セレンディピティ ダイアリー

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否定と肯定

2017年12月14日 | 映画

レイチェル・ワイズ主演、ホロコーストの存在をめぐって2000年にイギリスで争われた裁判を描いた法廷劇です。「ボディガード」のミック・ジャクソンが監督を務めています。

否定と肯定 (Denial)

ホロコースト研究家でアメリカの大学で教鞭をとるデボラ(レイチェル・ワイズ)は、自著の中でホロコースト否定論者であるイギリス人歴史学者アーヴィング(ティモシー・スポール)を批判したとして、アーヴィングから名誉棄損で訴えられます。

アーヴィングが訴えを起こしたイギリスの司法制度では、訴えられた側に立証責任があり、すなわちデボラたちが”ホロコースト否定論”を崩さなければなりません。デボラのために、ランプトン(トム・ウィルキンソン)を中心に大弁護団が組まれ、アウシュヴィッツへの現地調査やアーヴィングの20年分の日記の精査など、入念な準備が進められます...。

”ナイロビの蜂”以来のレイチェル・ワイズによる久しぶりの社会派作品を楽しみにしていました。ナイロビ~と同じく、ヒロインのまっすぐな正義感が伝わってくる作品。イギリスの司法制度の特殊性もはじめて知りましたし、勝つためのアプローチの仕方も興味深かった。裁判官や弁護士の時代がかった衣装など、裁判風景も新鮮でした。

それにしても21世紀の今もなお、ホロコーストを否定する学者がいることに驚きます。アーヴィングの物言いを見ているだけで不快で吐き気がしてきました。”その刺青でいくら稼いだんだ”発言には、あまりの情けなさ、愚かしさ、悔しさに涙がこみ上げました。この最低に嫌らしい悪役をみごとに演じたティモシー・スポールの勇気を讃えます。

デボラたちにとっては”ないことはない”ことを証明する難しい裁判であり、アーヴィングはそれを見越してイギリスで訴えたのでした。ランプトンが立てた戦略は、陪審員をつけずに裁判官に審議してもらうこと、そしてホロコースト生存者やデボラに証言の機会を与えないこと。

デボラとしては不本意ですが、ランプトンは、感情に訴えて証言することはアーヴィングに付け入る隙を与えてしまうとし、事実を積み重ねることによって論理的にアーヴィングの主張の虚偽を証明するという方法をとるのです。また過去の日記からアーヴィングが差別主義者であることも明らかになるのでした。

結果は予測できたものの、ぎりぎりまで予断を許さない展開にはらはらしました。そして改めて、裁判というのは民主主義国家の根幹をなす神聖な場所だとも思いました。アーヴィングは人として最低ですが、それでも証拠書類としてプライベートな日記を隠さず提出するフェアな精神をもっていたことに救いを覚えました。

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丸の内イルミネーション2017

2017年12月13日 | おでかけ

八重洲で知人のコンサートに行った後、丸の内へ。

長らく工事していた東京駅丸の内駅前広場が先週完成し、きれいになっていました。写真ではそれほど広く見えませんが、実際にはかなり奥行があります。都内でこれだけ広い何もない空間というのは貴重ですね。見晴らしがよくて気持ちがいいです。バス乗り場もようやく落ち着いてよかった。

丸ビルのクリスマスツリー。今年はずいぶん前衛的なデザインです。赤い花に覆われた球体に、私は血管を通る赤血球を想像してしまいました...^^; 今年は”花で彩るクリスマス”と題し、フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんがデザインしています。

丸の内南口前のKITTEのクリスマスツリー。真っ白なツリーですが、時間とともにいろいろな色の光が当てられ、幻想的に輝きます。写真はライトグリーンが当たっている時。

天井からガラスのすだれのようなものが垂れ下がり、雪のようにキラキラしてきれいでした。薄紫色のライトが当たり、夜のゲレンデみたい。

KITTEでお茶を飲んでひと休みしている間に、外はすっかり暗くなっていました。仲通りのイルミネーションを見ながら日比谷まで歩くことにしました。ものすごい人出にびっくり。

丸の内ブリックスクエアのクリスマスツリーも、ニコライ・バーグマンさんのフラワー球体ツリーでした。グリーンの球体がまりもみたい。色を抑えたシックなデザインです。

エルメスのディスプレイ。バカンスに出かけたくなりますね。

日比谷のザ・ペニンシュラの前のクリスマスツリーはファミリー向けでかわいい。それにしても、六本木、丸の内、日比谷...と今年のツリーのトレンドは球体???

