「子供たちの武器である金の角は、大人たちにとっては、未来を指し示す希望の光。」(P255)「サッカーをやめて、塾に通いたい」戸田俊介は、突然、両親にそう打ち明ける。一念発起して勉強を始め10ヶ月後に日本最難関と言われる国立の中学を受験したいのだと。父親が高卒の車の営業マン、母親が高校中退の専業主婦、難聴の妹・美音の小学校入学を控え、家計も厳しい中、息子の夢を応援することを両親は決意。俊介の塾通いが始まる。だが、彼には誰にも言えない「秘密」があった・・・・。俊介の頑張りに周囲も変化していく。第一章は母親の視点で第2章は俊介の視点で、第3章は可地先生の視点で語られるのだが、塾の講師の加地先生が良い。自分の背負う物の影響か可地はいう「受験そのものより、勉強することを通して子どもたちに生きる力を身につけてほしい」と。「努力することの確実さを、・・・・勉強は努力を学ぶのに一番適した分野だ。学力は人生を裏切らない。到達点はもちろん人それぞれ違うものだが、勉強に関していえば、努力すれば必ず結果がついてくる。」(P218)人は挑むことで自分を変えることができる。これは未来を切り開こうと奮闘する人々を描いた感動の小説です。格差社会の現代社会は、昔と比べ余裕がない。若い人には『武器』を持って社会に出てほしい。また「恵まれた能力を自分だけのものとせず、多くの人にも分けてあげてほしい」(P247)
2021年5月集英社文庫刊
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