メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

少年少女サスペンス冒険 7 真昼のゆうれい シド・フライシュマン/著 学研

2023-07-14 15:12:18 | 
1976年初版 久保田輝男/訳 長尾みのる/絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


軽快な落語を聞いているような文体
海賊言葉を原文で読んだらどんな感じなんだろう?

作者は実際、荒くれ者と航海をしたことがあるのでは?と思わせるような
イキイキとした宝さがしの物語

主人公の少年の母の話は出てこないけれども
捕鯨のために3年も海に出たきりの夫を待つ妻はたまったもんじゃないな


【内容抜粋メモ】

登場人物
オリバー・フィンチ 12歳
ケティおばさん ナンタケットの料理屋「銛うち亭」のおかみさん
アイザイア・フィンチ オリバーの父 捕鯨船の船長
ジブブーム 片目の猫

やさしいモリー嬢号 血の手号
スクラッチ船長 海賊船の赤ひげ船長
ジョン・リングローズ 石頭の航海士
かぼちゃのジャック 正直者の二等航海士
紅海出のハジ
人食い族の水夫長
ジャックだんな 血の手号の元船長

ビリー・ボンベー 真夜中に生まれた海賊




●やさしいモリー嬢号
オリバーの父は捕鯨船の船長で、横帆船「キャプリコーン号」に乗り
ナンタケットを出て3年以上も帰らない
今日帰るのでは?と毎日海を見ているオリバー

ナンタケットの料理屋「銛うち亭」のケティおばさんは
桶屋のウィックスがオリバーを小僧にしたいと言ってると伝えるが
父のような船長になりたいオリバーは反対する

「やさしいモリー嬢号」と書かれたおんぼろ船が港に泊まり
赤ひげのスクラッチ船長が銛うち亭に入ってくる







中国語の新聞を間違えて渡しても気づかないのを見て
読み書きができないと分かる

ケティおばさんがオリバーは真夜中の12時きっかりに産まれたと話すと
急に興味を持つスクラッチ船長

これまで出会った中で夜の12時に生まれたのはビリー・ボンベーだけだが
逃げ出してからずっと探している

その夜、船までよせなべ料理を持ってこいと注文があり
オリバーが持っていくと、料理室に閉じ込められて、そのまま出航してしまう

友だちが追ってきて、船の中を探すが
甲板下に入れられたため、諦めて帰ってしまった








その時、ケティおばさんの片目の猫ジブブームが乗り込んで
ずっとオリバーから離れなくなる

石頭の航海士ジョン・リングローズはいくらか親切にしてくれて
ロープや策具の扱い方を教えてやると約束する

その日からオリバーは給仕として働かされる


●海のゆうれい
スクラッチ船長は夜でもランプをつけっぱなしにしている

海のゆうれいは甲板に濡れた足跡を残すと信じていて
順番に見張りを立てている

板にSOSの文を刻み、目立つように金貨をうちつけて海に放つが
船の本当の名は「血の手号」という海賊船だと分かり絶望する


●宝のありか
スクラッチ船長は、なぜオリバーを連れて航海に出たか話す

元船長ジャックだんなは、それまで貯めた金銀財宝をある島に埋めた
その時、ひどい裏切りにあって、目の前で仲間に撃たれた

スクラッチ船長は撃った相手をその場で射殺し、船長になった
それから7年間探し続けている

ジャックだんなはヒスパニオラ海岸でとった果物にペンを入れて
財宝の場所を袖に書いていたため、袖口を切ったけれども
今となってはインクは消えている
横取りされないよう、消えるインクを使っていた

