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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

藤岡陽子著「金の角持つ子どもたち」

2023-08-12 | は行
 「子供たちの武器である金の角は、大人たちにとっては、未来を指し示す希望の光。」(P255)「サッカーをやめて、塾に通いたい」戸田俊介は、突然、両親にそう打ち明ける。一念発起して勉強を始め10ヶ月後に日本最難関と言われる国立の中学を受験したいのだと。父親が高卒の車の営業マン、母親が高校中退の専業主婦、難聴の妹・美音の小学校入学を控え、家計も厳しい中、息子の夢を応援することを両親は決意。俊介の塾通いが始まる。だが、彼には誰にも言えない「秘密」があった・・・・。俊介の頑張りに周囲も変化していく。第一章は母親の視点で第2章は俊介の視点で、第3章は可地先生の視点で語られるのだが、塾の講師の加地先生が良い。自分の背負う物の影響か可地はいう「受験そのものより、勉強することを通して子どもたちに生きる力を身につけてほしい」と。「努力することの確実さを、・・・・勉強は努力を学ぶのに一番適した分野だ。学力は人生を裏切らない。到達点はもちろん人それぞれ違うものだが、勉強に関していえば、努力すれば必ず結果がついてくる。」(P218)人は挑むことで自分を変えることができる。これは未来を切り開こうと奮闘する人々を描いた感動の小説です。格差社会の現代社会は、昔と比べ余裕がない。若い人には『武器』を持って社会に出てほしい。また「恵まれた能力を自分だけのものとせず、多くの人にも分けてあげてほしい」(P247)
2021年5月集英社文庫刊
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早見和真著「新! 店長がバカすぎて」

2023-06-26 | は行
「店長がバカすぎて」の続編。前作より3年後、主人公の谷原京子は、「武蔵野書店」吉祥寺本店の正社員になり、九州の転勤から帰りレベルアップした山本猛店長が今回もイライラさせる。今回も登場人物の特異なキャラクターに呆れて、笑ったが続編では「ムカムカ」感が少し残る展開。「書店あるある」の出来事も新しさは見当たらず前作よりダウン。コロナ禍に新メニューに取り組む親父さんがガンバっているのがよかった。だが、ネットで読めて何でも手に入る現代、小説と書店の未来を、仕事の意味を、生きる希望を改めて考えさせられた。
2022年9月角川春樹事務所刊


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早見和真著「店長がバカすぎて」

2023-06-17 | は行
主人公の谷原京子は、28歳。独身。とにかく本が好き。現在、「武蔵野書店」吉祥寺本店の契約社員。山本猛(たける)という名前ばかり勇ましい、「非」敏腕店長の元、文芸書の担当として、次から次へとトラブルに遭いながらも、日々忙しく働いているは、あこがれの先輩書店員小柳真理さんの存在が心の支えだ。そんなある日、小柳さんから、店を辞めることになったと言われ・・・。本屋の店員さんの日常の出来事が細かく描かれて「店長がバカすぎる」という小説が発売されその著者は誰かという、著者が明らかになるまでを描かれています。新人作家の才能に出逢い、打ちのめされ、 好きな作家の新作に心躍らせ、時には泣き、笑い、怒り、日々戦って、小説と書店の未来を、仕事の意味を、生きる希望が込められているほっこり系のお仕事小説です。続編も出ているようですから読んでみたい。
2019年7月角川春樹事務所刊

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深町秋生著「探偵は田園をゆく」

2023-06-14 | は行
探偵物のハードボイルドミステリー、シングルマザー探偵第2弾。主人公の椎名留美は元警官。山形市に娘と二人で暮らし、探偵業を営んでいる。便利屋のような依頼も断らない。ある日、風俗の送迎ドライバーの仕事を通じて知り合った女から、息子の捜索を依頼される。
息子の部屋の 遺留品を調べた留美は一人の女に辿り着く。地域に密着した慈善活動で知名度を上げたその女は、市議会への進出も噂されている。彼女が人捜しの手がかりを握っているのか。・・・調査を始め彼女を直接訪ねると彼女の脇を固めるヤクザな男たちが出現し・・・、タフなシングルマザー探偵の活躍物語で、時々ハードボイルドだが、ゴテゴテの山形弁がふんわり全体を包みコミカルな感じもするミステリ。結末の真相はちょっと切なくて物哀しいが、続編が楽しみな物語りでした。
2023年2月光文社刊


