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宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

スピンワード・マーチ宙域開拓史

2020-10-04 | Traveller
 太古の昔のスピンワード・マーチ宙域については、今もほとんどわかっていません。帝国暦300年から一世紀以上をかけて行われた第一次大探査(First Grand Survey)によって、スピンワード・マーチ宙域(とその周辺)は、帝国の中でも特に太古種族(Ancients)の遺跡が密集し、ドロインの居住星系が多いことが判明しています。宙域内の惑星には、ダリアン人など人類も含めた動植物が宇宙各地から移植されており、ヴィクトリアに見られるような最終戦争による大破壊の痕跡の数々もあります。しかし、これら断片的な証拠の数々が本当は何を意味しているのかについては、いまだに考古学者らによる仮説と推論の域を出ていません。
 少なくともはっきりしているのは、太古種族がもう宇宙のどこにもいないであろうということだけです。

 太古種族が姿を消してから30万年間、この宙域で大規模な活動をした種族はいないと考えられています(亜光速による恒星間航行を成し遂げた種族がいたとする説もあります)。
 やがてこの宙域の彼方でヴィラニ人が「星々の大帝国(第一帝国)」を興し、その反対側でゾダーン人も宇宙に乗り出すと、-2800年頃にはヴィラニ人がヴェインジェン(3119)に入植し、-2500年頃にはゾダーン人が現在のクロナー星域に小さな前哨基地をいくつか建設しています。しかし当時の両者は国家としてこの宙域に関心は持っておらず、入植の波は起こりませんでした。
 時は流れて第一帝国が「人類の支配(第二帝国)」に取って代わられると、-2000年頃にエシステ(2313)、ノクトコル(1433)、リオ(0301)、少し遅れて-1500年にはガルー(0130)に、第二帝国を飛び出したソロマニ人が入植を行っています。また、ジャンプ航法発見前の「地球人」が亜光速船で、-1450年~-1000年にかけてヴィクトリア(1817)、イレーヴン(1916)、アルジン(2308)に漂着しています。しかしこれらの入植者はいずれも、様々な理由で星々を渡るための技術を失っていきました。
 そんな中で最もこの宙域に影響を与えたのが、-1520年にダリアン人と接触してそのまま現地に「溶け込んだ」ソロマニ人です。ダリアン人の文化とソロマニ人が持ち込んだ科学技術が爆発的な反応を見せ、TL3だった技術力は500年後にはTL16に達していました。しかしそんな彼らの高度星間文明も、-924年の恒星災害によって瞬く間に崩壊してしまいます。
 静寂の時代が過ぎて-400年頃になると、アスラン領経由で大裂溝(Great Rift)を越えてきたソロマニ人がグラム(1223)に入植を行いました。彼らは瞬く間に周辺星系に入植地を拡大すると、「ソード・ワールズ人」なる独自の民族意識を固めていきます。一方で大災害から復興したマイアのダリアン人は-275年に再び宇宙に戻ると、周辺星系の同胞と再接触して恒星間共同体を形成していきます。距離の近い両者は-265年には接触していますが、お互いの性向の違いによって友好関係を築くまでには至りませんでした。
 これまでに挙げた人類勢力は、いずれも星系単独か星域規模程度のものに過ぎませんでした。スピンワード・マーチ宙域が巨大な恒星間国家に組み込まれるのは帝国暦の時代、つまり〈第三帝国〉の到来を待たねばなりません。

 帝国によるスピンワード・マーチ宙域の探査の歴史は、建国直後に旧都ヴランドを含むヴランド宙域を併合したことにより始まります。これにより回廊(コリドー)を越えてデネブ宙域へ、そして更なる辺境へと進出することが可能になったのです。探査を担った帝国偵察局(IISS)は、50年代にゾダーン人、ソード・ワールズ人、ダリアン人と相次いで接触を果たし、その後も休むことなくこの宙域を調べ続けていきました。
 一方で入植の方は、距離の近いコリドー宙域やデネブ宙域の開発を優先する保守的なヴィラニ系資本に代わって、冒険心に富んだソロマニ系の資本や人々が「飛び越えて」成し遂げていきます。今でもどことなくヴィラニ文化が香るデネブ宙域と異なり、スピンワード・マーチ宙域にはより遠方のはずのソロマニ文化が色濃く残っています。

 帝国人による入植の始まりは、帝国暦60年にメガコーポレーションのLSP社がモーラ(3124)に入植拠点を設営してからで、それが呼び水となり75年には早くもリジャイナ(1910)やその周辺への入植も開始されました。85年にはフォーニス(3025)が入植されるなど、モーラ~リジャイナ間の「スピンワード・メイン」を辿って入植は急速に進み、モーラは帝国辺境における通商の中心地となっていきます。
 そんな需要を見越して、後に宙域規模の大企業となるアル・モーライ社(Al Morai)が75年にモーラで創業されました。当初は星系内輸送に限っていましたが、120年には星系間の貨物・旅客輸送を開始しています。

 帝国は147年にソード・ワールズ諸国と、翌148年にはダリアン連合の発足に合わせてそれぞれ外交関係を樹立しています。両者は帝国との経済的な結びつきを深めていきますが、ソード・ワールズの常態化した政情不安も手伝ってか、より深まったのはダリアンの方でした。

 この時代、帝国中央を吹き荒れた宥和作戦(75年~120年)やジュリアン戦争(175年~191年)、ヴァルグル戦役(210年~348年)といった戦乱に比べれば、辺境は実に平和でした。特にヴァルグル戦役でコリドー宙域の安全が確保されたことにより、辺境の開発は大きく加速することになります。
 帝国暦200年~400年にかけて帝国政府は大規模な入植政策を実施し、250年にはリジャイナや近隣星系が正式に帝国に加盟しました。とはいえ多くの星々の技術水準はまだまだ低く、数少ない先進・高人口星系間を結ぶ通商路には危険がつきものでした。例えば、315年までスカル(2420)を拠点とした海賊団が脅威となっていたそうです。


帝国暦300年頃のスピンワード・マーチ宙域
(実線:国境 着色部:入植地 緑線:主要交易路
赤:帝国系 青:ソード・ワールズ系
白:ダリアン系 黄:人類系 緑:知的種族母星)


 310年代になってようやく、スピンワード・メインから遠いアラミス星域への入植が開始されますが、まだこの時はリジャイナ星域の開発の余波といった体でした。本格的な入植・開発は400年代にプレトリア星域(デネブ宙域)から大規模に行われてからで、今もタワーズ星団はその名残りでスピンワード・マーチ宙域内にありながらデネブのプレトリア公爵領のままです。
 現在のグリッスン星域方面の本格的な入植が始まるのも、300年代に入ってからです。これは、それまでに入植されたルーニオン星域を足掛かりに、ソード・ワールズの黙認を受けて彼らの領域を通過して行われました。当時のジャンプ技術では、その方が効率的だったのです。しかし星域の大半が帝国領となるのは500年代以降で、その後の開発も帝国の最果てにあることもあってか長年停滞します。

 余談ですが、380年頃からアスラン商人の間で、大裂溝を越えてスピンワード・マーチ宙域に向かう冒険航海が流行しました。なぜならここが、彼らの大好物である塵胡椒(ダストスパイス)の一大産地であることが広く知られたからです。踏破航路自体は-1044年に既に発見されていますが、もしより効率の良い航路が見つかれば、巨万の富を手に入れられるかもしれないのです。
 やがて彼らとの最初の商取引が、454年にロマー(2140)で行われたと記録されています。