島を何度も探したけれども、硫黄のにおいを嗅げるのは
真夜中きっかりに生まれた者だけ

ビリー・ボンベーを探しても見つからなかったが
オリバーがジャックだんなのゆうれいを見つければ
宝は山分けしようと約束する


●13人




突然の突風に見舞われて、3人の船員が波に落ちて消えたため
船の乗組員の数が不吉な13になった

1人降ろすためにくじ引きとなる
かぼちゃのジャックだけが反対したが、臆病者だと笑われる

スクラッチ船長は2つの巾着袋に硬貨を入れて
×印をつけた1枚を引いたら、板を渡るべしとルールを話す

かぼちゃのジャックが×印を引いたが、オリバーは船長の八百長を見抜く
その時、陸地が見えたため、海から落とす代わりに、島流しに決まる

かぼちゃのジャックは目隠しされてボートに乗せられ
水の入った樽1つだけを置いて、残される
それは死を意味する






●大雨
海図も読めない船長は、とっくに方角を見失っているのを誤魔化している
次第にイライラしてくる船員

オリバーは伸びた髪を海の男らしくタールで固めて辮髪にする
食糧が乏しくなると、人食い水夫長に変な目で見られていることに気づく

リングローズは船長になりたくて船長に歯向かい
仲間に選挙をさせようと提案するが
ジャックだんなの島がとうとう見つかる


●ジャックだんなの島
スクラッチ船長はリングローズを給仕に降格し
オリバーを相談役に任命する

ハジらがイノシシを狩って、焼いて食べながら
宝が手に入ったら、オリバーは置いてけぼりにするだろうと噂する

その前に逃げ出そうと考えていると
目の前に死んだと思ったかぼちゃのジャックが現れる







かぼちゃのジャック:
片足で歩いても半日で周れるような小さい島だから隠れるのはムリ
人食いの水夫長は人の肉を嗅ぎつける天才だから、すぐに見つかる

島流しにされる時、ボートの中にいたリングローズ、エズラ・フライ、ネッドにも
船長は宝が見つかったら一人じめにするだろうと話した

昔、ジャックだんなの宝を埋めた仲間を海に落として殺したため
夜、ゆうれいを怖がっている

オリバーも船長の根性を叩き直す計画に賛成する

ゆうれいを見たら、ナイフを目印に突き立て
船長には反対の方角を教えることを約束する


●ゆうれい探し
夜になると、オリバーを先頭にして島中を歩き回る
イノシシの脂を塗らなかったオリバーだけ蚊の大群に襲われる/汗

木の上に登ると、かぼちゃのジャックがいて
喉が渇いたらジャニパの木の実の汁を飲めばいい
毒のあるマンチニールには気をつけろと教える

オリバーは知らずに蚊をよけるために持っていたのがマンチニールの枝で
毒にやられて、顔がふくれあがり、目が開かなくなる

仕方なく、イノシシの肉を塩漬けにして樽に詰めたり
船の補修をする海賊たち


●紅海式拷問 バスチナド
目が開くと、いったん船を出して、夜こっそりとゆうれいを探すことになる
何時間歩いても見つからず、ハジはオリバーが騙していると言う





ロープで逆さづりにして、木の枝で裸足の足裏を叩き続ける
真っ赤に腫れあがった時、あやしい光を見て、約束通り
「奴です!」と叫んで反対側を指し、ナイフを突き立てる

追おうにも足が腫れて歩けず、リングローズが背負う
まったく見当違いな場所を教えて、海賊たちは鍬で掘る


●物入れ箱
とうとう物入箱が見つかり、船に運んで、ようやくこじ開けると
中に入っていたのは大砲の弾でガッカリする







その夜、濡れた足跡とゆうれいを見て、叫んで教えると
船長も水夫も部屋の中にこもって隠れてしまう

彼らはゆうれいではなく、夜討ちをかけた海賊で
船長を捕らえると、怯えた船長は、自分がジャックだんなを撃って
仲間たちを海に落としたと白状する

リングローズが彼らはスペイン人だと叫ぶと、途端に元気づいて
次々と海賊を海に落としていく

最後の1人と取っ組み合いになり、相手がビリー・ボンベーだと分かる







●ビリー・ボンベー
