読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

米澤穂信著「黒牢城」

2023-03-12 | や・ら・わ行
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重の謀反を諌めるために有岡城に乗り込んだ織田方の軍師・黒田官兵衛が、土牢に囚われるところから語られる歴史ミステリ。村重は、城内で起きる難事件に翻弄されて、動揺する部下・人心を落ち着かせるため、土牢の囚人官兵衛に謎を解くよう求める。事件の裏には何が潜むのか。次々に起こる怪奇な事件を官兵衛が助言を与えてそれをヒントに領主の村重が解決する歴史ミステリです。連作で語られる4つの事件が次々に解決してスッキリするのですが、舞台は籠城の中で登場人物ほぼ全員が疑心暗鬼に陥っています。信長軍によって包囲され、明日をも知れぬ運命に囚われた人々の狂気と理性の間でおきた事件だからでしょうか。知られている史実を基に、個々の事件に想像力を駆使した歴史ミステリ。後半明らかになる牢から村重を操っていたことがわかる官兵衛はやっぱり切れ者です。戦国武将の視点ではなく歴史上一向一揆として語られる一向宗宗徒の民の側からの見方や精神性が描かれているのも面白い。信長よりも長く生き茶人として有岡落城から7年後天寿を全うした村重の生き様も面白かった。
2021年6月KADOKAWA刊


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