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アーサー・C・クラークスペシャル 第2回 『幼年期の終わり』@100分de名著

2020-04-19 15:02:32 | テレビ・動画配信
アーサー・C・クラークスペシャル 第2回 『幼年期の終わり』@100分de名著
人類にとって進化とは何か 

SF 界の巨匠 アーサー・C・クラークスペシャル1 『太陽系最後の日』@100分de名著


SF 界の巨人アーサー・C・クラーク
その評価を決定付けたのが『幼年期の終わり』です


圧倒的な知性を持つ地球外生命体
彼らとの接触により、人類は想像を超えるメタモルフォーゼ(変容)を遂げる

人間にとって進化とは何か
クラークの壮大な思考実験を読み解きます

SF 史上最高傑作とも言われる『幼年期の終わり』
クラークが35歳の時に発表したもので、長編小説です

アナ:
第1回は人類の好奇心がテーマでしたけれども

瀬名:
第2回は、人類の変容というか
何か別のものに変わっていく事の可能性を追求している

例えば最近 AI ブームですし
それに伴ってロボットもかなり進歩してきていますが
人間がロボット やAI と一体化してしまうかもしれない

それこそマトリックスの世界みたいに
電脳世界に心や魂だけが入る
不思議なことが起きるかもしれないし
そういうことを書いた先駆けのような作品

攻殻機動隊



朗読:
地球にとっては経験したことのない大きな出来事だった
一切の予兆もないまま、まるで地上に雨が降り注ぐように
宇宙の果てから巨大な宇宙船の群れがやってきたのだ



(もうすでに面白い 『インディペンデンスデイ』(1996)の絵面


ありとあらゆる大地の空にきらめきを放ちながら無音で浮かぶ物体は
人類が数百年かけても到達し得ない高度な科学を象徴していた

世界各地の大都市上空に巨大な宇宙船が出現する
これが人類と異星人オーバーロードとの最初の接触でした

異星人を指揮する地球総督カレラン
彼らは圧倒的な科学力をもって世界を統治
人類が抱える問題を解決していきました

人種差別が見られる国に対しては
あらかじめ通告した日時に日食を起こして警告





闘牛のような動物虐待にあたる行為は
観客に牛と同じ痛みを感じさせてこれをやめさせました



(今のコロナもこういう状況なんじゃないの? て言う都市伝説もあるよ


人類単独では決して成し得なかった、平和で理想的な社会が実現したのです





しかしオーバーロードは正体も目的も一切が謎
彼らは50年後に初めて人類の前に現れます





ところがその姿はあまりに衝撃的なものでした


朗読
硬い革でできたような翼、小さな角、矢印の形をした尾 全て揃っていた
あらゆる伝説の中でも最も恐ろしい一つが未知の過去から命を持って現れたのだ
(悪魔?

黒檀を思わせる厳かさを放ち
巨体を眩い陽射しにつやつやと輝かせ
両の腕に彼を信頼しきった人間の子どもを乗せて





驚くべきことに、オーバーロードは
人類が昔から神話や宗教の中で描いてきた
そのままの悪魔の姿をしていたのです

(ヒトの目にそう幻影として見えても
 実際はいろいろな形に変えられる生命体かもしれないし


光:
僕はモンティ・パイソンが大好きなんですけれども
テリー・ギリアムが描くコントのリズムがちょっとあるんですよね

『バンデットQ』 っていう作品の中でものすごい悪魔が最後どーんて登場する
サラリーマンの格好してる
ある意味その真逆みたいな、すごくツボです


瀬名:
オーバーロードは圧倒的な科学力を持つ異星人ですが
その宇宙船がニューヨークや東京など世界の大都市に突如出現する

この映像もう皆さん見てますよね 映画などで

光:SF 映画ではこれに影響された映像だらけですもんね

瀬名:
これが元祖で、我々人類のトラウマになってしまうような


地球総督カレランが国連事務総長ストルムグレンを通して世界を統治するようになります





オーバーロードの統治によって解決した様々な難題





瀬名:
暴力とかではない
かなりかっこいいやり方で人類を統治していく

光:彼らがやってきたことはいいことですよね

瀬名:
一見ユートピアのようなものが実現したかのように思えるわけなんですが
人間は無力感にかられてしまう

科学者や技術者は、今まで一生懸命人類を進歩させようと思ってやってきたのに
こんなすげー奴らがいるんだったら
俺たちもうやる必要ないじゃん、と言って止めちゃうんです

