Dogma and prejudice

媚中派も媚米派も同じ穴のムジナ
従属主義的思考から脱却すべし
(言っとくけど、「媚米」と「親米」は違うんだよ)

500兆円?日の丸「国家ファンド」設立へ議連発足

2007-12-27 | 構造改革
500兆円?日の丸「国家ファンド」設立へ議連発足
12/05 20:48

 金融市場で存在感を増している国家ファンドを日本でも設立しようと、自民党議員による「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」が5日、発足した。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題で世界の金融市場で動揺が続く現状を日本のチャンスととらえて来春に中間報告をまとめ、来年末にも国家ファンド設立にこぎ着けたい考えだ。

 同議連の構想では、シンガポールの政府投資公社(GIC)のように、政府出資の投資会社を設立し、手数料を払って外貨準備の運用益や公的年金、政府保有不動産の一部の運用を委託する。
 日本の外貨準備は10月末で9544億ドル(約105兆円)に達し中国に次いで世界2位、運用益は年3~4兆円に上る。さらに約150兆円規模の公的年金や約42兆円の政府保有不動産、政府系金融機関保有資産など運用可能な国有財産は500兆円との試算もある。

 議連では、このうちごく一部の運用でも世界有数のファンドになると想定。当初運用規模1000億円程度から始めて徐々に拡大を図る。国籍を問わず世界一流の金融の“プロ”を日本に招いて運用にあたらせ、国内金融機関や市場の水準向上につなげたい考えだ。
 議連には衆参両院の42人が参加、会長に山本有二前金融担当相、事務局長には田村耕太郎前内閣府政務官が就任した。


 今月5日の記事。

 「日本の外貨準備は10月末で9544億ドル(約105兆円)に達し中国に次いで世界2位、運用益は年3~4兆円に上る。さらに約150兆円規模の公的年金や約42兆円の政府保有不動産、政府系金融機関保有資産など運用可能な国有財産は500兆円との試算もある。」

・・・「運用可能な国有財産は500兆円との試算もある」と産経。

 「資産効果で国民を豊かにする」というような景気のいい話を推進しようとするときには、「実は日本は金が有り余っているのだ」と言うわけです。

 増税論議や公共サービスの切り捨ての際には、「日本の借金は800兆を超える」とかなんとかという話を持ち出し、日本は貧乏だから、「増税やむなし」、「福祉の切り捨てやむなし」という誘導をさんざん行っていながら。

 政府も、産経などの政府擁護系マスコミも、そのときそのときの都合で、政府の財政状態を貧しいだとか、豊かだとかの使い分けをしているような気がします。

 政府に運用可能な約500兆円もの資産があるというのなら、日本政府の純債務は、国債発行残高800兆円(=政府粗債務)から500兆円(=政府資産)を引いた300兆円程度だということであり、日本国は財政破綻の危機に瀕してはいないという結論になるのではないでしょうか。

 300兆円程度の財政赤字であれば、国民に切迫感を与えられないから、政府資産の500兆円については、ひた隠しにしてあくまで、「日本の財政赤字は800兆円だ。」と国民を欺いて脅かしてきたのでしょう。

 「財政がひっ迫している」ということを国民の頭に叩きこめば、増税論議も、福祉の切り捨ても、国民の反対の声を容易く抑え込めることが出来ますからね。なんでもかんでも「金が無いからしょうがないじゃないか」で済ますことが出来るわけです。ネット界でも、聞き分けの良いマンセー族が、そのようなロジックで反対論者の説得に当たってくれています。

 そもそも、財政赤字の規模が800兆円でも300兆円でも、そのような大きな赤字をこしらえたのは他ならぬ政府であるのに、それを謝罪することもしないで、国民に負担を押し付けるだけの政府というのは実に腐った存在であるということは、指摘しておかなくてはなりません。





国家ファンド創設へ議連発足…政府資産有効運用目指す

2007-12-14 | 構造改革
国家ファンド創設へ議連発足…政府資産有効運用目指す
 世界2位の外貨準備や公的年金資産を有効的に運用する国家ファンドの創設を目指す自民党議員による「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」が5日、発足した。来年3月をめどに中間報告をまとめ、早ければ来年末の設立を実現したい考えだ。

 世界の金融市場ではオイルマネーで潤う中東諸国や経済成長を続ける中国、ロシアなどの新興国の国家ファンドが、株式や不動産、企業買収などのリスク投資を積極化し、存在感を高めている。日本版国家ファンドは、ほとんどを米国債購入に充てている外貨準備の運用を多様化し、運用利回りを高めるのが狙いだ。

 議連には衆参両院の議員42人が参加、会長には山本有二前金融担当相、事務局長には田村耕太郎前内閣府政務官が就任した。このほか中川秀直前幹事長や塩崎恭久前官房長官などが参加している。

 山本会長は5日の会見で、「金融のグローバリズムに政治としてどう対処すべきか考える時期だ」と述べ、国家ファンドの必要性を強調した。

 議連の構想はシンガポールの政府投資公社(GIC)がモデル。政府出資の投資会社を設立し手数料を支払い、外貨準備や公的年金、政府保有不動産の一部について運用を委託する。

 日本の外貨準備は10月末で9544億ドル(約105兆円)に達し中国に次ぎ世界2位、米国債による運用益は毎年3~4兆円にとどまっている。

 議連では、運用資産1000億円程度からスタートし、徐々に10兆円台まで引き上げたい考え。国の収入となる運用益を増やし財政再建に貢献すると同時に、世界から金融の“プロ”を招聘(しょうへい)し、国内金融機関や市場の競争力強化につなげることも狙っている。

                   ◇

 ≪議連の顔ぶれ≫

 【衆院】山本有二(会長)▽後藤田正純▽小池百合子▽西村康稔▽中川秀直▽山際大志郎▽片山さつき▽塩崎恭久▽大塚拓▽後藤茂之▽田村憲久▽中山泰秀▽船田元▽河村建夫▽尾身幸次▽石田真敏▽坂本剛二▽奥野信亮▽菅義偉▽竹本直一▽木原誠二▽今村雅弘▽佐藤ゆかり▽佐藤剛男▽福岡資麿▽塩谷立▽ 加藤勝信▽とかしきなおみ▽長崎幸太郎▽山口泰明▽赤沢亮正【参院】岸信夫▽関口昌一▽岡田直樹▽秋元司▽田村耕太郎▽世耕弘成▽椎名一保▽吉田博美▽山本一太▽山谷えり子▽愛知治郎=敬称略

                   ◇

【用語解説】国家ファンド(ソブリン・ウエルス・ファンド=SWFソブリン・SWF)

 明確な定義はないが、政府が直接・間接的に運営し、主に海外の資産を投資対象とするファンドを指す。1953年にクウェートが初めて設立した。株式や不動産のほか、M&A(合併・買収)投資も積極的に展開する。原油などの一次産品の輸出収入のほか、貿易黒字や為替介入に伴う外貨準備高が原資。世界で30前後のファンドがあるとされ、国際通貨基金(IMF)によると、資産規模は最大で総額2兆9000億ドル(約319兆円)に上る。


 世界2位の外貨準備や公的年金資産を有効的に運用する国家ファンドの創設を目指す自民党議員による「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」が5日、発足した・・・。

 小池百合子、中川秀直、片山さつき、佐藤ゆかり、世耕弘成、山本一太といった自称改革派議員が名を連ねていますが、こいつらは一体何を考えているのでしょうか。

 「国家ファンド創設」ということは、官が率先して、投資を行うということで、民間に出来ることを敢えて行おうという、「官から民へ」、「民が出来ることは民に」といった今までの主張と真逆の主張です。「民営化推進」などと能書きを垂れながら、よくこんなことを主張できるものですね。

 そもそも、政府の借金が800兆円とも言われている現在、そのような借金をした金で生まれた、外貨準備や公的年金資産で投機的マネーゲームを行うというのは、いわば、サラ金で借りた金でギャンブルをするようなもの。

 とても、まともな人間のやることではありません。こんなことを本気で考えるのは、頭のネジのぶっ飛んだ「カイカク馬鹿」ぐらいのものでしょう。

 大事な「公的年金資産」をマネーゲームに失敗して焦げ付かせても、どうせこいつらは知らぬ顔で、誤魔化すだけでしょう。

 むしろ、だぶついた外貨準備金など、さっさと処理して借金を減らすことに努めるべきなんですよ。土地・建物といった不動産はどんどん切り売りするくせに、暴落の予想されるドル札や米国債といった「いわば不良債権」を後生大事にする政府の姿勢は、国益の面から言って、非常に不可解な態度です。

 民間には、「不良債権処理」を強要しながら、自分は「不良債権処理」を行わないどころか、むしろ「不良債権」を増やしている政府。

 日本の国益より、アメリカの国益を優先させているのだとでも考えない限り、政府のこの態度についての説明がつきません。



 

日本郵政から切り捨てられたザ・アールの奥谷禮子

2007-12-05 | 構造改革
日本郵政から切り捨てられたザ・アールの奥谷禮子
2007年12月1日 FACTA

日本郵政グループ内で「おんな西川」などと陰口を叩かれている人材派遣会社「ザ・アール」の奥谷禮子社長が追放されそうだ。同社は旧日本郵政公社発足当時から職員研修プログラムの業務を受託しているのに、社長自身も日本郵政の社外取締役にちゃっかりおさまっていることが11月1日の参議院総務委員会で追及された。増田寛也総務相が「社外取締役は経営陣からの独立性が求められ、国民に誤解を与える」と苦言を呈すと、西川善文日本郵政社長もさすがにかばいきれないとみて「ご指摘を踏まえ、改めて検討します」と応じた。郵政グループはザ・アールとの契約が年度内に切れるのを待って、同社との関係を絶つ方針だ。
 
奥谷氏は年初に、「過労死は自己責任」などと大胆な主張をして物議を醸した人物だが、公私のけじめについてはまったく無頓着の様子。関係者によると、ザ・アールがこれまで郵政公社から請け負った商売は「職員のマナー講習」など7億円前後にのぼる。
 
「厚顔無恥にも程がある。西川社長の副業問題と構図は同じだ」と、日本郵政に詳しい参院議員は憤慨する。西川氏は今春、郵政公社総裁という公職にありながらも TBSなど上場企業6社の社外取締役や監査役を兼務していることが内部告発され、「総裁がアルバイトしていいのか」と非難を浴びた。西川社長が三井住友銀行時代のかつての部下たちを郵政グループ各社の幹部に据えていることへの風当たりも強い。「公私混同のやりたい放題が日本郵政の伝統として根付かなければよいが」と、幹部職員は心を痛めている。


 「既得権益」さえぶっ潰せば、日本はきれいになるとかいった単純思考しか出来ない「カイカク馬鹿」に対する反証になりうる記事です。

 「既得権益」とやらを奪い取った「いわゆるカイカク派」が、今度はそれを「カイカク利権」という形に変えて、おいしい思いをしているという実例が、今回やり玉に挙がった「ザ・アール」の奥谷禮子社長というわけですね。結局、「カイカク」といったところで、利権の所有者が変わっただけのような気もします。