ザ・ペニンシュラの、アマリリスをメインにしたフラワーアレンジメント。赤と緑のクリスマスカラーですが、あまり”らしくない”ところがすてきです。

【関連サイト】
東京駅・丸の内駅前広場が完成 (日経2017/12/07)
丸の内イルミネーション2017 ~2018/02/18
Marunouchi Bright Christmas 2017 ~Blooming Anniversary~ 花で彩るクリスマス ~12/25
WHITE KITTE ~12/25

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Gianicolo

2017年12月12日 | グルメ

映画のあと、麻布十番までぶらぶらとお昼を食べに行きました。ちょうどお昼時で満席のところが2軒続きましたが、通りがかりの半地下にGianicolo(ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ)というイタリアンのお店を見つけました。テラコッタのタイルに乳白色の塗り壁。イタリアの街中にある食堂といった感じのカジュアルなレストランです。

ランチセットは、ピッツァかパスタに本日の窯焼き野菜、食後のコーヒーがつきます。ピッツァとパスタをそれぞれ選び、シェアしていただきました。

この日の窯焼き野菜は、インカのめざめ(じゃがいも)にモロッコいんげん、パプリカ、山芋。山芋は家ではわさびしょうゆで食べたことしかなかったので、焼いて食べるとこんなにおいしいなんて!と新鮮でした。

ピッツァは自家製ソーセージと赤たまねぎのディアヴォラをいただきました。パリッと薄い生地ですが、直径30㎝位あってとにかく大きい。シェアしてよかった。でもおいしくてぺろりと食べちゃいました。

パスタは蟹のトマトクリームスパゲティをいただきました。最初から半分に分けて持ってきてくださいました。蟹は味噌も入っていて、コクと旨味がたっぷりです。ソースをパンでぬぐって最後までおいしくいただきました。

***

六本木ヒルズにもどると、けやき坂のルイヴィトンのディスプレイにクーンズのアートが。これまで村上隆や草間彌生ともコラボしてきましたが、今期はクーンズなのですね。(公式サイト) それにしてもモネやゴーギャンのアートを使ってもいいのかしら??

【関連記事】バルーンアート by ジェフ・クーンズ (2008-08-04)

毛利庭園の紅葉。だいぶ葉が散ってしまいましたが、まだまだきれいでした。

大きなボールのオーナメントを重ねたツリー。これもクーンズのアートみたい。^^ クリスマスマーケットやイルミネーションもはじまり、これからますますにぎわいそうです。

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オリエント急行殺人事件

2017年12月11日 | 映画

アガサ・クリスティの同名のミステリーを、ケネス・ブラナーの監督、製作、主演で映画化。ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファーら、豪華キャストが共演しています。

オリエント急行殺人事件 (Murder on the Orient Express)

ホリディシーズンらしい華やかな雰囲気を楽しみに見に行ってきました。アガサ・クリスティはその昔、大流行しましたが、私は原作も、1974年の映画も見ていないのです。で、禁じ手ですが、映画を見る前に結末(犯人)だけチェックしておきました。こう言うと、人からびっくりされますが...^^;

既に名作として、人々に知られているこの作品。私にとっては学校の理科の実験と同じで、結果がわかっていた方が、過程を楽しめるのでは?という読みがありました。実際、登場人物など詳しい情報はほとんど入れていなかったので、ポアロのアプローチや犯人の反応など、違う視点から新鮮に楽しめたように思います。

キャストも、ケネス・ブラナーとジョニー・デップが出ている...くらいしか知らなかったので、デイジー・リドリー、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチなど、思いがけないメンバーが続々登場してわくわくしました。久しぶりに見たペネロペは修道女という役どころで、いつもと雰囲気が全然違って途中までまったく気がつきませんでした。

それから一番のサプライズは、バレエダンサーのセルゲイ・ポルーニンがアンドレニ伯爵役で出演していたこと。キレやすいバレエダンサーという役どころは当て書きでしょうか。セリフはほとんどありませんでしたが、序盤にキレキレの足技を見ることができてうれしかった。

【関連記事】ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣 (2017-08-08)

オープニングがエルサレムの嘆きの壁というのは、トランプの問題発言があったばかりの今、あまりにもタイムリーでした。盗難事件が起きて、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の聖職者3人が容疑者として衆人の前に出されるのです。そこでポアロの推理が始まって... 結果次第では洒落にならないと思ったら、絶妙のところに落ち着いてほっとしました。=3