ビリー・ボンベーもヒスパニオラ島から宝探しに来た
スペイン海賊の分捕り品を物入れ箱に詰めた

大砲の弾なら海に捨てたと言うと、人の目を誤魔化すために
スペイン銀貨を溶かして弾に加工したと話す

ビリーと船長はやけ酒を飲み、リングローズは
船員がまた13人になったから自ら船を降りる

その時、オリバーは自分もかぼちゃのジャックと仲間だと打ち明けると
目印に刺したナイフを落とし物だと思って
リングローズが拾ってしまったと打ち明ける


●ふたたびゆうれい探し
翌日からビリーとゆうれい探しをすることになるが
先を越されたくないビリーがオリバーを殺そうとする前に行方をくらます

とうとう血のように赤い上着を着たジャックだんなを見るが
それはリングローズの変装だった

ビリーがゆうれいをたくさん見たというのははったりで
ひと目見るなり逃げ出して、すっかり臆病になってしまう

オリバーが最初に見た光も、かぼちゃのジャックが集めたツチボタルだと明かす

船長は使えないビリーの代わりにオリバーを探すため
60秒数えるうちに出てこないと、ジブブームを殺すと脅す

かぼちゃのジャック:
ビリーもオリバーもゆうれいが見えるとは思えねえ
船長を島の奥へ連れ込めば、ボートでオレとジョンが待ってるから船で帰ろう

その時、オリバーは宝のありかがひらめく


●宝のありか
オリバーは船長らに毒のマンチニールがたくさん生える木の下に宝があると嘘を教え
かぼちゃのジャックとリングローズに宝のありかを教える

ジャックだんなはジャニパの汁をインクにしていた
彼が埋められた所にこの島で1本だけのジャニパの木がある
撃たれて埋められた時の実ではないか?

掘ってみると、ジャックだんなの骨と宝の箱が出てくる
中には各国の金貨、真珠やルビーなどがたくさん入っている

オリバーを食べに来た人食い水夫を仲間にして
スクラッチ船長を呼びに行かせる







船長の頭を枝で殴り、墓標をたてて、まるで死んだかのようにリングローズが追悼する
自分の姿が見えるのはオリバーだけと分かり
すっかり怯える船長を島に残して船は出航する


●帰宅
海に出て6日目、すっかり船は水漏れして、ボートに移る
宝の箱は重すぎるから捨てろと言う警告も聞かず、宝とともに海に沈む乗組員
血の手号も沈む

人食い水夫、リングローズ、かぼちゃのジャック、オリバー、ジブブームだけ助かり
ウミガメ漁の船に助けられ、2か月ぶりに銛うち亭に帰ると
すっかり海の男に成長した息子を見て驚く父

父:今までどこにいたんだ?

オリバー:海の上です



あとがき
本書の舞台はスパニッシュ・メイン 当時の海賊の名所

15世紀末、コロンブスに力を貸したのはスペイン女王イサベラ
海運力でいち早く海外進出したスペインが
独占的に植民地を獲得したのがスパニッシュ・メイン
スペインは「日の没することのない帝国」と言われた

スペイン人が植民地からとりあげた財宝を
横取りしようと現れたのが海賊団 バッカニア
「牛肉を干す人」の意味

もとは貿易商人で、原住民から大量の牛肉を仕入れたのが
スペイン人の耳に入り、軍艦でバッカニアに砲火をあびせた
防船からスペイン船を襲い、金品略奪したのが海賊

カリブ海海賊の先祖は、おもにイギリス、フランス、オランダ
もとイギリス海軍づき牧師フランシス・ドレイクがスペイン船を襲った時
時の女王エリザベス一世は、船上で一緒に食事をし、武勇を褒めたたえた

ウェールズ生まれの海賊ヘンリー・モーガンは
後年、ジャマイカの副領事になり、サーの称号も受けた!

スクラッチ船長も黒ひげエドワード・ティーチを思わせる


シド・フライシュマン
太平洋戦争中、アメリカ海軍予備役の下士官としてボルネオなどを周った

本書は少年少女学研文庫の『ぼくのすてきな冒険旅行』につぐ作品
ナンセンス児童文学中の傑作

(そんなジャンルもあるのか

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