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馳星周著「月の王」

2023-04-12 | は行
パワーバイオレンスとファンタジー、日本古来の歴史まで含めたアクション小説。第2次世界大戦前の上海。帝国陸軍特務機関所属の伊那雄一郎は、田辺少佐から緊急招集を受け、伝えられたのは、駆け落ちした華族令嬢・一条綾子の身柄を、各国の特務機関や蒋介石隷下の藍衣社に先んじて確保せよという密命だった。しかも、皇室から直接派遣された謎の男・大神明と共に遂行せよという。渋りながらも拝命した伊那であったが、藍衣社の異能戦闘集団を率いる杜龍と四天王に急襲される。死地を救ったのは、身に「月」を背負って人間を遥かに凌駕した膂力で戦う、大神であった。やがて、各国の特務機関やマフィアの青幇をも巻き込み、上海租界を血の暴風が吹き荒れる。細かなことは気にしない 無敵・不死身・殺戮・転生・そして変身バトル。皇家の血を引く令嬢の救出ミッションを帯びた狼の血を引く月の王、大神。日本軍の間諜、伊那と共にミッションを遂行する。
 人間ならざる者たちの妖気バトルはリアリティを越えてしまった。アニメかコミック劇画を見ているような。狼の大神と竜の杜龍の対決に至っては、アニメしか描けない。
2022年4月KADOKAWA刊

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本城雅人著「にごりの月に誘われて」

2023-02-09 | は行
出版界の闇に切り込むミステリ。IT企業の会長・釜田芳人から自叙伝の代筆の依頼を受けた、フリーライター・上阪傑。余命半年だという釜田とは、11年前ゴーストライター執筆時の支払いトラブル・重版分の印税を払ってもらえなかった過去があったのに再度依頼してくるのは何故なのかと疑問が湧く。取材を進めるにつれ、これまで明かしてこなかった創業時のエピソードの連続に驚く、と同時に今までの本の内容に嘘があったことがわかって来る。この依頼の裏に何かがあるのではと疑念は深まっていく。「会社の後継者問題」「隠蔽し続けた過去」「古い友人との因縁」「出生の秘密」などがそれぞれの当事者によって丁寧に語られて行きますが、これは個人のサクセスストリーの展開かと思ったがラストでしっかりミステリとしての意外な顛末が用意されていました。
2022年4月東京創元社刊

