執筆 石井信平(ジャーナリスト)
小泉政権
小泉政権は呉服屋のような集団である。番頭の福田も安倍も二代目で、旦那の小泉は先代の福田赳夫、安倍晋太郎に若い頃世話になり一人前になった。
この店は、小泉が連れ合いに呼んだマキコによって人気沸騰したが、事情あって離縁したら急落した。一時は八割を越えた内閣支持率が自民党の抵抗勢力を黙らせたが、実は手法も実体も古い自民党のままで、構造改革は「暖簾」だけであることを内外に示した。
番頭の二人は、オヤジたちの悲願であった有事法制など歴史に逆行する諸法案をゴリ押しするが、旦那は来年の正月に記者会見で着る和服の見立てに余念がない。会見と言えば、カメラにフレームインして、「お言葉頂戴」と差し向けられたマイクに、自分の好きな一言を言ってコックリうなずく「お手軽方式」も、いかにも旦那風である。
昭和一二年、国家非常時に、実体なき人気と期待で政権につき、無為無策のまま日米戦争と破局へのお膳立てをした近衛文麿の歩みに、小泉政権はますます近づいてきた。
日本の官僚
「日本を動かしているのは俺たちだ」と考える官僚は、また「日本をダメにしているのは俺たちだ」と知っている。警察、厚生、農水、外務、法務、防衛・・・うち続く不祥事を一覧すると国民生活の根幹と細部にゆきわたる。その万偏なさは官僚の律儀さである。不祥事から、予め除外されているのは宮内庁だけではないか。
国民の税金を使った不祥事が露見し、マスコミが大げさに騒ぎ、その対応にまたドジをやる。この一連のパターンは官僚の巧妙さでもある。不祥事は官僚システムの一部であり、叩かれることも官僚の日常的仕事である。数人の不運な同僚が戒告や減給で「処分」されることで国民の気が済むなら、何と安上がりな「ガス抜き」だろう。
官僚にとって、「官僚システム」のほうが日本よりも大事なのだ。「日本のマスコミが今のままである限り、このシステムは滅びない」。これが官僚たちの自信である。
個人情報保護法案
向こうからは見えて、こっちからは見えない、マジックミラーの内側で、私たちの暮しは営まれている。お上が膨大な個人の情報を握っている、とはそういうことだ。
8月から施行される「住民基本台帳法」は、11けたの番号で国民の情報を一元的に管理する。三三〇〇の自治体のコンピュータのネットワークが機能開始する。札幌市役所の心ない役人が、やろうと思えば長崎の人妻を、脱税や病歴情報を言いがかりに、脅迫できるシステムが完成したのである。
これを保護するという名目で作られた「個人情報保護法案」には役人に対する罰則規定はない。法案は徹底的に官が民を監視、規制し、これに反すれば、懲役六ヶ月または30万円の罰金を定めている。国民は、いじめれば喜ぶMプレー好きと、ナメられている。
お上が国民の全容を瞬時に把握出来るシステムや法律は「悪」である。役人をこそ、マジックミラーの中で働かせよう。
有事法制
「外国から攻撃が予測される事態」や「恐れある事態」に対処するという有事法案を、なぜ「軍事法案」とハッキリ言えないか。そこに政府のジレンマがある。安倍官房副長官は議論の混乱を整理しようと「あらゆる事態を想定しなければならない」と言い直した。
「国民の生命と財産を守る」と称して、国がそれらを奪った歴史を忘れてはならない。これを「徴用」と言った。たとえば、戦時中に徴用された民間船舶七二四〇隻が戦没し、六万人の民間船員が「戦死」している。国はこれに対して慰霊祭すら行っていない。過去の始末をつけられないまま、次の有事に備えるとは、順番が違うであろう。
もともと、冷戦時代に小泉純也と福田赳夫が悲願としたこの法案を、息子たちが持ち出すアナクロニズム。自殺者三万人、失業者三七〇万人、食料自給率四割・・・現にある「有事」を放って、よくぞ言ったり「備えあれば憂いなし」。
あらゆる事態を想定して国に「おまかせ」する法案の怖さは、銀座のすし屋で「おまかせ」と言ってカウンターに坐るより怖い。
小泉政権
小泉政権は呉服屋のような集団である。番頭の福田も安倍も二代目で、旦那の小泉は先代の福田赳夫、安倍晋太郎に若い頃世話になり一人前になった。
