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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

海堂尊著「螺鈿迷宮」

2008-03-26 | か行
『チーム・バチスタの栄光』が映画化され今上昇気流に乗っている著者の
このミス大賞受賞後作品第3弾。
医療界を震撼させたバチスタ・スキャンダルから1年半後の桜宮市の設定。
主人公は東城大学の医学生・天馬大吉で、実は留年を繰り返す落第生。
ある日、幼なじみの時風新報記者・葉子から介護ボランティアとして
「碧翠院桜宮病院に潜入できないか」と依頼を受ける。
桜宮病院は、老人介護センター、ホスピス施設と寺院を一体化した
複合型病院で、終末期医療の先端施設として注目を集める病院。
しかし、その経営にはたえず黒い噂があるという。
天馬はとして桜宮病院に通い始めるが、
「この病院、あまりにも人が死にすぎる」という疑念が・・・。
白鳥や姫宮看護士が登場し、随所に前作2作品とシンクロ。
終末期医療やホスピス施設に対する厚労省対応の問題点や、著者自論の
行政解剖時の死体のCT画像撮影と保存等々などを絡めた医療ミステリー。
後半意外な展開で続編に続くつもりか?・・・。

2006年 11月角川書店刊 1680円

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黒木 亮 著『貸し込み』」上・下

2008-03-13 | か行
バブル期に行なった脳梗塞患者への過剰融資で訴えられた大手都銀は、
元行員で今は米国在住の右近祐介に全責任を負わせようとする。
右近は自己の潔白とモラルなき銀行の実態を告発するべくマスコミと
有能な女性弁護士佐伯の協力を得て、全面対決のため証言台に向うが
当然、銀行は組織の体面にかけて、なりふり構わぬ戦いを挑んできた。
小説の形ではあるがモデルとなっているのが・・・脳梗塞で痴呆状態に
なった資産家に対する旧三和銀行の融資について夫人が無効を訴えた
所謂24億円不正融資裁判のことだろう。
著者の黒木氏は以前三和銀行に勤めていたにも関らず、原告側に立って
証言をした為大きな反響を呼んだようだ。
読んでいると、メガバンクがいかに無茶苦茶な融資をしてきたか、また
日本の司法制度の問題点が解り面白い。真相とお金の行方がミステリー
になっており、後半裏に実に奇怪な真相が隠されていたことがあきらかになる。
裁判所での証言場面はお互いの心理戦で特に面白い。
『「日本の裁判は偽証罪が問われることはほとんどなく、嘘のつき合いだ」
欧米の偽証罪は重罪「正義の実現を妨害する罪」』(本文より)


2007年角川書店刊 各1480円
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小杉健治著「もう一度会いたい」

2008-03-08 | か行
26歳の対人恐怖症でひきこもりの白木悟史は、ある夜アルツハイマーを
患っている源一郎という老人と出会う。
やがて何度か再会するうちに老人が会いたがっている40年前の恋人の
捜索を始めることを自らのひきこもり脱出・再生と位置づけ、家族の協力
もと始めるが・・・
老人の会いたい人は自殺していたことがわかる。
自殺の原因を調べるうちに明らかになる事実とは・・・
ミステリー性のある展開で引き込まれるが
自殺のからくりが途中で解ってしまって残念。
しかし、ひきこもりからの再生の物語として感動作になっている。

2007年1月日本放送出版協会 刊 1785円

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久保寺健彦著『ブラック・ジャック・キッド』

2008-03-06 | か行
2007年第19回 日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞受賞作
手塚治虫作漫画のブラック・ジャックにあこがれて、ブラック・ジャック
になりたいおれ(織田和也)の、
小学校時代黒いスーツに黒いレインコートを着て、その下に白いワイシャツと
黒いボーロータイをしている。
ヘアスタイルもブラックジャックと同じにするためにヘアスプレーで
毎日かためていた。
やがて看護師の母親は家を出て行き両親は離婚しちゃったし小学校は転校し
友だちとも別れたたけれど、ブラック・ジャックに対する気持ちは変らない。
転校した学校で新しく友だちになったのは
少女漫画好きの内気な宮内君。そして、小説好きで眼鏡を外すと超綺麗な泉さん。
大人から見れば小さな事件や些細な出来事だけどあの時は大きな冒険だった。
ファンタジーでほろ苦で、少年期への懐古的な小説です。


