セレンディピティ ダイアリー

映画・アート・本の感想、おいしいもの、おでかけなど。  お探しの記事はカテゴリーの各INDEXをご参照ください。

ハクソー・リッジ

2017年07月11日 | 映画

メル・ギブソン監督、アンドリュー・ガーフィールド主演。第2次世界大戦の沖縄戦で、武器を持たずに75人もの命を救った米軍衛生兵デズモンド・ドスの実話を映画化した戦争ドラマです。

ハクソー・リッジ (Hacksaw Ridge)

ヴァージニア州ブルーリッジ山脈にある小さな町リンチバーグ。敬虔なセヴンスディ・アドヴェンティスト教会の信徒であるデズモンドは、復員兵である父が戦争経験が原因でアルコールに溺れ、時に家族に暴力をふるうことに傷ついていました。ある時、母に手を上げた父に銃を向けたデズモンドは、二度と銃を手にしないと心に誓います。

第2次世界大戦が始まり、友人たちが次々と出征する中、自分も国家のために尽くしたいと願ったデズモンドは、衛生兵として従軍することを志願します。やがて沖縄の前田高地(ハクソー・リッジ)に赴いたデズモンドたちの隊は、想像以上に過酷な戦場を目の前にします...。

沈黙 サイエンス」での苦悩する修道士の姿が記憶に新しいアンドリュー・ガーフィールドが、本作では信仰にもとづく信念のもと、武器を持たずに多くの戦闘員たちの命を救った兵士を演じると知り、楽しみにしていました。

沖縄戦についてはひめゆりの塔などを通じて、本土決戦前の最後の砦としてどこよりも過酷な戦場となったことは理解していましたが、多くの日本兵・民間人のみならず、アメリカ兵にも多くの犠牲があったことを、本作を見て改めて思い至りました。

映画の舞台となった前田高地は那覇(首里)の少し北。切り立った崖という難所でもあり、首里陥落を目前に戦闘が過酷を極めたことが、凄惨な映像から伝わってきました。敵と味方が入り乱れて闘うカオスともいうべき戦場の中で、武器を持たずに救助活動を続けたデズモンドの信念の強さに圧倒されました。

デズモンドが信仰するセヴンスディ・アドヴェンティスト(SDA)は、キリスト教の中でも異色といっていいかもしれません。実は私のクラスメートにもSDAの信徒がいましたが、彼女は土曜日が安息日で授業に出席できないので、代わりにレポート提出が認められていました。

デズモンドの、軍に志願しながら”決して武器は持たない。人を殺さない”という宗教上の信念を貫く姿に、久しぶりに昔の級友を思い出しましたが、当時の日本で、ひとりの学生の信仰を尊重し、特例を認めた学校の英断を誇りに思います。

話はそれましたが、デズモンドは何度も軍から除隊を言い渡され、ついには軍法会議にもかけられますが、飲んだくれの父親が息子を思い、古い軍服を着てかつての上司にかけあってくれたことで、晴れてデズモンドの主張が認められたのでした。

戦場で武器を持たずに何ができるのかと思いますが、彼がほんとうに活躍するのは、戦闘がひと段落した後です。まだ敵がうろついている戦場で、怪我をして動けなくなっている兵士たちを見つけては、ロープをかけ、高い崖の上から次々と怪我人をおろしていきます。

日本軍が掘ったガマ(洞窟)も登場しますが、日本兵に見つからないよう傷ついた兵士たちを次々と助けていく場面は、映画らしくスリリングに作られていて、カタルシスを感じる場面でもありました。デズモンドが戦地で唯一銃を握ったのが、即席の担架を作るためというエピソードも心憎い。

戦場で75人を助けるという偉業を成し遂げたデズモンドですが、彼を援護した兵士たちの存在も忘れてはならないと思いました。

『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント (8)   トラックバック (9)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« レモンチキンのグリル & ... | トップ | Andiamo »
最近の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ドスの信念 (ノルウェーまだ~む)
2017-07-12 18:22:03
セレンさん☆
覚悟してご覧になったかと思いますが、凄惨な戦場の描写をも凌駕するドスの信念に圧倒されて、ホントに感動しますよね。
ただ過酷過ぎる戦場で、助かった多くの元兵士たちは、そのあと精神疾患で悩まされた現実があるそうで何とも複雑な思いです。
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2017-07-13 07:54:52
まだ~むさん、おはようございます。
多少エンターテイメントとして描かれている部分も感じられましたが
リアリティのある戦場描写でした。
そしてあの中で丸腰で救助を続けたデズモンドの心の強さに圧倒されました。
一方、その陰には彼を援護した仲間たちの存在も
大きかったのではないかと思いました。

デズモンドのお父さんも、過酷な戦争経験がもとでPTSDになったのですものね...
アメリカンスナイパーを見た時にも思いましたが
肉体的な傷のみならず、心の傷は目に見えにくいだけに
体全体、そして社会を蝕むその影響力たるや底知れぬものがあると思います...。
こんにちは (ここなつ)
2017-07-19 13:26:09
こんにちは。
貴記事の中で、SDAのことについて書かれていらっしゃって興味深かったです。
同じキリスト教でも宗派が色々とあるんですね。映画でも土曜日だと言っていましたが、安息日も違うなんて…知識がありませんでした。
これでまた一層キリスト教の世界が難解になった私です。世界史の勉強的には面白いんですけどね。
☆ ここなつさま ☆ (セレンディピティ)
2017-07-19 16:54:15
ここなつさん、こんにちは。
SDA、映画では信仰心が強いという表現でしたが
聖書に忠実であるあまり、安息日(正確には金曜日の日没から土曜日の日没まで)を絶対的に守るなど
キリスト教の中では少し極端というか、異色な信仰だと思います。
ユダヤ教も、熱心な信徒は(旧約聖書に沿っているので)土曜日の安息日を守ってる人は多いですね...。
人間の強さの根源 (ごみつ)
2017-07-25 20:48:43
こんばんは。

