メランコリア

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海外SFミステリー傑作選 12 裏窓の目撃者 ウィリアム・アイリッシュ/原作 国土社

2023-05-24 17:51:27 | 
1995年初版 内田庶/訳 山本利一/装丁・挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


ヒッチコックの映画で観たのは、子どもの頃
その原作をジュヴェナイルで読むのは初めて


【内容抜粋メモ】

●裏窓の住人
ハルは試験休みに兄のいるNYに観光に来たのに
クルマにはねられて足を骨折して、車椅子で窓とベッドの往復しかできない

兄はハルといるとロクなことがないとこぼす
出張に出かけている間は、近くに住むサム叔父さんの娘リズが世話してくれている

兄の友人のポイント警部もたまに訪ねてくれるがヒマで仕方ない
電気を消して、窓から向かいのアパートの住人の様子を見るようになる







気になるのは、4階に住む夫婦
奥さんが長患いしている

暑いのに寝室の日よけが下げたまま
奥さんの姿を見ていない

夫は妙に探るような目で3回も裏窓を見渡している







トランクに奥さんのモノを詰めているため
療養のために転地をするのか、運送会社の男性2人がトランクを持っていく

夫は何度も汗をぬぐい、酒を飲んで落ち着けている様子から
奥さんを殺したのではないかと推理する

リズに頼んで、夫婦の名前はレアルドだと分かる
リズに話すと、奥さんの死体はトランクに詰めたのだと言う







兄の親友ポイント警部に殺人事件の話をする
調べると、奥さんは田舎に療養に行ったとのこと

レアルドが部屋を出た時間を狙って刑事が調べるが何も発見できず
ポストには奥さんから無事着いたというハガキが入っていた

消印の日付と月がぼやけているのは細工した
トランクに死体があるかどうか調べて欲しいと頼む

その後、奥さん自らトランクを開けて見せてくれたため
勝手に調べたポイント警部は上司に怒られたと愚痴る

その女性もニセモノに違いない


●脅迫
リズは「奥さんをどうした?」と書いたメモをドアに挟んで
それを見たレアルドの様子をハルに望遠鏡で見るように言うと
明らかに顔がひきつる

レアルドの動きと、工事をしている上の階にいる管理人らの動きが
たまたま重なり、一瞬妙なズレを感じたのがひっかかる

ハルは証拠をつかむため、口止め料を公園に持ってこいと電話で脅し
その30分間にリズが裏窓から部屋に入り
部屋に死体を隠す場所がないか調べてもらう







レアルドが戻ると再び電話して、金の代わりに銃を持っていったことを指摘
死体のありかは分かっていると話すと「うそつき」と言って切る

逆にハルの部屋の電話が鳴って、出ると無言で切られる

リズは心配そうにハルを残して帰る


●コオロギの鳴き声
レアルドが真っ直ぐこっちを見た気がする
20分後、ドアをそっと開ける音がする

リズが「おばあちゃんはコオロギが鳴くと近くで人が死ぬと言っていた」という言葉を思い出す
ポイント警部に電話すると家に帰ったと言われる
話の途中で電話線が切られたため、もうレアルドが家に侵入していると気づく

そばにある胸像に毛布を巻いて、自分の頭のように見せかけると
レアルドが入ってきて、銃で胸像を撃ち抜く







失敗したと分かり、窓から庭を通り、アパートの屋上に走る
刑事が彼を追い、ポイント警部はそばに来た

屋上から銃を撃ち、すぐそばの本が吹き飛ぶ
ポイント警部が撃ち返すと、レアルドは屋上から落下死する

リズが心配して警部を呼んでくれた







レアルドは奥さんに莫大な保険金をかけて
毒薬を少しずつ飲ませて自然死に見せかけようとしたが
計画がバレたのか、やむなく絞殺した
ハルの推理通り、奥さんの死体は工事中の5階のセメントから発見される

ハルの足は治り、リズと一緒にNY見物をして事件のことは忘れてしまう



解説 各務三郎
アイリッシュは平凡な日常が悪夢と変わる物語を多く書いている

サスペンス映画の名手ヒッチコックは1954年に映画化して
アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞した

悪夢の詩人と呼ばれたアイリッシュの作品は
アクション、人情味、ドラマの三拍子が揃った「ポーの現代版」と言われた

『幻の女』は日本で名作ベストテンに入る


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