 スピンワード・マーチ宙域への入植と帝国領の拡大が進むうちに、効率の良い統治機構改革も求められるようになりました。522年には宙域内の帝国領全てを一括統治していたモーラ公爵領を二分する形でライラナー公爵領が置かれ、その後も必要に応じて徐々に他宙域と同じく各星域に星域公爵が置かれていきます。
(※とはいえ現在もジュエル、ランス、ヴィリス、アラミスの各星域には星域公爵が置かれておらず、近隣の星域公爵が統治を兼務しています)
 555年には、ソード・ワールズ星域の3星系が飛び地状に帝国に加盟します。ここには-300年代からソード・ワールズ人と起源を同じくするソロマニ人が入植していましたが、本流の人々と違ってアングリックを母語としていたために文化面で断絶が起き、-102年にはソード・ワールズから独立状態となっていたのです。
 そして589年、スピンワード・マーチ宙域は隣接するデネブ、トロージャン・リーチ、レフト(の一部)と共に、帝国第7の領域となる「デネブ領域(Domain of Deneb)」に組み込まれました。この領域は星々の並び具合から「鉤爪の向こう側(Behind the Claw)」などとも呼ばれています。
 しかしながら既に存在する他の領域と異なり、統治者たる「デネブ大公(Archduke of Deneb)」は初めから空席のままです。帝国政府は辺境の変事に即応するために新たな行政区画を設定したのですが、大公を指名する前に事態が動いてしまったのです。

 200年代から続いた帝国領拡大の波は、500年代に入ると一つの壁に当たります。この頃になると帝国人の入植地域はクロナー星域を越えて隣のフォーイーヴン宙域にまで到達し、必然的にゾダーン人の勢力圏と接触、一部では入り交じる格好になっていました。両者の社会・文化の違いから摩擦が生まれ、緊張は次第に大きなものとなっていきました。
 ゾダーンは帝国を牽制するために、500年代初頭に最初の「外世界同盟(Outworld Coalition)」を結成しています。この同盟にはヴァルグルの一部やソード・ワールズの連合海軍が参加しました。ヴァルグルの間にはかつてのヴァルグル戦役を発端とした反帝国感情があり、ソード・ワールズでも470年に帝国がヴィリス星域の大半を保護領化したことで反発する声が高まっていたのです。念のためダリアン連合にも加盟を打診はしましたが、元々ダリアン人は(大災害を知りながら助けなかった)ゾダーンに不信感を抱いていたのと、帝国との良好な経済連携を保つために中立を採りました。

 そして589年、デネブ領域が設置されたその年に、ゾダーン軍がフォーイーヴン宙域の帝国入植地を一掃したことで「第一次辺境戦争(First Frontier War)」が勃発します。同時にかねてからの計画通りに同盟の艦隊が帝国国境を襲撃する手筈になっていたのですが、ヴァルグルの攻撃は大失敗に終わり、ソード・ワールズ諸国の足並みが揃わなかったために呆気なく外世界同盟は瓦解してしまいました。とはいえ帝国が戦争を予期しておらず、中央との連絡に時間を取られたことで対処が遅れ、結果的にゾダーンは独力で戦争を続けることができました。
 ところがゾダーン軍による領域侵犯事件と、593年にソード・ワールズ軍がアントロープ星団を占拠したのを切っ掛けに、ダリアン連合が帝国側で対ソード・ワールズ戦線に加わったことで戦いの流れが変わりました。
 帝国暦604年、スピンワード・マーチ宙域艦隊の大提督オラヴ・オート=プランクウェル(Grand Admiral Olav hault-Plankwell)は、ジェ・テローナ(2814)を襲ったゾダーン・ヴァルグル混成艦隊をジヴァイジェ(2812)で捕捉して壊滅的な打撃を与えました。しかしながら、この戦いで帝国海軍も深刻な打撃を受けたために双方は戦争継続が不可能となり、停戦条約に調印することとなります。
 条約によってゾダーンはクロナー星域に橋頭堡を確保し、一方で帝国はフォーイーヴン宙域の入植地を失ったものの、帝国に未編入だったスピンワード・マーチ宙域の入植地を領土として獲得します。この事由をもってプランクウェル大提督は帝国の勝利を宣言し、戦争に援助を行わなかった帝国政府を強く非難しました。大提督は自ら宙域艦隊を率いて帝都キャピタルに「凱旋」し、皇帝ジャクリーン1世への「謁見」を要求しました。抵抗を排除したオラヴは最終的に「皇帝暗殺規約(Right of Assassination)」に則って自ら皇帝にとどめを刺し、そのまま即位を宣言しました。しかしそれは、帝国を吹き荒れた内乱(604年~615年)で誕生した「軍人皇帝(Emperors of the Flag)」の最初の一人となっただけでした。609年には参謀長だったラモンが反旗を翻し、その後は日常茶飯事のように分裂と抗争と簒奪が繰り返され、栄光のスピンワード・マーチ宙域艦隊もいつしかコア宙域の塵と成り果てていきました。
 ちなみに、オラヴは今でも故郷スピンワード・マーチ宙域で人気があり、未命名のままとなっている第268区を「プランクウェル星域」にしようとする動きも一部であります。

