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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

海堂 尊著『イノセント・ゲリラの祝祭』

2009-10-28 | か行
チーム・バチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」に続く田口・白鳥シリーズ第4弾!
厚生労働省を舞台に、窓際医師の田口が、ロジカルモンスター白鳥の本丸・医療事故調査委員会に招待されて、
グズグズな医療行政を田口・白鳥コンビは変えることができるのかが主題。
ミステリーサスペンス性皆無、霞ヶ関周辺の厚生労働省の会議室で、医療問題の議論ごっこ。
官僚主義に対する批判プンプンな議論はそれなりに面白いが医療事故死の死因究明のあり方を、
役人、医療従事者、法律学者、マスコミ、遺族代表など様々な人間が議論する展開で、誰もが自分の立場から言いたいことを言う展開の後に、
方向を海堂氏が一貫して主張している問題、「AI」(死体の画像診断)を導入しなければ、医療は崩壊するということ。
いまのようにいい加減に死因を放置し、死後検索を行わなければ医療は廃れるという危機感だ。
警鐘を鳴らす為の物語のようです。
2008年11月宝島社刊
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木村紅美著「月食の日」

2009-10-18 | か行
もの心がつく前に視力を失ったために光や闇や視覚という概念を持たない主人公の有山隆はマッサージ師をしながら、アパートでひとり暮らしをしている。
隆はある日、電車の中で十数年ぶりかに再会をした津田幸正に月食の日に自宅のマンションに招かれるという話。
特定の誰かに視線を固定しない三人称の視点で書かれているので話しが飛び読み難いが、視力を持たない青年の生活や感覚について書かれた小説は読んだことがなく新鮮でした。
目の見えない人がどんな風に世界をとらえているか、言葉で表現しようとした意欲作だと思います。
障害者と健常者という対比のなかで、視覚としての「見える」、「見えない」を素材として、物理的な視覚とは違った次元の現象としての「見える」、「見えない」を描いている。
視覚障害者を家に招く妻の戸惑いや急に外出した夫に代わって相手をする普通の主婦詩織と隆の会話は興味深い。
地球儀を持ち出して、「あのね、月食、というものを、これから感触で説明してみせてあげる」と言い説明し始めた詩織。
隆の観るは実際には、一般的な意味としての「みる」ではない「見えているわけないのに。聴く、嗅ぐ、食べる、といった、視覚以外で記憶した全てをひっくるめ、観る」という一つの言葉に置き換えているみるだ。
視力を持つ健常者たちは、実は見えているつもりなだけで、視力を持たない障害者の方が自分たちとはちがった心の目で多くのものを見ているとか、ものを見ているだろうということにに関心がなく思いもよらない等々考えさせられた。
盲目の友人との微妙な関係を精密に描いて第139回芥川賞候補となりながら、
賞もれの表題作他、互いに異なる思惑から近づいた筈の関係青年と古アパートに住む老女との交流を描いたレトロな雰囲気の・・・・
「たそがれ刻はにぎやかに」の2つの中篇。

2009年9月文芸春秋刊
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小手鞠るい著「 空と海のであう場所 」 

2009-10-13 | か行
幼い恋心が、大人になってからの再会・同棲と別れを経て、真実の愛に漸く辿り着くまでの再生の愛の物語。27歳だった。
好きで好きでたまらないのに、互いを傷つけ合うことでしか、その気持ちを表現できない不器用な二人だった。
一番大切なものは失って初めて分かるんですね!
途中挿入される「泥棒猫と遊牧民」の童話が物語りを盛り上げる。
『好きな人のために空っぽの器になりなさい。
最初からたくさ色のついた紙じゃなくて、真白な紙を選び・・・白いところがあるから、それは絵になる。器も同じ、中が空洞だから、使い物になるの。』
恋愛小説。
2006年 ポプラ社 刊
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湊かなえ 著『少女』