 今もなお「小泉改革」を応援するブロガーがもしいるのであれば、改革後の不正や不公正についてもしっかりと目を光らせてほしい。それをしないで、「旧守派」は悪だから叩くが、「改革派」は善だから大目に見るというようなアンフェアな態度を取るのは止めてもらいたいものです。

 

(参考記事)
shionosさんの「大和ごころ。ときどきその他」切り捨てられる奥谷と居座る西川


ティー・ブレイク12.03

2007-12-03 | 構造改革
■ポートレート 松下 奈緒



松下奈緒(まつした なお、1985年2月8日 - )は、日本の女優、モデル、ピアニスト、歌手である。2006年4月、所属事務所を研音からジェイアイプロモーションに移籍した。

来歴・人物
* 生まれは、奈良県生駒市。
* 3歳よりクラシックピアノを習い、高校進学後、師に恵まれ音大進学を決意。
* 視力が悪く、コンタクトレンズを使用している。
* 2000年、エリートモデルルック日本グランプリ獲得を経てモデル活動を開始。その活動の中で芸能事務所からスカウトされ、活動の幅を拡げる。
* 2001年、冨永愛、滝沢沙織とともに爽健美茶のCMキャラクターに抜擢され、6代目爽健美人を務めた。しかし音大進学の夢を優先させるため、高2、3年時は芸能活動をセーブしていた。
* 2003年、兵庫県立川西北陵高等学校の英語コースを卒業し、演奏家を育てるコースの開設で著名な東京音楽大学に進学。現在はピアノを学びながら主に女優として活躍している。自動車免許を取得している。
* 2005年、フジテレビ系ドラマ『恋におちたら~僕の成功の秘密~』でヒロインを務める。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

■画像1 記念写真撮るのかnya~




■画像2 家庭教師(nya)




■画像3 これで庭も駆け回れるnya




■ネットの話題 2ちゃんねらー、英国旗をネタにする

英国旗、200年ぶりに変更も=ウェールズの赤い竜をデザインに
 【ロンドン28日時事】連合王国の象徴であるユニオン・ジャック(英国旗)が約200年ぶりに変わるかもしれない-。国旗にデザインが採用されていないウェールズの不満を背景に、ホッジ文化担当閣外相が「変更を検討する」と語り、注目を集めている。
 英国旗のデザインは1606年、イングランド(白地に赤十字)とスコットランド(青地に白の斜め十字)の組み合わせで原型ができ、1801年にアイルランド(白地に赤の斜め十字)が加わった。ただ、ウェールズは早くからイングランドに併合されていたため、ウェールズの旗にある赤い竜のデザインは組み入れられなかった。
 こうしたことから、ウェールズの国会議員らは「4つの連合国を表現するデザインに変えるべきだ」と訴えてきた。ホッジ文化担当相も「すべての国民が望むデザインを考えることはより大きな課題だ」と述べ、国旗変更の可能性を示唆した。


この記事をネタに2ちゃんねるで、デザイン論争が巻き起こる↓。

「痛いニュース(ノ∀`)」さん:「英国旗「ユニオン・ジャック」がウェールズ国旗を組み入れたデザインに変更か」

その経緯が「youtube」にUPされる↓。

新・英国旗 / New Union Flag(音声あり)

2ちゃんねらーの一人が、デザイン案を英紙(Telegraph)に送る↓

「痛いニュース(ノ∀`)」さん:「英国旗変更問題に日本から解決案」 2ちゃんねらーが考案した国旗デザインが英紙に掲載される

消費税を増税しようと手ぐすね引いている福田内閣

2007-11-27 | 構造改革
飄々と始まった増税論議 / SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] / 日経BP社
 11月5日、政府税制調査会の第5回総会が首相官邸でひっそりと開かれた。メディアの注目は民主党小沢代表の辞任騒動に集まったため、新聞ではほとんど触れられていなかった。

 さて、その場で2008年の税制大綱の大枠が事実上決まったのだが、ここではっきり福田内閣が何をやろうとしているのかという方向性が見えてきた。

 基本方針は、次の三つである。

1.社会保障財源としては消費税以外に考えられない
2.人的控除は圧縮もしくは廃止(配偶者控除が最大のターゲットだが、もしかすると給与所得控除や扶養控除の圧縮や廃止も視野に入れているのかもしれない)
3.法人税率引き下げ、研究開発投資支援の拡充

 消費税の税率引き上げについては、連合の高木会長ら一部を除いて、ほとんどの委員が大筋で一致したという。

 安倍内閣は「上げ潮政策」を採用して経済成長率を高めることを目指し、できるだけ増税を避けようという姿勢だった。だから消費税論議も封印してきたのだが、福田内閣はさっそく露骨な増税を打ち出してきたのである。

|景気低迷時に消費税増税は避けるべき

 それにしても、この時期に消費税増税というのは、まったく理解できない政策である。何も、わたしは安っぽい正義感だけで言っているのではない。景気が低迷している時期には、金持ちから税金をたっぷり取って、金のない人に再配分するのが大原則なのだ。

 現状を見ればよく分かるだろう。金があり余っている人はなかなか金を使おうとしないが、いまの庶民に10万~20万円を渡せばすぐに使ってくれるはずだ。こうすれば消費が拡大して景気が刺激される。

 これは経済のイロハのイである。だが、あえて福田内閣はその逆をやろうとしているのだ。消費税増税は、社会保障維持のための安定財源確保のためとも述べているが、このコラムで何度も書いたように、日本の財政状況は報道されているほどひどいわけではない。

 おそらく、消費税を上げることで、法人税率引き下げや研究開発投資支援拡充のための資金を確保したいのだろう。給料が上がらずに苦しんでいる庶民から金を取り上げて、空前の利益を上げている大企業に所得移転をするわけである。

 福田総理のイメージは、飄々(ひょうひょう)としてソフトのように見えるが、やっている経済政策は安倍前総理にくらべて、はるかに弱肉強食である。

 消費税は、低所得者ほど実質負担が大きい逆進的な税制だと言われる。低所得者は収入のなかから消費に回す割合が大きいから、税率は同じでも、所得の低い層ほど実質的な負担が大きくなってしまうのだ。


 森永 卓郎氏の指摘によると、福田内閣の経済政策の方向性は、↓このような感じですね。

 「消費税増税、配偶者控除等の各種控除の圧縮もしくは廃止というように一般国民に対して課税強化を行い、それによって出来た増収分を、法人税率引き下げ、研究開発投資支援の拡充に振り向けるという財界のみに都合のいい政策」

 結局、小泉改革の実相は、日本社会を財界と株主にとって都合の良い社会に作り替えることだったのだということが改めてよく分かります。

 本当のところは、一般国民に対して課税強化を行えば、その分、内需が縮小して、不景気となり、結果的に「財界」の首を絞めることになるんだけどね。

景気が低迷している時期には、金持ちから税金をたっぷり取って、金のない人に再配分するのが大原則なのだ。

 現状を見ればよく分かるだろう。金があり余っている人はなかなか金を使おうとしないが、いまの庶民に10万~20万円を渡せばすぐに使ってくれるはずだ。こうすれば消費が拡大して景気が刺激される。


という森永氏の指摘こそが正しいのだと思いますよ。

 「弱者救済」という言葉を安っぽいヒューマニズムとしか捉えないネオリベ信者が多いようですが、「経済的弱者」に金を渡すことは、景気拡大策の一環として有効であるということが彼らには分かっていないようです。

 ネオリベ信者には、自分たちの乏しい財布の中身から、さらに貧乏人が上前をはねていくという被害者意識しかないようです。ピラミッドの上に向かうべき批判が、自分と同等か、更に下に向かっているわけです。

 そのような被害者意識(自分たちは貧乏人からたかられている)が、ネオリベ信仰に繋がり、「財界」の側に与するようになるのでしょう。「財界」にとっては、実に都合のいい存在です。



アホで幼稚なマンセー族

2007-11-25 | 構造改革
 政府自民党のやり方・考え方に異を唱えると、すぐに「マスコミの扇動にいいように乗せられている」だとか、「左翼に騙されている」だとか某マンセー族はうるさいね。

 郵政選挙の時に、どれだけマスコミは「郵政民営化」を絶賛する報道を繰り広げたことか、自分が「扇動にいいように乗せられている」ときには何にも感じなかったのだろう。幸せな人だ。

 時によっては、政府自民党の言うことよりも、左翼の言うことの方が正しいときもあって当然なのに、それを否定する。政府自民党の言うことはすべて正しいとでも思っているのか。

 「左翼やマスコミ」を悪の権化のように毛嫌いし、「政府自民党」を正義の使者のように信じきるというのも、全ての存在を「善か悪か」のいずれかに当てはめようとする幼稚な二元論の現れなのだろう。

 「アメリカの日本に対する過度の干渉」を批判すると、「アメリカは日本のためを思って意見してくれているのだ」と左翼もびっくりの「お花畑ぶり」を発揮して、「アメリカ批判」を陰謀論と切って捨てる。

 政府自民党に都合の悪いことが報道されると、これは、中国の意を受けた左翼やマスコミが流す「ネガティブ・キャンペーン」だと決めつけること自体、「一種の陰謀論」とどう違うのだろう。

 同様に、アメリカに都合の悪いことが報道されると、これは中国による「日米離間工作だ」などとこれまた、中国の工作員の仕業にして、「アメリカの善意を疑うな」というキャンペーンに努める。

 マンセー族の言い分を聞いていると、まるでアメリカが、「悪気はないのに、中国の工作に嵌ってばかりいる、相当間抜けな国」みたいだ。たぶん、これは、マンセー族自体の対米観を反映するものなんだろうけど、随分とおひとよしなものの見方だと思う。

 マンセー族は、この百数十年の間、世界の覇権を握ってきたアングロ・サクソン民族を余りにも舐めているんじゃないか。

 政府自民党やアメリカにとって都合の悪い状況になるたびに、何の証拠も無しに「これは、中国あるいは、左翼あるいは、マスコミの策謀によるものだ」とかいったことを始終書き散らしながら、「アメリカの策謀を疑う意見」を「陰謀論だ」の一言で片づけ、またもや、「このような陰謀論は、中国あるいは、左翼あるいは、マスコミの策謀によるものだ」とするマンセー族自体、相当重篤な「陰謀論患者」なのだと思う。

 そんな彼らが、そもそも「陰謀論」批判など出来るわけないんだよ。


「理論右翼」って、誰のこと?

2007-11-17 | 構造改革
「もじもじスケッチ」さん「保守思想の国家観とは」より、
理論右翼の主張を聞くと、彼らは決してその言葉を口にしないが、私には全体主義者のように思える。


 「理論右翼」って、誰のこと?ご自分のことですか?