そして本作の魅力はなんといっても、1930年代の豪華列車の旅。登場人物たちの華やかなファッションや、車内の贅沢な設え。雪深い山の中を列車が煙を上げながらぐんぐん進む姿は、まるでポーラー・エクスプレスみたい。列車が脱線して動けなくなったのは、急峻な山腹に高く組まれた橋の上。スリリングな展開を盛り上げていました。

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炎のランナー/バベットの晩餐会 他

2017年12月09日 | 映画

DVDで鑑賞した中から、3作品の感想です。

炎のランナー (Chariots of Fire) 1981

ハクソー・リッジ」と同じく、信仰上の理由からオリンピックのレースを棄権したランナーがいたと知り、見てみたくなりました。それぞれの思いの中で陸上競技の頂点を目指してひたむきに努力する選手たちの、清らかな美しさに心が洗われましたが、1920年代のイギリスの権威主義・階級社会についても考えさせられる作品でした。

ケンブリッジ大学に入学したハロルドは、ユダヤ人であるがゆえに差別を感じ、特技の走ることでイギリス社会で認められようとオリンピックを目指します。一方、スコットランドの宣教師の家庭で育ったエリックは、走るという自分の才能を生かすことが神の恩寵に応えることだと信じ、オリンピックを目指します。

ハロルドとエリックはともに1924年パリ・オリンピックの代表選手に選ばれます。しかし予選の日が安息日と重なることを知り、エリックは出場を断念することを決めますが、他の選手が種目を代わってくれて、無事に出場することができたのでした。

ハロルドに対する大学の上官の態度や、アメリカ選手に対する見方などイギリスならではと感じるところもありましたが、選手たちは実力の世界で結果を出し、互いに敬意という絆で結ばれていることが伝わってきて救われました。 ヴァンゲリスのテーマと浜辺を走る選手たちの尊い姿が心地よい感動を与えてくれました。

バベットの晩餐会 (Babettes gæstebud / Babette's Feast) 1987

19世紀デンマーク・ユトランドの小さな村に、2人の美しい姉妹がいました。姉妹は若い頃に村を訪れた名士に求婚されたこともありましたが、牧師である父を助け、神に仕える道を選んだのでした。父亡き後、姉妹はパリの動乱から逃れてやってきたバベットという女性を受け入れます。

バベットは身の上を何も語りませんが、お料理上手で家政婦としてよく働きます。ある時、宝くじで1万フランを当てたバベット。当然パリに戻るだろうと姉妹は落胆しますが、バベットはこのお金で姉妹の父である亡き牧師の生誕100年のお祝いのディナーを作らせて欲しいと申し出ます。実は彼女はパリの名門レストランの伝説のシェフだったのです...。

バベットがフランスから手配したウミガメやウズラが生きたまま運ばれてきて、村人たちは恐れおののきますが、テーブルセッティングも完璧に、バベットはウミガメのスープに、ウズラとフォアグラのパイと、食べる芸術とよぶのにふさわしい数々のお料理を用意します。(私は舞台裏の厨房のシーンも大好き!)

最初は恐々口にしていた村人たちも、あまりのおいしさに日頃のいがみ合いも忘れ、誰もがいつしかとろけるような笑顔になっていきます。極上のお料理は時に魔法をかけることもあるのですね。何十年かぶりに腕をふるうチャンスを得て輝く、バベットの誇り高い幸福な表情が心に残りました。

ストレンジャー・ザン・パラダイス (Stranger Than Paradise) 1984

パターソン」の独特の世界が気に入って、ジム・ジャームッシュ監督の他の作品も見てみました。全編モノクロで撮影され、ニューヨークを舞台にした"The New World"、クリーブランドを舞台にした"One Year Later"、フロリダを舞台にした"Paradise"の3部で構成されています。

ハンガリー出身でニューヨークでギャンブラーとして生計を立てているウィリーは、クリーブランドに住む叔母から頼まれ、10日間ブタペストから来た従妹のエヴァを預かります。ウィリーの相棒エディも加わり、親しくなる3人。1年後、ウィリーとエディはエヴァが住むクリーブランドを訪れ、そのまま3人でフロリダに向かいます...。

東欧移民の若者たちの何ということはない日常がだらだらと描かれる...といってしまえばそれまでですが、喜怒哀楽、勧善懲悪、起承転結のはっきりしたハリウッド映画とは一線を画していてそこが新鮮でした。3人のバランスも絶妙で、シーンのひとつひとつがセンスよく絵になります。

