鑿壁偸光 漢字検定一級抔

since 2006.6.11(漢検1級受験日) by 白魚一寸

棚卸し考

2007年07月16日 | 三点セット3 過去問

 7-1を解きました。173点/179点(正答率96%)。ここは、旧臘に解いており、7ヶ月くらいしか経っていないので、特に間違ったところはまだ憶えています。

 書き取りに次の問題がありました。「征服」68頁上段が7-1の問題です。

すさまじきこと、人の たなおろ(棚卸・店卸)し

棚は2級、卸は3級、店は表外訓ですが9級です。難なく書けました。棚卸しは、私は、在庫の現品を数えるという意味しか知りませんでした。この文も、棚卸しのときは現場がばたばたするという意味と思っていました。

 偶々、「辞典」を引いたら、【棚(店)卸し】には、他人の欠点を数え上げて、いろいろと批評することという意味が載っていて、へえと思いました。この文は、この意味で使われていたのですね。こういうのは「辞典」を引いてよかったなあと思うときです。マスコミは在庫がないから、人の棚卸しをするのかな。

 ところで、棚卸しのおろしは、何故、卸しと書くのでしょう? 卸すというのは、「辞典」に依れば、問屋から小売商人に売り渡すことです。棚卸しのときは、売りません。棚から下ろして数えてまた棚に戻すのです。そうであれば、棚卸しよりも、棚下しの方が相応しい気がします。

 尤も、漢検の採点基準では、送り仮名は、内閣訓令・告示「送り仮名の付け方」によるとあります。戦後のがちがちの送り仮名だと、下(お)ろすと書くべきで、下(おろ)すは間違いですから、棚下しは間違いでしょう。また、「広辞苑」にも「日国」にも、棚卸しとあって、棚下ろしはありません。従って、漢検では、棚卸しと答えておくべきでしょう。

 因みに、愛用している「最新俳句歳時記 新年」(山本健吉編 昭和47年)を見たら、年卸=棚下(お)り=棚下(おろ)しとあって、

「関西の諸地方では、正月11日、年桶その他年棚の供物を皆卸して、この朝の雑煮にして食べ、あるいは一部を6月朔日の氷餅まで貯える。山陰では5日に、阿波では15日にする例もある。年神との別れの日であり、この日に注連や門松も卸してしまう所もある。」

とありました。卸し=下ろしと考えてもいいような気がします。



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