 確かに、あなたは、「国民より国家」、「個人より集団」という考えの「全体主義」チックな人ですね。

 「近代経済学」の素養もない、まっさらの頭に、日経を始めとした「ネオリベ」一辺倒の「経済記事」を日々、流し込めば、きっとあなたのような「ネオリベ脳」が出来上がるのでしょう。

 御用学者の「ネオリベ礼賛記事」を鵜呑みにして、「ネオリベ批判者」の(経済学に対する)無知を嘲笑う毎日をお過ごしのようでなによりです。

 いつもながら、現実に背を向けて、自分の信じる情報のみを頼りに、脳内で捏ね繰りあげた、その理論の素晴らしいことといったらありませんね。

 あなたこそ、「理論右翼」の名に相応しいお方です。

 さて、話は変わりますが、今では、「社会主義は間違いだった」というのが定説になっています。

 これは、マルクスの「資本論」を読んで、その理論の間違いに人々が気付いたからではなく、「社会主義」を国是としていた旧ソ連が、経済的に破綻したためです。

 つまり、理論ではなく現実から、人々は「社会主義は間違いだった」ということに気付いたのです。

 あなたのように、一人よがりの理論を振りかざすだけでは、誰も「ネオリベ」の良さ?に気付きはしないでしょう。

 実際のデータを提示しないと人は納得しませんよ。

 たとえば、私は、『「地域格差』は拡大しているか」・・・日本総合研究所の資料というエントリーで、木走さんの提示された資料を用いて論じています。
指標とすべきは、木走さんのおっしゃる通り、「1人当たり県民所得」なのです。

7.1人当たり県民所得(42KB)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h16/7_skenmin.xls

↑これで、平成8年度と平成16年度を比較して増減率を見てみると、実に悲惨な数字になっています。↓

【表2:1人当たり県民所得】(単位:千円)
都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
01 北海道 2,794 2,535 -9.27%
02 青森県 2,476 2,152 -13.09%
03 岩手県 2,572 2,363 -8.13%
04 宮城県 2,812 2,530 -10.03%
05 秋田県 2,491 2,297 -7.79%
06 山形県 2,604 2,411 -7.41%
07 福島県 2,897 2,712 -6.39%
08 茨城県 3,148 2,929 -6.96%
09 栃木県 3,314 3,062 -7.60%
10 群馬県 3,034 2,828 -6.79%
11 埼玉県 3,324 2,956 -11.07%
12 千葉県 3,116 2,976 -4.49%
13 東京都 4,282 4,559 +6.47%
14 神奈川 3,576 3,174 -11.24%
15 新潟県 2,898 2,688 -7.25%
16 富山県 3,316 3,027 -8.72%
17 石川県 2,979 2,790 -6.34%
18 福井県 2,930 2,832 -3.34%
19 山梨県 2,896 2,548 -12.01%
20 長野県 2,980 2,733 -8.29%
21 岐阜県 2,999 2,701 -9.94%
22 静岡県 3,357 3,247 -3.28%
23 愛知県 3,723 3,440 -7.60%
24 三重県 3,015 2,988 -0.90%
25 滋賀県 3,529 3,235 -8.33%
26 京都府 3,034 2,849 -6.10%
27 大阪府 3,534 3,039 -14.01%
28 兵庫県 3,301 2,651 -19.69%
29 奈良県 2,968 2,599 -12.43%
30 和歌山 2,601 2,525 -2.92%
31 鳥取県 2,621 2,371 -9.54%
32 島根県 2,549 2,425 -4.86%
33 岡山県 2,844 2,578 -9.35%
34 広島県 3,184 2,943 -7.57%
35 山口県 2,899 2,817 -2.83%
36 徳島県 2,784 2,808 +0.86%
37 香川県 2,844 2,630 -7.52%
38 愛媛県 2,637 2,309 -12.44%
39 高知県 2,437 2,171 -10,92%
40 福岡県 2,792 2,570 -7.95%
41 佐賀県 2,597 2,453 -5.54%
42 長崎県 2,380 2,190 -7.98%
43 熊本県 2,460 2,366 -3.82%
44 大分県 2,690 2,653 -1.38%
45 宮崎県 2,415 2,340 -3.11%
46 鹿児島 2,276 2,207 -3.03%
47 沖縄県 2,050 1,987 -3.07%
* 全県計 3,188 2,978 -6.59%
* ブロック別
01 北海道・東北 2,746 2,508 -8.67%
02 関東 3,556 3,427 -3.63%
03 中部 3,374 3,171 -6.02%
04 近畿 3,321 2,868 -13.64%
05 中国 2,935 2,730 -6.98%
06 四国 2,678 2,460 -8.14%
07 九州 2,529 2,391 -5.46%
* 政令指定都市
01 札幌市 3,025 2,700 -10.74%
02 仙台市 3,300 2,935 -11.06%
03 千葉市 3,472 3,348 -3.57%
04 横浜市 3,579 3,110 -13.10%
05 川崎市 3,643 3,281 -9.94%
06 名古屋 3,940 3,241 -17.74%
07 京都市 3,148 2,911 -7.53%
08 大阪市 4,106 3,311 -19.36%
09 神戸市 3,136 2,773 -11.58%
10 北九州 3,048 2,510 -17.65%
11 福岡市 3,338 3,109 -6.86%
* 都市計 3,510 3,052 -13.05%

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
* 全県計 3,188 2,978 -6.59%

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
13 東京都 4,282 4,559 +6.47%

 まず平成8年から16年までの9年間で全国平均では3,188千円から2,978千円と-6.59%も平均所得が下がっている中で東京だけが突出して増加傾向にあることがわかります。

 全都道府県計が、この九年間で6.59%の減少。これはひどいものですね。これで、よく景気は「いざなぎ景気を超えた」などと言えたものです。国民を騙すのも大概にしてほしい。


 もう一度、指摘しておきますが、1人当たり県民所得の「全都道府県計が、この九年間で6.59%の減少」ですよ。


 さて、次に、bewaadさんが最近出された「真の失業率」推計最新版(2007-09現在)を引用させてもらうことにします。

「真の失業率」推計最新版(2007-09現在) | bewaad institute@kasumigasekiより、




         真の失業率
            ↓
1990  2.1%     3.2%          134  204

1991  2.1%     2.4%          136  155
1992  2.2%     2.2%          142  142
1993  2.5%     2.8%          166  183
1994  2.9%     3.4%          192  228
1995  3.2%     4.0%          210  266

1996  3.4%     4.1%          225  276
1997  3.4%     3.8%          230  262
1998  4.1%     5.1%          279  348
1999  4.7%     6.3%          317  435
2000  4.7%     7.0%          320  485

2001  5.0%     7.9%          340  551
2002  5.4%     9.4%          359  660
2003  5.3%    10.0%          350  700
2004  4.7%    10.0%          313  705
2005  4.4%     9.8%          294  688

2006  4.1%     9.5%    6.7%    275  671  458


 小泉政権以後の「真の失業率」の凄さときたら、終戦直後を除けば戦後最悪でしょうね。「いざなぎ景気を超えた」景気拡大というのは、「大本営発表」のようなものに過ぎず、実際は、「小泉不況」というべき5年間だったわけです。

 格差拡大も、福祉切り捨ても、「小泉改革」で本当に経済が良くなっていたのなら、これほどの論議にはなっていなかったでしょう。「経済」が駄目で、「格差」も拡大し、「福祉」まで切り捨てられ、さらに「増税」論議ですからね。国民にとっては、まさに、踏んだり蹴ったりです。

 「小泉改革」の結果というのは散々なものだった、小泉内閣の経済政策は失敗だったとしか言えません。

 話を戻します。「もじもじスケッチ」さん。「ネオリベは素晴らしい」、「小泉改革で、経済は良くなった」と主張するなら、「ネオリベの素晴らしさ」や「小泉政権下での経済の立ち直り振り」を是非データで示して下さいな。

 あらかじめ言っておきますが、「金額ベースで、1%のマイナスだけど、物価が2%下がったから、実質1%の成長だ」などというデフレを利用した詭弁を用いるのは止めてくださいね。



小泉改革と医療崩壊

2007-11-13 | 構造改革
 昨日(11/12)、関西テレビ(大阪、フジ系列)で、今年8月、奈良で起こった産科タライ回し事件を扱っていました。例によって、医療関係者の側を叩く一方的な報道だったので、ちょっとここで、振り返ってみることにします。

病院「たらい回し」で流産 赤江「救急体制に不備はなかったの?」:スーパーモーニング:J-CAST テレビウォッチより、
2007/8/30

また出産をめぐり病院タライ回しの悲劇が繰り返された。11病院に拒否されたあげくに、救急車が不運にも交通事故に遭遇、流産した悲劇を取り上げた。「救急体制に不備はなかったのでしょうかね?」(赤江珠緒キャスター)。
小児科、産科はなり手がない

報道によると、橿原市の消防の問い合わせに対し「処理中」「満員」との理由で、11の病院が受け入れを「拒否」した。

しかし中には、最初に問い合わせを受けた奈良県立医大病院のように、産婦人科には空きベッドあった、というケースもあった。さらに一般救急を原則受け入れていない高度医療を行う大阪府立母子保健総合医療センターも空き病床があったのに「拒否」した。

それぞれ拒否の理由を挙げるのだが、いずれも欠けているのは、病院、医師ほんらい自覚すべき、命にかかわる患者への基本的な責任。とくに呆れたのは、深夜にかけずり回って病院探しをしている「救急患者」に「一般救急は受け入れていない」という大阪府立母子保健総合医療センターの紋切り型の対応だ。


 スーパーモーニング(8/30)は、奈良で起こった産科タライ回し事件をこのように扱っていました。病院、医師、医療センターという医療サービスを提供する側を、叩いて事足れりとするまさに「紋切り型」の報道です。他のワイドショーでも、ほぼ同様だったのではないでしょうか。

 「やる気のない医療関係者が、妊婦を見殺しにした」という構図は確かに分かりやすいけれど、それはどうも実態とは違うような気がします。以下は、J-CASTニュース。

 
J-CASTニュース : なぜ産科医は患者を断るのか 出産費用踏み倒しに「置き去り」

妊娠しても産婦人科に行かず、陣痛が来て救急車で病院に運ばれる。これを産科医の間では「飛び込み出産」といい、こうした例が増えているらしい。ただ、妊婦の状態などの情報が全くないため「責任が取れない」と、受け入れを断る産科医も多い。さらに、「飛び込み出産」の場合、出産費用を踏み倒したり、赤ちゃんを病院に置き去りにする可能性が高いというのだ。そうした中、奈良県で、かかりつけの産科医がいない妊婦 (38)が救急車で運ばれ、受け入れる病院がなく、死産するという「事件」が起こった。
定期健診、かかりつけの産科医なし?