ウィリーがアメリカに来たばかりのエヴァに先輩風を吹かせたり、エヴァがウィリーから餞別にもらったドレスが気に入らなくてすぐに脱いでしまったり、ちょっとしたところにリアリティが感じられておもしろかった。スローな物語もラスト近くで急展開し、きっちり着地を見せてくれます。

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Bistrot Grand Soleil/こけし屋さんのレーズンパイ

2017年12月06日 | グルメ

西荻窪にあるフレンチレストラン、Bistro Grand Soleil(ビストロ グラン ソレーユ)さんでランチをいただきました。前菜・スープ・メイン・デザートにコーヒーがつくコースです。

前菜はムール貝のグラタン。ひとつの殻に2つの身が入っていました。同じお料理を以前はまぐりで作ったことがありますが、ムール貝の方が華やかですね。とろりとしたベシャメルがよく合います。横に添えられているマカロニサラダもほっとするおいしさでした。

野菜ときのこ、ベーコンの入ったスープ。おそらくたまねぎをキャラメリゼしているのだと思いますが、コクがあってしみじみ体にしみました。

ジビエの季節。メインのお料理は「今日は特別に長崎のうりぼう(子どものいのしし)がありますよ」とお勧めされ、食べてみたくなりました。とろけるように柔らかく、なめらかでとてもおいしかった! かわいいうりぼうの姿が頭に浮かびましたが、ありがたく感謝していただきました。色とりどりの季節の野菜のグリルとともに。

デザートは3種のベリーのアイスクリームと、ブラマンジェでした。オレンジソースもさっぱりと後味さわやか。コーヒーとともにおいしくいただきました。

【関連記事】Bistro Grand Soleil (2016-12-14)

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食事の前に、西荻窪駅前にある洋菓子とフランス料理の老舗「こけし屋」さんで、おつかいものと家にもおみやげを買いました。

レトロで味わい深いイラストは、鈴木信太郎画伯のデザインです。以前、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智先生の伝記を読んだ時に、大村先生が美術がお好きで鈴木信太郎さんの作品を収集していらっしゃると知り、ふしぎなつながりを感じました。

焼き菓子のセットがたくさんあって迷いましたが、ちょうど常連らしきご婦人がいらしたので、アドバイスをいただいてこちらのレーズンパイにしました。箱がかさばらないので、小さな贈りものにぴったり。いいお買い物ができました。

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すばらしき映画音楽たち

2017年12月05日 | 映画

DVDで鑑賞。名作映画を彩る映画音楽にスポットを当てたドキュメンタリー映画です。ハリウッドで活躍する約40人の映画音楽作曲家へのインタビューを中心に、映画のメイキングやシーンを交えて構成。映画史や心理学の視点からもアプローチしています。

すばらしき映画音楽たち (Score: A Film Music Documentary)

ジョン・ウィリアムズ、ハンス・ジマーなど、ハリウッド映画のビッグネームが続々登場。ミシェル・ルグランやニーロ・ロータなど、ヨーロッパの作曲家は取り上げられていませんが、誰もが知る名作映画の音楽がどのように生まれ、映画を彩る音楽はどうやって作られるのか、映画に欠かせない音楽のあれこれを知ることのできる楽しい作品でした。

あたりまえのことですが2時間の映画には2時間の音楽があるのですものね。”サイコ”にしても、”ジョーズ”にしても、音楽がなく映像だけだったらあそこまで怖くはなかった...と本作の中で検証しています。音楽のもつ力、映画における音楽の大切さを改めて実感しました。

まずは映画音楽の歴史から。無声映画の時代は、劇場にシアターオルガンが設置され、映画の進行にあわせてオーケストラから効果音まで演奏されていたそうです。このシアターオルガンというのが時代がかっていて仰々しい。^^ 世界でひとつの音を求めて、めずらしい民族楽器からおもちゃのピアノまで集める作曲家の話もありました。

映画音楽にオーケストラを初めて取り入れたのは”キングコング”、そしてビッグバンドを初めて取り入れたのは”007"。”パイレーツ・オブ・カリビアン”はオーケストラのレッド・ツェッペリンとよばれたなど、映画音楽史には欠かせない記念碑的な作品も紹介されました。

心理学者による解説もおもしろかったです。人は自分の意思で好きなようにスクリーンを見ていると思っていますが、実際には音楽によって誘導されていることを”カールじいさんの空飛ぶ家”を使って説明していました。音楽が変わると、人は何かが起こるというメッセージを読み取り、そこに視線を動かすのだそうです。

