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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

海堂 尊著.「ひかりの剣. 」

2008-11-15 | か行
舞台は1988年、バブル真っ盛りの頃。
いずれ医者となる医学生達もあたりまえだが最初は医学の素人で、普通の大学生のようにサークル活動に部活に励んでいたそんな時代。
医大の世界では少子化と高齢化に伴う医療費の増大を抑制すべく医師の削減の為
に程なく入学定員の削減が行われる可能性が取りざたされていた頃でもあった。
当時全国の医学部剣道部の象徴的大会、医鷲旗の覇者は外科の世界で大成するという言い伝えがあった。
その医鷲旗をめぐり、桜宮・東城大剣道部の虎といわれた速水晃一と天下の国立大学、東京・帝華大の龍・清川吾郎による伝説の闘いが繰り広げられる。
「メスと言う刃は竹刀より小さいが、その下で繰り広げられている世界は、一歩間違えれば相手の命を奪う真剣勝負」(本分よリ)
『チーム・バチスタの栄光』の舞台、桜宮・東城大『ジェネラル・ルージュの凱旋』速水・田口・高階『ブラックペアン1988』清川等著者の作品・シリーズの登場人物の若かりし頃の面々が、メスの代わりに竹刀でしのぎを削るスポーツ青春小説。
残念なのは青春物につき物のロマンスらしきことが触れられていなくて少々不満。
個人的にはいつかマネージャー役の「朝比奈ひかり」を主人公にまた一作
期待したい。
2008年8月 文藝春秋刊
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川本晶子著「 マタニティドラゴン」

2008-11-07 | か行
著者は2005年「刺繍」で第21回太宰治賞を受賞。
表題作は、タウン誌の記者トモミは取材で出会った女彫師の「彫芋」から受けた電話「新しい龍を彫りました」の誘いに乗りそのスタジオを再訪したところからすべては始まったのかもしれないと思う。明日の延長線上に未来があるとは限らない。
だから大切な人との出会いと、自らの運命を受け入れる女の優しい覚悟を描いた物語。シングルマザーの恋愛以上の物語。
他に不倫相手の突然の死で運命に断ち切られた恋を描いた短篇小説「ことり心中」が同時に収録されてる。

2008年10月 筑摩書房刊
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北島 行徳 著 「サークル」  

2008-10-02 | か行
高校受験の直前に骨折し、志望校に進学できなかった三田村友樹は受験にも失敗し引きこもりとなる。
しかし通い始めた病院の若い精神科医、東山兼人と出会い立ち直るきっかけをつかむのだが、
友人の起こした事件に巻き込まれ犯罪者の烙印を押されて少年鑑別所に。
一方、友樹を救えなかった東山も無力感に苛まれていた。
忌まわしい事件によって2人の人生は暗転したのだ。
それから5年、新たな人生を歩みだした2人だったが・・・
新たな広域開放医療というプロジェクトへの参加を決意した東山とパティシエ修業を始めた友樹。
医師の東山は何者かに襲われ記憶を失う。病院から逃げ出して家に戻った東山を待っていたものは?
徐々に蘇る記憶から次々に判明する驚愕の事実の数々・・・
友樹の周りにもその影がちらつく。どうやら事件の鍵は、「サークル」という謎の言葉にあるらしい。
「サークル」と呼ばれるものは何か?
心に傷を負った友樹と東山は、過去と決別し新たな人生に踏み出すことができるのか。
苦闘する2人の熱い想いに、思わず応援したくなる展開です。
今精神科の医療現場では医療費削減の名のもとに
厚生労働省による2015年までにいまある全国約35万床の精神科のベット数を
75000床減らすべく取り組みが断行されているという。隔離や拘束が必要な患者以外は
社会に戻されるが社会にはその受け手が準備されていないという、日本の精神医療の問題点をつく医療ミステリーです。
2008年07月文藝春秋刊
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小嵐九八郎 著「ふぶけども」