奈良県の「事件」は、橿原市に住む妊娠7ヶ月の女性が2007年8月29日午前2時45分頃、スーパーで買物中に体調を崩し救急車で搬送された。救急隊は12の病院に延べ16回受け入れを要請したものの「他の分娩で手が離せない」「責任を持てる状況ではない」などの理由で断られた。女性は午前 5時頃に死産した、というもの。「なぜこんなにも受け入れ拒否をするのか」と、メディアは拒否した病院や、国内の産科医不足、セーフティーネットの脆弱さを非難した。

奈良市にある「高の原中央病院」の齊藤守重理事長は、この女性が妊娠7ヵ月ということを知り「あれ?」と思ったという。当然、定期健診を受けねばならないし、分娩の予約は妊娠4ヶ月でも遅いほう。それなのにかかりつけの産科医すらいないというからだ。そして、

「全国的に産科医が不足していて、いま分娩を担当している先生方は、予約のある救急患者を24時間ぶっ通しで診療しているようなもの。そこへ何の情報もない妊婦が運ばれてきたら、もうパニックですよ」

と、緊急で妊婦を受け入れるのは難しい状況だと話す。
妊婦8人のうち出産費用を払ったのはわずか2人

朝日新聞の07年8月26日の記事(神奈川県版)によれば、妊娠してから一度も検診を受けず、陣痛が来てはじめて救急車を呼ぶ「飛び込み出産」が増えているとし、

「赤ちゃんが逆子なのか、どれぐらいの大きさか、どんな感染症を持っているのかもわからない」

という医師のコメントを紹介。これでは責任が持てない、と診療を断る病院が多いと書いている。また、これとは異なる病院側のリスクとして、神奈川県立子供医療センターの例を挙げている。

「1~4月に来た飛び込み出産の妊婦8人のうち、出産費用を払ったのはわずか2人しかいなかった。なかには生まれた赤ちゃんをおいていってしまった女性もいたという」

これまで「飛び込み出産」は不法滞在の外国人や、10代で妊娠したために親に相談できなかったなどの事情がある妊婦だったが、最近はほとんどが日本人なのだそうだ。こんなことが続くのなら、ますます受け入れ拒否の病院が増えていく。奈良の妊婦死産「事件」の背景と、こうした実態は無関係とは言えないだろう。


 「妊娠しても産婦人科に行かず、陣痛が来て救急車で病院に運ばれる。これを産科医の間では「飛び込み出産」といい、こうした例が増えているらしい」とJ-CASTニュースは報じています。

 「ネットゲリラ」さんも、「爆弾妊婦の自爆テロ」で、以下のような病院側の嘆きを伝えています。
「病院や役所ばかり責められるけど、妊娠六カ月まで医者に行かない妊婦がそもそも悪い」
 札幌市内の総合病院の産婦人科で働く四十代男性医師は、奈良の女性の自己責任を問う。
 奈良の女性も、札幌で五回以上断られた女性五人も、全員に産科受診歴が無かった。
 「妊娠したかなと思ってから出産まで約二百八十日。その間、一度も受診しないというのは確信犯ですよ」。札幌市産婦人科医会の遠藤一行会長も語気を強めた。
 遠藤医師が「確信犯」と嘆く患者の大半は国保の保険料が未納、または無保険者という。
 保険料未納なら、失業や災害など特別な事情がない限り一時金は差し止められる。保険を使えないので妊娠しても産科にかからず、陣痛が始まってから119番通報する。
 「救急車に乗れば必ずどこかの病院に行けますから。無事産んだら、退院する段になってお金がない、と。ひどい場合は子供を置いて失踪する。病院はやってられませんよ」。遠藤医師は嘆く。


 どうやら、国保の未納者、または無保険者が、保険を使えないので妊娠しても産科にかからず、陣痛が始まってから119番通報するという事情があるようです。奈良の女性の場合も産科受診歴が無かったそうです。

 こういうことは、人のプライバシーにかかわることであり、また、結果的に死んだ人に対する批判になるので、テレビ局は、あまり触れたくないことなのかもしれません。(それとも、何の事情も調べずに適当なことを報道しているのか)

 しかしながら、一方的に医療関係者を悪者にしてすましているテレビ局のいい加減さについては、もっと、批判がなされるべきでしょう。

 「飛び込み出産」が増えたのも、小泉改革による国民の貧困化が遠因にあります(改革論者からは、何でもかんでも改革のせいにするなと言われそうですけど)。貧困層はすでに保険料が払えず、「国民皆保険」の理念が崩壊し始めているのです。

 さて、ここまでは、主に妊婦側の現状でしたが、医療側の現状はどうなっているのか・・・。

 「産科医療のこれから」さんが、文藝春秋10月号の「ルポ医療崩壊 病院を壊すのは誰だ 医師が逃げ、診療科は閉鎖。再生への処方箋は 奥野修司 (文藝春秋 2007年10月号 p174-183)」を転載されているので、読んでください。一部、孫引きさせてもらいます。

  「産科医療のこれから」「ルポ医療崩壊 病院を壊すのは誰だ」より、

まずは、阪南市立病院の現状
この病院を襲った最初の危機は今年の一月だった。それまで内科の常勤医は六人いたが、医師を派遣している和歌山県立医大から一人を引き揚げたいといってきたのだ。五人体制に変えたが、三月にまた一人が開業のために辞意を表明。残された四人は、これでは仕事が過重になるといって、六月末で全員辞めてしまった。三島秀雄院長は言う。
「内科は病院の核ですから、これがないとどうしようもありません。病院の収入の約四割が内科でした。内科の休止で収入は五割がた落ち込んでいます。内科休止の影響がこれほど大きいとは……。現在は、外科や整形外科、小児科など、常勤医師十二人で診療を続けています。交代で一人ずつ当直に当たっていますが、夜間に来る患者はあまりいません。消防もこの病院には内科がないことを知っていますので、内科系の患者が運び込まれることはまれです」


岩手県立宮古病院の場合。
病院の玄関を入ると、掲示板に
「九月から内科医師一名が常勤体制から非常勤になります」
「眼科は四月から休診しています」
「七月から循環器科医師不在となるため当分の間救急のみとします」
と書かれた紙がところ狭しと張られ、医師不足の深刻ざがリアルに伝わってくる。
「三年前まで、一般内科の先生は四人いたのですが、いま常勤医は一人です。消化器系など内科全体で一日の息者は二百五十人。このうち一般内科は百人で、これを一人で診ているんです」
菅野千治院長は言う。この四月まで、やはり医師不足が深刻で、緊急医師派遣システムの対象となった県立大船渡病院の院長をしていたという。
 辞めた医師の中には、大学の医局が引き揚げた医師もいれば開業した医師もいる。辞める理由は、「仕事がきつい」「自分の時間が持てない」からだという。
「病院の敷地に医師たちの官舎がありますが、毎日、官舎と病院の往復で終わりです。科長になると、土日も病院に出ますから休みはなし。休ませてあげたいけど、そんな贅沢は言ってられません。当直した日は、朝そのまま診察にはいりますし、診察がないときでも、呼び出されたらすぐ駆けつけられるよう、一時間以内のところで待機しています。そうすると、山と海に囲まれている宮古から出られない。家族サービスといっても、近くの海岸をドライブして終わりです。まるで囚人ですよ。学会にもなかなか出られません。出ても年にせいぜい一、二回でしょうか。先日、名古屋の学会に出るのに飛行機に乗ったのですが、もう呼ぱれても戻れないな、と思うとやっと落ち着くんです」

 
国の政策が医師不足を生んだ

 全国自治体病院協議会の小山田恵会長は、医師不足が、どれほど医師の過童労働を招いているかを、バスの運転手にたとえた。
「夜通し長距離バスを違転した上で、朝の通勤・通学バスを運転していたら、みんな何と言いますか。乗客の命と安全を軽視するのか。同じことが医師に起きているんです。厚労省の調査では、勤務医の勤務時間は週平均六十三・三時間。超過勤務は月九十三・二時間。労災に認定される超過勤務は月八十時間が基準ですから、動務医のほとんどは死ねば全員過労死に認定されるような状況で働いているのです。ではどれくらい足りないのか。
 勤務医の総数が十六万七千人で、これが週六十三・三時間働いている。これを週四十八時間、つまり週休一日で八時間勤務にするには、現状では五万五千人が足りないことがわかります」
OECD(経済協力開発機構)、によれば、人口千人あたりの医師数は、0ECD加盟国の平均は三人だが、日本は二人で三十カ国中二十七位である。
 医療経済や公共経済が専門の日野秀逸東北大学教授によれば、この医師不足は「明らかに政策によって引き起こされた」という。
 七〇年代、日本の医師の数は世界的水準の半分だった。そこで田中内閣は「一県一医大構想」を打ち上げる。これで順調に医師が増えていくのだが、八○年代の第二臨調、いわゆる土光臨調で大きく
変わる。大槻文平日経連会長(三菱鉱業セメント会長)の主導で、社会保険を引き締める答申を出したのだ。「医師が増えれば医療費も増える」と、八七年から十年で七・七%、医学部の定員を減らした。」それから十年後、さらなる医師抑制の閣議決定がなされる。このときの厚生大臣が小泉純一郎だった。
「経済界の意向が強く反映されてきたのが、現在の医師不足につながってきているのです」(日野氏)


現状を無視した小泉改革

 医師の間では、「医療崩壌」をイギリスのサッチャー政権の改草になぞらえることが常識になっている。
 イギリスでは、NHS(国民保険サービス)という側度によって医療を国民に無料で提供してきた。ところが次第に財政負担が重くなり、サツチャー政権は医療費の総額を抑えたうえで、NHSを四百あまりの独立行政法人に分割して競争させたのである。その結果どうなったか、前出の小山田氏は言う。
「価格競争が起こって医療の質が確保されるはずが、医師の労働条件の悪化を招いたのです。誇りと勤労意欲を奪われた医師たちは、海外(アメリカ、カナダ、オーストラリア)に逃避し、極端な医師不足が起こりました。ブレア政権で見直しが図られたのですが、そのときの目標が、救急都門の最大待機時間を四時間、病院外来患者の予約の最大待機期間を三カ月にすることですから驚きです。普通に病院へ行くと、まず診てもらえるのは景低でも二日後です」

  
 この青写真を描いたのが、全英にチェーン展開しているスーパーマーケット「セインズベリー」のグリフィス会長だった、という。小泉政権で、医療改草の重点を〈公的医療費の伸びの抑制〉におき、アメリカ型の・医療を目指したのが経済財政諮問会議だったという点でもよく似ている。
 小泉政権の改草がいかにひどかったか、旧厚生省の「医療保険審議会」の委員も務めた医享評論家の水野肇氏が言う。
「小泉改草での医療費削減は無茶書茶でした。一律何%カットというやり方だったのですから、医療の現状を無視しています。結局は、弱者に全部ツケが回ってくる改革だったのです」
病院の商品単価である診療報酬ですら、経営が存続できなくなるまで下げてしまうのだから、「今度の診療報酬改定が期待外れなら、全国の医師はもう黙ってない」と憤る医師も少なくない。


