メランコリア

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少年少女世界推理文学全集 No.9 恐怖の黒いカーテン アイリッシュ著 あかね書房

2023-05-03 18:09:49 | 
1985年 第33刷 福島正実/訳 原田維夫/絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


記憶喪失とかのSFものかと思ったらちゃんとしたミステリだった
けど、タイトルの黒いカーテンはどこに出てきた?

「アリスが消えた」では、アリスが騙していたのかと疑ったが違った
さっきまで一緒にいたのに、周りが全員見ていないと証言するのもゾっとした

2作ともテンポがよく、謎が気になって一気読みした


【内容抜粋メモ】

恐怖の黒いカーテン
フランク・タウンゼンドは上から落ちてきたコンクリートの破片が頭に当たり
脳震盪を起こして、D.N.という知らない名前の入った帽子を身につけている

帰宅しようにも、チラリー街という見知らぬ場所に戸惑う

バスで5つ目のルザフォード街にある自宅に帰ると
妹のバージニアはいないし、管理人のフロム夫人からは驚かれる

バージニアは2ブロック先に引っ越したと言われて訪ねると
3年も行方不明になっていたとビックリする

会社帰りに交通事故にでも遭って記憶喪失になっていたのではと疑う
D.N.というのはその間の名前だったっぽいが、新しい記憶が抜けている

元の仕事に戻り2週間後、見知らぬ大男に追いかけられる
職場に電話して自宅の住所を聞かれて、数人で来たため
妹を残して逃げ、安い下宿屋に泊まる

ポケットに入っていたシガレットケースを質屋に出すと
これで3度目だと言われ、帳簿で見せてもらった住所に行くとウソの番地

火事の現場を見ていると、自分を知っているらしい少年(といっても15,6て青年では?)から声をかけられる
うまく聞き出すと、少年の名はルーディ







自分の名はダニー・ニアリング
屋敷で一緒に働いていたが事件を起こして9か月も逃げていた
自分を追いかけていたのは刑事だった

図書館の新聞で調べると、富豪ハリー・ディードリッチ氏の秘書だったダニーは
妻アルマ夫人と甥ウィリアムが出かけている時に
サンルームでハリーを射殺して逃げるところを目撃された

