最判平成27年2月19日(株主総会決議取消請求事件)
<事案>
Y社は,発行済株式総数は3000株である。平成19年に2000株を有していた株主が死亡し,2000株の株式はXとAが各1/2で共同相続した(遺産分割未了で準共有状態)。
平成22年11月11日,Y社の臨時株主総会で,Aが上記共有株式全部につき議決権行使をした。
なお,本件準共有株式については,会社法106条本文(共有株式の権利行使に際しては権利行使者を定めなくてはいけない)の規定に基づく権利行使者の指定はなされていなかったが,上記臨時株主総会において,Y社はAの議決権行使に同意した。
Xは,上記臨時株主総会決議には決議の方法につき法令違反があるとして,決議の取消しを求めた。
<第1審>
請求棄却。
会社法106条但書(会社が権利行使に同意すれば共有者は権利行使できる)により,Aの議決権行使は有効。
<控訴審>
原判決取消,Xの請求認容。
<上告審>
Y社の上告棄却。
共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま権利行使がされたされた場合において,当該権利行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条但書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではない。
共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものと解するのが相当である。
<ワンポイント>
民法252条本文から,管理行為には共有者の「過」半数が必要なので,本件のケースだと,2000株は行使できない。例えば,相続人が3人いれば,2名の意思が統一できれば2000株全部につき,会社に権利行使者の通知をした上で,権利行使が可能になる。
とすると,デッドロック状態の本件では,(XとAが意思統一をはからない限り)2000株は権利行使できなくなるから,結果,1000株を持っている株主が「何でもできる」状態になる。漁夫の利というか,そういう状態になる。
このような状況を回避するためには,平成19年に亡くなったオーナー株主(もともと2000株を保有していた株主)は,やはり,きっちりと遺言をしておくべきだった。
予防法務の重要性を痛感する事例。実際に,実務ではこういう事例はあり,苦労することもあります。
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