 最後に、奥野修司氏はこう締めくくっています。

 本気で医療費を削減するなら、予防医療に力を入れるぺきだろう。実際に医療費払削減した自治体もある。だが国レベルでは、予防医療の指標である乳ガン検診のマンモグラフィー受診率が四.一%(『OECD Health Data2007』)と最下位であることをみても、予防医療にまったく関心がないことを示している。前出の水野肇氏によれば、
「財務省は予防医療など金をドプに捨てるようなものだという考えですから、まず予算はつかないでしょうね」
という。いったいこの国の医療はどうなっていくのだろう。ビジョンを持たない指導者を戴いた日本は、本当に泥船に乗ってしまったのだろうか。医療崩壊の現場を数多く見てきた長氏ば、怒りを込めて言った。
「教育と医療が崩壌したら、その国家は崩壕するといわれています。すでに教育が崩壊しているのに、このうえ医療が崩壌したら、ほんとに日本は駄目な国になってしまいます」

 
 小泉・竹中等の改革論者は、「金を削っても、医療関係者を酷使すれば何とかなる」、「現場に泣いてもらえばいい」とでも、考えていたのでしょうか。

 彼らがやっていることは、「金がないからと言って、子供(=医療制度)に必要な栄養を与えずに衰弱死させようとしている母親」の虐待行為によく似ています。

 日本がこれまで守ってきた医療制度や年金制度といったセーフティ・ネットを、「改革」と称しながら、結果的にぼろぼろにしているのが「小泉改革」なのです。

 改革推進者は、「経費節減のためには、安全をも犠牲にする」という「耐震強度偽装事件」のヒューザーと同様の行いをしているのです。

 

「仮説:反対陣営にいる人は、「馬鹿」か「嘘吐き」にしか見えない」の事例研究

2007-11-03 | 構造改革
 再度、みずきさんのブログもじもじスケッチ: 構造改革批判の勘違い事例。与謝野氏が潰した安倍首相の人事より、
この方は、名無しのコラムニストさんの意見をそのままなぞっている。デタラメ理論を前提にして改革派をデタラメと決めつけたらどうなるんだろ。デタラメ×デタラメ=話にならない
そりゃぁ理解不能で、相手がカルトにも見えるだろう(笑)
余計なお世話とは思いつつ、参考にするコラムはもう少し選んだほうがよいと思う。スタンスの違う人の経済評論をたくさん読み比べてみると、バランス感覚が養われるのではないか。


 ま、この人の言わんとしていることは、要するに、
「構造改革」の重要性が何にも分かっていない馬鹿ブロガー(=私のこと)が、名無しのコラムニストのデタラメな「反構造改革論」を鵜呑みにして馬鹿な事を言ってるわい。アホなコラムを読んで、妄言を吐くのも大概にしろ。

と言うことのようです。

アホなウヨサヨのせいで、せっかくの「構造改革」が立ち枯れようとしていることに焦燥感を募らせているのでしょう。「ここは、反構造改革を唱える愚民にお説教をしてやらなければいけない」という有りがたい思し召しだったのでしょうね。

スタンスの違う人の経済評論をたくさん読み比べてみると、バランス感覚が養われるのではないか。


・・・はあ?「構造改革」一色に染まった構造改革原理主義者であるあなた自身には、バランス感覚など微塵も感じられませんが・・・。

この方は、名無しのコラムニストさんの意見をそのままなぞっている。デタラメ理論を前提にして・・・


・・・コモリン(=産経新聞の古森氏)の脳内妄想に釣られて、「米国議会調査で強制連行の濡れ衣が晴れました」という脳天気なエントリーを載せたあなただけには、言われたくないですわ。('▽') アハハ

 先日、反対陣営にいる人たちは、「馬鹿」か「嘘吐き」にしか見えないというエントリーをあげましたが、今度の件は、「仮説:反対陣営にいる人は、「馬鹿」か「嘘吐き」にしか見えない」の事例研究のようなものです。

 「構造改革原理主義者」のこの人には、「構造改革」を強く否定する私がこの上なく馬鹿に見えているのでしょう。私に対する言動が侮蔑的で、嘲笑的なことからも、それが見て取れます。

 一方「構造改革」を強く否定する私は、「構造改革原理主義者」全般を頭からバカにしていますから、事あるごとに彼らに対し揶揄と非難を繰り返しています。

 方向性が逆なだけで、「相手が馬鹿に見えて、そしてそんな馬鹿な相手を揶揄したい、嘲笑したいと思っている」点はきっと同じなのでしょう。



「構造改革批判の勘違い事例」の勘違い

2007-11-01 | 構造改革
 みずきさんのブログもじもじスケッチ: 構造改革批判の勘違い事例。与謝野氏が潰した安倍首相の人事より、

戦後レジームとは中央集権の官僚内閣制をもって、金融・経済に国が関与することによって、内需を操作してきた。


 嘘を吐くのは止めなさい。官僚内閣制というのは、「超然内閣制とも言い、内閣が議会とは無関係に存立する制度で、たとえば、明治時代の日本における藩閥制度のようなもの」のことですよ。今の日本において、内閣が議会とは無関係に存立するなどと本気で考えているのですか。

 日本は、制度的にはあくまでも議院内閣制ですよ。議院内閣制であるのに、政府が官僚に負けているとしたら、政府自民党が不甲斐無いのです。つまり、自民党には政権担当能力がないというだけの話です。会社にたとえれば、社長が社員に言い負かされている状態であり、単に社長が無能なだけのことです。

「真の保守」と理念を掲げる政治家なら、いい加減特定郵便局長会やらゼネコンと手を切れ。


 特定郵便局長会もゼネコンも日本社会の構成員として、日本社会で存続し続ける権利を持っています。

 日本国に対して選挙権もないアメリカの意向を選挙民の想いよりも優先するような考えこそ間違っています。

 「真の保守」と理念を掲げる政治家なら、いい加減アメリカの言いなりになるのを止めろと言うべきです。

一方、保護されてきた農家は、いまや自由化の方向に向かわざるを得ない。


 どうして自由化の方向に向かわざるを得ないのでしょう。日本の食を守っている農家を壊滅させようとでも思っているのですか。

大きな政府の行き着く先は、既得権益者だけが潤う本物の格差社会到来である。


 以前の日本が大きな政府だったなどと嘘を言うのは止めなさい。日本は戦後一貫して、小さい政府です。

 今の日本こそ、一握りの株主と資本家のみが潤う格差社会なのですよ。

 保守層の嫌う中国の似非資本主義に、実は一番近い思考をしているのが、大きな政府を理想とする武士道精神の政治家達である。


 何を根拠にそのようなことを言うのでしょうか。

 官僚主義は温存した上で「国民の生活は政治が守る」と言っているのだから、社会主義政策そのものである。彼らに任せたら、財政破綻する。


 「国民の生活は政治が守る」のは当たり前のことではないですか。

 アメリカに経済を食い荒らされているのにも気付かず、全て日本のせいにする構造改革論者は、経済における「自虐史観」の持ち主なのですね。

「みんな平等」「競争のない社会」という理想論には、武士=官僚は高潔な人達だから、庶民であるか弱い私達のことは国がなんとかしてくれる、国が仕事も与えてくれるという甘えの構造が潜んでいる。


 「みんな平等」「競争のない社会」などということは少なくとも私は言っていませんよ。

 甘えの構造とかなんとか言いますけど、自力で生きていけない人はどうするんですか。勝手に死んでいけということですか。世の中には、あなたのような強い人ばかりじゃないんですよ。

「一段の財政支出のカットによってプライマリーバランスの回復することを主張する」>


違う違う。財政支出のカットはすでにいっぱいいっぱいのところまで削減してきた。次は、本丸の公務員改革を断行しなければならない。独立行政法人の解体・整理統合もそう。これだけでどれほど削減できるか。そして今までの政府・日銀の経済失策を転換して、経済成長率をせめてドイツ並みにする。それは他の改革とも連動する。


 「独立行政法人の解体・整理統合」というのは、「財政支出のカット」にほかならないでしょう。

デタラメ理論を前提にして改革派をデタラメと決めつけたらどうなるんだろ。デタラメ×デタラメ=話にならない


 中川秀直元幹事長ら「上げ潮派」が主張しているのは、経済成長と歳出削減ですよ。ほら、ここにも書いてあるでしょう。↓

消費税問うか回避か自民党 「増税」vs「上げ潮」背景に衆院選戦略
財政再建には消費税率引き上げが必要だとする与謝野馨前官房長官ら「増税不可避派」と、経済成長と歳出削減が優先だという中川秀直元幹事長ら「上げ潮派」の対立が激化している。


 「上げ潮派」は「歳出削減を目指していない」などと、自分の脳内の妄想で、他人の言ってることを「デタラメ」と決めつけるとはね。

 「もじもじスケッチ」は相も変わらず、妄想花盛りですね。あなたの妄想の相手をするのはいい加減疲れますよ。


増税派と成長派

2007-10-29 | 構造改革
経済コラムマガジンより、
増税派と成長派

* 政府部門全体の債務
先週号でプライマリーバランス回復方針が「悪魔の囁き」と断じた。この方針は、政府の財務諸表を静態的に捉え、これ以上借金を増やさないことを目的としている。もし財政が経済に影響を与えないのなら、この方針に問題はない。しかし財政は経済活動に確実に影響を与えるのである。そしてそれが表面化するまでにはある程度の時間が掛かる。

プライマリーバランス回復を巡って、不毛な議論が行われている。いわゆる「増税派」と「成長派」との間のやり取りである。増税派は、財政支出の削減ではなく増税を行ってプライマリーバランスを回復させようと考えている。一方、成長派は、増税を避け、一段の財政支出のカットによってプライマリーバランスの回復することを主張する。成長派はまさに「小さな政府」論者である。


ところでこの議論を進めるに当たり、はっきりさせておく事柄がある。プライマリーバランスの回復といった場合、増税派・成長派の両者の対象は一般会計のプライマリーバランスである。しかし政府の財政には、一般会計とは別に、年金や外為といった特別会計がある。しかもその特別会計は金額的に莫大なものになっている。財政の経済に与える影響といった場合には、当然、特別会計を含めて考えるべきである。さらに地方にも財政がある。

つまり日本全体の財政は、一般会計だけでなく、特別会計や地方の財政といったものまで含めた「政府部門」という形で捉えるべきである。財政の経済への影響も政府部門全体で考えなければならない。例えば景気対策として減税(一般会計の赤字の増加)を行っても、一方で同時に年金の保険料を上げれば(特別会計の黒字の増加)、減税の効果が消されてしまうのである。


ところが「増税派」にしても「成長派」にしても、どういう訳か特別会計については触れたがらない。両者ともに特別会計に言及することを避ける。特別会計に話が及ぶと両者ともに、途端に話がしどろもどろになる。一般会計は赤字であるが、特別会計は大幅な黒字であることがバレるからと筆者は見ている。