2008-08-28 | か行
関が原の戦い以後、1913年伴天連追放令が発せられた1614年日本海を北上する
北国船の中から物語が始まる。
主人公、真宗の僧「爾空」と居合わせたのは混血でポルトガルの切支丹の
修道士イルマンこと「山崎左門」と女衒に売られた若き女「おせん」。
嵐に見舞われてやっと辿り着いた所は当時の出羽の国。奥羽、津軽の庶民や
農村漁村の暮らしの中で切支丹として、一向宗の僧として対抗しながら
布教する様子が作者の綿密な多くの文献を参考に書き上げられた小説。
切支丹弾圧の様子と信仰に苦悩する左門、おせんをめぐる軋轢
互いの宗教の教えを比較しながら、やがて兄弟のような感情を抱きながら
過酷な日々を生き抜きやがて弾圧をのがれて蝦夷地まで逃れて行く。
過酷な運命の中で、二つの宗教の対比と3人とそれを取り巻く人々の生き様が
胸に迫る力作。
2004年   小学館 刊

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海堂尊著 「ジーン・ワルツ」

2008-08-18 | か行
彼女はヒトの生命をどこまで操ることができるのか。
現役の医師でもある著者が少子化対策や産婦人科医の不足等等の医療問題に警鐘を鳴らす感動作。
主人公は、人工授精のエキスパートで、美貌の産婦人科医・曾根崎理恵あだ名は人呼んで「冷徹な魔女(クール・ウイッチ)」。
帝華大学医学部の産婦人科教室で発生学の講師を努める取る傍ら、個人クリニックである「マリアクリニック」でこのクリニック最後の患者5人の妊婦の診察を担当している。
自然に妊娠した二人の女性、望まぬ妊娠をして堕胎をしたいと言う19歳の女、5年以上も不妊治療に通ってようやく妊娠出来た女、55歳という高齢でありながら人工授精で双子を授かった女性である。
マリアクリニックは院長が癌で病床にあり、この5人の患者の出産が終われば閉鎖されることになっていた。
そんな時、大学の同僚の清川は、上司の屋敷教授を通じて理恵が代理母出産に手を染めているという疑惑を聞かされます。
それぞれに事情を抱えた年齢も立場も異なる妊婦達、出産には彼女等に平等に襲い掛かるリスクを超えなくてはなりません。
ここにはには命の誕生がいかに奇跡的であるのかということが、医師らしく医学的立場で描かれています。
理恵の患者である彼女らが、それぞれに自らの胎内に宿った赤ちゃんを介して「命」に向き合う姿と、同じ女性でありながら理恵は医者として医療現場で崩壊しつつある医療の現実、それを理解しようとしない役所や行政に真正面から立ち向かいます。
戦う理恵の姿がリアルに生々しく描かれて、実際の命という「現実」を受入れるべき社会が、「制度」によって歪められてしまっている現実を見事に描き出して問題提起しています。
どこまでが医療で、どこまでが人間に許される行為なのか。
後半明らかにされる真相は
・・・最先端医療ミステリー小説です。
2008年03月新潮社刊

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川上健一著「四月になれば彼女は」

2008-08-14 | か行
「April Come She Will」サイモント&ガーファンクルのメロディーを題名に
作者の自叙伝的青春物語。
工業高校を卒業して3日後の1日、今の自分のエポックメーキングとか
ターニングポイントとなった出来事を米軍基地の街三沢を舞台に初恋、友情、
不良達との喧嘩等、軽快なユーモアたっぷりの青春小説に仕上げている。
誰にでもあった将来への不安や迷い、性に対する憧れ、人生に迷いながら
一歩踏み出したあの日を生き生きと描き出していて共感出来た。
  2005年   実業之日本社 刊
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神山裕右著「カタコンベ 」

2008-08-05 | か行
1980年愛知県生まれ、2004年、24歳3ヶ月最年少で第50回江戸川乱歩賞受賞
した作品。「カタコンベ」とは「地下墓地」かってケイビングクラブで
洞窟探検時、地底湖の洞窟潜水で2人で事故に遭い一人だけ生還した過去を
持つ「東馬亮」。
その時、亡くなった故人の娘「水無月弥生」。
5年後2人が再び出会ったのは黒姫鍾乳洞の洞窟学術調査隊のメンバーとしてだった。
殺人事件と洞窟内パニックシーンとサスペンス、ケイビング冒険アドベンチャーミステリー小説。
著者の若さゆえの荒削りな未熟さは仕方がないとして読んでいてワクワク感
があるストリー展開で面白い作品です。
2004 年  講談社 刊 
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黒田研二著「結婚なんてしたくない 」 