2009-06-05 | か行
『告白』で今年の本屋大賞を受賞した湊かなえさんの二作目。
夏休みの出来事を思春期特有の心の動きを二人の女子高生の視点で書かれたミステリー小説です。
高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から衝撃的な話を聞く。
彼女はかつて親友の自殺を目にしたというのだ。
その告白に魅せられた二人の胸にある思いが浮かぶ―「人が死ぬ瞬間を見たい」。由紀は病院へ読み聞かせのボランティアに行き、重病の少年の死を、敦子は授業の補修代わりとして老人ホームで手伝いをし、入居者の死を目撃しようとする。少女たちの無垢な好奇心から始まった夏が、複雑な因果の果てにむかえた衝撃の結末とは?果たして、その願いはかなえられるのでしょうか?・・・ 
由紀と敦子の視点で交互にストーリーは進んでいくが桜庭一樹が描く少女もそうだが思春期特有の心の動きを瑞々しく、美しく残酷に情け深く即物的に描いている。
さまざまな出来事が複雑に絡み合い、ラストが近づくにつれ別々のものだった事柄と人間関係が種明かしされていくの様子が小気味よかったが、終着点でお前もか!と彼女たちを取り巻く環境と繋がりの偶然が重なりはちょっとありえない狭い範囲の御都合主義で残念だった。伏線の妙は上手い。
物事は全て『因果応報、地獄に堕ちろ』 ? 
2009年 月早川書房刊
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壁井ユカコ著「 NO CALL NO LIFE  」  

2009-05-28 | か行
「時間を超えて電話が繋がるなんてこと、あると思う?」携帯電話に残された、
見知らぬ男の子からの留守電メッセージ。
奇妙な間違い電話に引き寄せられて出会った17歳の有海と19歳の春川。
オトナの都合とコドモの間で押し潰されて行き場を失った似たもの同士2人の、
不器用で刹那的で欠陥だらけのつたない恋を描いた青春物語。
ラストは切ないですね!
2006年 メディアワークス刊
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黒川 博行著 「 煙霞」

2009-05-06 | か行
私立晴峰女子高校では、理事長の酒井が学校法人を私物化していた。リストラの危機にある事業に失敗して転身した美術講師の熊谷とはみ出し調で気が強い音楽教諭の正木菜穂子は、同僚の体育講師小山田から、ワンマン理事長を拉致して不正の証拠を突きつけ、理事長退任を迫る計画に誘われる。二人は職の保障を得ようと理事長の拉致に加担し、交渉は成功したかに見えたが理事長と愛人の朱実たちが失踪する。やがて二人の行方を追う熊谷と菜穂子は、じつは理事長の財産強奪計画をたてた箕輪に誘拐されていたことを知る。結局熊谷と菜穂子も箕輪に捕まり、酒井から金塊を奪う計画を手伝わされるが、成功しかけたところで今度は理事長の愛人朱実が金塊を持ち逃げする。さらに、金塊を積んだはずの車が途中で入れ替わり金塊が行方不明。はたして誰と誰がグルでこの計画を立てたのか、金塊の行方は・・・最後に笑うのは、二人の運命は。悪党たちが駆け回るノンストップ騙しあい小説。登場する悪党たちに計画性があるようでいてわりと杜撰、目的は金塊にあるのだが、先がまったく読めない展開に引き込まれる。また軽妙な大阪弁が面白い。教師の二人の最初の目的が変化し学校も改善されないのは納得いかないし、シリアスなサスペンスミステリーを期待するとガッカリだが軽いのりのミステリーとしては面白い。
2009年1月文藝春秋刊
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小杉 健治 著「検事・沢木正夫 共犯者 」

2009-03-22 | か行
示現流の達人でもある検事・沢木正夫を主人公にした長編検察小説・沢木正夫シリーズ第3弾!
「愛しているなら証を見せて!」昔の恋人が発した悲痛な叫びにその男は
どう答えたのか。
その男は交通事故により彼女の将来の夢を潰えさせてしまった暗い過去を持っていた。
完全犯罪をもくろんだが沢木検事の執拗な追及が始まる。
犯罪の底に潜む男女の心の闇・・・。
犯人が解っていてその犯罪のちょっとしたほころびから犯罪が動機が明らかに
なる展開にサスペンス感は薄いが最後の結末納得。
過去に沢木検事の妻が殺された未解決の事件の絡みがもっとあれば楽しめたのに
少し残念。シリーズものがだから続きに期待。
2006年 双葉社 刊
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小島正樹著「十三回忌」 

