緩和ケアで行こう

へなちょこ緩和ケアナース?!のネガティブ傾向な日記です。

行こうよ(3)

2009-04-10 19:35:41 | 患者さん

 ザリ子ちゃんのお話を挟みまして、池畑さん(仮称)の同窓会に同伴したお話に戻ります。


 池畑さんが同窓会に向けて病棟を出発する予定時間は10時。9時過ぎに病棟に着いた私は、池畑さんの今朝の様子を確認しました。
 スタッフから、「今、お化粧してるところよー。」と聞いてほっとしました。
 
 よし、いける…!と。

 池畑さんの体力はこのところ、急速に低下していました。
 最後まで、おトイレは自分で行きたいとのご希望があって、トイレに工夫をしたり、トイレに行くためにトイレ以外の動作に必要なエネルギーを節約してもらったりしてました。
 しかし、次第にトイレに歩けなくなり、ベッドの上で排泄を行っていたのですが、それもとても体に負担になるくらい、しんどくなってきてました。

 スタッフから聞いたことのもうひとつは、
 「バルン(=おしっこを出すために尿道に入れる管のこと)を入れてね。池畑さんもそれでいいって言ってくれて。そのおかげで、昨夜はとってもよく眠れたって。バルンを入れてよかったっていってたよ。」

 
 バルンを入れることを受け入れるということは、自分が「動けない」ということに直面せざるを得ないわけで、とてもつらいことだと思います。
 けれど、池畑さんは、動けなくなったことを受け入れ、「同窓会に行く」という目的のために体力を温存することを選ばれました。
 正直、池畑さんはすごいな…と思いました。

 池畑さんは、前日まで、ご主人さんと同窓会に着て行く衣装やらかばんやらを選ばれてました。この日のために準備した物。身につけること自体が気分を晴れやかにするものだと思います。

 が。
 着替えをするために体を横に向けたりする体力すらなくなってきている池畑さんは、ここでも体力温存を選ばれました。
 上半身にカットソーを纏い、首にスカーフを巻いて…。
 「後は、もう、パジャマでいいわ。」と。
 確かに、毛布をかぶれば下半身はわからないことです…。
 

 そして、リクライニング付きの車椅子に移乗し、介護タクシーに乗り込み、同窓会の会場に向けて、病院を出発しました。
 
 

 私は、出発までに自分が付いていくなら、ありったけのものを準備しました。大きな紙袋に3つ分ほどになりました。
 
 ・・・・・・帰りはきっと疲れてしまうだろうから、ちょっとうとうとしながら帰ってくるのもいいかも… ・・・・・・

 アタPのアンプルも準備物品のなかに追加しました。

 
 早朝の空とはまた違った青空のもと、介護タクシーは走り出しました。
 
 とにかく、チャレンジしたいという池畑さんの思いは叶いました。
 車の中で私は池畑さんに言いました。
  
 「ここまで、来たねー。」

 池畑さんも穏やかに、
 
 「来たねー。」

 と話されました。

 
 チャレンジできたことがまず、成功っ!今使っているお薬や紙袋に入れてあるお薬を調整して、車の中で足の位置なんかを調整して…。
 絶対会場まで行きますとも!と自分の心に呟きながら、池畑さんご夫妻とともに会場に向かいました。
 


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