2007年11月新潮社刊 1365円
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上岡 伸雄著『この風にトライ』

2008-03-02 | か行
熱血先生、小学生にラグビーを教える!
ぼくは(治生)は、都心を少し離れたところに住む、ごく普通の小学生。
6年生の新学期ぼくのクラスに熊のようにでっかい先生が新任
としてやってきた。
元ラガーの先生は、小学生にラグビーを教えるのが信条だとか・・・
おかげで体育の授業はラグビーばかり。
国語は詩を覚えて声に出して読ませるだけ。
主人公のはるおは中学受験にそなえて塾に通っている。
そしてクラスにはいじめがあるし、人間関係だって大変なんだ。
体当たりの先生はアッシーとあだ名がつけられた。やがて嫌がっていた小学生用の
タッチラグビーの練習を繰り返していくうちに、トライの爽快さも
経験したし勝利の喜びも得た。
やがてチームプレーでなければ勝てないしみんなと協力することを知っていく。
おかげで少しずつクラスの様子も変わってきて。
ちょっぴりラグビーも好きになってきたし・・・
治生と先生の視点で書かれた熱血教師と少年少女の心和む物語。
イジメ克服物語。今の教育現場はうるさいPTAもいるし大変だが
こんな信念をもった熱血先生がいたら子供達は幸せだと思う。
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垣根涼介著 『借金取りの王子』

2008-03-01 | か行
リストラ請負会社員村上真介の『君たちに明日はない』の続編
5つ連作短編集
村上真介は今日もリストラを請負った会社に乗り込みリストラの面接を・・・
表題の「借金取りの王子」は、サラ金に勤める心優しき店長にも
リストラの風がしかしこの店長には男と女の泣ける愛情裏話があった。
「二億円の女」デパートの外商部にも人員削減計画が・・・おじさんばかりの
職場で年間二億円の売上目標をクリアーしている女が・・・もうダメ。
私だって限界よ! 
「女難の相」生命保険会社に勤める36歳独身男、女の生保にあって何故か
女性が大苦手・・・
「山里の女」北陸地方の温泉ホテルのリストラで、相性バッチリだが
恐ろしく気の強い女、すんなり結婚とはいかないし年上の恋人
陽子と同伴で偵察に出かけたが・・・
「人にやさしく」真介の提案でリストラの仕事と同時に人材派遣会社を
立ち上げたが・・・
昨日はデパート今日はサラ金、明日は生保に乗り込んで、泣かれたり、
殴られたり。
真介の前にはいつも難題山積みだけど明日は来る。
しかしリストラされるサラーリーマンには・・・
他人事でないリストラ話に思わず涙、涙。
今の日本の現実をリアルに描く、恋と仕事の傑作小説。
2007年9月新潮社刊  1575円
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久保寺健彦著『みなさん、さようなら』

2008-02-28 | か行
著者の久保寺健彦さんは、この小説で第1回パピルス新人賞
(ジャンル不問、この時期に読まれる必然性をそなえていること)受賞
高度成長期にはあっちこっちに出来た団地、いまでは過疎化と高齢化が進む団地。
この本はは陰りが見えはじめた80―90年代の都営団地を舞台にした物語です。
物心ついたときから5階建て19棟の都営芙六第二団地に住み、
団地内の小学校を卒業し、団地から一歩も出ることなく暮らすと
決めた母子家庭で母親のヒーさんと暮らす渡会悟が主人公。
団地の中には何でもあった。コミュニティーセンターと呼ばれる施設の
中には遊戯室もトレーニングルームも視聴覚室も図書室もあり、
保育園も商店も郵便局も診療所も。
悟はある事件がきっかけで団地の外にある中学校へは一度も
登校せず不登校で通す。
団地の中で身体を鍛え、団地の図書室で知識を得、団地内のケーキ屋に就職し、
団地の中で恋愛をして婚約にもこぎつける仕事も友達も恋人もなんでも
団地の中で調達してしまう。
悟の日課は小学校を卒業した年から30歳になるまでの17年間、
団地の中を同じ団地に住む107人の同窓生の無事をパトロール
して歩くことだった。
しかしどんどん外に転出して行く同窓生達。
やがて明らかになるなぜ彼が団地の外に出られなくなったのかのその理由。
社会性を備えた青春物語でもあり、ミステリー性もあり
引き込まれるように一気に読めました。
今後が楽しみな作家の登場です。
2007年11月幻冬舎刊 ¥ 1,575
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海堂尊著『夢見る黄金地球儀』