筆者達は、先週号で述べたように政府部門全体で財政を捉える。むしろ一般会計の歳出・歳入の均衡によるプライマリーバランス回復方針というものが、誤った政策に繋がることを指摘したい。筆者達が財政を問題にする場合は、政府部門全体の債務、もっと正確に言えば金融資産や社会保障積立金を債務残高から差引いた「純債務」を見る(日本の場合、欧米先進国に比べ政府の金融資産や社会保障積立金がとんでもなく巨額だから)。


04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」で述べたように、日本のGDPに対する政府部門全体の純債務の比率は他の先進国並である。つまり純債務比率を見る限り、日本の財政は特に問題はない。そしてOECDが使っているこの「GDPに対する純債務比率」こそが、各国の財政状態を見る時の国際標準である。

ところで以前の日本の純債務比率はもっと小さかった。つまり日本の財政は超健全だったのである。他の先進国並に急激に悪くなったのは、橋本政権から始まった財政再建運動からである。一般会計の健全化を目指した緊縮財政が、日本の経済活動にダメージを与え、むしろ日本の純債務比率を悪化させたと筆者は考える。

また日本では財政の負担を減らすため、異常に金融政策に重点を置いた政策が採られるようになった。日銀も中途半端な考えのため、この政府の方針に押切られ、過剰な金融緩和をいつまでも採り続けている。はっきりと「景気対策に日銀は協力するがこれには限度がある。これ以上の景気対策は財政でやってくれ。」と言うべきである。異常な金融緩和の弊害が、過去にバブルを生み、今回は回り回って今日問題になっている米国のサブプライム問題や資源高騰の一因にもなっている(これについては近々取上げる)。


* 「目くそ鼻くそ」の対立関係
「増税派」と「成長派」の話に戻る。増税派は、前官房長官の与謝野氏や政調会長の谷垣氏、そして財務省の主流派が主なメンバーである。成長派は竹中平蔵氏や中川前幹事長などである。財界は成長派に近い。

増税派の言い分は分りやすい。増税によって政府の収入を直接的に増やすというのだから誰にも理解できる。しかし増税によって家計の可処分所得は減り、消費は減る。当然、これによって内需は縮小する。増税派は暗黙のうちに不足する内需を補うための外需の増大を期待している。実際、ここ数年、たまたま新興国の経済発展によって日本の輸出が好調だったので、このシナリオが順調に行っているかのように見えたのである。


一方、成長派の主張は訳が分らない。財政支出をカットすることによって経済が成長すると主張している。財政支出を削減しても、規制を緩和し、企業の競争力を高めれば経済は成長すると言うのである。また財政支出も成長分野にシフトすることによって潜在成長率が高められ、日本経済の成長率を大きくすることが可能としている。まるでオカルトの世界である。

また成長派は、法人税の減税によって企業の投資を増大させることが出来るとしている。さらに成長派がこだわるのは政府部門の民営化である。民営化によって日本の潜在成長率が高くなると主張する。まさに構造改革派の主張そのものである。


しかし成長派が密かに頼りにするのも外需である。財政支出をカットすれば内需は縮小する。企業の投資が一時的に増えても、国内に需要がなければ、生産物は輸出する他はない。つまり増税派も成長派も暗黙のうちに外需依存の経済を想定している。しかし両者ともにこのことに気が付いていないか、もしくは気が付いていてもそれを口に出すことはない。

財政を拡大せずに経済を成長させるには、外需への依存を大きくする他はない。したがって為替の動向が重要になる。実際、政府・日銀は円高に徹底した為替介入で対処してきた。また日銀には超低金利を維持するよう要請してきた。また円安を助長する円キャリー取引を容認してきたのも増税派・成長派に共通している。


増税派と成長派は、今日、互いに相手を非難しているが、両者は小泉政権を一緒に支えていた。しかし郵政改革反対派に多くいた積極財政派という共通の敵が自民党から追出されため、今度は両者がもめ始めたという次第である。

筆者に言わせれば、両者の距離はほとんどない。特に増税派の中心的人物といわれる与謝野氏は、橋本政権で官房副長官を務めていたが、緊縮財政による景気転落を危惧する声を「それなら規制緩和をどんどんやって経済成長率を高めれば良いではないか」とたしなめていた(その後日本経済は急速に悪化し、自民党は参議院選に大敗した)。まさに今日の成長派と全く同じことを言っていたのである。こんな人物を政策通と重用している自民党がおかしい(政策通が官僚の言いなりになる政治家を指すなら理解できるが)。


表現はちょっと綺麗ではないが、増税派だ成長派だと言っても所詮「目くそ鼻くそ」の対立関係である。筆者は、財政危機が真の問題ではなく、「財政危機」と騒がれることによって、金融・財政政策が間違った方向に走ることが本当の問題と考える。本当に日本の財政に問題があるなら、日本の国債を誰も買わないはずである。つまり問題がないものを問題だと騒ぐから、これが本当の問題を引き起すのである。


 財政再建を巡って、自民党内で「増税派」と「成長派」との不毛な議論が行われています。

 増税により歳入を拡大することで、財政再建を目指すのが「増税派」、それに対して、財政支出をカットすることにより財政再建を目指すのが竹中平蔵氏や中川前幹事長などの「成長派」です。

 積極財政路線に転ずるわけでもなく、財政支出をカットするデフレ政策でありながら「上げ潮路線」だのという出鱈目な看板を掲げるのが「成長派(実際は財政支出削減派」の嘘吐きなところです。まさに「看板に偽りあり」です。「規制緩和をどんどんやって経済成長率を高めるのだ」と本気で語るあたり、嘘吐きというよりカルト思考のようにも見えますが・・・。

 「増税派」の主張する増税によって家計の可処分所得は減り、消費は減ります。「成長派」の主張する財政支出カットによって内需は縮小します。

 どちらも内需に水をかける行為で、国民経済にとってマイナスの効果しか生みません。内需に見切りをつけて、輸出に望みをかける点でもおなじです。結局のところ、彼らは「構造改革派」が分化しただけのことです。言い換えれば、積極財政財政派を駆逐した後の「構造改革派」内部の抗争でしかありません。

 新聞などで見る限り、「増税派」と「成長派」の対立ばかりが強調されていますが、こんな対立は、「コップの中の嵐」にしか過ぎません。そして、「コップの中」で論議されている政策には、日本にとって望ましい経済政策などはないのです。



介護サービス、国にも監督権 有識者会議が方針

2007-10-28 | 構造改革
介護サービス、国にも監督権 有識者会議が方針
2007年10月24日11時44分

 訪問介護大手のコムスンによる一連の不正問題を受け再発防止策を検討している厚生労働省は24日、有識者会議を開き、都道府県をまたいで介護サービスを提供している事業者に対し、国にも指導監督権限を与える方針を決めた。

 現行の介護保険制度では、都道府県が事業所単位で指定や指導・監督をする。コムスンのように広域で事業をする法人の本社に対する規制強化が課題となっていた。有識者会議では、国に、都道府県などと連携して法人本体の指導・監督や調査をする権限を与える規定を明文化するべきだとの意見が相次いだ。

 また、事業所廃止を現行の事後届け出から事前届け出とすることや、処分後の同一グループ内での事業譲渡に一定の制限を課すことも決めた。


 厚生労働省は24日、有識者会議を開き、都道府県をまたいで介護サービスを提供している事業者に対し、国にも指導監督権限を与える方針を決めた・・・。(今までは、国に指導監督権限が無く、都道府県が監督していた)

 これは規制緩和・構造改革の逆を行く決定で、十把一絡げに「国による規制は悪」と考えるゴリゴリの規制緩和論者は、「けしからん」と声を上げるべきなのではないですか。

 確か、「国による規制は行政の無駄だ、そんなことはやめて小さな政府を目指すべきだ」というのが持論だったはず。

 ネオリベ論者は、「国による規制」を止めても、「市場原理」とやらが、全て解決してくれると考えていたんでしょう。

 まあ、それはともかく。このニュースに関して、七詩さんが以下の記事を書いておられます。↓

介護保険制度への疑問 - 七詩さんのHP

コムスンの問題を受け政府は介護事業者への監視を強化するのだという。
ここでいう監視というのはヘルパーの人数で虚偽の申告をすることがないように…とかそんな意味だと思うのだが、どうも問題はそれだけではないのではないか。
コムスン事件は「事件」としてはヘルパーの人数で虚偽の申告をしたとかいった行政法規違反だったのだが、世間が衝撃を受けたのは社長の金満生活と介護労働者の待遇との天国と地獄のような落差だったのではないか。


 民間企業がどのように利潤を上げ、その儲けをどのように使おうが、外部からは文句が言えませんが、ほとんどワーキングプア並の給与しか与えられていない介護労働者と、彼らからピンはねした金で金満生活を送っている社長、その対比には今の日本社会の歪みが端的に表れています。

行政が監視をすればたしかに行政法規違反は減っていく。しかし介護事業者とて事業者であるかぎり、ヘルパーの人件費はぎりぎりまでおとしても利益を追求していくであろう。思えば、介護保険制度が導入された頃は、行政というのは非効率で民間がやれば何もかもうまくいくというような議論が充満していた。しかし介護のような仕事って本当に民間にまかせてよいのだろうか。それも宗教法人とかNPOでなく、純然たる民間会社にである。

介護保険についてもやがては保険料引き上げという議論がでてくる。費用についてはこうした公的な保険料でまかなわれているのに、それを行うのが営利目的の民間というのがどうも納得しずらい。値上げした保険料がヘルパーの労働条件改善に向けられるのなら、保険料引き上げもいいだろう。でも今の介護保険ではその関係がどうも見えにくいのだ。自分の才覚で企業を起こした才覚ある経営者が金満生活をするのはよいが、介護の場にそうしたものが入り込んで、保険料値上げなんていわれても、どうせ吸い上げられた保険料は介護事業者の幹部のふところを潤すだけなんだという気がしてしまう。
(以下、略)


 ネオリベ的考えでは、「行政というのは非効率で民間がやれば効率的だ」すなわち、「官から民へ」というような議論にしかならないのですが、これもまた一方的な考えです。

 たとえ、「行政というのは非効率で民間がやれば効率的だ」というのが、本当であったとしても、その「効率的経営」というのが労働者に過酷な待遇を強いることであったり、その「効率的経営」で得た利潤というのが、経営者や株主に対する法外な給与や配当に回るだけなのであれば、一般の国民にとっては有害無益なことです。

 七詩さんがおっしゃるように、今後行われるであろう介護保険値上げがヘルパーの労働条件改善に向けられるのなら、多くの国民は納得するだろうけど、利潤追求の民間企業に金を渡して、彼らに金の使い道を委ねるのであれば、「どうせ吸い上げられた保険料は介護事業者の幹部のふところを潤すだけなんだという気がしてしまう」というのが払う側の自然な気持ちでしょう。

 「介護のような仕事を、今のように、民間に任せきりで本当にいいのだろうか」という根本的な疑問が湧いています。


農家切り捨て論のウソ?