2009-03-14 | か行
舞台はある静岡の素封家一族の宇津城家、当主の妻が不審死を遂げたが、警察はこれを自殺として捜査を打ち切ってしまう。それがそもそもの始まりだった。屋形で行なわれた一周忌には「円錐形のモニュメントに真上から突き刺さった長女が」、三回忌には「首を切られた次女が木に括りつけられて」、七回忌には「唇だけ切り取られた三女が」…と忌まわしい殺人が続いていくが犯人は解らずじまい。そして12年後十三回忌を迎える。厳戒態勢のなか、やはり事件は起こったのだが・・・・。
突込みを入れたいところは沢山あるが細かいことは気にせず、このミステリーのために設定された設定空間に酔いしれて最後まで付きあうことそして作者の意図通り綺麗に騙されること。
プロローグと幕間の語り手となっている犯人らしき手記に惑わせられずに読めたら勝てるかも。
靈界から殺された娘の声が館の壁伝えに聞こえたり、鉄仮面の眼がビカッと光ったり、真夏に雪が降って列車の脱線、部屋に蝙蝠が飛んで来て一杯になるわと、一つの殺しに樣々な謎を散り張めてみせる事件の設定は後の騙しの伏線。
人間が人生が描かれていればもっと深みがあるリアル感あるミステリーになっただろうに残念。
2008年10月 原書房刊




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江宮隆之著「冬萌の朝 新・白磁の人 」

2009-02-24 | か行
日韓併合後、韓国に住み韓国人を愛し、韓国の文化を愛し、そして
韓国人に愛され韓国で40歳の生涯を閉じた実在の人物「浅川巧」の生涯を描いた
感動小説。
朝鮮白磁を通して交流を深めた日本人「浅川巧」と、ソウルの青年安舜臣。
しかしやがて舜臣は巧と決別し、朝鮮独立運動に身を投じる。
憎しみの果てに舜臣が見たものは・・・。
「暴力では何も生まれない」「憎しみからは何も生まれない」(本分よリ)
病死するクライマックスでは涙なしで読めませんでした。
魂を揺さぶる感動の物語です。
2006年 柏艪舎刊
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小手鞠るい著「レンアイ相談」 

2009-02-08 | か行
『欲しいのは、あなただけ』『エンキョリレンアイ」』
『サンカクカンケイ』他、恋愛小説の旗手として知られる女性に人気の著者が、
友人・知人・読者の恋の悩みに寄り添い励ます形で綴った恋愛結婚観。

プロローグーーー寂しくて、恋をして
①恋の落とし穴
②恋のルール・友情のルール
③不倫相談 ~忘れられない言葉たち
④アメリカの恋愛空模様
⑤気持ちのいい結婚
エピローグーーー寂しさを育てていけば

『人間関係において、最も大切にしたいと考えているのは「フェアであること」です。』
『心と心の距離を縮めることができるのは、言葉。親しき仲こそ、言葉あり。』
『気持ちのいい結婚、気持ちだけでつながっている。
  恋愛でもそう、どんな人間関係でも、それは同じこと。
  彼=私の好きな人
   結婚=好きな人と暮らしている生活。
   幸せ=自分の人生が、好き』
  あんなたの生活、人生を気持ちのいいものにできるのは、彼でもなく、
   恋愛でも、結婚でもなくて、それはあなたの気持ちだけ。』(本分よリ)
心を動かされる言葉の数々です。


2008年11月 筑摩書房刊 1470円
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喜多由布子著「アイスグリーンの恋人 」

2009-02-07 | か行
著者は、1960年北海道八雲町生まれ、2004年「買えっておいで」で第25回らいらっく文学賞受賞。
表題のアイスグリーンは積った雪影が灯りに照らされて青みがかったグリーンに映るほのかな青緑のこと。
10年前の交通事故で左腕を失うまでは名ホッケーの選手だった堂島が、今では
街金のレディスローンの社長。
ある時すすき野の飲み屋に貸し金の取立てに行った先で美里という女の子に
出会う。
23歳の美里はこの街すすき野に似合わぬ一途な女。
年の差もあり堂島は初めは気が付かなかったが何時か女の子に恋をして
しまったらしい。
そして彼女にも火事で妹を失い母親に責められると言う辛い過去があった。
『幸福の連鎖はむずかしく時間もかかる。しかし、不幸の連鎖すばやい動きで
まわりを巻き込んでいく。積み重ねた幸福を崩すのに、たぶん1秒も
いらないだろう。』
すすき野の街は周りの人間もそれぞれに痛みを抱えている。
ライラックが満開だったあの日、出会ったふたりの…。強くたしかに北国札幌すすき野を舞台に咲く純愛物語。
2006年   集英社 刊
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小森健太朗著 「魔無十夜 」