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本多孝好著「アフター・サイレンス」

2022-09-21 | は行
主人公は、大学の心理学研究室に籍を置く高階唯子(たかしなゆいこ)。県警の「被害者支援室」だけではカバーしきれないカウンセリングを受け持つ臨床心理士であり、国家資格の公認心理師でもある。彼女が担当したクライエントそれぞれのドラマと、彼女自身のドラマが絡まり合って、物語は連作短編で 展開される。警察専門のカウンセラー高階唯子の仕事は、事件被害者やその家族のケアをすることだ。夫を殺されたのに自分こそ罰を受けるべきだという妻。・・・「二つ目の傷痕」。ペルー出身の日系三世の両親から生まれた日本国籍の兄弟、ひき逃げ事件で兄を亡くした青年、アキラがクライエントだ。彼の両親は南米日系人で、兄弟は母国を知らずに日本で育った。・・・「獣と生きる」。回復が見込めない四半世紀前に起きた未解決事件の被害者の父親と向き合う・・・「夜の影」。誘拐犯をかばい嘘の証言をする少女。・・・「迷い子の足跡」。傷から快復したはずなのに、姉を殺した加害者に七年後の復讐をした少年・・・「ほとりを離れる」。実は唯子も、事件によって人生を壊された人物だ。高校二年生だった15年前に、父親が罪を犯し服役中だ。以降、唯子は事件の加害者に対して極論と言える考えを持ちつつ、加害者の家族に背を向けた世間の中にも入れず、光のない日常を生き、仕事に取り組んできた。被害者や家族の秘められた思い(沈黙)と、加害者の家族である唯子の沈黙が、物語を通して絡み合う。人が犯した罪と罰に、同時にむきあうことになるからだ。多くを語らないクライエントが抱える痛みと謎を解決するため、唯子は奔走する。唯子が心を寄り添わせるのは、犯罪被害者の遺族だが、同時に加害者家族にも焦点が合わせられている。殺人が許されない罪であることは間違いがないが・・・では、その罪に見合う罰とは何か。極刑なのか?仇討ち的な復讐なのか?被害者、加害者、双方の家族が心に抱えてしまう痛みと傷は、一朝一夕に癒えることなどない。けれどもいつか、癒えずとも、許し許される日が来ることもあるのではないか。来て欲しいという希望。そんな著者の祈りにも似た声が聞こえるようだ。絶望の淵で、人は誰を想い、何を願うのか。そして長い沈黙の後に訪れる、小さいけれど確かな希望が読後の救いだった。『大切な人が殺された時、あなたは何を望みますか』の問いかけに考えさせられた。
『今日を普通に生きていれば、普通の明日がやってくる。だから、今日を普通に生きられる。犯罪は、特に人殺しは、そのルールを壊す』(P296)。
2021年9月集英社刊    

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福田和代著「スパイコードW」

2022-07-20 | は行
コロナ禍で欧米の影響力が低下した近未来の東アジアの世界。習近平の後、強力な新指導者「薫 日告 然」が中国の権力を掌握し、遂に長年計画していた台湾への武力侵攻に乗り出そうとする。アジア発の世界大戦を防ぐため、旧日本軍最後の特務機関“Ω(オメガ)”が作戦を開始。各地に潜入していた“Ω”のエージェントたちが台湾侵攻阻止のミッションに挑む。彼らの武器は知恵とトリック。世界の平和を賭けて、覇権国家中国をダマしきれるのか、彼らは台湾、そして世界の危機を救うことが可能かと物語が展開される。新聞記者の牛玉渉は、元中国人の母から決して中国には行かないように言い聞かされていたが策略によって鈴木の偽名で中国に入国することに・・・。スパイたちの一度限りの宴が始まった。仕掛けられた切り札「W」とは・・・。近未来とは言え荒唐無稽な設定と展開についていけなかった。
2022年5月KADOKAWA刊
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福田和代著「繭の季節が始まる」

2022-07-17 | は行
近未来SFミステリ小説。新型コロナウィルスでパンデミックを経験したこの国では、大きな被害をもたらす可能性があるウィルスの感染拡大が始まると、「ロックダウン」とも呼ばれるウィルスに対抗するため、強制的な巣ごもり=繭が日常となっていた。しかし、外に出なければならない者もいる。七曜市の七曜駅前交番に勤務する警察官の水瀬アキオもその一人だ。最低限の警官は「繭」に入らず、フルフェースのヘルメットを被り巡回パトロールをします。人々が部屋にこもっているはずの街で、不可解な死体が見つかったり、ビスケット工場が動いていたり・・・非接触の世界で起こる事件、巡回パトロール中に見つけた比較的小さな事件をアキオと猫型警察ロボの相棒・咲良が真相に迫る5話のミステリです。繭の期間を決めるのはAIで政府は微調整するだけ、街中は配達ロボが走り回り、犬の散歩だけは2ブロックの範囲内で許可を得た一人のみが決められた時間だけ許される。奇妙なルールの近未来世界の侘しくて寂しい世界の話はとても笑えない世界でした。
2022年2月光文社刊


