原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【書評】三井・酒巻「入門・刑事手続法」(有斐閣)

2010-12-23 | 書評


ちょっと風邪をひきまして,昨日と今日は大人しくしていました。昨晩早く寝て,何と9時間の大量睡眠。そのおかげで,今日はすこぶる快調。(おそらく全国的にだと思いますが)寒かったり,少し暖かかったりと,体調を崩しやすい気候だと思いますので,皆様もお気を付けください。

さて,表題の通りの書評です。結論からいうと,非常に良い本です。一通り刑事訴訟法を勉強した方にはぜひ読んでいただきたい本です。

刑事訴訟法に限らず,民事訴訟法も同じなのですが,手続法の難しさは「実際」がわからないとなかなか理解できない点にあります。その点をクリアするための方法として「たくさん傍聴する」という方法がありますが,実務にある程度精通していないと適切な事件を探すのも難しいし,公判前整理手続のようにそもそも公開されないものも多い。そこで,この本です。中身ですが,

・「入門」の名の通り,非常にわかりやすい。ある程度,刑事訴訟法の知識があれば,実際の手続の進行をよく理解できる。

・それでいて,少なくとも司法試験で問われるレベル(手続は主に短答で問われるが,論文対策としても有効。いわゆる「論点」が何故に「論点」となるのか,問題の所在がよく理解できるようになる)はクリアしている。

・刑事訴訟法規則も司法試験で問われるレベルは網羅。規則対策はこれで万全と言える。

・通信傍受法,裁判員法,少年法など,司法試験で問われうる周辺法令もこれで万全と言えるレベル。

・通常の教科書で論じられる,いわゆる「論点」はその指摘だけにとどめられている部分が多く,まどろっこしくない。

・条文は余白部分に指摘するスタイルのため,すーっと読める。「です・ます体」で書かれ,また,表現も簡素かつ平易で非常に読みやすく(←元小論文講師はこの点に感動),頭がつかれた時にでも読める。余計な注釈がない点もまた読みやすくてよい。

以上,総じて「かゆいところに手が届く」良書です。定価:2900円+税で,本文は300頁ちょっとです。ページ数以上に早く読める本です。

平成22年の短答の傾向からして,司研「刑事第1審公判手続の概要」が必須と言われ始めていますが,私はむしろこちらの方が適していると思います。「刑事第1審公判手続の概要」は,修習生向けに書かれていますので,省略されているところはかなり省略されているのですね。

年末年始にさっと目を通しておくべき本として,おすすめです。そして,4月の全国模試の前くらいにもう一度目を通すと大きな効果があると思います。

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