それからテーマ曲は、同じメロディを映画の中で何度も繰り返すことによって、いつのまにか見る人の心になじんでしまうのだとか。ある作曲家が、観客の反応を見るために初日に映画館に足を運び、映画が終わるとトイレにこもって観客がテーマ曲を口ずむのを聴く...というエピソードもほほえましかったです。

一方、映画音楽は商業音楽でもあるので、スケジュールや興行成績というプレッシャーも半端ありません。あのハンス・ジマーでさえ、依頼を受けた時は天にも昇る心地でも、街で映画のポスターを見かけると、まだ全然できていないと不安になったり、ジョン・ウィリアムズに頼んでくれと逃げ出したくなることがあるそうです。

そして映画音楽といえば、ジョン・ウィアムズを抜きにしては語れません。”E.T."、"スターウォーズ”、”インディジョーンズ”、”ハリーポッター”などなど数々の名曲を生み出しました。スピルバーグの横でウィリアムズが、こんなのどう?という感じでピアノをさらさら~と弾いて、”ジョーズ”や”E.T.”のテーマ曲が生まれていくところは感動的でした。

映画音楽の収録風景も興味深かったです。なんとオーケストラのメンバーはほとんど初見で演奏するそうです。なぜなら全員の音がぴたりと合うより少しずれた方が、合唱のような効果が生まれるから。そういえば”マッドマックス”でも、パーカッションの音をいくつも重ねることで、大勢で演奏しているような効果を出すと話していました。

今や映画音楽は私たちの共通認識にもなっています。例えばダースベーダーのテーマが流れると、誰もがこの人は悪者だとわかるように...。オバマ大統領の就任演説で、”タイタンズを忘れない”のテーマが使われたというエピソードは印象的でした。映画音楽は伝えたいメッセージを表現する手段にもなっているのですね。

...というわけで大いに楽しんだ本作。エンドロールの途中で、ジェイムズ・キャメロン監督が”タイタニック”のあるシーンにまつわるすてきなエピソードを紹介しているので、飛ばさずに是非ご覧になってくださいね。

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クリスマスリース/アドヴェント・キャンドル 2017

2017年12月03日 | 日々のこと

今日から待降節(アドヴェント)に入りました。今年もクリスマスリースやアドヴェント・キャンドルなど、少しずつクリスマスの準備をはじめています。

毎年おなじみのクリスマスリースですが、ハンドメイドなので毎年微妙にできあがりが違うのが楽しい。今年はユーカリの葉が大きく目立っています。姫りんごを飾ることもありますが、今年はリボンが華やかなのでこれで十分かな。生のグリーンはとてもいい香りです。

グリーンはモミ、ヒムロ杉、ヒバ、オリーブ、ユーカリなどを少しずつ取り混ぜています。形や色の違うグリーンが重なることで作り出されるデリケートな風合いが大好きです。リースはまだ出来立てで瑞々しいですが、外気にさらされて少しずつ乾燥し、カサカサしていきます。その過程を愛でるのもまた楽しみです。

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アドヴェント・キャンドルのアレンジメント。赤・白・緑のクリスマスカラーを主体に、アクセントカラーにバラを使いました。キャンドルは本来4本立てて、主日の度に1本ずつ増やして点灯していきますが、今年は大きいのを1本にしました。植物が火にかからないよう注意して灯します。

これは昔アレンジメントの教材で購入した花器。使い勝手がよく気に入っていますが、プラスチックなので少々重厚さに欠けるのが難点。色も飽きてしまいました。

塗り直そうと思い立ち、息子に左のアクリル絵の具を画材屋さんで買ってきてもらいましたが、まったく絵の具がのらないのです。ネットで調べて下地にプライマーを塗るとよいと知ったので頼んだら、これしかなかったと金属用のを買ってきました。これを下地に塗ってみましたが、やはり絵の具がのりません。

埒が明かないので、自分で東急ハンズに行ってきました。(最初からそうすればよかった) 模型売場とDIYコーナーでそれぞれ相談して購入したのが、プラモデル用の塗料とプラスティック用のプライマー。右のプライマーをスプレーし、その隣のアクリル塗料を塗ったら、ようやく色がのりました。

何度も塗り直したので、表面が凸凹してしまいましたが、ハンドペイントらしい味わいが出ました(自己満足)。東急ハンズのスタッフのお話では、プライマーの代わりにやすりをかけてもいいそうです。アンティーク風のすてきなペイントがたくさん出ていたので、飽きたらまた塗り直したらいいですね。