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深町秋生著「ファズイーター」

2022-07-12 | は行
「組織犯罪対策課 八神瑛子」シリーズ第5弾。
手段を選ばない捜査で数々の犯人を逮捕してきた八神。警視庁上野署の若手署員がナイフを持った男に襲われ、品川では元警官が銃弾に倒れた。いずれも犯人は捕まっていない。一方、指定暴力団の印旛会も幹部の事故死や失踪が続き、混乱を極めていた。組織犯罪対策課の八神瑛子は傘下の千波組の関与を疑う。数ヶ月前から、ご法度の薬物密売に突然手を出し、荒稼ぎしているからだ。裏社会からも情報を得て、カネで飼い慣らした元刑事も使いながら、真相に近づいていく八神。だがそのとき、彼女自身が何者かに急襲された・・・。無法地帯と化した襲撃場面とか何でもありのB級アクションの展開で警官に対する不満,悪徳警察官に対する天誅みたいなストーリーもあり、彼女の周りの英麗、里見ちゃんといった女性達の活躍や署長の富永の変化など面白かった。
2022年3月幻冬舎刊

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本城雅人著「四十過ぎたら出世が仕事」

2022-07-05 | は行
中和エージェンシーという広告代理店で働く中間管理職達の奮闘を描いたサラリーマン小説。「内示だ。四月から営業三課の課長になってもらうよ」四十歳で課長に昇進した阿南智広は、着任早々に前代未聞のトラブルを抱える。・・・第一話「ピンチの後には」。阿南の同期で三年前から課長を務める石渡泰之は、無能な上司に怒りが収まらない。・・・「急がば回れ」。中途入社組で阿南と同い年、新任課長の和田果穂には、誰にも言えない秘密があった。・・・「正義のランナー」。同期では唯一総務畑に進み、社長秘書となった吉本検司は、近頃なぜか社長から冷遇される。・・・「名言奉行」。平松透は、創業社長の息子であることを一切笠に着ず頑張るものの、失敗続きで・・・「ボンの心得」。企業回収・企業合併・・・第6話「不惑になれば」。広告代理店で働く六人の視点から描かれる、管理職を主人公にした連作物。同じ節目を迎えた仲間と悩み、ぶつかりながらの奮闘する彼等達。仕事とは何かという根本的なことを再認識してくれた小説でした。
2021年12月祥伝社刊

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誉田哲也著「妖の掟」

2022-06-21 | は行
SF・サスペンスホラー伝奇小説。2002年『ダークサイド・エンジェル紅鈴 妖の華』第2回ムー伝奇ノベルス大賞優秀賞受賞作の続編らしい。日本のバンパイア闇神と人間のドラマ。愛情と優しさ、強さに弱さ。色んな心情の織り成す情景や力を持った人間の哀れさと死なない人間の悲しさそして許されない愛のせつなさなどが表現された小説。
盗聴器の仕掛けがバレて、ヤクザに袋叩きにあう辰巳圭一を気まぐれで助けたのは、坊主頭の欣治と人形と見紛う美貌の持ち主、紅鈴だった。借金まみれの圭一の部屋に転がり込んだ二人にはある秘密があった。・・・吸血鬼、「闇神の掟」「介座の剣」等物語の設定に興味が持てて読み進めた。妖艶さとグロさ、エロ、ユーモアの伝奇小説でした。最終章で紅鈴だけが残されたのは続編があるのかもと思う。原点である「妖の華」は読んでいないので機会があったら読んでみたい。
2020年5月文藝春秋社刊

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本城雅人著「黙約のメス」

2022-05-18 | は行
臓器移植をテーマの本格医療小説。「脳死」脳死者が出るのを待つか、生存者から肝移植を行うのか・・・。毒だらけの日本の医療界に、孤高の外科医がメスを入れる。臓器移植のスペシャリストである主人公鬼塚鋭臣医師について、研修医、看護師、医療ジャーナリスト、病院経営者や移植コーディネーターなど彼のまわりを取り囲む様々な人たちの視点から描かれています。主人公ははたして善か悪なのか。仮に本人が臓器提供を意思表示しても、心臓が止まるまで家族が延命治療を望むケースの多い日本では、脳死が死であるという考え方になかなかなじめず、「治る可能性があるかもしれないのに、それを捨てて他の人に臓器を移植することは、患者本人を見殺しにする」という考えが主流かもしれません。そもそも銃社会である米国に比べて脳死ドナーの出る数も少なく、さらにキリスト教圏とは死生観も異なります。こういう背景で、問われる生体肝移植か、脳死肝移植かという選択。そのどちらを選ぶべきかという「日本人の死生観」を問う内容と共に、研修医が医療ミスの責任をとらされる医療界の現実や、看護師たちの怒り、病院に蔓延る権力闘争、法案成立にしがみつく厚労技官の様、病院経営に隠されたお金の流れと海外や政治家との癒着など、現代日本の医療界の問題点に鋭く切り込んだ医療小説でした。「メスを入れれば患者の体はもう二度ときれいな体には戻れない。」(P10)主人公の治療に対する固い信念や、謎だった過去が明らかになる、しっかりとした人間ドラマでもありました。
2021年10月新潮社刊