金庫から大金が盗まれていた
ダニーは2年前、食事もせずうろついていたところをハリーが助けてくれた

ルーディはアルマ夫人とウィリアムからいじめられていたが
ダニーにたびたび助けられて、2人は友だちだったため
自分は犯人じゃない、記憶喪失のことも話すと泣いて喜ぶ

濡れ衣を着せた真犯人を見つけるため、現場を見る必要があると協力を頼む







屋敷の倉庫に隠れて、ルーディは口がきけないディードリッチ老人(アルマの父)を散歩に連れて来ると
とても親切に世話をしていたためダニーを見て泣いて喜ぶ

唯一動かせるまぶたをしきりに閉じたり開けたりしていることに不思議がるダニーとルーディ
なにかのコミュニケーションかもしれないとメモする







倉庫に長居しているルーディを怪しんで、ダニーに気づいたアルマ夫人は
ダニーを倉庫に閉じ込めてカギを閉める







その間に老人のまばたきがモールス信号だと気づいて、慌てて解く

カギを入れた封筒がさしこまれ、罠だと気づいて電話をかけてから屋敷に入ると
ウィリアムに縛り上げられるダニーとルーディ

やはりハリーを殺したのはアルマ夫人とウィリアム
ウィリアムは自分の腕を切りつけて
正当防衛に見せかけてダニーを射殺すると言う

イスに座った状態で上から撃てば「入射角」が違うから警察にすぐバレると教えると
机で図を書いて計算する

その間に広間が火事となり、ウィリアムは1人で逃げ出す
電話しておいた警察が駆けつけて、アルマ夫人とウィリアムは逮捕される







ダニーを救おうとした老人が火をつけたが
火事に巻き込まれて死んでしまった

ウィリアムは正当防衛だと主張するが
縛られていたフランクに出来るわけがないと笑う刑事

老人の目撃証言のメモが証拠になる
2人は金目当てで父を殺そうと計画
イスに銃をしかけて出かけたためアリバイがあった

ダニーは知らずに現場に入って、死体を見て驚いて逃げ出したところを目撃された
隣りの部屋にいた老人は真犯人を知っていた




アリスが消えた





ジェームズ・キャノン(ジミイ)はアリス・ブラウンと結婚式を挙げる
2人とも身内がいないため、立ち会ったのはハルクスケンプ公証人と家政婦さん

この日ばかりは贅沢なホテルに泊まろうとしたが
ミシアナポリス市でバルボアの騎士という祭りがありどこも満室で
部屋がないと断られる

仕方なく、三流のローヤルホテルに行くと、ここでも断られ
一番上の1006号室に物置があると言われて
アリスだけでも泊まらせてほしいと受付係に頼みこむ

ボーイにスーツケースを頼み、アリスだけを寝かせて
ジミイは近くのYMCAに泊まる

翌朝、起こしに行くと、ペンキ屋がいて
ベッドや家具は片付けられ、アリスがいない

受付で聞くと、ゆうべの男は夜勤で交代していて
昼勤の受付が宿帳を見ても記入がないため泊まっていないと言われる

夜勤の男を呼んでもらうが、知らないと言い通すため
ボーイを呼んでもらうが、彼も知らないと通す

ホテルの用心棒につまみ出され、精神異常者扱いされる

ジミイは自ら警察署に行って警部に事情を話す
警部は刑事らしくないエインズリーに捜査させる

結婚した証拠を求められ、公証人の家に電話すると
そこでも知らないと言われて
ショックと混乱で気を失うジミイ

アリスが女中として勤めていたベレズフォード家に電話しても
そんな女中はいないと言われる

絶望したジミイは薬局でヨードチンキを買って
電話ボックスの中でそれを飲んで死のうと試みるが(!
心配してついてきたエインズリーに止められる

その時出したハンカチにA.B.という刺繍があり
アリスのものだと証拠が見つかる

エインズリー:
君はレイクシティから来た
ここまでの間に謎を解くカギが隠れているに違いない

アリスに出会ったのは1週間前
公園でしょんぼりしているところに声をかけて仲良くなり
結婚式を挙げる日は誰かに追われるように走っていたことを思い出す

途中で寄ったガソリンスタンドの男も、公証人と家政婦も知らないと通す

エインズリー:やつらは雑魚だ 事件の裏にもっと大物が控えている

アリスが出てきたと思っていた屋敷はオマリー家で
その陰にさらに大きな屋敷があり
そこがベレズフォード家だが葬式の黒い紋章が出されている







葬儀屋が呼ばれて、明日朝早くから葬式をあげるため準備をしている
一人娘のアルマ・ベレズフォードが心臓麻痺で死んだと話す
アルマの後見人ヘースチングスが大金の遺産をもらう

エインズリーは葬儀屋と交渉して服を借り
葬儀屋に扮してジミイと屋敷に入る

棺の前にイスを並べる間、ずっと監視している秘書シバーズ
その目を盗んで見ると、棺におさめた死体はアリス
だが、胸が動いているため、麻薬で眠らされていると分かる







エインズリーはヘースチングスに銃で叩かれて
2人は棺がある部屋の下にある地下室に縛られてしまう

葬儀が始まり、棺に釘が打たれて運ばれる音が聞こえる
このままでは生きたまま埋められてしまう

女中頭のメリーが2人の縄を切ってくれる
アルマは体が弱いが外に出してあげていた

ジミイが財産目当てで結婚したと思い込んでいる
シバーズらが公証人らに金を渡して口止めした

老医師が死亡診断書を書いたが、アルマはまだ生きていると話すと驚く

エインズリーがヘースチングスを殴って解決

彼はアルマが病気でもないのに体が弱いからと家に閉じ込めていた
ジミイと結婚すれば財産がもらえないと分かり
アルマを連れ帰り、周りを口封じした




作者と作品について 福島正実






ウィリアム・アイリッシュ 別名コーネル・ウールリッチ
1906年 NY生まれ

『まぼろしの女』で一躍流行作家となる





わけの分からない事件が起こり
主人公が事件に巻き込まれ、誰も信用してくれない
スリルとサスペンスがアイリッシュ独得の雰囲気をつくり出す



読書の手びき 滑川道夫

推理小説の定義について

江戸川乱歩の引用:
主として犯罪に関する難解な秘密が
論理的にだんだん解決していく経路の面白さを主眼とする文学

アイリッシュは心理的なスリラーを犯罪小説に織り込んだ先駆者と言われる
恐怖心理の描写を読みとってほしい

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