何処にもいかない  ㊶

2020-02-23 08:26:38 | 小説

連休だというのに何処にもいかないなんて珍しいね。

マスターの店に行ったら、いきなり突っ込まれてしまった。

「コロナでしょ?」

冬子さんが、苦笑いした。

「まあ、そんなとこです。

なんせ、不要不急の外出は、控えなくちゃですもんね。」

「この季節、いつもなら何処かに出かけてるものね。」

マスターが、コーヒーをテーブルに置きながら、気の毒そうに呟いた。

「結局、マスターの店しか行くとこなくて・・・。」

冬子さんの隣に座っている久実さんも、此のところ売り上げが減っちゃってとこぼしてる。

「私には、あんまり関係ないけど、通勤の人は、大変だね。」

加藤のおじいちゃんが、豆大福をほおばりながら、話に加わる。

加藤のおじいちゃんが差し入れしてくれた豆大福は、意外にもコーヒーに、合う。

カウンターに生けられた侘助が、ひっそり春の訪れを告げているようだ。

 

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