 609年、ゾダーン・ヴァルグル・ソードワールズによる外世界同盟が再び結成され、入念な準備の末に615年にゾダーン艦隊によるシパンゴ(0705)攻撃から「第二次辺境戦争(Second Frontier War)」が勃発しました。核方向国境には戦力の増強目覚ましいヴァルグル艦隊が、ヴィリス星域にはソード・ワールズ軍が、ジュエル星域やダリアン領へはゾダーン軍が侵入しました。
 しかし、過去の戦争から学んでいたダリアン人はアスラン艦隊を正規軍として組み込むなど国防力を強化しており、加えてダリアンが「いくつかの星を超新星化して抗戦しようとしている」という噂が流れたため、ゾダーン軍はこの方面から撤退しました。
 開戦の報を受けた当時の皇帝クレオン5世は、ライラナー公爵アルベラトラ・アルカリコイ(Duchess Arbellatra Khatami Alkhalikoi of Rhylanor)を宙域艦隊大提督に任命して迎撃を命じました。彼女はライラナー公爵位を継承した翌年の603年に、自領の惑星防衛艦を率いてゾダーン艦隊に勝利して既に頭角を現していましたが(この功績によりプランクウェル大提督から海軍大佐の階級を授けられています)、開戦当初の貧弱な宙域艦隊で外世界同盟の攻勢を食い止め、逆に後方撹乱で時間を稼いだことからも非凡な指揮能力が伺えます。そして3年間の忍耐の末に弩級戦艦の量産とデネブ宙域艦隊の半数に及ぶ増援を得て、ようやくアルカリコイ大提督は膠着した戦争を620年に決着させることができたのです。
 休戦条約によって帝国は要衝シパンゴを含む4星系をゾダーンに割譲し、ケリオン・ヴィリス星域の11星系が中立化されました。一方で帝国は戦争末期にソード・ワールズ星域の11星系を占領しましたが、これは単にソード・ワールズ人の反帝国感情を増幅しただけで、わずか5年で撤収の憂き目に遭っています。
 アルカリコイ大提督は戦後、かつてオラヴが行ったように艦隊を率いて帝都を目指し、相変わらず内乱を続けている「自称」皇帝を打倒しました。しかしオラヴと異なり、自分が新皇帝には即位せずに一歩引いた「摂政」となって、前皇朝の正統な継承者の捜索を命じたのです。
 結果的にその愛国的な行動は内乱に倦み疲れた貴族や帝国市民の好感を得られましたが、その裏で彼女は皇位指名の権限を握る貴族院(Moot)での支持基盤を抜け目なく固めていきました。そして7年間に及んだ継承者探しが空振りに終わったことを受け、629年に貴族院は摂政アルベラトラに新皇帝となるよう「要請」を行ったのです。
 「皇帝」アルベラトラの治世は内乱で傷ついた国力を蘇らせ、現在まで続く「アルカリコイ朝」の基礎を固めました。その中でも最大の功績は帝国の隅々まで専用の高速船で結ぶ「Xボート網(X-boat Network)」の整備で、これにより懸念だったスピンワード・マーチ宙域と帝国中央との通信時間は(当時はジャンプ-3であっても)大幅に短縮されました。またこの内乱を境に宙域公爵の強大な権限は弱められ(※この影響でデネブ大公の指名が有耶無耶になったとされます)、帝国海軍の編成上からも宙域艦隊は姿を消しました。「大提督」の称号も過去のものとなり、やがて「総司令官」ぐらいの意味を持つ慣用句に成り下がりました。
 そして、アルベラトラは功臣に対する恩賞を忘れてはいませんでした。海兵隊を率いて大提督不在の宙域の安定に尽力したリジャイナ侯爵カランダ・アレドン(Marquis Caranda Aledon of Regina)は戴冠翌日に初代リジャイナ公爵に、第二次ジマウェイ会戦で奮闘したアラミス男爵マローヴァ・オート=ハヤシ(Baroness Marova hault-Hayashi of Aramis)は631年に初代アラミス侯爵に叙せられています。

 600年代以降、超能力研究所は帝国各地で認知を広める宣伝活動を行っていましたが、それが実を結んで650年頃には超能力ブームが到来し、700年代後半にはそれは頂点に達します。学問としての超能力研究は大きく進み、人々は超能力に親しみました。ところが790年代になると各地の研究所で金銭的・倫理的醜聞が次々と発覚し、帝国市民の超能力への感情は一気に悪化してしまいます。それは800年から826年にかけて「超能力弾圧(Psionics Suppressions)」と呼ばれる国家規模の集団ヒステリーにまで拡大し、スピンワード・マーチ宙域でも数々の悲劇と少なからぬ亡命者を生みました。リジャイナや各地にあった超能力研究所も勅令で全て閉鎖されています。
 そしてこの結果、国是として超能力への態度が真逆となった帝国とゾダーンが対立を深めていくのは必然でした。

 帝国政府は610年に、将来の帝国領化を見据えて「第267区・第268区」を未開発の最辺境に設置しましたが、740年になって皇帝パウロ1世の号令で第267区改め「ファイブ・シスターズ星域」の本格的な開発が始まりました。しかし800年には海軍による異例の星域統治体制が布かれ、802年にはドロインの母星候補であるアンドー(0236)などが偵察局によって進入禁止とされました。このような事情もあり、何よりも飛び地という要因も重なって、民間による開発はこの300年間ほぼ停滞しているのが実情です。アル・モーライ社による定期便就航も951年からと遅れています。
 また、第268区の方の開発は941年になってようやく解禁されました。こちらは既に親帝国・反帝国・中立様々な立場の星系が点在しており、複雑怪奇な近隣関係もあって帝国領化はなかなか進展していません。むしろ、長らく捨て置かれていた感のある隣の現グリッスン星域が、「新天地への玄関口」として見直されたことの方が影響は大きかったようです。

 約350年に渡って続いていた不安定ながら平和な時代も、帝国暦979年にとうとう終わりを告げます。ケリオン星域方面で影響力を強めていたゾダーンに対する国境付近での小競り合いが全面攻勢を招き、「第三次辺境戦争(Third Frontier War)」は始まりました。まずゾダーン軍は(過去の辺境戦争と同じく)リジャイナ星域の重要な星々を陥落させてジュエル星域を孤立させる戦略を採り、それに対応して帝国はリジャイナ戦線に増援を送りましたが、その戦力は十分ではありませんでした。というのも、当時の皇帝スティリクスは不穏な情勢であったソロマニ・リム宙域の方を注視していたのです。
 その後ゾダーン軍はヴィリス・ランス星域方面で突出した攻勢に出て、全力でライラナー(2716)陥落を目指しました。計画通りにジェ・テローナを落とし、そこを拠点にポロズロ(2715)も奪ってライラナー包囲網は更に強まりましたが、帝国軍がリジャイナ方面から引き揚げたことでライラナー戦線は膠着し、どちらも決定的勝利は得られませんでした。やがて後方からの増援が到着して、帝国軍はゾダーン軍を押し返すことに成功します。981年には両軍の勢力圏は開戦前の国境線とほぼ同じ状態にまで戻っています。
 その後は両軍ともに惑星の奪い合いよりも通商破壊が主な戦術として採用されました。このため一般社会への影響は深刻となり、市民の厭戦気分は海軍の作戦に影響を与えてしまうほどでした。983年には、849年に帝国属領となったばかりのマージシー(1020)が(この戦争には不参戦の)ソード・ワールズ連合に鞍替えしています。
 結局、ゾダーンに有利な休戦条約が986年に結ばれました。ゾダーンはジュエル・クロナー・ケリオンの各星域で新領土を獲得し、帝国が国境線を後退させる形で非武装緩衝地帯が設けられました。この力の空白域には同年、アーデン(1011)を首星とする中立国「アーデン連邦(Federation of Arden)」が誕生し、1006年にユートランド(1209)とジルコン(1110)を版図に加えています。
 そして事実上の敗戦の余波は帝国中央にも及び、責任を取ってスティリクス皇帝は長子ガヴィンへの譲位を余儀なくされました。
(※この政変劇はDGP版設定のみ「市民の不満を背景にしてディエンヌ将軍率いる近衛兵がクーデターを決行し、隠れていた皇帝に銃を突きつけて譲位を強いた」とあります。皇室にとっては不名誉な出来事のため、表沙汰にされなかったのかもしれません)

 その新皇帝ガヴィンは991年、モーラ公の働きかけによって現在のグリッスン星域の首都をティレム(2233)からグリッスン(2036)に遷す勅令を出します。これには、先の辺境戦争においてグリッスンが資源産出や経済の面でより戦争に貢献しており、宇宙港規模や人口もティレムを上回ったことが理由とされています。

