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リチャード・ジュエル

2020年02月20日 | 映画

クリント・イーストウッド監督の最新作。無実の警備員がある日突然犯罪者に仕立てられそうになる、実話をもとにした恐ろしいドラマです。

リチャード・ジュエル (Richard Jewell)

1996年アトランタ・オリンピックの会場で時限爆弾を見つけ、被害を最小限に食い止めたのにもかかわらず、FBIやメディアに疑いを掛けられて窮地に立たされた警備員、リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)を主人公とした作品です。

当時 私はアメリカにいて、アトランタ・オリンピックも見に行っているのですが (男子体操と柔道の試合)、この爆弾テロのことはすっかり記憶から抜け落ちていて、リチャード・ジュエルのことも忘れていました。今思えばFBIの不始末ゆえに、あまり大きく報道されなかったのかもしれません。

イーストウッド監督が今回光を当てたのは、名もなき英雄リチャード・ジュエル。アメリカを愛し、国家を守るために警察官になることを夢見る白人男性です。警備員である彼は、職務に忠実であるがために時として融通が利かないところがあり、これまで周囲とトラブルを招くことがありました。

しかしこの時は、彼の愚直なまでの職務への忠誠心が、結果として多くの人々の命を救うこととなったのです。

人種差別や人権にセンシティブな現代のアメリカにおいて、このようなでっちあげが FBIによって行われたということに、まずは衝撃を受けました。リチャードを信じ、助ける弁護士(サム・ロックウェル)がいなかったらどうなっていたか。考えただけでも恐ろしい。

私にとって印象深かったのは、疑いをかけられたリチャードが、他でもないアメリカ大統領に「自分をお救いください」と祈ったことです。当時はクリントン政権でしたが、大統領が正義と民主主義の象徴のように思われていたのでしょうね。

今のトランプ政権だったら、リチャードははたして大統領に祈っただろうか?とふと考えてしまいました。(いわんや日本においてをや)

息子の無実を訴える母親(キャシー・ベイツ)の渾身のスピーチ。そしてろくに調べもせずに先入観だけで無実の罪を着せようとした FBI に対する、リチャードの誠実な訴えに、心を揺さぶられました。


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8 コメント

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アメリカに・・・ (ノルウェーまだ~む)
2020-02-21 01:04:05
セレンさん☆
なんと!アメリカにその時お住まいだったのですね!?
セレンさんが印象に残っていなかったという事は、FBIによって犯人を仕立て上げて、間違ってもうやむやで済ませてしまったからなのですよね~怖い怖い・・・
リチャードやお母さんにとっては人生を狂わされるような事だったのに…酷い話です。
そして正義の象徴であった大統領がいまや・・・ですね(≧▽≦)
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☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2020-02-21 07:39:39
まだ~むさん、おはようございます。
ほんとうに、どうしてリチャード・ジュエルのことが
記憶に残っていないのかしら?と思いました。
まあ、逮捕されなかった...ということもあるかもしれませんが。
こういう名もなき英雄にスポットを当てる
イーストウッド監督の目はすばらしいです。

現代でもこういうことが起こるのか...と背筋が凍りました。
もっとも今だったらSNSであっという間にうわさが広がって
もっとバッシングがひどくなったかもしれませんね。
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怖いお話 (ごみつ)
2020-02-22 01:12:09
こんばんは!

「リチャード・ジュエル」行かれたんですね!

何て言うか、基本的に地味な映画と言って良いと思うんだけど、とにかく作劇が洗練されてるので、「良い映画を見たな~」っていう気分になりますよね。

本当に怖い作品でしたよね。もしも自分がリチャードの立場になってしまって、国家権力やマスコミから冤罪をかぶせられたら、もう抗いようもないと思います。

ホントにサム・ロックウェル弁護士がいてくれて良かった。
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私も見ました。 (きさ)
2020-02-22 07:21:08
さすがはイーストウッド。スキのない演出で見せます。
ジュエル役のポール・ウォルター・ハウザー、弁護士ワトソン役のサム・ロックウェル、ジュエルの母役のキャシー・ベイツがうまいですね。
サム・ロックウェルかっこよかったです。
冤罪を生む側のオリヴィア・ワイルド、ジョン・ハムも良かったです。
メディア・テロというテーマは今こそアクチュアルですね。
やはりイーストウッド作品に外れなしでした。
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☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2020-02-22 22:38:46
ごみつさん、こんばんは。
リチャード・ジュエル、先月に見に行ったのですが
記事にするのが今になってしまいました。><
派手ではないですが、監督の良識を感じさせるいい作品でした。

多少、脚色されているのかもしれませんが
FBIともあろう組織が、あんな風に証拠をでっちあげて
無実の人間を犯人に仕立て上げていくなんて...と衝撃でした。
サム・ロックウェル演じる、公正な目で見てくれる
弁護士に出会えてほんとうによかったです。
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☆ きささま ☆ (セレンディピティ)
2020-02-22 22:46:52
きささん、こんばんは。
イーストウッド監督の職人技を感じさせる作品でした。
安心して見ていられるし、快く泣けました。^^

キャスティングもよかったですね。
サム・ロックウェル、かっこよかったです。
キャシー・ベイツはいかにも南部のおばちゃんて感じだし
悪役2人も魅力的でした。
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こんにちは (ここなつ)
2020-04-28 17:45:42
アトランタオリンピックを現地で観覧されたのですね!と、妙な所に反応してしまって、すみません…。
しかし、正直に真面目に生きていても、思わぬところで…いや、正直過ぎるからこそ、波にあっという間に飲み込まれてしまうのかもしれませんね。
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☆ ここなつさま ☆ (セレンディピティ)
2020-04-28 18:22:19
ここなつさん、こんにちは。
そうなんです。こんなことはめったにない機会だからと
1歳児を連れてアトランタに見に行きました。
...でもなぜか、このリチャード・ジュエル事件は
記憶にないのですよね...。

こういう愚直なまでに職務に忠実だったリチャード・ジュエルを
信じて救ったサム・ロックウェル演じる弁護士
そしてこうした名もなきヒーローにスポットを当てた
イーストウッド監督に、ぐっときますね。
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