2009-01-29 | か行
今は共学となった、元女子校。2年になった春からそこの寮に入った丹崎恵は
ルームメイトからたのみごとをされる。
自殺した女子生徒の足跡を調べるうち学内にカルトめいた集団があり自殺した
女性がそれに関わっていたらしいことを知る。
やがて、学校近くのホテルで生徒が変死体で発見された。
さらにふたりの女子生徒が何者かに突き落とされ、死体は二重に折り
重なっていた。いったいこの学院では何が起こっているのか?
ホラー系ミステリー小説。
おどおどろしい事件が続けて起きるわりに萌え系女子高生が主人公なので
謎解きが中途半端、随所に挿入されたホラー小説も中途半端で消化不良な
小説の印象でした。

2006 年  原書房刊
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門井慶喜著 「天才たちの値段」

2008-12-29 | か行
鑑定眼ならぬ「鑑定舌」で真贋を見きわめる天才美術探偵、神永美有が
活躍する美術ミステリー。 本物には甘味を感じる神永。
ルネッサンス期専門の美術史学者・佐々木昭友と、天才神永が解く美術
ミステリーで、ボッティチェッリやフェルメールの新しく発見された作品や、
大航海時代の地図、涅槃図、ガラス工芸と題材も豊富で美術品ファンには
楽しめるのでは・・・
そっちのほうに関心がない人にはちょっと退屈かも・・・
しかし、どんでん返しや因縁のライバル元某国立美術館の学芸員の
清水との闘いも面白い。
2006年 文藝春秋 刊 

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黒木昭雄著「 臨界点 」

2008-12-26 | か行
元警視庁巡査部長がリアルに描いた警察小説。
東京湾晴海埠頭の沖合で元警視庁巡査部長でジャーナリストの中川一邦の死体が発見され、司法解剖での所見は殺人を示唆していたが、再度提出された「精密鑑定書」では事故死を意味する“溺死”の文字。
その為、捜査本部はわずか3日で解散した。警視庁捜査一課の楠木宗一郎警部補は一連の経過に不審を抱き、月島東署刑事・菊山エリカ、大都新聞社社会部記者・新城康之らとともに、極秘で事件の再調査を開始する。
追う者と追われる者が錯綜する中、次第に明らかになっていく事件のどす黒く暗い闇。それは日本全国を未曾有の大混乱に陥れる重大な機密だった。
フィクションなのになぜか今の警察を見事に描いている本当のことのように思えるりアル観一杯の物語。
北海道警察や岐阜県庁の裏金造りの報道を見ているとあながち架空のこととは思えない。
治安維持のためにはなくてはならない警察組織、後半暴動寸前の世の中に日本の良識を信じる著者に共感した。
2006 年 講談社刊  
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小杉健治著「親と子の旅路」

2008-11-23 | か行
法廷ミステリ-や冤罪ものが多い著者のやはり、冤罪小説。
『親が子を虐待し、子が親を殺すという目を覆いたくなるような事件が
目につき、改めて親と子の絆というものを考えないわけにはいきません
・・・・長引く不況からリストラ、賃金カットなど、厳しい時代に
・・・子供を無事に育てていけるのか、親としての責任を果たせるかという
不安の中で、何があっても子供だけは守っていかねばならないという想いが
書かせた動機です。』と
あとがきでのべているように自分の子供を守る為に犯人となる確信的冤罪者の
心情に、親子物につきものの涙無くして読めませんでした。
読み進める半ばでひょっとしたらと、ストーリ-展開が読めてきます
がラストの親子のその後まで一気に読ませる感動の冤罪小説です
2003年 双葉社 刊
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