原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

検察修習はこんな感じです

2011-03-24 | 日記
検察修習も残すところあろ2日(中途半端なんですが,来週の月曜をもって終了です)。検察修習についてあまり書いていなかったので,ここで書きます。

まず,検察庁の組織ですが,大きく分けると,捜査部と公判部があります。大きな地検になればなるほど様々な部があるのですが(例えば,東京・名古屋・大阪にある特別捜査部),ここではざっくりと。修習は,主に,捜査部の修習です。

検察庁では,「指導係」という役職がありまして,修習生の指導を担当する検事がおります。修習生は,その指導係検事の下で修習を行います。

何をするのかといえば,まさに捜査全般。取調べをしたり,関係者に電話で事情を聴取したり,起訴状の起案をしたり,略式の場合は求刑(罰金額の設定)までもします。実際の事件を配点(担当として割り当てられること)され,総務部長→次席検事→検事正の決裁を受けるところまで,修習生主導で行います。もちろん,難しい事件は配点されず,窃盗(万引き)が類型としては一番多いでしょうか。その他,薬物事犯,交通関係事犯などが修習生に配点されやすいと思います。

捜査は,修習生2~3人の共同捜査で行います。それぞれ,主任・立会という役割が与えられ,基本的に前者が検事役,後者が事務官役です。在宅事件(被疑者が身柄拘束されていない事件)が中心ですが,身柄事件(被疑者が逮捕・勾留されている事件)も配点されます。身柄事件の場合,ご存知のように日程がタイト。検察庁に送致されてから24時間以内に勾留請求,勾留が出たら基本的に10日以内に起訴です。10日間を検察庁がたっぷり使えるとそうではなく,警察が取調べ・ガサなどの捜査をするわけですので,検察庁が取調べをするのは後半の数日。警察の捜査結果を踏まえて,取調べをし,PS(検察官調書)を巻きます(作成します)。PSは,公判廷に提出され,重要な証拠となるので,書き漏らしがあってはいけません。犯罪の構成要件,責任能力など法的問題点,事件の背景(動機),一般犯情,供述が変遷していればその理由,などを盛り込むというのは,結構難しい仕事です。

調書の作り方ですが,これが結構面白い。ひとしきり,被疑者・参考人から話を聴いて,面前口述(めんぜんくじゅ)という方法で行われます。面前口述とは,検事が調書にする内容を口頭で読み上げ,立会が入力していくという方式(正直,自分で入力した方が早いのですが…)。調書は,被疑者・参考人が話をしている体裁で作成されるので,

「今,検事さんに読み聞かせてもらった事実に間違いはありません。私は,シャブ(覚せい剤)とポンプ(注射器)とパケ(覚せい剤の容器)を仕入れようと思い,平成○年○月○日の朝に新幹線で広島駅を発って,東京に向かいました。」

といった感じのものになります。これが結構難しい。被疑者の調書(APS)の場合,被疑者が話しているように書かなくてはいけないので,被疑者の言葉遣いなどをできるだけ忠実に再現します。

取調べが捜査のメインですが,その他,捜査全般を行います。ガサ等につき,警察に指示を出すこともあります。警察との連絡には,「警電(けいでん)」という専用回線が使われます。私も,広島中央署・広島東署の巡査部長さんや警部補さんと何度もやりとりしました。

こんな感じでする配点事件の捜査が主な修習ですが,検察修習では,「里親制度」というものがあって,指導係検事以外の検事も副次的な指導役として付きます。捜査部の検事,公判部の検事,それぞれ里親になります。

捜査部の里親検事修習では,取調べ傍聴,処理検討(法的問題点・事実認定上の問題点・処理方針の検討)などがメインです。裁判所に行って,期日外証人尋問の傍聴もありました。

公判部の里親検事修習では,証拠分け(雑多な証拠を甲号証と乙号証と公判不提出証拠に分けていく作業),冒頭陳述起案,論告起案,公判傍聴などがメインです。

また,検察修習はイベントも多い。今は修習期間の短縮に伴って少なくなったそうですが,それでも刑務所見学,飲酒検知修習がありました。

検察修習は,班全員が一緒に行動するので,仲良くなるというか,連帯感が強くなるというか,そういった期間でもあります。あと2日で終わってしまうのが,少しさみしいというのが本音。

以上,検察修習の概略レポートでした。

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