 1014年001日、モーラ公ルテティア(Lutetia Ammon Muudashir)の退位と、その長女であるデルフィーヌ・アドラニア・ムウダシル(Duchess Delphine Adorania Muudashir of Mora)の第15代モーラ公爵就任の式典が執り行われました。新公爵となった彼女は979年021日に生まれ、(424年の公爵家設立から)綿々と続く家母長制の伝統に則って爵位を継承しました。続く1018年には、ガヴィン皇帝から「宇宙船と王冠勲章(Order of Starship and Crown)」を授けられています。
 それから約1世紀に渡り、彼女は堅実かつ狡猾な政策運営で自領内に限らず宙域全体を大きく発展させてきました。それが故に、自分こそが初代宙域公爵どころかデネブ領域の大公に相応しいと公言して憚りませんが、彼女には気位は高くとも傲慢で冷酷な一面があり、追従者どころか政敵も多く作ってしまうことがその道を妨げていると言えます。
 現在、126歳となったデルフィーヌ公はさすがに肉体の衰えは隠せませんが(※彼女はヴィラニ人なので長寿です)、その精神力と野心は変わらず若いままです。

 さて、ロクサーヌ・オベルリンズ(Roxanne Oberlindes)によって487年に創業されたリジャイナの企業「オベルリンズ運輸(Oberlinds Lines)」は、海軍関係の仕事を受注して成長したものの辺境戦争の度に巨額の損失を出してしまい、とうとう株主たちは990年に当時の社長アマンダ・オベルリンズ(Amanda Oberlindes)を辞任させ、結局その4年後には同社は廃業に追い込まれました。
 ところが破産手続き中に、8隻の貨物船が実はオベルリンズ家の私有財産であって、会社に貸与しているだけだったことが判明します。この結果、オベルリンズ家はアマンダと息子エリックの2代に渡って「家族経営の自由貿易業者」として生き延びます。
 そして1049年、オベルリンズの名を広く知らしめた「エミッサリー号事件」が発生します。弱冠22歳のマーク・オベルリンズ(Marc Oberlindes)が、官僚機構の間隙を縫って帝国海軍の巡洋艦を「武装解除せずに」払い下げさせ、それをすぐさま国境外に出すことで合法化してしまったのです。鮮やかな(詐欺的な)手腕を見せた彼はそれから16年間、巡洋艦エミッサリー号を旗艦とする通商艦隊を率いてグヴァードン宙域のヴァルグル国家との間に新規の交易路を開拓し、事業を拡大させていきます。

 1055年には、モーラ公デルフィーヌ(Delphine Adorania Muudashir, 15th Duchess of Mora)がスピンワード・マーチ宙域公爵に任命されました。そして彼女の老獪な政治運営は、この宙域の中心地としてのモーラの地位を更に押し上げました。
 ちなみに今年で126歳になるモーラ公は、いまだに現役です。
(※おそらく「初代」宙域公爵です。ただし、最新の資料では「宙域公爵はいないが、実質モーラ公が代々担っている」と、GURPS版設定以前に一般的だった解釈が明言されています。よって今後、この1055年の出来事は幻になる可能性があります)


 1082年、帝国海軍が停戦条約で中立化されたクォー(0808)に基地を建設したことが偶発的事件に繋がって「第四次辺境戦争(Fourth Frontier War)」は始まりましたが、これまでと違って双方が開戦を全く予期していなかったことから国境付近の小競り合い程度に留まり、最終的にイリース(1802)~メノーブ(1803)間の深宇宙における「二星間の戦い(Battle of Two Suns)」で帝国軍が辛勝を遂げたことでわずか1年半で休戦に至りました。帝国はゾダーン国境沿いの2星系を失いましたが、代わりにソード・ワールズ連合からマージシーを奪い返しました。
 あまりに早く戦争が終わったため、中央政府が開戦を知ってから送った増援と行動指令は全く間に合いませんでした。この教訓から帝国は軍制を改革し、国境付近の重要星系に最新鋭の艦船を配備して守りを強化する一方、それ以外の星系防衛力は削減して後方に振り向けました。つまり、増援が到着するまで国境防衛艦隊が敵の前進を遅らせることを戦略上明確にしたのです。同時に、ストレフォン皇帝は辺境での戦争に素早く対処するために宙域公爵の権限を強化し、「宙域艦隊」も復活させました。

 ヴァルグル交易と第四次辺境戦争での後方輸送で莫大な利益を得たオベルリンズ家は1084年に、もはや無理のあった「家族経営」の建前を捨てて「国境間貿易企業」としての勅許を再び帝国政府から得ました。かつて会社を追われたアマンダの孫であるマークの辣腕によって、こうして「オベルリンズ運輸」が復活したのです。そして法的には繋がりはないものの、旧会社と同じ社章を掲げました。それは、祖母や父が自家用貨物船に目立たぬよう塗装し続けていたものでした。
 1101年の時点で同社は100隻以上の船を抱えるリジャイナ星域最大手企業となり、新たな商圏としてアラミス星域進出を見据えるほどになりました。そしてマーク社長はこの年、第四次辺境戦争での貢献を讃えられて、フェリ男爵マーク・オート=オベルリンズ(Baron Marc hault-Oberlindes of Feri)となります。

 1098年、第14代リジャイナ公爵としてノリス・アレドン(Duke Norris Aella Aledon of Regina)が就任します。彼は前公爵ウィレム(Willem Caranda Aledon)の第二子だったため本来は兄ウィリアムが公爵位を継ぐはずでしたが、兄と父が相次いで不慮の死を遂げたことで海軍から呼び戻されたのです。
 母方のイーラ家を通じてストレフォン皇帝と遠縁関係にあるノリス公は、その人脈をも利用して巧みな統治を見せています。それが宙域一の実力者であるモーラ公やその一派との摩擦にも繋がっているのですが…。

 ちなみに同年、前の戦争からゾダーン占領下にあったエサーリン(1004)が「帝国とゾダーンの共同保有」とされました。両国民が共存するこの星には、今後の関係改善と外交窓口としての役割が期待されます。
(※DGP版以降の設定では「共同保有」ではなく「中立」とされましたが、今回はあえて最初期の設定に倣いました)

 安定した平和を享受しているかのように見える現在の宙域の不安定要因として、反帝国テロ集団「アイン・ギヴァー(Ine Givar)」が挙げられます。民主化を求めて984年に獄死した指導者の名を冠した彼らは、990年代末にはデネブ領域各地に支部を持つほどに拡大し、やがてゾダーンに接近して(取り込まれて?)無差別テロに走ります。1075年にはジヴァイジェのカシャー市で核融合爆弾を炸裂させて死者500万人の大惨事を引き起こし、第四次辺境戦争では戦線各地でゲリラ攻撃を展開しています。現在はイフェイト(1705)などで盛んに活動が見られます。
 国境付近では再び緊張が増しており、そのうち「第五次辺境戦争(Fifth Frontier War)」が始まるのではないかと見る向きもあります。1103年にスピンワード・マーチ宙域艦隊の宙域提督(Sector Admiral)にはオットマー・マノリス侯爵(Marquis Ottmar Manolis)が就任しましたが、これは近々提督の娘婿となる、モーラ公爵子飼いのフレデリック・サンタノチーヴ男爵(Baron Frederic Muudashir Santanocheev of Solstice)にその地位を継がせるための地ならしと見られています。
(※大提督や宙域提督は本来男爵級の人事に過ぎず、コア宙域の武門マノリス家ともあろうお方がわざわざ「名誉男爵」に格下げしてまで辺境の提督をやるからには、何か裏があると見られても仕方ないのです)

