読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

米澤 穂信著「追想五断章」

2010-05-02 | や・ら・わ行
伯父が営む古書店で学費が足りず休学中の住み込みでバイトの苦学生・菅生芳光は留守番中、叶黒白という作家の短編5編を探して欲しいという依頼を受ける。
依頼者は北里可南子、作家叶黒白の娘であり5編のリドルストーリー(結末が伏せられた小説)の結末のみを所持しているという。
報酬に釣られた芳光は、黒白の旧友や掲載誌、関係者を調査するうちに、彼女と父・母の身に起きた22年前の「アントワープの銃声」という未解決事件の謎にたどり着く。
そして見つかったのは4編。
母が娘を耽溺するあまり火事を引き寄せてしまった「奇跡の娘」。
男が不条理極まりない国の裁判にかけられ妻子を失う「転生の地」。
妻子のために自らの命を断った中国の話「小碑伝来」。
足かせとなった妻子を危険な道へと誘導した男の本意がは「暗い逐道」。
なぜ父である黒白はこのようなを書いたのか、そしてなぜそれを封印したのか?
事件の真相を訴える5つの「結末」を用意しておきながら、それを描かず読者にラストをゆだねる「リドルストーリー」という形に仕立てなのはなぜなのか?
幾重にも隠された真相とは?
5編目の「雪の花」の内容は?
凝ったストーリー、幻想的な5つの物語、巧みなトリックと構成、物語の真意を読み取るべく読者とそうさせまいとする著者とのバトルが楽しめました。
残念ながら途中で謎の察しがついてしまいましたが、それでもなお最後まで引き付ける面白いミステリー小説でした。

2009年8月集英社刊

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