原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【改正会社法】詐害的会社分割からの債権者保護

2015-03-03 | 商法的内容
今日は,司法修習第2クールの開始式&懇親会(通称:第1回「夜の修習」)。飲みまして,私は,三島のドーミーインに宿泊。というのは,お風呂に入りたかったんですね。ビジネスホテルなんですけど,露天風呂もあって良いんです。明日の朝は,朝風呂に入って,朝食バイキングして,それで簡裁の期日に行こうと思っています。

さて,改正会社法。改正ポイントの一つに,「詐害的会社分割からの債権者の保護」があります。ご存知の通り,最高裁判所平成24年10月12日判決・民集66巻10号3311頁を受けての改正です。この事案を,思いっきり簡略化して紹介すると,以下の通り。

「X社は,a社に対して,約4億5000円の債権(保証債務履行請求権)を有していたところ,a社が会社分割(新設分割)を行い,新設会社(Y社)に不動産を承継させ,Y社は不動産の移転登記を備えた(X社の債権=a社の債務は,a社からY社には承継されず,X社はa社には履行請求できるが,Y社にはできないという新設分割契約の内容であった)。X社は,この新設分割による不動産の承継行為は,詐害行為にあたるとして,不動産の承継行為の取消しと不動産移転登記の抹消を求めた。」

で,最高裁は,会社分割を民法424条(詐害行為取消権)により取り消すことを是認したわけです。

今回の改正で新しくできた条文(の一例)は,以下の通り。

【会社法759条】

第4項 第1項の規定にかかわらず,吸収分割会社が吸収分割承継会社に承継されない債務の債権者(以下,この条において「残存債権者」という。)を害することを知って吸収分割をした場合には,残存債権者は,吸収分割承継会社に対して,承継した財産の価額を限度として,当該債務の履行を請求することができる。ただし,吸収分割承継株式会社が吸収分割の効力を生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでない。

…判例の処理(民法424条による処理)とどこが違うかわかりますでしょうか?

民法424条による処理は,①会社分割を取り消して,②不動産をa社に戻させて,③a社に対して保証債務履行請求訴訟をやって債務名義を得て,④不動産に対して強制執行する,というちとめんどくさいルートを経る。

一方,改正759条4項による処理は,ダイレクトにY社に対して,保証債務の履行請求訴訟をやっていけるわけです。ですから,合理的。

なお,こういうふうに仕組みが違うものですから,会社法759条4項は民法424条の特則とは考えられておらず,今後も,民法424条の方法を選択することもできます(ただ,これにどれだけのメリットがあるかは…)。また,こういった場面で考えうる他の方法として,法人格否認の法理もありますが,これはなかなかねぇ。

改正759条4項は,民法424条とはちぃと違うということを押さえておいてください。なお,「害することを知って」などの文言の解釈は,民法424条を参考にすればよいでしょう。趣旨は同じですから。

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