2007-10-25 | 構造改革
農家切り捨て論のウソ (ニュースを斬る):NBonline(日経ビジネス オンライン)
農家切り捨て論のウソ
小手先の保護政策が日本の農業を“自壊”に導く

* 2007年9月21日 金曜日
* 谷川 博

論点  政治・経済  農業 

農業政策は次期政権の重要課題の1つだ。格差論議が高まる中、農家戸別所得補償を打ち出して参議院選挙で大勝した民主党に対抗して、このところ自民党内でも公共事業拡大を求める声が強まっている。しかし、農業問題に詳しい神門善久・明治学院大学教授は「農家保護策では根本的な問題は解決しない」と指摘する。(聞き手は、日経ビジネス オンライン記者=谷川 博)

明治学院大学経済学部の神門善久教授

NBO 農業政策は次期政権の重要課題です。参院選ではマスコミや野党が格差問題に絡めて「零細農家、切り捨て」と政府を批判し、民主党は農家戸別所得補償を打ち出しました。選挙で民主党が大勝したことで、自民党内でも同様の農家保護策を求める機運が高まっています。一連の動きをどう見ますか。

神門 まず、「零細農家、切り捨て」などという論議は、農業問題に長年取り組んできた私のような立場からすれば、ちゃんちゃらおかしい話です。第一、あれは大衆迎合的なマスコミが作り上げた“お涙頂戴”のストーリーでしょう。そんなマスコミのストーリーに政党が便乗しているだけです。零細農家が切り捨てられるなんてことはあり得ません。

 マスコミは「零細農家イコール弱者」のような形で描きたがりますが、現実には彼らほど恵まれた人たちはいない。農地の固定資産税が軽減されているうえに、相続税もほとんどかかりません。たとえ“耕作放棄”をしていてもですよ。
 そのうえ、農地を売却すれば大金を手にできる。「田んぼ1枚売って何千万円も儲けた」なんていう話はザラにある。しかも、そうした農地の多くは敗戦後の米国主導の“農地解放”を通じて国からもらったようなものです。濡れ手で粟なんですよ。

 最近、「仕事がなくて生活に行き詰まり、一家心中した」という悲惨なニュースを耳にしますが、あれは都市部の話です。「農業に行き詰まり、生活苦のために零細農家が一家心中した」などという話は聞いたことがありません。零細農家には切迫感がないのです。


 このような評論がひと月ほど前に出ました。私が目にしたのはつい最近ですが・・・。

 どうも、この人の農家を馬鹿にしたような物言いが気にいらなかったし、ソースも無しのこの人の話の信ぴょう性にも疑問を感じていましたところ、「bewaad institute@kasumigaseki」さんが、「農家切り捨て論のウソ」のウソ で反論をしておられました。

農地の固定資産税が軽減されているうえに、相続税もほとんどかかりません。たとえ“耕作放棄”をしていてもですよ。

と、農業問題に詳しい神門善久・明治学院大学教授。

 ところが、これは、bewaadさんが引用しておられる資料によると↓間違いであることが分かります。
103.pdf (application/pdf オブジェクト)
○贈与者又は後継者が死亡する前に、①納税猶予の適用農地等の売渡し、貸付け、転用又は耕作の放棄があった場合、②農業経営を廃止した場合、③継続届出書を提出しなかった場合等には、納税猶予が打ち切られ、納税が猶予されていた贈与税の全部又は一部と利子税を納税することになります。


 また、
 最近、「仕事がなくて生活に行き詰まり、一家心中した」という悲惨なニュースを耳にしますが、あれは都市部の話です。「農業に行き詰まり、生活苦のために零細農家が一家心中した」などという話は聞いたことがありません。零細農家には切迫感がないのです。

と、農業問題に詳しい神門善久・明治学院大学教授。

 でも、私が調べて見るとこんな記事がありました。
岩手大東町一家心中事件と「日本の農村」の現実
1.一家心中の悲劇は何故起こったか?!

 各種報道などによると、岩手県一関市大東町の中山間地の農村地帯で、痛ましい一家心中事件が起きた。8月29日(水)早朝、中学校に、ひとりの中学1年生(12)が息を切らせて駆け付け、担任の先生に「自宅で大変なことが起きた」と訴えた。

 担任がすぐ、その子の家に駆け付けてみると、悲惨な光景があった。大工の父(56)はプロパンガスのガス管をくわえて自殺。そしてフィリピンから嫁いだ母の工員(41)、祖母(78)、叔父(父の弟)(47)ら4人が、各部屋で首を絞められて死亡していたという。

 この中学1年の妹の小学5年の長女(10)は、無事だったが、ガス中毒の症状ですぐに救急車で運ばれた。ふたりの子どもの命に別状はなかった。

 千厩署は、父親が3人を絞殺して、ガス自殺を図ったものと断定した。近くには、遺書めいたメモがあり、そこには生活苦と家庭不和をほのめかす言葉が綴られていたと言う。周辺は、平泉のほとんど真東に当たる岩手県南の山間地の農村地帯だ。

2.過疎化する山間地の農村

 農業に対する風当たりは、このところ日増しに強くなり、小規模経営では離農するしか選択肢がないところまで、追い詰められている。そのあおりで大工仕事も極端に少なくなっている。この一家も兼業農家で、細々と米や野菜を作りながら、たまに来る大工仕事や妻の工員の働きで生計を立てていたようだ。

 山間地の農村には、嫁の来手も少ない。この家でも歳の離れた嫁をフィリピンから迎えていた。読売新聞(岩手県内版)によれば『近所の女性によると、「母親は消費者金融に借金があり、祖母から相談を受けたことがある。これが原因で夫婦仲は悪かったようだ」という。』また弟(47)は、何らかの持病で入退院を繰り返し、最近退院してきたとのことだ。

 大東町は、05年5月、花泉町、千厩町、室根村、川崎村などと共に、一関市と合併し大同合併を果たしたばかりである。立地としては典型的な中山間地であり、現在の農政では、当然のように切り捨てられる運命にある地帯だ。大東町は、何年か前に、NHKの農村ドラマで、東京出身の若い女性がこの大東町に来て、生き生きと酪農に精を出す姿を描いていたことを思い出す。

 しかし今、大東町は真っ暗な暗闇の中にいる。米農家だけではなく畜産農家までが、世界的なバイオ・エタノールの急激な進展によって、飼料価格が高騰し、採算が合わないビジネスになって来ているのだ。つまり大東町は、米専業農家に加え酪農家の家も大変な状況にあるということだ。おそらく心中をした父が大工仕事と零細な農家の兼業をしたとしても、この一家の生活は相当困窮していたものと推測される。

 妻の消費者金融への借金もそうした状況の中でできたのではないか。また弟の孝志さんが通常働いていたかどうかは不明であるが、持病で入退院を繰り返したとすれば、この人物の医療費の負担も一家の家計に重くのし掛かっていたことが考えられる。考えてみれば、現代日本の農村における貧困というものは、この一家のごとく実に重層的で複雑な構造になってしまっているのである。


まったくのところ、「農業問題に詳しい」という触れ込みで間違ったことを公表してしまうことは恥ずべきことだと思いますよ。間違った情報をもとにすれば、間違った結論しか出ませんから、結果的に世論をミスリードすることになります。

 引用を続けます。
3.農村の高齢化とワーキング・プアの現実

 無理心中を図った父が、ふたりの子どもたちに手を掛けなかったのは、幾分救われるような気もする。しかし、ふたりの子どもの行く末を思う時、余りに不憫でならない。この事件の背景には、明らかに現代農業の矛盾がある。そして何よりも大事なのは、この事件は、決して特殊な事件などではないということだ。むしろ日本中の中山間地の農村のどこで起きても、ふしぎでない「格差拡大」に伴う心中事件と考えるべきなのだ。

 この5年ばかりの間に、農家の総所得は、802万円(01年)から503万円(05年)まで、およそ37%収入が落ち込んでいる(平成18年度農業経営統計調査(農林水産省統計部より)。これは総収入である。そして兼業農家の統計であるから、農業依存度の低い世帯の収入である。ところが、このような兼業農家でも、この間の農業依存度は、18.9%(01年)→36%とほぼ依存度が倍になっている。このことは、兼業で稼いでいた収入が、急速に落ち込んでいることを物語るものだ。

 この原因は、おそらく2つあると考えられる。ひとつは、農家の高齢化が進み、退職して、職を失っている世帯が多いこと(農家の65歳以上の高齢化率は32%まで上昇している。ちなみに、日本の全人口に占める65歳以上の人口比率は21%であるから、農村には残念ながら高齢者が圧倒的に多いということになる)。もうひとつは、この5年間の間に、農村地帯の景気が後退して、働き口が狭まってしまったことである。

4.心中した一家の家計の所得構造を推測してみる

 ともかく、このような現実が、日本の全国各地の農村地帯を覆っているのだ。一家心中した大東町の世帯の総収入を考えてみれば、周辺地域の大工仕事に行って得られる収入と妻が工場で働いて得られる収入を合わせ、おそらく昨今の不景気を考えれば、200万円前後、農家で得る収入は、100万前後と考えて、おそらく年収は、300万以下と見て間違いないだろう。

 祖母の2ヶ月に1回の国民年金は、ほとんど、この人の医療費などで消えると考えられるので、世帯の総収入には数えられない。そこに入退院を繰り返す、弟がいるとしたら、この医療費も馬鹿にはならない。本来であれば、農村において47歳の弟は働き盛り年齢で、家計の助けになる仕事をしていたが、病気で都会から戻って兄の世話になっていた可能性もある。

 そしてさらに、ふたりの育ち盛りの子どもの教育費が加算される。年収300万で6人家族が生活をする。そして様々なローンがあったのだとしたら、家計は火の車のはずだ。

 ここに、働けど働けど生活がちっとも楽にならない「格差社会の構造」と「ワーキング・プア」が招来した一家心中という恐ろしい地獄の様相が、誰の目にも、はっきりと見えて来るはずだ。

5.緊急「農村生活調査」の実施を提言する!!