2008-02-25 | か行
舞台は2013年の近未来。首都圏の端っこに位置する桜宮市には
その昔「ふるさと創生基金の1億円」で造られた黄金の地球儀が
桜宮アクアリウムの海洋館で一般に公開されていた。
今では寂れた水族館にひっそり置かれているだけとなっていたはずだった
黄金の地球儀を狙う奴等が。
町工場営業部長でトラブル招聘体質の男・平沼平介のもとに8年ぶりに
現れた悪友ジョーがやって来て黄金地球儀奪取作戦が始じまった。
二転三転四転する計画が・・・、用意周到の計画の筈が知らぬ間に様々な
ドタバタ危機を引き寄せて、そして後・・・。
映画『チーム・バチスタの栄光』も公開され原作者の抱腹絶倒の
ユーモア小説全開。
登場人物達もなかなかクセもの揃いで病院のある桜宮市の近未来を
舞台に地方財政破綻問題や役人体質批判など笑える娯楽作品だっけど
著者にとっては今までの病院物と違って大分手抜きが窺える感大。

2007年10月 東京創元社刊 1575円
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梶尾真治著「悲しき人形つかい」

2008-02-22 | か行
ホーキング博士に肉体の自由を取り戻してもらおうと意識で体を動かす
BF(ボディフレーム『脳波誘導ボディフレーム』)
の研究に専念する機敷埜風天ことフーテンと彼と社会を繋ぐ窓口
のような中岡祐介。
騒音のクレームがついて引越した先は二組のやくざ北村組と藤野会
の権力争いで
抗争を繰り返す寂れた地域。
ヤクザの下っ端で高校の同級生ヒロに頼まれた親分の弾除けの最中、
突然病死してしまった北村組の親分。
組の報復を恐れてフーテンが考えたのは、親分を「生きている」と見せて
おく為にBFを使って生きているように見せかけることだった。
組事務所まで無事ばれずに済んだと安堵した二人に翌朝、組からとんでもない
依頼が来て抗争トラブルに巻き込まれることに・・・。
軽い着想とリアル感のない内容で、人物も書き込み不足あまり楽しめ
ませんでした。
「黄泉がえり」の作者のB級ドタバタユーモア小説。
2007年2月 光文社刊  1680円
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木宮条太郎著 「占拠ダンス」

2008-02-15 | か行
邦和信託銀行神田支店が一社員の立て篭もりによって営業
できない状態となった。 
一人ストライキを明言する犯人は、
銀行の恥部が詰まったデータをマスコミに公開すると脅しをかけて
銀行経営陣に揺さぶりをかけようとし、その交渉役に
6年前の金融危機で袂を別った同期の古賀を指名する。 
15年間の金融機関勤務経験を持ち金融危機を経験した著者が描く、
銀行残酷物語。
金融危機、債権回収、合併メガバンク化という金融再編のうねりの中、
融資を請けれず自ら命を断った中小企業経営者、
会社にしがみ付いて生き残る銀行マンとその家庭。そしてその恋人たち
との個々のエピソードも絡んで占拠がどうなるか、どう決着着けるのかと
興味深く読むことが出来た。
最終的には、何も変らず登場する人物達は巨大なシステムの中で
個々に身を処して終るので不完全燃焼の感が否めないが
痛快ブラックユーモア小説かも。

2007年7月幻冬舎刊. 価格:1,680円
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桐谷 正 著「楚国簒奪 李園の野望」

2008-02-14 | か行
カテゴリー 的には歴史小説です。
秦の始皇帝による中華統一の前夜の同時期、趙舞に秀でた
絶世の美女・妹を楚の後宮に送り込み実権を掌握せんとする
李園の野望(王権簒奪に到る道筋)を描く長編歴史小説。
秦で有名な権力者呂不韋は、もともとは一介の商人で、自分の子を
身ごもった女を秦の公子に贈って、彼の子と思わせることに成功し
やがてこの子供が、秦の始皇帝になる。
趙の貧乏学生だった李園は、妹・舜華の美貌を利用して同じように
出世しようと考える。楚の政治家・春申君の食客となって、舜華を
一旦は春申君のもとに嫁がせ、
彼の子を身ごもった時点で楚王・考烈王に贈らせた。
考烈王は彼女を寵愛し、彼女が子・悍を生むと、疑いをもたず
考烈王は悍を太子とする。
一人一人の人物の描き方に不満が残るが南方の民話などを
挿入して娯楽度満足させる古代中国ものです。