この店は、小泉が連れ合いに呼んだマキコによって人気沸騰したが、事情あって離縁したら急落した。一時は八割を越えた内閣支持率が自民党の抵抗勢力を黙らせたが、実は手法も実体も古い自民党のままで、構造改革は「暖簾」だけであることを内外に示した。
番頭の二人は、オヤジたちの悲願であった有事法制など歴史に逆行する諸法案をゴリ押しするが、旦那は来年の正月に記者会見で着る和服の見立てに余念がない。会見と言えば、カメラにフレームインして、「お言葉頂戴」と差し向けられたマイクに、自分の好きな一言を言ってコックリうなずく「お手軽方式」も、いかにも旦那風である。
昭和一二年、国家非常時に、実体なき人気と期待で政権につき、無為無策のまま日米戦争と破局へのお膳立てをした近衛文麿の歩みに、小泉政権はますます近づいてきた。
日本の官僚
「日本を動かしているのは俺たちだ」と考える官僚は、また「日本をダメにしているのは俺たちだ」と知っている。警察、厚生、農水、外務、法務、防衛・・・うち続く不祥事を一覧すると国民生活の根幹と細部にゆきわたる。その万偏なさは官僚の律儀さである。不祥事から、予め除外されているのは宮内庁だけではないか。
国民の税金を使った不祥事が露見し、マスコミが大げさに騒ぎ、その対応にまたドジをやる。この一連のパターンは官僚の巧妙さでもある。不祥事は官僚システムの一部であり、叩かれることも官僚の日常的仕事である。数人の不運な同僚が戒告や減給で「処分」されることで国民の気が済むなら、何と安上がりな「ガス抜き」だろう。
官僚にとって、「官僚システム」のほうが日本よりも大事なのだ。「日本のマスコミが今のままである限り、このシステムは滅びない」。これが官僚たちの自信である。
個人情報保護法案
向こうからは見えて、こっちからは見えない、マジックミラーの内側で、私たちの暮しは営まれている。お上が膨大な個人の情報を握っている、とはそういうことだ。
8月から施行される「住民基本台帳法」は、11けたの番号で国民の情報を一元的に管理する。三三〇〇の自治体のコンピュータのネットワークが機能開始する。札幌市役所の心ない役人が、やろうと思えば長崎の人妻を、脱税や病歴情報を言いがかりに、脅迫できるシステムが完成したのである。
これを保護するという名目で作られた「個人情報保護法案」には役人に対する罰則規定はない。法案は徹底的に官が民を監視、規制し、これに反すれば、懲役六ヶ月または30万円の罰金を定めている。国民は、いじめれば喜ぶMプレー好きと、ナメられている。
お上が国民の全容を瞬時に把握出来るシステムや法律は「悪」である。役人をこそ、マジックミラーの中で働かせよう。
有事法制
「外国から攻撃が予測される事態」や「恐れある事態」に対処するという有事法案を、なぜ「軍事法案」とハッキリ言えないか。そこに政府のジレンマがある。安倍官房副長官は議論の混乱を整理しようと「あらゆる事態を想定しなければならない」と言い直した。
「国民の生命と財産を守る」と称して、国がそれらを奪った歴史を忘れてはならない。これを「徴用」と言った。たとえば、戦時中に徴用された民間船舶七二四〇隻が戦没し、六万人の民間船員が「戦死」している。国はこれに対して慰霊祭すら行っていない。過去の始末をつけられないまま、次の有事に備えるとは、順番が違うであろう。
もともと、冷戦時代に小泉純也と福田赳夫が悲願としたこの法案を、息子たちが持ち出すアナクロニズム。自殺者三万人、失業者三七〇万人、食料自給率四割・・・現にある「有事」を放って、よくぞ言ったり「備えあれば憂いなし」。
あらゆる事態を想定して国に「おまかせ」する法案の怖さは、銀座のすし屋で「おまかせ」と言ってカウンターに坐るより怖い。
これは、薬害エイズや薬害肝炎を起こした厚労省官僚の罪を越えます。子供達の人生を困難にし、日本社会の未来を潰した許されない悪行です。
愚民化教育をやめさせ子供を救うためにも、二度と不幸を生まないためにも、キャリア官僚制、天下り、公務員特権を廃止して、官僚政治を根絶やしにすべきです。