 国境付近では再び緊張が増しており、そのうち「第五次辺境戦争(Fifth Frontier War)」が始まるのではないかと見る向きもあります。近年、スピンワード・マーチ宙域艦隊の宙域提督(Sector Admiral)の座は様々な政治的思惑から空席のままとなっていますが、その後継者の最有力と見られているのが、候補者の中で最も格下であるはずのフレデリック・サンタノチーヴ少将(Rear-Admiral Fredrick Muudashir Santanocheev)です。彼はフォーニス伯爵家に生まれ、ルーニオン公爵の妹と婚約し(※1105年初頭に結婚します)、そして何よりもモーラ公の「お気に入り」である、という強固な後ろ盾を持ち、昨今の艦隊再編計画に「待った」をかけたことで各地の有力者の支持も得ています。
(※大提督や宙域提督は本来男爵級の人事に過ぎませんが、サンタノチーヴ卿は旧設定では「伯爵家の第二子」ということで、持っている爵位は「ソルスティス男爵(Baron of Solstice)」でした(つまり格は釣り合っています)。が、新設定では既に「フォーニス伯」になってしまいました……)
 一方で敵が多いのも事実です。海軍の上層部がモーラ閥で占められることは当然政敵のリジャイナ公には好ましくないでしょうし、再編計画が政治の駆け引きに使われたことで一部の将兵から不満の声も上がっています(そもそも指揮官としての力量も疑問視されています)。それ以上に、帝国海軍情報部(Imperial Naval Intelligence)は彼が宙域提督に就任することで「報復」が始まるのではないかと危機感を募らせています。というのも、サンタノチーヴ卿はかつて情報部提供の情報を基に行動して「失敗させられた」ことを今でも恨んでおり、海軍情報局(Office of Naval Information)という重複組織を設立してその長になってまでして対抗心を顕にしているのです。ただし、情報局の人員は能力よりも忠誠心を重んじて選抜されていますが……。

 「今の」スピンワード・マーチ宙域は、数百年数千年に及ぶ大小の、そして公になったもの隠されたもの様々な出来事の積み重ねから出来上がっています。過去の出来事は現在に影響を与え、現在の出来事は未来に影響を与えます。それは誰にも予測できません。
 しかし一つ言えるのは、帝国暦1105年のスピンワード・マーチ宙域は「旅する価値がある」場所です。


(※本稿は帝国視点での「スピンワード・マーチ宙域開拓史」に焦点を絞ったため、ダリアンソード・ワールズについては別稿を参照してください)
(※文中の3つの辺境戦争図は、実線:開戦前国境 着色部:停戦後領土 となっています)


【ライブラリ・データ】
アングリック Anglic
 古代テラの英語(イングリッシュ)を起源とする、第三帝国の公用語の一つです。その話者数の多さから銀河公用語(ギャラングリック)とも呼ばれますが、多くの人々にとっては現地語に次ぐ第二言語に過ぎません。また、他種族・他国民との共通語(交易語)としてもよく用いられます。
 第一帝国を打倒した地球連合海軍が標準語として英語を採用していたことから、第二帝国では必然的に公用語として用いられるようになり、ヴィラニ語などの影響を受けながら宇宙各地に広まっていったのがアングリックです。第二帝国崩壊後も交易語として命脈を保ち、第三帝国の母体となったシレア連邦でも公用語として採用されたことから、帝国の拡大とともに人々の共通言語としての地位を不動のものとしていきました。それでも方言の発生を防ぐことはできず、大まかに分けて5つの、細分化すれば星の数ほどの「訛り」が存在します。
 アングリックの筆記法には、古代テラから使われているアルファベットと、ヴィラニ文字でアルファベットを換字したものの2種類があり、どちらも正式とされています。

アーデン連邦 Federation of Arden
 「アーデン連邦」とは現実には存在していない恒星間国家です――今のところは。アーデンを事実上動かしている地元財界主導の抑圧的な寡頭組織「社交界(Arden Society)」は、徐々に近隣世界へ政治面・経済面での影響力を強めており、今は僭称に過ぎない「連邦」が実態を持つのは時間の問題と見られています。
 アーデンは第三次辺境戦争の停戦条約で帝国から切り離された後、その地勢学的立地を生かして帝国とゾダーンに限らず周辺国をも天秤にかけた「中立」政策を採っています。宇宙港には(合法非合法問わない)数々の商品が各地から流れ込み、仕事を求める傭兵や犯罪者が訪れ、逃亡者と賞金稼ぎが相まみえ、カジノは多くの客で賑わい、大使館街では外交戦と諜報戦が日夜繰り広げられています。

宇宙船と王冠勲章 Order of the Starship and Crown
 帝国暦17年にクレオン1世が制定したもので、皇室への最高位の忠誠心を持つ者に与えられます。現在の存命中の叙勲者は200名程度と極めて少なく、帝国で最も権威ある勲章とされています。
 この叙勲者は皇帝への謁見の優先権があり(領域大公よりも先ですが、各大公も当然のように叙勲者です)、皇宮晩餐会にて皇帝と同じテーブルに着くことが許され、キャピタルの貴族院議事塔(Moot Spire)に隣接する豪華な専用施設に滞在することができます。

帝国貴族の命名規則 Naming rules of Imperial nobles
 現在の帝国貴族の名前は、ヴィラニの伝統に則って「爵位+名・母姓・父姓」の順で名乗られます。これにより、例えば皇帝アルベラトラ・カタミ・アルカリコイは、母がジヴァイジェ伯爵のカタミ家、父が(当時の)ライラナー公爵のアルカリコイ家ということがわかります。またアルベラトラの母親はマーヤム・プランクウェル・カタミ(Maryam Plankwell Khatami)なので、アルベラトラが奇しくもプランクウェル家の血を引いていることもわかります(※ただしマーヤムはオラヴの腹違いのきょうだいです)。
 貴族は基本的に夫婦別姓で(※夫婦同姓にすることもできます)、その子供はたいてい父方の姓を名乗りますが、子孫に有益と思われるなら母姓の方を継ぐ場合があります。例えばアラミス侯爵ハヤシ家は、17代目が名門テュケラ一族のボールデン=テュケラ家(Bolden-Tukera family)と縁組みしたことで18代目は「ジョージ・ハヤシ・ボールデン=テュケラ」を名乗り、その代以降のアラミス侯爵はボールデン=テュケラ家として引き継がれています。
 貴族を省略して呼ぶ場合は「デュリナー大公」「ノリス公」のように「名前+爵位」が基本ですが、ソル領域の方では風習によって「姓+爵位」で呼ばれています。ちなみに、姓の前に「オート(hault)」や「フォン(von)」を付けて貴族であることを示したり、「名・姓」のみで名乗るのもソロマニ系貴族特有の風習です。


【参考文献】
・Supplement 3: The Spinward Marches (Game Designers' Workshop)
・Spinward Marches Campaign (Game Designers' Workshop)
・Traveller Adventure (Game Designers' Workshop)
・Concise History of the Third Imperium (Clayton Bush, Travellers' Digest #18)
・Regency Sourcebook (Game Designers' Workshop)
・GURPS Traveller: Alien Races 2 (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・Secrets of the Ine Givar (Andrew Moffatt-Vallance, Steve Jackson Games)
・A Festive Occasion (Hans Rancke-Madsen, Mongoose Publishing)
・Behind the Claw (Mongoose Publishing)
・Fifth Frontier War (Mongoose Publishing)
・Integrated Timeline (Donald McKinney)

