白樺小舎便り(しらかばごやだより)

北信濃の田舎暮らしの日々

今年も 走って 登った ツールド長野 2017

2017年12月03日 21時29分21秒 | 登山

2日にツールド長野というトレイルランニングのイベントに参加した。

善光寺平を取り囲む里山を、ランニングで結び、山も登る超ハードな、全長130キロのコース。

ただ、8区間に分かれており、どこで止めても、自力でゴールまで戻れば完走となるという、緩い大会だ。

1週間前の日曜日には、腰痛で腰が伸ばせない悲惨な状態だった。

あまつさえ、脊柱管狭窄症という爆弾を抱えている身。

家人は、そんな状態で参加できるのかと、半信半疑。

だが、本人はいたって暢気に構えていた。

山なら、心配なく登れる。

ロード区間は、苦手だが、ゆっくり行けばいい。歩いたって構わない。

朝6時スタート。

制限時間は32時間。2日目の午後2時までだ。

ともかくも、日暮れまでは頑張ろう。

130人近くのトレイルランナー達が、思い思いの速さで走っていく中、緩く緩くとつぶやきながら、マイペース。

長野市から千曲川を渡り、須坂市に入る。

これから踏破する山々が、つい立てのように、周囲を取り囲んでいる。

最初は井上山(771.4m)。

小城、大城などの、戦国の頃の山城跡が残る山で、須坂市から、千曲川を挟んで長野市、北アルプス方面まで見渡せる。

 