私もさきほどやっとこさ記事にしました~。
TBさせていただきましたが、この映画、けっこう記事にするの難しい作品でしたね。

映画をみはじめて、同じアンドリュー主演の「沈黙」について何度も頭に浮かびました。
奇しくもとても関連性のあるテーマだな・・なんて感じて。

セレンディピティさんが記事に書かれている、SDAについて、とても興味深かったです。
実際にお知り合いに信者の方がいらしたんですね。

安息日に関しては、レースの日が日曜日だったので棄権してしまったオリンピックランナーのエリック・リデルを描いた映画「炎のランナー」を思い出しました。

人が何かを信じる気持の強さと、それがもたらす人間の力っていうものに想いを馳せさせられますね。
☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2017-07-26 10:49:15
こんにちは。
ハクソー・リッジ、いろいろ思うところもありましたが
ドスの勇気ある行いに、素直に心打たれる作品でした。
序盤ではどちらかというと線が細いと見えた若者でしたが
彼に勇気を与えた信仰の力...
どうしても「沈黙」と重ねて見てしまいますね。

大学時代のクラスメートがSDAの信徒だったのですが
おそらく入学の際に、大学側に相談したのでしょうね。
プロテスタントとも少し違って私たちにとっても貴重な経験でした。

炎のランナー、テーマ曲はあまりに有名ですが
そういう話とは知りませんでした。
近いうちに是非見たいです~

セレンさーん♪ (q 遅く書き込み失礼しまーす)
2017-09-12 15:40:54
沖縄に家族で毎年ロングステイしていて
この「地獄の戦場」と呼ばれた沖縄戦が舞台の地に行ったこともあったので
この作品を楽しみにしていたの
リアルな戦争映画
まずそれぞれの人物背景がしっかり描かれてて
信念のバックボーンである幼少期のエピソード
実話であってドキュメンタリーでは無いからか
尚更「宗教概念や倫理観」という
個人の価値観等が、試されるような
映画から自分の内なる考力が問われたわ
また「one more, one more」
ずきっと響いて来たなぁ・・・

☆ qさま ☆ (セレンディピティ)
2017-09-13 10:40:10
qさん、コメントありがとうございます♪
なんと、qさんは前田高地に行かれたことがあるのですね!
この過酷な戦場のことも、デズモンド・ドスのことも
本作を見て初めて知り、衝撃を受けました。
戦争という非常事態において
デズモンドがどうして信念を貫きとおすことができたのか
彼のバックボーンから遡ってていねいに描かれていたので
なおのこと心に響くものがありました。
ほんとうにすごい人ですよね...

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事

9 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
ハクソー・リッジ (風に吹かれて)
もやい結びで もうひとり あともうひとり 公式サイト http://hacksawridge.jp 実話を基にした映画 監督: メル・ギブソン バージニア州で育ったデズモンド(アンドリュー・ガーフィー
ハクソー・リッジ  監督/メル・ギブソン (西京極 紫の館)
【出演】  アンドリュー・ガーフィールド  サム・ワーシントン  テリーサ・パーマー   ヒューゴ・ウィーヴィング 【ストーリー】 第2次世界大戦中、デズモンドは、人を殺して......
「ハクソー・リッジ」☆度胆を抜かれるかつてない臨場感 (ノルウェー暮らし・イン・原宿)
見事である。 今までの戦争映画が足元にも及ばないと思ってしまうくらいのリアルな臨場感。 「野火」のグロさに匹敵する血肉飛ぶ戦場の惨状が、目の前にまざまざと見せつけられ......
ハクソー・リッジ (だらだら無気力ブログ!)
後半の戦闘シーンの描写が凄い。
ハクソー・リッジ / Hacksaw Ridge (勝手に映画評)
沖縄戦の「前田高地」での戦いに際し、その思想信条的理由から、兵器を持たずに活動して多数の兵士を救ったことにより、名誉勲章が与えられた実在の人物、デズモンド・T・ドスの......
「ハクソー・リッジ」 (ここなつ映画レビュー)
メル・ギブソン監督作品。宗教という名の信念の下に、人を殺さないと誓って戦場に赴く衛生兵の物語。実話をベースにしている。人を殺さないで戦場で何ができるのか?そう、傷つい......
映画:ハクソーリッジ HACKSAW RIDGE 1.はじめに信念があり、2.試練があって、3.ヒトは大きな...... (日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~)
メル・ギブソンと言えば… 演技は勿論、監督になっても「やや?かなり?エキセントリック」 なので、気になっちゃう点が、× 3つ も!(笑) その1. 監督が「エキセ...
ハクソー・リッジ (ごみつ通信)
Hacksaw Ridge 2016年/オーストラリア・アメリカ (監)メル・ギブソン (演)アンドリュー・ガーフィールド サム・ワーシントン ルーク・ブレイシー テリーサ・パーマー ヒ......
ハクソー・リッジ  ごつっと、がっしりハード (Said q winning)
監督 メル・ギブスンキャスト アンドリュー・ガーフィールド テリーサ・パーマー ヴィンス・ヴォーン あらすじ:第2次世界大戦中、デズモンドは、人を殺してはいけないとい......