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福田和代著「ディープフェイク」

2022-04-26 | は行
一人の「普通」の人間が追い詰められ、仕事、家庭、社会的信用・・・全てを失っていくさまをリアルに描きつつ、昨今のSNSでの炎上や匿名による誹謗中傷、メディアの報道のあり方などの問題点を指摘したサスペンス小説。
ディープフェイク(deepfake)とは、「深層学習(deep learning)」と「偽物(fake)」を組み合わせた混成語で、人工知能にもとづく人物画像合成の技術を指す。画像や動画の一部を交換させる技術のこと。既存の画像と映像を、元となる画像または映像に重ね合わせて、結合することで生成される。 既存と元の映像を結合することにより、実際には起こっていない出来事で行動している1人あるいは複数人の偽の映像が生み出されることとなる。
中学教師湯川鉄夫は過去、生徒間の事件を解決したことからメディアに取り上げられ、「鉄腕先生」と呼ばれて、TVのコメンテーターとしても活躍する。彼はある日、自分が女生徒とホテルで密会したという週刊誌報道が流れていることを知る。さらに、「ディープフェイク」で精巧につくられた、湯川が生徒に暴力を振るっている動画もネット上に拡散されて、出勤停止、テレビ番組の降板、さらに妻子もが家を出ていくことに。またネット上では湯川に対する大炎上が巻き起こる。果たして、湯川を陥れようとしているのは誰なのか。そんななか、湯川の働く学校ではさらなる事件が起き・・・。
誰にでも起きる可能性がテーマで一気読みができました。怖い世の中です。露のウクライナ侵略の映像でもフェィク映像が作られ流されて真実を知るのが難しい世の中です。
2021年10月PHP研究所刊

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深谷忠記著「執 行」

2022-04-09 | は行
文京区千駄木の神社境内で1人の男が殺された。被害者は次期検事総長の椅子が確実だと言われていた東京高検検事長の梶田淳夫と判明。妻の話では、梶田は退勤後、九州から上京した高校時代の友人・久住に会う予定だったらしい。 久住に連絡を取ると、確かに梶田とは会ったが早い時間に別れており、梶田は急用があると言い、赤坂へ向かったという。 赤坂へ向かったはずの梶田はなぜ文京区にいたのか? 誰に会いに行ったのか?一方堀田市で起きた幼女誘拐殺人事件「堀田事件」の犯人として死刑判決を受けた赤江修一。彼は無実を主張したが、控訴、上告とも棄却され、判決確定後、わずか二年で刑を執行された。それから六年後――亡き赤江に代わり再審請求中の堀田事件弁護団宛に、真犯人を名乗る「山川夏夫」から手紙が届く。さらに一年後に届いた二通目の手紙の中には、犯人のものだという毛髪が入っていた。弁護団の須永英典弁護士は手紙の差出人を突き止めるべく、新聞記者の荒木らと調査を開始する。調査が進むにつれ、日本の刑事司法の根幹を揺るがす計略が浮かび上がる・・・。繋がりが見えない2つの事件と出来事、実は繋がっていたのだが・・・。
殺人事件の捜査の現代と、過去2つの物語が進行して無関係のはずの両者が交錯するとき、驚愕の事実が明らかになる死刑制度や冤罪について取り上げたミステリー。500頁の長編ですが丁寧な心理描写等飽きずにラストまで読めました。
2021年8月徳間書店刊
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