日本語版発売35周年企画:トラベラー(ホビージャパン版) 正誤表

2019-07-06 | Traveller
 この正誤表は、ホビージャパン社より発売された『トラベラー』関連製品の、後に『Consolidated CT Errata v1.2(2015年3月31日版)』(Don McKinney著・編)にて修正された項目を日本語版に合わせて掲載したものです。現時点では『トラベラー』日本語版固有の誤植修正は手が回っておりません(逆に、原文に存在した誤植が日本語版で既に訂正済みになっているものもありますが、それは記載していません)。
 なお雷鳴社版『トラベラー』および、私自身が日本語版を所有していない物については正誤表を作ることができません。あしからずご了承ください。

◆トラベラー・スタートセット(1984年)
ルールブック Starter Edition: 1. Rules Booklet
19ページ:万能(追記)
 末尾に以下の文を追加します。「しかしながら〈万能〉技能は、別の技能と同等の価値があるわけではありません。医療現場で技能を使用しても〈医学〉技能があるわけではありませんし、緊急時に宇宙船を操縦したとしても〈パイロット〉技能を持っているわけではありません。」
(※〈万能〉で就職して給与を得ることはできない、ということでしょう)

29ページ:負傷と死・第3段落(明確化)
 いわゆる「最初の一撃」ルールは、キャラクターが各戦闘で受ける最初の致傷に適用されます。以前の戦闘で負傷していたとしても、「最初の一撃」から免れることはできません。

29ページ:負傷と死(追記・明確化)
 意識喪失、重傷などのルールは以下のようになりました。
「戦闘中に負傷したものの意識を失わなかった(肉体特徴ポイントがどれ一つとして0にならなかった)キャラクターは、軽傷とみなされます。そのキャラクターは戦闘終了後に傷ついた特徴ポイントと元の値の中間(※おそらく端数は切り捨て)に戻されます。例えば、元々筋力8のキャラクターが筋力4になるまで傷つき、かつ戦闘中に気絶しなかった場合、戦闘終了後に筋力は6に戻ります。そこからキャラクターを完全な状態に回復させるには、医師(医療キットを持った〈医学-1〉の者)による30分間の治療、もしくは3日間の休息が必要です。
 戦闘中に1つの特徴ポイントが0になったキャラクターは意識を失い、完全な状態に回復するには医師(医療キットを持った〈医学-1〉の者)による30分間の治療、もしくは3日間の休息が必要です(※意識を取り戻すのは10分後と思われます)。
 しかし2つの特徴ポイントが0になって意識を失ったキャラクターは、(※3時間後に?)意識を取り戻しても特徴ポイントはそのまま残ります(0のものは1になり、それ以外は現在の値のまま)。完全に回復させるには医療設備(※病院や宇宙船の医務室など)と〈医学-3〉を持つ医師による治療が必須であり、5~30日(5D日)を要します。」

30ページ:特徴ポイントによる効果(明確化)
 「致傷による特徴ポイントの減少も(中略)、攻撃面には影響を及ぼしません」とありますが、これは1回の戦闘のみに適用されます。キャラクターが負傷して戦闘を終了し、そのまま次の戦闘に挑んだ場合は致傷レベルが適用されます。このルールの意図は、特徴ポイントの減少の度に戦闘を滞らせないためであり、回復(もしくは治療)する前に負傷していないキャラクターと同じように次の戦闘でも戦えるということではありませんでした。

36ページ:折畳み銃床(追記)
 銃床が折り畳まれている場合、その武器はさほど命中精度が上がらなくなります(全ての距離でDM-1)。銃床が展開されているのなら修正はありません。

37ページ:再装填(追記)
 ボディピストルとオートピストルは、予め装填された弾倉と共に使用するように設計されています。空になった弾倉を再装填するためには1戦闘ラウンドを使用します。また、これら2つの武器の弾倉は相互利用ができません。

45ページ:船体(追記)
 文末に以下の文章を追加します。「800トンの船体でKクラスのジャンプドライブを配備した船はジャンプ-2が可能です。」

51ページ:政府指定商船(R型)(追記・修正)
 この船にはドライブ拡張用に15トンが確保されています(※ドライブDに変更するには10トンあればいいですし、Eに上げるには足りない上に性能は変わらないので明らかに過剰です)。建造費用は「MCr100.035」です。

51ページ:政府指定商船(M型)(追記・修正)
 この船にはドライブ拡張用に2トンが確保されています(※通常ドライブをDにしたところで加速度は変わりませんが…?)。建造費用は「MCr245.97」です。

52ページ:ヨット(Y型)(追記・修正)
 運べる積荷は「13トン」です。ヨットは商業運航をしない限り、スチュワードを必要としません。

52ページ:傭兵用巡航艦(C型)(修正)
 建造費用は「MCr429.804」で、建造期間は「28ヵ月」です。

61ページ:ガス・ジャイアント(明確化)
 「燃料補給には1週間が必要です」とありますが、ルールブック41ページにある「8時間」と矛盾します。この項目ではガスジャイアントまでの移動にかかる時間込みであると捉えるべきです。

66ページ:異星生物の攻撃力(修正)
 ここの例文では「歯」の致傷力が1Dとなっていますが、チャートブック8ページでは「2D」とされています。よってこの例でも2Dを適用すべきです。

76ページ:調査用機器(初版のみ追記)
 暗視ゴーグル(7)Cr.500:周囲の光を増幅し、着用者は暗闇でものを見ることができます(完全に光のない暗闇では使えません)。暗視(LI)ゴーグルは、夜や戦闘での悪視界という状況を緩和したり無視したりします。

77ページ:道具類(初版のみ修正)
 50kgの工具セットを削除。

チャートブック Starter Edition: 2. Charts and Tables
2ページ:TAS形式2(初版のみ修正)
(誤)"はじめに"の章で述べられた帝国暦を記入すること。
(正)タクテクス18号P.31「帝国の歴史」で述べられている帝国暦を記入すること。

5ページ:技能取得表(変更)
 「部門関係」の「海兵隊」「陸軍」「偵察局」の出目1で得られる「ATV」「エア・ラフト」を全て「輸送機器」に変更します。
(※この裁定により、単独で〈ATV〉技能を得ることはできなくなりました。ATVは〈キャタピラ型機器〉で動かすものとするべきでしょう。しかしながら陸軍の出目2で〈エア・ラフト〉を得られるのはなぜか変更されていません)

8ページ:武器/防具・距離相関表(修正)
 「短剣」の「近」の修正値は「+2」ではなく「-1」です。
 「フォイル」の「戦闘アーマー」に対する修正値は「-8」ではなく「-6」です。
 「ボディ・ピストル」の「致傷力」は「3D」ではなく「2D」です。
 「アブラット」に注釈が欠落しています。「アブラットにレーザーが命中する度に、DMが1減少します」(※おそらく「-7」が「-6」になっていくということでしょう)。