文化とかも停滞してしまう
こういう小説を「人類家畜小説」という風に呼んでいて
その代表例としてこの小説は日本でも広く読まれた

ところが、この小説はそこから先を書いたっていうところがすごい
実はそのオーバーロードの目論見は
家畜化ではないという方向に話が進んでいく

彼らを見て悪魔だと思うけれども、なぜそう思うのか?
実は人類が昔から宗教の中で描いたり、想像したりしてきたわけですけど
実はそれは未来に対する人類の記憶だったんだ

光:
いろんな文献に悪魔が出てくるのは、正夢みたいな
未来にこういう奴が来るということを感じとったことを書いてる

瀬名:未来に悪魔がやってくるというビジョンが分かる人類の力が実は重要だったんだ

光:
人間が持っている予感の凄さ
1話目で言ってた神秘的なもの、科学的なものをうまく混ぜる上手さで言うと
「そんな奴が来るわけないじゃないか!」というツッコミに対して
逆に来ることを予感していて、それを悪魔として書いてたわけだから
むしろ必然なんですよ、という仕掛けですよね
うまく落とし込みますね

(人間の“予感する力”っていうのは興味深い



オーバーロードの宇宙船が地球にやってきて50年(長いな/驚
人々の生活は大きな変化を遂げていました

機械化が進むことで労働時間は劇的に短縮
日用品が無料で手に入り
衣食住に困ることがなくなった人類は
スポーツや映画などの娯楽に大半の時間を使って暮らしています





一方、オーバーロードが地球で何をしようとしているのか
その目的は未だ謎に包まれていました

オーバーロードの一人ラシャヴェラクは
神秘主義の書物を大量に集める人物の家に滞在
魔術や心霊研究などの本を読み漁ります



(絵面がステキすぎ!


そしてある日パーティーが開かれ
こっくりさんに似たオカルトゲームを注意深く見守りました

(すっごい近くで見てるけど気にしないんだww
 イギリスは心霊やチャネリングとかも早かったからね







参加者たちが指を置くとディスクが動いて質問に答えるというもので
27歳の青年ジャン・ロドリックスが「オーバーロードの母星はどこだ?」と尋ねます

すると「 NGS 549672」
意味不明の英数字が示され
その瞬間、別の参加者であるジーン・モレルという女性が気絶

ラシャヴェラクはこう報告しました

「彼女は今回の件で何よりの収穫です
 ジーン・モレルが情報の経路チャネルであることはほぼ間違いありません

 ただもう26歳です
 過去の例を見ても彼女自身がプライム・コンタクトであるとは考えにくい
 とすると彼女とごく近しい間柄にある誰かがそうだと推測されます

 このまま何年も悠長に待っている余裕はありません
 ジーン・モレルのステータスをカテゴリー・パープルに変更すべきでしょう
 彼女は現存する人間の中で、最も重要な一人かもしれないのですから


実は、オーバーロードたちが注目しているのは
ジーンが後に産むことになる息子のジェフリーでした

ジーン親子はその後、太平洋上に浮かぶニューアテネに移住
そこは実験的な街で、人類の主体性を取り戻そうと
芸術に専念する人々が集まっていました

ジェフリーはそこでオーバーロードから密かに監視されることになるのです







一方、ジャン・ロドリゲスは、オカルトゲームで浮かび上がった英数字が
オーバーロードの母星の座標であることを突き止め、彼らの宇宙船に密航します

母星にたどり着いたジャンは
大気の密度を変え、星の重力をも調整する圧倒的な科学力に驚愕しました
その姿は人間の理解の範疇を超え、地獄のようにも見えたのでした





一体オーバーロードは人類をどう導こうとしているのか
ある日、彼らは人類が科学によって自滅するのを止めにきたこと
そして「オーバーマインド」と呼ばれる
さらに格上の存在に命じられて地球にやってきたことをほのめかします



(集合意識みたいなものか? 熊谷守一さんの「日輪」に似てる


『モリのいる場所』(2017 ネタバレ注意





朗読
私たちがやってきた時、君たちは自滅の一歩手前にいた
私たちが介入していなければ
地球は今頃放射能にまみれた荒れ野と化していただろう

認めがたいことだろうが、現実と向き合わなくてはならない
君たちが太陽系の惑星を支配する日はいつか来るだろう
だが人類が宇宙を制する日は来ない



「科学とオカルト」

光:
本来、科学と悪魔とかって、一番食べ合わせの悪いものだと思うんです
完璧に入れてきますね

瀬名:
面白いですよね
オカルトの話は人類の可能性だったんだっていう話に進んでいく

光:明らかに科学は宇宙的なものを征服できるという考え方ではない


瀬名:
今回は逆に「好奇心」だけで突っ走ったら
自滅するかもしれないよ、とオーバーロードに言わせている
クラークがどこに向かおうとしているのか目が離せなくなってくる


「オーバーロードがもたらした社会」







「ベーシックインカム(最低限の生活を送る必要なお金を一律に給付するシステム)」

瀬名:
読み返して一番面白いのは、最近、 AI が発達すると
全部雑用を引き受けてくれるから
人間は何もしなくてもいいだろうっていう議論が
割とここ数年間交わされている

経済学者に言わせれば
国民1人当たりに何万円か毎月お小遣いを出せば働かなくてもいいし
後は AI がやるから、芸術活動とかに専念して生きていける


今読むと、今とそっくりなのでびっくりしてしまうが
はたして、これがありか、なしか?


