1980年代に入っても、私は70年代のままだった。パンク・ニューウェイブ音楽やデザイナーズ・ブランド(キャラクターズ)が目の前に現れても、私は私のままでいられたということは、70年代が80年代に優っていたと言えるのかもしれない。しかし、この80年代という《現在》は、なかなか魅力的な時代だったのだ。その理由は、自分よりわずか10年にも満たない年の差の所謂若者たちが、まるで未来世界からやって来たような異質な感性を発散していた。彼らは、何故だかわからないがもの凄く自由で、何より私が良くも悪しくも青春時代を送った前時代から完全に切れていたからだ。まだ30歳になるかならないかの私は、完全に彼らの世界から浮いてしまっていて、その意味でもはや若者ではなかった。それでは、私とはいったい何だったのか?そして、彼らはいったい誰だったのか?・・・《続く》
1987年刊の坪内稔典著『世紀末の地球儀』はまだ未読。まさか、前著(『過渡の詩』『俳句の根拠』)からの10年の歳月を体感していないわけがない。60年代どころか70年代も消し飛んでしまったのが80年代だ。俳句などどこにも在りゃあしなかった。