9ページ:肉体特徴ポイント・軽傷の項目以下(変更・明確化)
 意識喪失、重傷などのルールは以下のようになりました。
「戦闘中に負傷したものの意識を失わなかった(肉体特徴ポイントがどれ一つとして0にならなかった)キャラクターは、軽傷とみなされます。そのキャラクターは戦闘終了後に傷ついた特徴ポイントと元の値の中間(※おそらく端数は切り捨て)に戻されます。例えば、元々筋力8のキャラクターが筋力4になるまで傷つき、かつ戦闘中に気絶しなかった場合、戦闘終了後に筋力は6に戻ります。そこからキャラクターを完全な状態に回復させるには、医師(医療キットを持った〈医学-1〉の者)による30分間の治療、もしくは3日間の休息が必要です。
 戦闘中に1つの特徴ポイントが0になったキャラクターは意識を失い、完全な状態に回復するには医師(医療キットを持った〈医学-1〉の者)による30分間の治療、もしくは3日間の休息が必要です(※意識を取り戻すのは10分後と思われます)。
 しかし2つの特徴ポイントが0になって意識を失ったキャラクターは、(※3時間後に?)意識を取り戻しても特徴ポイントはそのまま残ります(0のものは1になり、それ以外は現在の値のまま)。完全に回復させるには医療設備(※病院や宇宙船の医務室など)と〈医学-3〉を持つ医師による治療が必須であり、5~30日(5D日)を要します。」

12ページ:ソフトウェア表(修正・追記)
 「通常回避」プログラムは上から順に「通常回避-1」「通常回避-2」「通常回避-3」「通常回避-4」「通常回避-5」「通常回避-6」で、「自動回避」にはレベルはありません。
 「ライブラリ」プログラムが抜け落ちています。容量は「1」、価格は「0.3MCr」です。

15ページ:宇宙船との遭遇(明確化)
 CおよびDクラス宇宙港に海軍基地が付属することはないので、遭遇表で14・15の項目を参照することはありえません。無いものとみなしてください。

16ページ:治安レベル表(訳語修正)
 数値6の欄、「禁じらるる」を「禁じられる」に修正します。

24ページ:貿易・投機表(修正)
 サイコロの目31の「石油化学品」の「量」は「6D✕5」です。

24ページ:貿易・投機表のDM(修正)
 「世界のタイプ」欄の「非農業世界」は「大気3-・水界3-・人口6+」です。

25ページ:個人用装備・輸送機器(初版のみ追記)
 「輸送機器」欄の価格単位は「(KCr)」(キロクレジット)、「小艇」欄の価格単位は「(MCr)」(メガクレジット)です。

26ページ:超能力距離表(追記)
 表の項目の最後(「惑星」の次)に「遠軌道」(50000km以上)を追加します。超能力コストはテレパシーが「7」、透視力が「5」、念動力が「-」、テレポートが「6」です。

シャドウ/ミスリルでの試練 Starter Edition: 3. Adventures
 修正はありません。

◆研究基地ガンマ(1984年)
スピンワード・マーチ宙域 Supplement 3: The Spinward Marches
 数々の修正を経た、最新版の星系データはここにあります

研究基地ガンマ Adventure 2: Research Station Gamma
 上記の通り、記載されている星系データは今では多くが修正されていることに注意してください。

1001人のキャラクター Supplement 1: 1001 Characters
異星生物との遭遇 Supplement 2: Animal Encounters

 修正はありませんが、これらのデータは1977年版の古いルールで作成されています。

◆メイデイ(1985年)
(※国際通信社版『メイデイ』でどう変更されたかはわかりません)
5ページ:目標変更(修正)
 1980年版ルールで変更されたこの項目は、大きくて重武装な宇宙船で問題を起こすことがわかりました。そのため旧ルールに差し戻します。
 「射撃するそれぞれの船は、射撃する前に射撃目標を予め割り当てておかなくてはなりません。攻撃する船のいずれかの武器が発射される前に目標が破壊された場合、その割り当てを変更するなら他の全てのDMに加えて-6の修正を受けます」

6ページ:誘導システム・自動追尾(追記)
 ミサイルの未来の位置が目標の現在位置に達したのなら、ミサイルは目標の未来位置の方向に自身の未来位置を変更します。

6ページ:爆発システム・接触爆発(修正)
 目標に与える損傷は「3倍」ではなく「2倍」です。

6ページ:爆発システム・近接爆発(修正)
 近接ミサイルは目標に「2倍」ではなく「通常」の損傷を与えます。また、近接爆発ミサイルはアンチ・ミサイル射撃の影響を「受けます」。

6ページ:標準ミサイル(修正)
 何の註記もない場合、標準ミサイルは「5G6」制限加速、自動追尾、「近接爆発」型とします。この型の価格は「Cr5400」です。

10ページ:補足ルール・ミサイルの製造・「一般的なミサイルを建造すると、つぎのような価格となります」(修正・明確化)
「制限加速(Cr300)、自動追尾システム(Cr1000)、近接爆発(Cr1000)タイプのミサイルを、G性能5(Cr2500)、燃料噴射能力値6(Cr600)で造れば、合計Cr5400。」
 また、『Special Supplement 3:ミサイル』の構築ルールが利用可能であれば、それは『メイデイ』のものより優先されます(※ただし雷鳴社版『Special Supplement 3:ミサイル』には、1986年以降に出された訂正が適用されているかわかりません)。

◆宇宙海軍(1985年)
(※所持していないため正誤表を制作できません)

◆黄昏の峰へ(1985年)
黄昏の峰へ Adventure 3: Twilight's Peak
 上記の通り、記載されている星系データは今では多くが修正されていることに注意してください。

31ページ・ヴァルグル人(訳語修正)
 「通常の肉食類追跡型から」→「ありふれた肉食類追跡型から」

33ページ・首都(訳語修正)
 項目名を「キャピタル」とします。

36ページ・レア(明確化)
 「首星です」という表現は原文からの翻訳としては正しいのですが、後の設定整備により誤解を招く表記となりました。現在のレアは「連合」の「首星」という立ち位置ではなく、単なる一ヴァルグル国家の首都に過ぎません。
(※そもそも「連合」という訳自体にも問題があるのですが、この場では修正対象としません)

デスステーション Double Adventure 3: Death Station
7ページ:L型実験船(修正)
 パワープラントは「D」、燃料タンクは「100トン」、非商業的運用で乗客は15人(相部屋なら35人)運べます(※専用室が20あって乗組員が5名なので、乗組員も相部屋にすることで35人分の部屋を確保できます)。荷物は13トン積めますが、そのうち7トン分の空間はドライブの拡張に回される場合があります。建造費用はMCr166.41(割引き済み)です。

帝国市民 Supplement 4: Citizen of the Imperium
4ページ~:技能と恩典(追記)
 「恩給」に関する項目が抜け落ちていました。以下の文章を追加します。

恩給
 5期以上を勤め上げたキャラクターは、年金を受給する資格があります。
  5期		Cr.4000
  6期		Cr.6000
  7期		Cr.8000
  8期		Cr.10000
  以降1期ごとに	Cr.2000追加
 ただし未開人、悪党、海賊の出身者は恩給を受けることができません。

