石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

結婚記念日ごとに契約を新たにする「有期結婚」を!

2009-12-03 10:41:17 | MEN'S CLUB「石井信平の言語道断」
離婚経験も、もはや“バツイチ”ではない社会が来るべきです


「永遠の愛」にはリアリティがない


まず今の結婚制度の前提になっている「永遠の愛」というのを疑いたいのです。神父さんや、神主さんの前で誓う永遠の愛、あれは男には大変なプレッシャーです。ただでさえ結婚によって「家長」「大黒柱」と期待され、その上、よその女に絶対に心が動いてはいけないと誓わされる……このように過剰な責任を背負わされるところに、男が結婚をためらう理由があります。

女性のほうは「永遠の愛」にロマンチックな期待を持つでしょう。そのためには十分相手を吟味したいし、何よりも親掛かりの現状より絶対にビンボーになりたくない。これが、女が結婚をためらう理由でしょう。

 さて、そういう男女が愛を誓い合って晴れて結婚して、うまくいけばいいのですが、様々な理由で暗礁に乗り上げた時どうなるか。「一生オレのものになるはずだったのに」「一生アタシを面倒みるはずだったのに」と互いに恨みあいを始めます。

 永遠の愛は、別れを前提にしていないですから、最悪の事態になるまで「別れ」は二人の間で話題にならない。ところがどっちか一方はそれを考えている。そうして話が出たところではもう、普通の話し合いにならず、調停だ裁判だと第三者の介入がなければ収拾がつかなくなる。

 私が勧めたいのは永遠の愛ではなく、「有期結婚」です。



期限付きの契約結婚 有期結婚を勧めたい


 舞台美術家の妹尾河童さんが実践しているそうですが、毎年「今年も結婚を続けますか」という契約を交わすのが有期結婚。これは二人が話し合う訓練にもなり、別れの練習にもなるという意味でも勧めたい。「別れる練習」というのは、なんだかせち辛くて、非ロマンチックに聞こえるかもしれないが、実は物凄くロマンチックなことですよ。相手を選び直す、また、もう一度愛を確かめ合えるわけですから。妹尾さんのように結婚記念日に契約更新するのも良し、オリンピックのように4年に1回も良し、それぞれのカップルが独自のユニークな契約更改をすればいいと思うんです。子供の前で、「お父さんとお母さんは今、契約更新しましたよ」というセレモニーをして、プレゼントの交換をしたり、契約更改奉祝旅行や記念宿泊ナイトをホテルが企画したら冷え切った景気にも多少の刺激になるでしょう。

 つまり、契約結婚を離婚に向かって徐々に進んでいくもの、と捉えることはないんです。契約更改とは「愛を新たにするもの」と考えたい。そういう意味では、リセットというよりはリフレッシュ、レクリエイションだと提言したい。

 契約分については、結婚の時点であまり細かなものを決めてもリアリティがないので、「続ける、続けない」というシンプルな二者択一を話し合う。そして続けるに当たってはこういう問題がある、こんな条件を加えたいという、そのくらい大雑把な内容でいいと思うんです。毎年の更新時に問題点を点検し「いついつまでに努力するからそれを見ていてほしい」というすり合わせの機会になれば成功ですね。

 マンションの賃貸契約を更新するのと同じように、「続けることにそもそも賛成かどうか」を確認する。つまり有期結婚は持ち家制度の発想ではなく賃貸の発想なのです。メインテナンスや固定資産税から解放され、身軽になるのです。家主に対して契約をさらに2年なり3年なり更新するかしないかの賃貸的身軽さ、良い意味での遊び心、軽いフットワークでもう一度結婚を捉え直そうということ。もし「もうこの家を離れます、あなたからも離れます。まったく別の場所で暮らします」ということになっても、これは契約を満了したのでハッピーな別れになるのです。

 こういうことが普通になってくれば、離婚に伴う悲惨なことが回避される。つまり「あの夫婦は人格的に駄目だから別れたんだ」という評価ではなくなる。人生の敗北感を味わずに、新しい人生へのリセット、踏み台として結婚/離婚が考え直される、そういった選択の余地がなるべく多いほうが進歩した社会といえるでしょう。

 また、離婚経験者を「バツイチ」と称する習慣も、もはややめたほうがいい。むしろマルイチといったほうがいいんじゃないでしょうか。今、離婚した女性や男性に対する評価は私の周りでも非常に高い。「人生の厚みがある、大人である」と。漆が何度も塗り重ねられて、素敵な光沢を放つように、大人としての経験を積んだものの厚み、色気があると考えられつつある。私の自主統計ですが、離婚した女性のほうがいい女ですよ。

 駄目な結婚を続けるよりも、よき離婚を選んだほうが人生のチョイスとしては正しいという方向に世間の雰囲気を持っていくべき。会社内では離婚による昇進や手当を考え、JRは再婚割引を考え、アホな銀行に税金投入するくらいなら再婚カップルに公的資金を!とにかく離婚をポジティブに考えることになる。「契約」とはそのための言葉です。



(1998年10月メンズクラブ掲載)


最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。