2008-07-28 | か行
結婚を意識しながらも、シングルライフを満喫するそれぞれの5人の男たち。
そんな彼らの前に“運命の女”が突然現れ、やがて平凡な日常生活が崩れていく。
別々の生活を営む一見接点のない5人の個々の生活を一人一人追っていくが
雑誌で取上げられて有名になった焼き鳥屋等ですれ違い最後には全ての
5人が一堂に・・・
納得できない点や一部不自然な展開が気になるが恋愛小説風で読み出したが
ミステリー小説ともいえる物語。
著者は、1969年1月13日三重県生まれ。信州大学経済学部を卒業後、
出版社勤務、2000年「ウェディング・ドレス」で第16回メフィスト賞を受賞。

結婚に関する先人達の警句
「結婚をいばしば宝くじにたとえるが、それは誤りだ。宝くじなら当たることも
あるのだから。」(バーナード・ショウ)
「結婚するとは、彼の権利を半分にして、義務を2倍にすることである。」
(ショーペン・ハイマー)
「結婚するときは、私は女房を食べてしまいたいほど可愛いと思った。
今考えると、あのときたべておけばよかった。」
(アーサー・ゴッドフリー)
「結婚したまえ、君は後悔するだろう。結婚しないでいたまえ、
君は後悔するだろう。」(キルケゴール)
2005 年 幻冬社 刊
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神山裕右 著「サスツルギの亡霊」

2008-07-27 | か行
1980年愛知県生まれ、「カタコンベ」で24歳3ヶ月最年少で第50回江戸川乱歩賞受賞。 受賞後第一作。南極越冬隊に参加して3年前の義理の兄の行方不明の真相を明かすフリーのカメラマン矢島拓海の冒険ミステリー。「サスツルギ」とは、雪が削り取られてできる砂漠の風紋みたいなものをいう。平和で争いのない南極なのに次々に起こる放火火災や殺人事件、昭和基地で繰り広げられる隕石を巡る謎。 2005 年 講談社刊
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北森 鴻著「暁の密使 」

2008-07-15 | か行
明治日露戦争前夜、仏道のために命を賭してチベットの
聖地・拉薩(ラッサ)を目指した仏教者「能海寛(のうみゆたか)」を主人公に、
明治維新以後欧米列強と肩を並べるべく近代国家と脱却しようと
必死に背伸びする日本の情勢を背景に、
そんな歴史のうねりの中、仏教の原典「チベット大蔵経」を求めて
中国大陸に渡り、鎖国下のチベットへの難渋を極める潜入行を描いた
秘史発掘ミステリー。
歴史の表舞台を歩き名を残した東本願寺学僧寺本婉雅や「西蔵旅行記」の著者
河口慧海と同じ時期にダライ・ラマ13世に謁見を夢見た「不惜身命」の僧がいた。
英国工作員、密偵、阿片密売人、能海を助ける中国人や西蔵人の兄妹広大な
清国末期の中国大陸を舞台に壮大に描いた冒険ロマン近代版西遊記です。
2005年 小学館刊

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黒川博行著「蒼煌」

2008-07-14 | か行
日本画壇の裏世界を日本芸術院会員の補充選挙をめぐる生々しく露骨な
接待・賄賂の実態のドロドロした争いを描いた作品。
芸術院会員の次期補充選挙でその座を狙う日本画家の室生晃人は、対立候補の
稲山健児とともに、現会員らへの接待攻勢に打って出る。
師のために奔走する中堅画家の大村や、選挙に振り回される家族たち。
画商、政治家、入選目当ての女も登場しそれぞれの思惑と欲が絡んで、
選挙戦、派閥抗争、情実審査など内輪ものとしては読んでいて面白い。
当選は政治力、運、上からの引き、押しの強さ、あくどさなどありとあらゆるものが必要な世界です。
票を握っている画家の絵を購入したり、現金入りのカステラ・有名掛け軸・壺・花瓶を
手土産かわりに持参、弟子の大学やカルチャースクール講師への就職斡旋の話をとりまとめるなどなど。有名寺院の障壁画を描かせろなんていうのまであり、涙ぐましい努力の数々の暴露は吃驚のかぎり。
語られるのはやわらかな京都弁。すごい会話が随所に
『10万なら突っ返しても100万なら受け取るのが人間というもんですがな。
なんぼ棺桶に片足突っ込んでたかて、金は邪魔にはなりまへんわな』(本文より)
日展、院展、創画展、京都市立芸術大学、京都造形大学、高島屋、大丸
登場する画家、政治家、企業名が、実在の人物や会社名を想像できると楽しく読めるはず。
残念ながら画家や京都の事情に暗い私には登場人物の多さに閉口して読むのが進まない。
登場人物はみんな物欲・権威欲・名誉欲のかたまりばかりです。
一人に思い入れをもって読み勧めず小説としてはチョット難有りですが
暴露物として読むといいのかも。
結論は、余分なことはせずに「絵描きは絵を描かんとあかん」
2004年11月 文藝春秋刊 文春文庫
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霞 流一著「サル知恵の輪 」

