人から評価は頂けると思いますが、

ニコニコ動画のような公開動画サイトで晒したら遠慮なく酷い評価が与えられます。


そして、仮に上記のデータ公開サイトで自作3Dデータを公開してしまったら、

デジタル化された3Dデータは常に2次改造の危機にさらされ、

さらに自分のあずかり知らない所でコピーされ無断転載されてしまいます。


なにより、自分が物を作って発表することで、

無慈悲な評価者だった自分が「評価される側」という一方的な劣勢に立たされるのです。


ここまでわかっている賢明な個人は決してモデリングに手を出しません。

故に、私は3DCGモデリングの技術は余程の必要性を認めない限り、

趣味でやりたい場合お金を出してまでセミナーを受講して修得する類のものではないと思います。

(ものづくりやデザインを仕事にしている人はその限りではありませんが)



しかし、ここに一つの疑問が浮かびます。



それなら、

何故MikuMikuDanceではその登場以降に多数の3DCGモデル作成者が出現する環境を作り得たのでしょうか?


それも答えは簡単です。

3DCGモデルを「使ってもらえる」からです。

なぜなら、MMDの3DCGモデルは3Dプリンターで出力する3Dデータと違って、

ポーズを自由に変えたり、表情を自由に変えたり出来ます。

元々ダンスをさせるための最低限の人体モデル機能を有していますし、

表情関連アクセサリを追加することで漫画的な記号表現も追加できます。

すなわちMMDのモデルデータはダウンロードしてから先の用途が無限にあるのです。


ひるがえって、3Dプリンター出力用の3Dデータの用途は何でしょうか?

3Dプリンターでの立体出力が完了したら、それでお役御免です。



ここまで考えたら、もう誰もが思いつくはずです。

「例えばMMDで自由に変形させたあとで、3Dプリンターで出力することが出来れば、

 いくらでも様々なポーズや表情のフィギュアを作る事ができるんじゃないか?」

私が今やろうとしている事はこれなのです。

現時点で高機能な3DCGツールにも「リトポロジー」という機能があります。

これは元々3DCG映像制作用に作成されたモデルデータを3Dプリンターで出力可能な形状データに変更するための機能です。

ただし、この機能でフルカラー対応の3Dプリンター用に直接出力可能なデータを作成するには、

そのモデリングツールを使いこなす知識とデータを調整する技術と時間が必要になります。

EasyRecasterはその技術と時間をすっ飛ばして短時間でだれでも3Dプリンターを使って立体出力できるようにするのが

開発の目的になっています。


但し、上の映像をニコニコ動画で発表した直後は、反響と同時に

「映像制作目的で作られたMMDデータを勝手に3Dプリンターで出力できるようにするな!」

という尤もなご意見も頂きました。

それに対するアイデアを含めて、今まで色々考えてきました。

それらも含めて新しい表現を獲得できるプログラムの必要性を再認識し、開発を復帰させました。


ということで、EasyRecater開発活動を再開させます。

どういう形のプログラムになるか?

今後の活動報告にご期待ください。(^^)



※1 CES2014における3DSystems社のニュースリリースにおいて、
  5000ドル以下でデスクトップ降るから3Dプリンター「CubeJet」が販売されると予告しています。

※2 Stratasys Redefines Product Design and Manufacturing with World's First Color Multi-material 3D Printer(2014.01.26 Stratasys News Release)