物語は終盤に差し掛かり
オーバーロードの真の目的が明らかになります

ある日、オーバーロードが最重要人物として見守る
7歳の男の子ジェフリーに激変が訪れます
超能力の覚醒でした







物体を宇宙に浮かせたり、精神体となってはるか彼方の銀河の星々を探検したり
人類を全く新たな存在に「メタモルフォーゼ(変容)」させることが
オーバーロードの真の目的だったのです

この日を境に10歳未満のすべての子どもたちに同じ変化が訪れました





彼らによれば、一人一人の意識は繋がり
全員でひとつの統合体として生きるようになる


肉体という物理的な壁を越えた彼らは
やがて無数の種族の集合体である
オーバーマインドと一体化するというのです

一方、オーバーロード自身は
オーバーマインドと一体化できない進化の袋小路に陥った種族でした





高度な文明を持ちながらも、他の種族のメタモルフォーゼを
手伝うことしかできない悲しい運命を背負っていたことが明かされます
(可哀想じゃん・・・


朗読
私たちは2つのまるで違った進化の結果を象徴している
私たちの精神は発達の限界に達している
同じように君たちの精神も今のままではこれ以上発達することはない

しかし、次の段階へ一足飛びに進む方法はある
そこが私たちの違いだ

私たちの可能性は枯渇した
このことだけはどうか記憶に留めておいてもらいたい
私たちはこれから先もずっと君達を心から羨ましく思っているということを


子ども達は親たちにとって一切理解できない存在に変貌します




意識はここになく、目は虚ろになり
全員が裸で踊っています

やがて彼らが引き起こす超常現象が巨大なものとなり
地球は壊れていきました





カレランたちは地球を離れますが
オーバーロードの母星から戻ったジャンは
人類の終焉を見届け、それを伝えます





朗読
さようなら、カレラン、ラシャヴェラク
僕はあなた方を気の毒に思います

僕にはよく理解できませんが
僕はこうして自分の種族の変貌した最後を見届けました
人類が成し遂げてきたすべてが星空に昇っていくのを見送りました

今、川が消えました
でも空には変化はありません

もう息ができない

月はまだ輝いています
それがなんだか不思議です

光だ!
足元が光っています
地球の内側から空に向けて光が発せられている

岩盤を、地面を、全てを通り抜けて
ああ、眩しすぎてもう何も・・・


地球はメタモルフォーゼのためのエネルギー源となり、跡形もなく消え去りました

(泣ける 滅亡が悲しいのではなくて 『星の王子さま』みたい


光:
とても宗教的 肉体は滅んでも魂は天国にいますみたいな
まさに今、地球が舵を切り始めれば
俺達みたいにならないで済むんじゃないかっていう

瀬名:
なんかすごく切ない感じがします
オーバーロードってこんな人達だったんだ
僕たちの事をこんなに見てくれていたんだ

今の時代にも面白く読めるなと思うのは
「シンギュラリティ(技術的特異点)」ということが最近言われるようになって
レイ・カーツワイルという未来学者の人が
2045年頃に AI が人類の知能を超えると予測





しかもロボティクス、遺伝子工学、ナノテクノロジーによって人類が変貌する
人類の今までの肉体、精神とかを超えた存在になるかもしれないと言っている

今の我々は最後の人類で
この後生まれてくる子ども達は、ひょっとしたらここで書かれている
メタモルフォーゼする人類に近いものになっちゃってるかもしれない

僕らはジャンであるとともにカレランでもある
最近読み返すとすごく心に響く

光:もっと言うと、最新作の SF としてまだ機能する

アナ:
一つ思うのは、オーバーマインドのように一体化するって
よく考えると怖いかなと思うんですけど

瀬名:
あの子ども達は幸せそうなのかと言うと
僕らからするとそうは見えない
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか分からない

光:
好奇心を持って宇宙に飛び立って
征服するということがわかりやすい勝利条件

でも今回やめましたね
何をもって勝ちか、幸せかわからない
そのパーツを全部入れたので

瀬名:
本当のユートピアとは何か?
という問題提起の小説ですよね
でも答えは出ていない
次に読む『都市と星』という作品でこの答えが書かれている

次回につづく・・・





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