伊達さんの転勤  240

2024-03-01 17:06:35 | 小説

仕事帰りに、伊達さんが、店に寄った。

「お久しぶりね」冬子さんが、声を掛ける。

ドア横のハンガーに、オレンジ色のコートを掛けながら、お久しぶりですと、伊達さんが、応えた。

カウンターに腰を下ろした伊達さんに、マスターが、「年度末で、忙しいんじゃないの?」と、話しかけた。

マスターの出してくれた水を一口飲んだ後に、「急に、転勤が決まったんです。」と、話し始めた。

冬子さんも、傍に寄って来て、「引っ越しなさるの?」と、尋ねた。

「引っ越しは、しないんですけど、勤務先が、遠くなっちゃって、大変なんです。」と、説明した。

前任者が、突然辞めてしまって、急に、伊達さんに、辞令が、降りたそうだ。

今の図書館には、10年近く勤めていたので、移動があっても、おかしくはなにのだけどと、言いながら、疲れた表情を浮かべた。

冬子さんが、伊達さんの背中をさすりながら、「それは、大変ね。」と、優しく慰めた。

マスターが、ミルクたっぷりの甘ーいココアを、そっと置いた。

 

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