2002年6月 祥伝社刊  
☆ ☆ ☆☆☆ ☆ ☆
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小手鞠るい著「恋するからだ」

2008-01-25 | か行
主人公は高校を出たあと就職して働きながら夜間大学を
去年卒業して今はデパートの店員のアユ。
常夏の島ハワイを舞台に、ハワイ生まれの日系アメリカ人の
キュートな女の子・アユ
不倫交際中の友だちコナや幼馴染のボーイフレンド・シャークも
居るし憧れの年上の彼の存在も・・・
アユ が本物の愛を求めて、そして辿りついたのは?
『誰かのために生きるということが、自分のために生きることと重なればいい』
恋愛小説巧者の著者が女性向けに書いたとびっきりの
ガールズ・ラブ・スートー 。
徳間書店2007年9月刊1470円
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小手鞠 るい著「あなたとわたしの物語 」

2008-01-16 | か行
女性の立場から書かれた一瞬の官能のきらめきを感じさせる
大人の恋愛小説短編集。
恋が毒なのは知っています。やみつきになりますから。至上の恋愛小説。
男と女の気持ちの差や違いが解って面白い。

●恋という名の欲望
恋に変貌した欲望。別れたばかりの男に送った真心の携帯メールに
帰ってきた返事に優しい嘘が欲しかった。
●情熱の法則
「情熱に従い、熱い想いに正直に生きるということはとても
素晴らしいことです。
気持ちのいいことだけど、情熱のおもむくままに生きれば、
人はあとで必ず、その情熱から復讐される。」
「情熱が走り始めるためには、均衡が破られなくてはならない。
一方の情熱がもう片方を遥かに上回っていなくては。」(本文より)
●海に対する気持ち
陶芸家の先生との同性愛の果てに、訪れた癌に侵された相手との別れ。
●光と影の約束
不倫の関係を解消して、新たな恋人と一歩を踏み出す・・・
●風のような記憶
44歳の主婦が家庭教師を引き受けた男の学生と溺れ・・・
●空飛ぶ魚
「人には、できることもあれば、できないこともある。
できないことは絶対できない。だから、できないことを無理矢理よろうとして、
自分を追い詰めるよりは、同じその時間を、できること方に費やすべきだ。」
(本分よリ)
恋愛と官能は、表裏一体、清らかで美しい5つの短編集

徳間書店2006年4月刊 1260円
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黒藪次男著「凍土」

2008-01-12 | か行
著者は、1922年生まれ 学徒兵として 中国戦線へそして終戦。
シベリア抑留生活を経て1948年復員後34年間小学校の教員を
勤め現在癌治療の後遺症に苦しみながらシベリア抑留時代の
事を書きとめるべく小説に・・・半世紀たった今でもシベリア
に連れ戻される夢を見るとか。
生と死と愛について極寒のシベリア抑留生活体験者ならではの
リアリティーあふれる筆使いで感動物。何人もの同僚が死んでいく
中で希望とユーモアを忘れず帰国を信じ生き抜いた(著者)主人公
の体験は日本版「夜と霧」

出版社 碧天舎 2004年11月刊  値段 ¥1600

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河原れん著 「瞬」

2008-01-03 | か行
1980年京都生まれ上智大学卒の著者は写真で見るとかなり美人
それだけで読んでみる気になりました。
主人公泉美は、恋人の惇のバイクに同乗していて事故に遭う。
その事故で恋人の惇を亡くした泉美は、その時の記憶を
どうしても思い出すことができないでいた。
失われた記憶「彼の最期」を取り戻すため、泉美はメンタルクリニック
で偶然であった女性弁護士に調査を依頼するが・・・。
恋人の最後を思い出した時泉美は・・・自らの再生と小さな希望が・・・
事実を受け入れることへの葛藤、深い心理描写で淡々と
書かれているのだが、それでいて辛辣。
情景描写が的確で頭に容易に想像できるリアルな文体。
ミステリアスな展開で
一気に読める小説です。

幻冬舎2007年3月刊,1470円
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