次は、大洞山(847m)。

井上山から続く稜線上にある山。

落ち葉の上に、うっすらと雪が積もっていた。

この辺り、まだみんなの足取りも軽

前を行く二人が会話している。

「5キロの記録会、参加した?どれくらいのタイムだった?」

「俺は、20分。キロ4分だな」

「そうか、俺はキロ4分20秒くらいだったな」

それを聞いて、普段何にもしていないに等しい僕は、思わず言った。

「うわー、早いな。俺なんか、キロ6分。頑張っても岐路分30秒がいいところ。」

「トラックと山は全然違いますよ」

先に行ってくださいと、道を譲ろうとする二人を、慌てて制して、少しペースを落とす。

何があってもマイペース。オーバーペースは厳禁だ。

後から人が来れば先に行かせ、決して追い抜かない。

この山を下りて、次の山へのロード区間は、適当なスピードのペースメーカーを見つけついていく。

次の山は同じ須坂市の坂田山(860m)と、その稜線上にある明覚山(982m)に向かう。

急な登りは、ほとんど歩きで、余分なエネルギーは使わない。

明覚山は高山村と須坂市の境にある山で、山頂まで、三つくらいの偽ピークがある。

初めての人は、あそこが山頂という期待が何度も裏切られ、気持ちが萎える。

特に疲れ切っているときなど、「もう嫌だ、こんな山」ということになる。

こちとら、そんなことなどお見通しの身。なんといっても地元の山だ。

なんなく、山頂に到着。

ここから、高山村と須坂市を結ぶ林道に下山。

水中峠という、普段は熊とイノシシ、カモシカが住人というような寂しい場所だ。

そこにエイド(補給所)が設置されている。

あまり荷物を持ちたくないトレイルランナーにとって、とてもありがたい場所だ。

飲み物や食べ物を補給できる。

ここで、ナンバーのチェックを受ける。

エイドの掛かりの人はボランティアだ。

夜のエイドの担当者は、寒い中、本当に頭が下がる。

自分も、現役を引退したら、恩返しをしようと思う。

この水中峠から、高山村に入り、小布施町の雁田山に向かう。

向こうに崩れている山が、雁田山(759.4m)。

この山は、観光地、小布施町側からは、崩れているところが見えない。

この崩れた山肌が痛々しくて、景観を著しく損ねている。

日本一美しい村連合に加盟している高山村だが、この山の修復無しには、美しい村という名が泣く。

現在でも、採石が続いているが、日本列島改造の置き土産だ。

かなりの下り道が村の中を抜けている。

前を行くランナーをペースメーカーにしていたが、村を抜けるところで、彼はルートマップに示されたメイン道路に向かった。

ロード区間はどこを走ってもオッケーなので、一番の近道を自分は選んだ。

雁田山の登山口に着いた時には、ペースメーカーの姿はなかった。

この山は雁が羽を広げたような形をしている。

登山口はすべり山という、いかにも急な斜面を持つ広い尾根を登るコース。

ここでも慌てず、すぐ後からきたランナーに道を譲り、すぐ後からついていく。

山頂には広い展望台がある。

そこに、簡単なエイドがしつらえてある。

サンドイッチが、美味しかった。

掛かりのおねえさんと、もう一人、カメラマンがいた。

ここで、一人一人の記念写真を撮ってくれる。

この展望園地からは、これから向かうの髻山と、三登山が千曲川の向こうに、妙にのどかに暖かな日差しの中に見えた。

12時15分前。約6時間走り、登り続けていたことになる。

北斎の天井絵で有名な岩松院に向けて、下山。

急な斜面を無心で降る。

下りで膝を傷めないよう、注意して忍者の足取りで降る。速く、でも静かに。

岩松院からは、小布施の駅前を通り、最短コースで小布施橋に向かう。

ロードは苦手だが、ゆっくりなら走れる。

小布施橋手前で、ありがたいことに、お姉さんが一人椅子に座っていて、リンゴのサービスをしてくれた。

ここは、ペースメーカーもなく一人旅だったので、ずいぶん元気づけられた。

止まらず走り続け、アップルラインと呼ばれる国道18号線の手前の、コンビニに入ろうとすると、そこから出てきた二人連れと出会う。

「あー」

顔を合わせると、どちらからともなく声を出す。

近寄ってハイタッチを交わした。

女性の方は、何年も前、この大会で一緒に走った。

いわゆる苦楽を共にした仲だ。

この人はウルトラマラソンやマラソン、ハーフマラソン、各種のレースに出ていて、それなりの成績を残している。

だが、こちとらキロ6分ランナー。とても太刀打ちできる状態ではない。

だが、不思議なもので、ロードでは置いていかれても山区間では追いついてしまう。

結局、いろんな話をしながら、ロードでは引っ張ってもらった。山では引っ張ってあげた。

そんなことで、毎年この時だけ顔を合わせて、戦友に出会った気持ちになる。

このところ、こちらはゆっくりペース、彼女はかなり速いペースなので、往復箇所ですれ違う時に顔を合わせるくらいだった。

正直、もっともっと先に行っているかと思っていたので、驚きだった。

この男女の二人連れも追い抜きはせず、少し遅れてついていった。

豊野の街中で、僕はこの二人と別れ、独自の道を選んだ。

ここから、胸突き八丁ともいうべき、激しい上り坂になる。

もちろん走ってなんか行かれない。

だが、急な坂を上るのはお手の物。

遠くから見ると髷の形に見えるという髻山(もとどりやま)(744m)は、春先、カタクリの花が咲く。

午後の陽射しも傾き始めた。

林の中の道を辿り、山頂に着く。

ここからは、中野市方面の眺望がすばらしい。

ここから三登山へは、長い稜線が続く。アップダウンもある。

三登山の先に、アンテナ群が立っていて、そこへは車道がつながっている。

そこに3Aというエイドとチェックポイントがある。

決断の時だ。この先へ行くか、ここで帰還するか。

この三登山の下山口に、若槻温泉という温泉がある。

この温泉が決め手になった。

ここを下りたら、温泉に行こう!

三登山(923m)の山頂を抜け、エイドにたどり着いたのは午後4時。

スタートしてから10時間が過ぎていた。

冬の短い陽は既に沈みかけていた。

目標だった日没まで、というのも達成したし、何よりも気温が急激に下がり始めていた。

温泉に勝るものなど何もなかった。

下りは、日没との競争で脱兎のごとく駆け下りた。

「それだけの元気があれば、先へ行けよ」という、心の声も聞こえた。

ヘッドランプを使わず山を下りることができ、そのまま温泉に立ち寄った。

少しぬるめの湯が、疲れた体を優しく包んだ。

「よく頑張ったな、自分」

「もっと頑張れたんじゃないか。32時間のうち、まだ10時間だ」

色々な思いがあった。

頑張れば頑張れたかもしれない。でも、無理しない。それが結論だ。

欲張らない。7割で止めておく。それが分別。

走行距離52km。歩数84,000歩。

ゴールのトレイルマウンテンに着いて、店長自慢のカレーをごちそうになった。

毎年のことだが、とても美味い。

ほとんどボランティアで、このような催しを開催してもらっていることに感謝。

ちなみに参加者の最高年齢は?と聞くと、しばらく調べてもらって、66歳の自分だと判明。

歳のことは理由にはしたくない。

この間あまりトレーニングらしいこともしなかった。

加えて、少し前の腰痛もあった。

動きながら治す。動くことで治すというのがモットー。

走り終わった後、1週間前の腰痛は嘘のように消えている。

多少の筋肉痛は仕方がない。むしろ気持ちいい。

終わってみて、今思うのは、30日チャレンジの効果があったのではないかということだ。

スクワットを50回から初めて、毎日5回ずつ増やす。それを30日続けたら、第2巡では55回から始める。次は60回から始める。そのようにして、今は第5巡の10日目、115回になっている。

毎日の積み重ねが、山登りでも、腿が上がらなくはならなかったし、ロードも、ゆっくりではあるが走りとおせた原因ではないかと思っている。

来年、南アルプス南部の聖~塩見の縦走や、裏銀座の縦走を目標にしている。

目標があれば、そのためのトレーニングは辛くなんかない。

冬場は、近くにある温泉プールデビューでもしようかと、目論んでいる。

 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんわ (たか)
2017-12-06 21:46:53
素晴らしいと言いますがスゴイ大会に参加されているのですね。
夢中で記事を読ませて頂きました。

腰痛を「動きながら治す、動く事で治す」このお言葉、身に染みました。
励まされたおもいです。

来年のアルプスの縦走、待ち遠しいですね。
返信する
たかさんへ (nob)
2017-12-16 19:49:22
いつも記事を拝見しています。各地を訪れていらっしゃるようですね。僕は、ほとんど長野周辺の山がホームグランドです。不思議と山登りをしていると腰痛が消えてしまいます。来年の計画を話しても鬼が笑わない時期になりましたね。信州百名山の完登と、南アルプスの南部、裏銀座の縦走、東海道の完歩、甲州街道への旅立ち等々、盛り沢山です。たかさんもご活躍のほどを。
返信する

コメントを投稿