白樺小舎便り(しらかばごやだより)

北信濃の田舎暮らしの日々

偶然の出会い 穂高岳二日目

2016年07月31日 10時28分59秒 | 登山

穂高岳山荘で夢のような一夜を過ごし、朝五時から朝食。

昔の山小屋の食事に比べれば、隔世の感がある。三千メートルの高度で炊くご飯は芯があったものだが、今ではとてもおいしく炊けている。

コンロで火を入れた朴葉味噌をご飯に乗せれば、もう他には何もいらないくらいおいしい。

この小屋はトイレもきれいで、休憩室にも本がたくさんあり、とても過ごしやすい。

 

 

常念岳方面から朝日が昇った。

 

 

眼下には涸沢カール。

これから、ザイティングラードを通ってそこに降りていく。

 

 

 

 

前穂北尾根。

そこを攀じたのは、もう40年近く前のことだ。

一緒に行った岳友はもういない。さらば友よ、青春の日よ。

 

 

梓川の谷の向こうはピラミダルな常念岳。ここにも思い出がある。

 

 

振り返れば、北穂と奥穂の間にある涸沢だけの尖塔。別名涸沢槍。

 

 

     

昼食の朴葉寿司。飛騨の名物。

 

 

穂高よさらば また来る日まで

僕らはザイティングラードを降っていた。

半分くらいまで来た時に、涸沢から小走りに登って来る青年。

すれ違ってふと顔を見ると、そこにはまぎれもなく、日本百名山一筆書き踏破、二百名山一筆書き踏破の田中陽希さんがいた。

田中さんですか、と声をかけると、はい、そうですとさわやかに答えた。

みんな、このさわやかさや嫌みのない笑顔にやられちゃうのだろう。

僕は追っかけではない。どちらかというと、そんなことは嫌いだ。

だが、偶然の出会いというのは素直に喜ぶだけの柔らかさも持っている。

涸沢から、僕らとは逆のコースで奥穂から、前穂、岳沢、上高地と辿る。

上高地でまた会えるかもしれませんね、と走り去って行った。

 

 

涸沢、横尾、徳沢と小刻みに休みながら、明神に辿り着き、ソフトクリームなどをなめながら休んでいた時だった。

河童橋方面から、小走りにやって来て明神館に入る田中陽希さんを見た。

朝出会ってから五時間半、僕らが二日間で辿ったコースを、いとも簡単に走破した。

一般的には二泊三日コース。

これから、涸沢に戻ります、と、あの人懐こい笑顔を残して去って行った。

 

 

辿り着いた河童橋は、観光客でにぎわっていた。

この日、関東甲信越は梅雨明け宣言が出た。

河童橋名物の河童コロッケは、ここに行くたびに食べる。わさび味がおいしい。

 

 

 

 

 

天気にも恵まれ、僕らが行く前日は土砂降りの雨ということで、登山者も少なく、いい時期に登れた。

割合、いつもお天気には恵まれ、その点では山の神様に愛されているのかもしれない。

山の神様、お天気の神様、ありがとう。

「本当に、前穂、奥穂なんて行けるのかしら」と言っていたかみさんも、「この歳になってもやればできるんだ」と言った。

「これで、北穂、奥穂、前穂と登ったから、残るのは西穂だね」と言うと、「行く、行く」と二つ返事で答えた。

 

帰路、乗鞍高原に回り、そこの温泉で汗を流し、手足を思い切り伸ばした。

「あー、いい山旅だったな」

硫黄の湯船の中で、達成感に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


一瞬のきらめき 夏の穂高岳

2016年07月30日 21時07分37秒 | 登山

関東甲信越はまだ梅雨が明けなかった。

27日の朝4時、松本市内は土砂降りの雨。

沢渡の駐車場に着くと雨は上がった。

タクシーで、ゲートが空くのを待って上高地に入った。

まだ奥穂に登ったことがないかみさんを案内して、岳沢から前穂、奥穂、涸沢、横尾、上高地と巡るコース。

少し強行軍だが、本日はは高岳山荘までの行程。

 

       

     岳沢小屋前のコーヒータイム                 短い夏の一瞬のきらめき  お花畑       和声エーデルワイス ははこぐさ   

 

 

        

雨に濡れたハクサンフウロ                黄色の花が一番虫を呼ぶという               透き通ったような不思議な花びら

 

 

        

イワツメグサだったかな                       ツリガネニンジン             霧が流れ 幻想的な風景を作っていた

 

 

       

ウサギギク                       白い清楚な佇まい                        この山の険しさ 

 

 

        

霧が流れ 明神だけが姿を見せた                 岩と花                紀美子平にザックをデポ。急峻な岩場を攀じると前穂山頂。 

 

 

        

雲の向こうにうっすらとジャンダルム。         奥穂付近に来ると、涸沢カールが見下ろせ                   振り返ると釣り尾根の向こうに前穂の雄姿   

「顔無しが立っているみたい」かみさんが言った。

 

       

奥穂から宿泊場所の穂高岳山荘を目指す。      たくさんの山の本が置いてある僕の大好きな場所   三千メートルを超す山の上とは思えない 山小屋の夕食

山荘へは急な岩場を下る

 

 

急な岩場を攀じていると、何も考えない。無念無想になれる。

修験者の山が険しいのはそんな理由があるのだろう。

山で感じた喜びや感動は、文章にしてしまうと変容してしまう。

既に自己完結してしまっている。

午後2時台に山小屋に着いて、まだ最盛期の較べれば、宿泊者が少なくて、ゆったりと贅沢な時間を過ごした。

 


心が潤いを求めていたから

2016年07月08日 22時48分13秒 | 登山

色々なことがあった。

色々なことに追われている。

ブログからも遠ざかっていた。実体のない世界に嫌気がさして。

多様さが世界を豊かにする。それは十分に解っているつもりでいた。

それでも、白を黒と描き出すブログに吐き気さえ催して。

参院選は最終盤。

憲法9条を変えて戦争できる国にしようという安倍首相の企みは何としても阻止しなければ、と思う。

その為に、できることはやってきた。こう書けば、そのことに嫌悪を感じる読者もいよう。去ってもらって結構だ。

元来、花鳥風月を愛する風流人であろうと志す僕は、その活動にかなり心理的なストレスを感じている。

七夕の日、命の洗濯をした。

燕岳。2,763メートル。

僕が初めて登ったのは中学生の学校登山。

それ以来、何度となく登った山だ。

常念山脈

表銀座、大天井岳。

 

燕山荘はきれいな山小屋だ。

 

山の花はなんでこんなに美しいのだろう。

 

砂礫地に孤高に咲くコマクサの群落。

 

高山植物の女王。この姿に恋をしない、なんてできない。

 

もうすっかり夏の色に変わったライチョウ。君たちが絶滅しないで生きられるような環境を守らないと。

 

そこで何を見続けているのだろう。

 

アオノツガザクラはとても気品がある。

 

人の世界にいると、とても疲れる自分が、山に来ると生き返る。

遠き続く山脈と、足元の高山植物、流れる雲。

とても単純で豊な世界。

ここで充電をして、明日はまた戦場に戻ろう。野党統一候補の当選を目指して。