2008-07-11 | か行
MONKEY LOGIC 迷走と妄想の名探偵「紅門」。
「紅門福助探偵事務所」、その玄関に飛び込んできたのは瀕死の依頼人、
彼は犬のチー太を残して絶命。
身元はお好み焼き屋「ジャングル」のオーナーだった。
成り行きで事件を調査し始めればべれば、次々と現れる死者の数々。
サルに謎らえられた事件現場はいったい何を意味するものか?
コミカルなタッチで始まる書き出し、連続殺人のわりに深刻さはない。
鉄板焼きの町に住む登場人物たちは皆個性豊か、
サルとB級グルメの薀蓄が一杯。
最後は大いなるコジツケモ・・・
2005年 アクセス・パブリッシング刊
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垣根涼介著「午前三時のルースター 」 

2008-06-08 | か行
2000年第17回サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞作品。
4年前ベトナムのサイゴン(現ホーチーミン)で行方不明になった
父親捜しを頼まれた。
1年前に放送されたベトナム特集のTVの画面に父親らしい姿が映っていたのを
頼りに、依頼人の10代の少年慎一郎と旅行会社の営業マン長瀬は
空手3段の友人源内と3人で成田を飛び立った。
しかし、空港には手配済みの現地ガイドが現れない・・・
車好きの作者らしくカーチェイスやアンチックな車が随所の登場して物語に花
を添える。
逼塞状況の日本とドイモイで活況のベトナムの対比が面白い
ハードボイルドミステリー小説。
 2000年  文藝春秋刊
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北川歩実著 「運命の鎖」

2008-04-15 | か行
自分がアキヤ・ヨーク病(中年期に発病して死に至るという遺伝病)の
DNAを受け継いで居るのではという疑問から父親探し始めた戸叶君保。
君保の父親の志方清吾は、自分の父を襲ったその病気を恐れて失踪した。
精子バンクに預けていた精子を残したまま―。志方の失踪から二十数年、
志方の血をひく子供たちは、受験、結婚、出産など、それぞれの岐路に
立っていた。はたして遺伝病は受け継がれているのか、そして彼らの運命は…。
突飛な推理や設定、思わぬ事件の背景が表れてついていけない展開、
生活感のない登場人物が次から次に表れて名前と関係を覚えるのが大変、
とても感情移入も出来ず数学の回答集を読むような味気なさで
読み続けるのが苦痛でした。
2006年 創元社 刊
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北方謙三著「旅のいろ」  

2008-04-12 | か行
著者談「現実に存在しない、男のあらゆる願望も受け入れてくれる女を書いてみたかった」ヒロインの「聖子」はとりわけ美人ではないが、ちょっとしたしぐさや視線の強さで男たちを次々と引きつける「魔性の女」。
欲望の天国、運命の地獄その女、要注意。会社社長、映画監督、料理人…。聖子が愛した男たちは、才能を見いだされ、瞬く間に仕事で栄華を極める。だが、絶頂のなか、そろって悲劇的な結末を迎える。関わった男たちは皆、苦痛に悦びを感じながら堕ちていく。聖子の顧問弁護士風間雄二もその危険な匂いを理解しつつ聖子との逢瀬に溺れて行くが・・・
『俺はこの女を支配したいのだ、と思う。ほんとうに支配している、と思える時もあった。しかし、錯覚ではないのか。男が女を支配するとは、どういうことなのか。』<本文より>
生々しい性描写も盛り込まれた官能ハードボイルド小説。
2006年 講談社 刊  
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