映画「ルパン」Arsene Lupin

原作：モーリス・ルブラン
監督：ジャン＝ポール・サロメ
音楽：デビー・ワイズマン
出演：ロマン・デュリス
　　　クリスティン・スコット・トーマス
　　　パスカル・グレゴリー
　　　エヴァ・グリーン


フランスの気障な怪盗紳士、アルセーヌ・ルパンが誕生して今年で100年。
制作費35億円、登場する数々の宝石はカルティエ全面協力という豪華絢爛なベル・エポック絵巻。
19世紀末から20世紀初頭のベル・エポックといえば、貴族文化の円熟と自動車・飛行機・映画と言った近代機器が登場する華やかな時代でもあり、かたや貧富の圧倒的な差の中で食べる物にも事欠く貧民たちが地をはいずるように生きていた時代でもあり。その光と影を織りなす時代の狭間を優雅に駆け抜ける怪盗紳士、アルセーヌ・ルパンは、人を殺さず、女子供には優しく、金持ちから盗み貧しい人々に施す義賊。その天才的な盗みと変装術は、彼を追いかけるパリ警察の敏腕警部たちをもうならせるほど。
子供の頃にルパンの冒険に胸を高鳴らせた子供も多かった、そんな世界的ベストセラーを本家フランスがついに映画化。
監督のジャン＝ポール・サロメはソフィー・マルソー主演「ルーヴルの怪人」で美しいルーヴル美術館を余すところなく表現。キャストは若きルパンに「猫が行方不明」のロマン・デュリス、美しく残酷な女伯爵に「ゴスフォード・パーク」「イングリッシュ・ペイシェント」のクリスティン・スコット・トーマス、ルパンに執着を見せる謎の男に「スズメバチ」「ジャンヌ・ダルク」「王妃マルゴ」のパスカル・グレゴリー、そしてルパンの美しく気高い従姉妹クラリスには「キングダム・オブ・ヘヴン」で注目されるエヴァ・グリーン。
19世紀～20世紀の英仏を愛する私としては時代背景と映像が気になるところ。カルティエ提供のジュエリー達は、アーカイブ・ジュエリー15点とゴージャスな「王妃の首飾り」。これはアーカイブのデザインと実際の王妃の首飾りから着想し復元されたもの。宝石の煌めく輝きから始まるOPからうっとりさせられます。月の石レベルの宝石好きとしては（よーするに見るだけ）、パーティーの場面の美しく着飾る女性達のドレスに釘付けです。そういえば、クリムトの絵画の女性も首にどっさりと重そうな首飾りをしていましたね・・・。首が凝りそうではありますが、見ている分には至福。ジョゼフィーヌ＝カリオストロ伯爵夫人の官能的なナイトドレスも必見です。ううん、やっぱり好きだなあこの時代。イギリス社交界とはまた違った官能と退廃の世界です。一世紀前のパリを知りたい方は是非この映像で。グラン・カフェもカルティエも当時の姿が再現されています。ポン・ヌフだって作りかけです（笑）。
「マイノリティ・リポート」を参考にしたと豪語するサロメ監督のこの「ルパン」は、原作とはかなり違う部分も多々あれど、ひとつの新しいヒーロー像としてのルパンを作りあげているようです。「ルーヴルの怪人」でのＢ級っぷりがある意味遺憾なく発揮されているのが楽しい。惜しむらく原作の中で有名なエピソードをたくさん入れようと詰め込み過ぎ感は否めず・・・。
今作は、若気の至り的に女に翻弄され、出し抜かれるちょっとまだまだ青いルパンが主役の「ルパン・ビギンズ」らしいので、シリーズ化予定ということでしょうか。伯爵夫人がルパンの息子を盗んで育てちゃってますから、ルパンvs伯爵夫人＆息子という構図で次回予定？？でも仏語圏はともかく、興行的にはキビシイでしょうねえ・・・日本でも拡大ロードショーと言いながらテアトルなどミニ・シアターだけだもん・・・。これを機にルパン人気が少しでもUPすればいいのにと思ってはいるものの、一作目にこそスマートで格好いいこれぞ怪盗紳士！みたいなルパンを見せて欲しかった気も・・・。実はおフランス俳優のハンサム概念がちと私とは違うのは前々から解っていたものの、今回のルパンでも思い知らされ・・・。実はパスカル・グレゴリーがこの中では一番好みだったりして。
とにかく大阪初日9/23の翌日整理番号４番をゲットしてはりきって見に行った甲斐は・・・宝石とドレスに関してはあったと思います。