石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

本当の愛国心は国を選ぶところから始まる

2009-09-02 23:10:20 | MEN'S CLUB「石井信平の言語道断」
W杯サッカーが終わり、今度は何を応援すりゃいいのだ?

国を応援して、酔えるものなら、オレも酔いたい。日の丸、君が代にジーンとしてみたい。自分が属する日本国に一体感を感じたい。それは、いいセックスで相手と一体感を感じたい思いに似ている。違いは、セックスは相手を選べるが、国は選べない。

しかし、国を選んだ人間が1人、W杯サッカー日本チームにいた。呂比須ワグナーである。彼には、何故あんなに出番が少なかったのか?岡田監督の中に、実力ある呂比須をチームから外すわけにはいかない、しかし、なるべく「もともと日本人」だけでやりたい、の思いはなかったか?

オレは、呂比須がW杯でゴールを決め、呂比須が「日本人として」祝福され、「日本人として」泣く場面を、心のどこかで期待した。オレは「国を選んだ」呂比須の行為が好きなのだ。

(1998年)6月始めの10日間、クロアチア共和国を旅行した。成田空港の出発ロビーは「ワールドカップ'98、フランス大会、がんばれ日本チーム!」の横断幕が派手であった。首都ザグレブ空港に、そんな横断幕はなかった。国際空港の玄関先に、身内だけを応援する幕など、みっともなくて出せるか、の大人の気概が感じられた。

この国が旧ユーゴスラビア連邦から独立したのは、1991年である。つまり国民全部で国を「選び直した」のだ。7つの言語、5つの民族、3つの宗教がひしめく地域で、長期の戦争に耐え、ようやく手にした「国」だ。日本とは、およそ鍛えられかたが違う。

旅行者としてこの国を彷徨い、オレは、この国の美しさに打たれた。アドリア海の沿岸の、ザダール、スプリッツ、ドヴロブニクの街が気に入った。海と街の調和、解放感あふれる人々、長い歴史を秘めた石畳の路地、さわやかに風が吹くオープンカフェで飲むカプチーノ。ギリシャやヴェニスに向かう純白の連絡船を夕暮れの海辺で眺めながら、オレはこの国が好きになった。クロアチア人に、なってみるか?

この国を旅して、同行の者がカメラをタクシーに忘れたら、キチンとホテルに届けられた。東京では、外人の友人2人が、たてつづけにバイクを盗まれた。金融破綻を持ち出すまでもなく、日本、なんだかおかしいぞ。いっそ、早くこいこい、ニッポン破産!自主廃業、倒産、夜逃げ、なんでもいいが、いっぺん日本を解散してはどうか?

今、あまりにも一部の人間が、あまりにも貴重な国民の、自然、資産、文化、そして国の名誉さえも独占して、これを汚し、傷付け、ムダにしていないか?この、どうしようもない不平等を変えるのは、革命か?選挙か? どっちでもなさそうだ。だから、解散!そして改めて日本を「選び直そう」ではないか。呂比須ワグナーのように。

W杯も終わり、つかのまの愛国心は霧散した。目の前に広がっているのは、崩壊の一途を辿るわが国の惨状。ならばいっそのこと、"日本解散"というのはどうだ。そして改めて、自分が属する国を選び直したい。愛国心が生まれるのはまさに、その時だ!


(MEN'S CLUB 石井信平の言語道断 1998年9月号より)



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