 私は、これが現在の田舎の偽らざる姿であると考える。この上仮に、現在の自民党の農政が強行されるならば、同じような悲劇は今後も日本各地で頻発することが予想される。

 こうした状況を生み出した原因は、もちろん抜本的な農業政策を怠ってきた自民党と農水省とJAのもたれ合い農政が続いたことにある。そして決定的だったのは、聖域なき財政再建政策として、グローバル経済をあらゆる地方・業態・業種に当てはめようとした小泉政権の強硬な態度にあった。はっきり言えば、この事件は農業問題を二の次三の次にしか考えていなかった小泉政権の悪政によってもたらされた悲劇なのである。

 私は、今回の事件を契機として、2度とこのような悲劇が起こらぬように、政治家が的確な情報を収集し、政策に反映すべきだと思う。そのために私は、今回の事件の社会的背景の分析を含め、直ちに「農村生活調査」を実施すべきだと思う。その為には、フィールドワーク可能な緊急対策チームを作るべきである。

 そのチームの構成であるが、特定の団体や偏った思考をする組織や人物は避け、公正な分析判断ができる者を選抜すべきである。

 幸い今回安倍改造内閣で総務大臣を拝命した増田寛也氏は岩手県知事だった。岩手の農村の実情についてはよく分かっている。就任記者会見でも、農村問題に触れていた。増田大臣には、大東町の事件をひとつのモデルとして、悲劇が起きた原因を分析し、緊急政策を提言すると同時に地方分権への道筋まで結びつけて貰いたい。

 また民主党代表の小沢一郎氏は、近隣である水沢市の生まれであり、地元に当たる。民主党は、「政治は生活だ」というスローガンをもって参議院選挙に歴史的大勝を果たした。民主党は政府とは別に、影の内閣(シャドーキャビネット)で独自の「農村生活調査」チームを編成して欲しい。小沢氏は独自に小沢塾という若い政治家志向の人々を抱えている。今回の大東町のフィールドワークは、打って付けの実践的トレーニングとなる。

 今回の大東町の悲劇を二度と起こさないために、2大政党が、ここでも政策で競い合い、地方活性化に通じる政策とそれに基づく行動を即座に起こすということだ。

(佐藤弘弥)


 「農家は高額所得者なのだ」とか、「兼業農家は農業以外で十分収入を得ているのだ」とかといった話はすでに過去のものとなっています。

 このようないい加減な話を真に受けて、「農家は楽をしているのだ」とか、「呑気に暮らしている農家に援助など不必要だ」という短絡的な結論をする前に事実に目を向けるべきです。

「この5年ばかりの間に、農家の総所得は、802万円(01年)から503万円(05年)まで、およそ37%収入が落ち込んでいる」「この間の農業依存度は、18.9%(01年)→36%とほぼ依存度が倍になっている。」

・・・これが現実なのです。小泉カイカクが、農家を直撃しているのです。たった、5年ほどの間に、小泉カイカクが農家に実に総所得にして、300万円の減少をもたらしたのです。

 小泉カイカクを称賛する人は、「改革」という言葉の持つイメージに踊らされているだけです。

 実際のところ、「小泉カイカク」というのは、農家のみならず圧倒的多数の国民の見殺しでしかないのです。

 それを「都市部に依存する農村部」と称して「都市対農村」の対立にしたり、「輸出産業の足を引っ張る国内産業」と称して「国際派対国内派」にして、農村や国内産業をバッシングすることで溜飲を下げているのですよ、自称保守は。でも、非難すべき相手は他にいるのではないですか。


郵政民営化の先にある恐怖のシナリオ

2007-10-23 | 構造改革


郵政民営化の先にある恐怖のシナリオ / SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] より、
|政府が主張する「三つのメリット」の誤り

 まず、短期的な影響から見ていこう。政府が言う三つのメリットを、一つひとつ検証してみたい。

 競争原理が導入されたというが、それで料金が安くなったかといえば、そうではない。むしろ、代金引換郵便の手数料や払い込みの手数料など、次から次へと手数料が値上げされてしまった。なかでも、定額小為替の手数料は10円から100円へとなり、10倍の引き上げである。

 しかも、民営化に伴って集配局は大幅に集約。郵便物の配達日数がこれまでより多くかかる地域も増えている。民営化に先駆けて時間外窓口も次々に閉鎖されてしまった。

 要するに、競争原理と経営自由化によって、従来の郵便局ならではの細やかなサービスがなくなり、銀行並みに揃えられたというだけのことである。

 法人税、印紙税を新会社が支払うので税収が増えるというが、これまでは税金を払わない分だけ料金を安く抑えることができたのだ。新たに払う税金分を新会社がすべてかぶるとはとうてい思えず、最終的に税金の分は上記のような値上げで埋め合わせることになるに違いない。

 確かに、民営化で税収は増えるだろう。だが、何のことはない。税金分のツケが利用者に回るというだけの話である。つまり、知らない間に国民に対して増税が行なわれたのと同じことなのである。少なくとも国民にメリットがあるわけではない。

 さらに、特殊法人への資金の流れが変わるという件であるが、これは誤解なのか曲解なのか、前提に大きな誤りがある。というのも、すでに2001年に財政投融資制度は廃止となっており、郵政公社が特殊法人に資金をそのまま流していたという指摘は当たらないからだ。

 では、郵政公社はどうしていたかというと、政府が保証をつけている財投債、あるいは財投機関が発行する財投機関債を、マーケットで買って資金運用をしていたのである。だが、この財投債は民間銀行も購入しているものであり、そもそもマーケットを通じて買うのだから、特殊法人に金を流しているという批判は当たらない。

 政府が財投債を売って、政府がその金を特殊法人に流していたのであるから、特殊法人を温存していた責任があるのは政府なのであって、郵政公社には責任はなかったのだ。

 こう見ていくと、少なくとも一般の国民にとって、政府が言うようなメリットはあまりないのである。


 政府は、郵政民営化後の「バラ色の未来」を語って(騙って?)いましたが、森永 卓郎氏は、これらについて検証しています。

 1.「利便性が向上」?

 実際は、次から次へと手数料が値上げされた。民営化に伴って集配局は大幅に減少した。郵便物の配達日数がこれまでより多くかかる地域も増えている。民営化に先駆けて時間外窓口も次々に閉鎖されてしまった。

 つまり、サービスの低下と料金の値上げというダブルパンチを消費者は民営化したとたんに浴びせられたわけです。これは、財政改革という名目で、公共サービスの低下と増税を目指す政府の方向性と同じです。

 2.「国の税収が増える」?

 民営化で税収は増えるかもしれないが、「手数料の値上げ」という形で税金分のツケが利用者に回るというだけの話である。つまり、知らない間に国民に対して増税が行なわれたのと同じことなのである。少なくとも国民にメリットがあるわけではない。

 3.「従来のような郵政から財政投融資への自動的な資金移動がなくなる」?

 すでに2001年に財政投融資制度は廃止となっており、郵政公社が特殊法人に資金をそのまま流していたという指摘は「郵政民営化推進論者」によるデマ。

 郵政公社は、政府が保証をつけている財投債、あるいは財投機関が発行する財投機関債を、マーケットで買って資金運用をしていたのである。だが、この財投債は民間銀行も購入しているものであり、そもそもマーケットを通じて買うのだから、特殊法人に金を流しているという批判は当たらない。

 政府が財投債を売って、政府がその金を特殊法人に流していたのであるから、特殊法人を温存していた責任があるのは政府なのであって、郵政公社には責任はなかった。

 政府が自ら行っていることを棚に上げ、責任を郵政公社になすりつけるのだから、小泉純一郎という男はたちが悪いですね。「官」を統括する立場にある政府の最高責任者が、「官から民へ」などという責任放棄発言をすることに対して、それを非難するどころか、喝采していた「小泉信者」も相当頭が悪いのではないでしょうか。

|今後、地方の窓口はさちに減少する

 しかし、本当に問題なのは、中長期的なデメリットなのである。

 今後3年以内に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式が上場され、2017年までに完全売却されることになっている。となると、間違いなく株式の一部は、米国系の金融機関やファンドが購入するだろう。そして、株主提案権を得た彼らは、あれこれと経営に口出しをしてくるはずだ。

 まず、間違いなく提案するのは、「経営のさらなる合理化」である。現在、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は、全国2万5000カ所のネットワークがあり、地方の小さな町や村にも窓口を持っている。民営化後は、窓口会社に使用料を支払わなければならないのだが、これだけの数の窓口を、はたして金融機関が維持できるのかどうかといえば、いささか疑問なのである。

 例えば、三菱東京UFJ銀行は、合併時に支店の数が670店程度あった。日本最大の銀行でこの程度の数なのだから、民間企業となって採算を重視するようになった新会社にはとても維持できるとは思えない。

 政府もこうした事態を見越していて、2兆円の基金をつくり、そこから補助金を出して窓口を撤退しないための方策は立ててきた。しかし、2兆円を年3%で運用しても600億円である。これでは窓口維持にはまったく足りない。

 となると、株式公開後は株主の提案に従って、窓口の合理化が徐々に進められるだろうことは想像に難くない。

 では、10年後の窓口はどうなっているのだろうか。おそらく、法律でユニバーサルサービスを義務づけられ、最小限の業務をする窓口だけは維持されているのではないかと、わたしは想像する。だが、維持されるのは郵便業務だけに限られ、金融業務は取り扱わない窓口が大半になっているに違いない。

 現在でも、ただでさえ地方には金融機関が少ない。その状態が郵政民営化でますます進行していくというわけだ。もうかる支店には金をつぎ込み、もうからないところからは撤退 ―― そして都会と地方の格差が拡大していくのだろう。


 現在、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は、全国2万5000カ所のネットワークがあり、地方の小さな町や村にも窓口を持っていて、民営化後は、窓口会社に使用料を支払わなければなりません。

 森永氏が懸念しているのは、今後、株主となるであろう米国系の金融機関やファンドが提案する「経営のさらなる合理化要求」によって、これらの窓口からの撤退が予想されることです。「合理化」という大義名分で今後、金融業務は取り扱わない窓口が大半になっていることでしょう。

 さて、森永氏は最後に最も恐れていることについて言及しています。ゆうちょ銀行やかんぼ生命の破綻懸念についてです。

 ゆうちょ銀行やかんぼ生命が破綻したらどうなるかを森永氏を次のように語っています。

 ゆうちょ銀行の預金高というのは、3大メガバンクを足したよりも多いことを忘れてはならない。本当に万が一、ゆうちょ銀行が経営破綻したら、預金保険機構が支払いに耐えられるかどうか、わたしは疑問に思わざるを得ない。


 「かんぽ生命が破綻したときの影響はもっと大きい。生命保険会社が破綻すると、過去にさかのぼって予定利率が引き下げられるからだ。となると、年金をもらえると期待して積み立ててきた人が、実際に手にできる金額は、予測の3分の2から半分程度に減ってしまう恐れが十分にあるのだ。


 そして、森永氏はこう結んでいます。
 
 ゆうちょ銀行やかんぼ生命の株を売却することは、国民の大切な資産をそうしたリスクにさらすことになるのだが、政府はこれまで国民に対してそのことを一言も説明していないのだ。


 実際は、「郵政民営化=ハイリスク・ローリターン」なのにもかかわらず、「リスク」に対する説明をせず、ほとんど有りもしない「リターン」を過剰に宣伝して、「郵政民営化=ノーリスク・ハイリターン」と国民に思い込ませようとしたあたり「郵政民営化推進論者」というのはまさに詐欺師というしかありません。