自分で少し手を加えると、下手ながら愛着がわいてきます。

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スノーデン 日本への警告/夜の谷を行く/革命前夜

2017年12月02日 | 

最近読んだ本から、感想を書き留めておきます。

エドワード・スノーデン他「スノーデン 日本への警告」

映画”スノーデン”は、これまで先進国では当たり前と思われていた個人の自由と権利を揺るがす内容で、大きな衝撃を受けました。本書は、昨年東京大学で開催された自由人権協会のシンポジウムの記録で、第1部が亡命先のロシアからインターネット経由で参加したスノーデン氏のインタヴュー、第2部が人権識者たちによる討論会となっています。

映画”スノーデン”で一番驚いたのは、日本のコンピュータシステムにはマルウェアが仕組まれていて、米国の同盟国でなくなった時にシステムダウンするよう設計されているということ。しかしあの映画が公開されてからも、日本で全く問題にならなかったのが不思議でした。日本はこの件に関して了承しているということでしょうか。

スノーデン氏はかつて横田基地にいた経験から、情報において日米は協力関係にあり、日本が米国からの要請で日本国内のムスリムの監視を行っていたことも明らかにしています。しかしこうした情報収集はテロ防止に役立っておらず、テロへの恐怖に乗じた重大な人権問題とされています。

同じように膨大な個人情報を収集することは犯罪の抑止力にはならず、人権活動家、弁護士、ジャーナリストの監視につながるとスノーデン氏は言います。こうした権力の暴走を止められるのは、本来ジャーナリズムの力ですが、日本のメディアは今、大きな脅威にさらされていると氏は警鐘を鳴らしています。

 桐野夏生「夜の谷を行く」

桐野夏生さんの小説は悪意がひりひりと感じられて苦手...といいつつ、これまでにいくつか読んできましたが、これはおもしろかった! 読み始めたら止まらず、一気に読み終えました。

主人公は40年前に連合赤軍に加わり、指導者の永田洋子とも行動をともにした西田啓子という架空の人物。ということで陰惨な場面があったら嫌だな...と心配でしたが、物語は主に現在の啓子の姿を描いています。5年間服役している間に両親は心労で亡くなり、親戚中から縁を切られ、今もつきあいがあるのは妹のみ。

啓子は過去を誰にも知られないよう、友人も作らず、都会の片隅でひっそりと息をひそめるようにして生活しています。そこに突然昔の仲間から電話があり、あるフリーライターが過去の事件に関して啓子と連絡を取りたがっていると告げます。どうして自分の居場所がわかったのか?以来、彼女の心に小さなさざ波が起こります...。

連合赤軍事件についてはほとんど知りませんし、正直理解も共感もできませんが、それとは別に何十年も自分と何の関係もない犯罪者とその家族を追い続けるもの好きがいるという事実に恐れを感じました。未曽有の東日本大震災は、啓子に過去と向き合う勇気を与えます。思いがけない結末は、啓子に差し伸べられた救いだと感じました。

須賀しのぶ「革命前夜」

東西ドイツ分裂時代の1989年、バッハに憧れて東ドイツ・ドレスデンの音楽大学にピアノ留学した眞山柊二は、世界から集まった個性豊かな才能に出会い、大きな刺激を受けるものの、自分の音を探し求めて苦悩します。そんな折、教会で出会った美しいオルガニスト、クリスタの音楽に魅せられます。

これほどの才能がなぜ眠っているのか、それは彼女がかつて西ドイツへの亡命を試みたことからシュタージから監視され、自由な音楽活動ができない立場にいたからです...。須賀しのぶさんの小説を読んだのは初めてですが、音楽と歴史がみごとに融合したドラマティックな世界を堪能しました。登場する音楽を聴きながらの幸せな読書体験となりました。

Cantilena - Josef Rheinberger (You Tube)

中でも一番心に残ったのは、クリスタが弾くラインベルガーの”カンティレーナ”。少々甘すぎると恥ずかしがるクリスタですが、私の中では彼女のテーマ曲となりました。東ドイツの監視社会については、映画”善き人のためのソナタ”を見た時の記憶が、イメージをふくらませるのに役に立ちました。

物語の終盤では、東ドイツで生きる人、自由な世界を目指す人、それを助ける人、あるいは阻止する人。激動の東ドイツ情勢と、愛と自由をかけた駆け引きがめまぐるしく交錯し、サスペンスフルな展開に引き込まれました。

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