11ページ:技能習得表(修正)
 「悪党」の「3.教育関係」の出目6で得られる「宇宙戦術」は、正しくは「戦術」です。

◆傭兵部隊(1986年)
傭兵部隊 Book 4: Mercenary
6ページ:兵科(明確化)
 海兵隊員が最初に選べる唯一の兵科は海兵隊歩兵科です。

7ページ:任務の大別(修正)
 「知力が8以上であったなら」とありますが、10ページに書いてある通り「教育度が8以上」が正しいです。

ブロードソード Adventure 7: Broadsword
6ページ:ガーダ・ヴィリス(明確化)
 帝国暦-121年に最初に入植したのは、現在のグングニル星系から来たソード・ワールズ人です。彼らはこの星を「ダヌウズ」と名付けました。しかし初期植民地は原因不明の理由で数十年後には崩壊し、隣接するヴィリス星系(※270年に入植され、286年に本国から独立)のソード・ワールズ人が再入植してきたのは290年になってからです。
 ちなみに470年に帝国は、ダヌウズが訛って「タヌーズ」と呼ばれるようになっていたこの星を含めてヴィリス周辺の星系を保護領化し、490年にはタヌーズが「ガーダ・ヴィリス(新ヴィリス)」に改称されました。やがて保護領は576年に正式に帝国に編入されています。
(※この設定整備により、現在のガーダ・ヴィリス住民が「もともとの植民者の直系の子孫」ではないにしろ、ソード・ワールズ人の子孫である可能性が高いことがより強調されるようになりました。また『Spinward Marches Campaign』でのみタヌーズへの最初の入植を「帝国暦240年」としており、正誤表もそれに倣っていましたが、「帝国暦-121年」という設定は他資料でも利用されているので退けました)

6ページ:ガーダ・ヴィリス(訳語修正)
(誤)結局、帝国偵察局基地の入り口のすぐ外でアイン・ギヴァー工作員が集団で見つかり、一網打尽にされるという意外な結末をむかえました。
(正)結局、帝国偵察局基地の入り口のすぐ外でアイン・ギヴァー工作員たちの遺体が発見されました。

11ページ:ブロードソード型傭兵用巡航艦(訳語修正)
 「ブロードソード級傭兵用巡航艦」とします。

15ページ:デッキプラン(明確化)
 このデッキプランには問題が多く報告されているそうです(※が、詳細は正誤表に記載されておらず、後の資料でも代わりになりそうな物は見当たりません)。

19ページ:宇宙海軍書式(修正)
23ページ:敵宇宙船(修正)
 このページに書かれているUSPデータは、1980年版『宇宙海軍』による修正を受けていません。

24ページ:ゾダーン海兵隊(修正)
 後の設定により、ゾダーン軍には海兵隊は無いことになりました。この項目は「国家防衛軍(Consular Guard forces)」と置き換えられます。

28ページ:ヴィリス星域(修正)
 最新版の星系データはここにあります。

ベテラン Supplement 13: Veterans
 修正はありません。

◆第五次辺境戦争(1986年)
(※所持していないため正誤表を制作できません)

◆砂漠の傭兵(1987年)
(※所持していないため正誤表を制作できません)

◆レフリー・アクセサリー(1987年)
 修正はありません。

◆アザンティ・ハイ・ライトニング(1987年)
(※所持していないため正誤表を制作できません)

◆偵察局(1988年)
偵察局 Book 6: Scouts
9ページ:任務遂行表(修正・追記)
 日本語版において「管理部」の「昇進」欄が抜けていた分ずれて記載されていました。正しくは以下の通りです。「DM:知力9+なら生存判定にDM+1」はそのままです。
 管理部  訓練 基地 通常 特命 特殊 戦時
 生存   自動 自動 自動 3+ 3+ 5+
 昇進   なし 7+ 7+ 7+ 6+ 5+
 技能取得 学校 7+ 7+ 7+ 7+ 7+

16ページ:星系作成チェックリスト(修正・追記)
 「12.C.」に「可住圏なら+2(出目が12なら大気A)」を追加。
 「14.C.」に「可住圏なら+2(出目が12なら大気A)」を追加。

17ページ:規模表(修正)
 「S:小惑星」の平均直径は「1000km」です。

18ページ:星系特徴表(修正)
 「主星」の「スペクトル」の「10」の結果は「G」です。
 「主星」の「規模」の「VI」および「VII」の結果を「V」とします。
 「伴星」の「規模」の5~11の結果を「V」とします。
(※『Traveller: The New Era』の正誤表により、準矮星・白色矮星を主星とすることはなくなりました。設定をそれに揃えるため、遡って修正が適用されています)
 「主星のスペクトル型と規模」の「DM+4」を「DM+5」とします。

20ページ:軌道分類表(修正)
 「巨星(規模III)」「準巨星(規模IV)」「主系列星(規模V)」の各表の「B0」および「B5」の欄を全て削除します。
(※そもそも星系特徴表でBが出ることがあるんでしょうか…?)

24ページ:小型世界(修正)
 小型世界(規模S)の直径は「(1D+1)✕100km」です。
(※しかし17ページの修正と明らかに矛盾しています)

28ページ:惑星データ表(修正)
 規模「6」の「重力」欄の数値は「0.740」の誤りと思われます。
(※原文でも「0.840」であり、正誤表の修正対象ではありませんが、この欄のみ「規模÷8」で簡易的に求められる重力の数値から乖離しており、誤植であると判断しました)

リヴァイアサン Adventure 4: Leviathan
7ページ:エジルン星域(修正)
8ページ:未探査星系(修正)
10ページ:パックス・ルーリン星域(修正)

 後に修正された点が多いため、最新版星域データを掲載します。ただし、ヴェルスカー、ヴィオール、ブローデルの3星系に関しては本文記述と矛盾してしまうため、技術レベルを差し戻しました。

ウェイレイ   0902 E7B4776-8   非水             G Na
パーン       0909 E649333-5   非工             G Cz
ゴーゴン     1005 E590224-6   砂漠 非工        G Bl 刑務所
ベルガード   1106 C571321-9 M 非工             G Bl 国家首都
ヴェルスカー 1110 X574479-3   非工           R G Na
カルダマール 1201 E745326-7   非工             G Na
ネイベス     1202 D426579-8 S 非工             G Cs
?           1209 X775000-0   非工           R   Na
ゴレール     1305 D574756-7   農業               Na
ガナルフ     1307 X500000-0   真空 非工      R G Na
エルソン     1308 E541100-8   非工 貧困        G Bl
セルショール 1402 X430576-6   砂漠 非工 貧困 R G Na
ゴリア       1410 E422475-7   非工 貧困          Na
カーベン     1502 X5555A9-2   農業 非工      R G Na
アシュリーズ・ロック  1601 D100120-7   真空 非工        G Na
ティアナ     1602 E568752-7   農業 富裕          Na
ヴィオール   1605 D500401-1   真空 非工        G Na
ブローデル   1608 X543200-3   非工 貧困      R G Na
 エジルン星域には18の星系があり、総人口は1億7190万人。最大人口はウェイレイの8000万人で、最高技術レベルはベルガードの9です。なお、帝国市民はこの星域方面への不要不急の渡航は止めてください。

カンディア   1801 D4006A9-7   真空 非工 非農   G Na
キッド       1810 B644779-5 S 農業             G Cs
バントラル   1906 C886589-9 S 農業 非工        G Cs
クリスリオン 2002 D583AA9-9                      Im
オルサシュ   2008 E541364-7 M 非工 貧困        G Se 軍政
シアン       2102 C5689B9-A W                A   Im
ベレンガリア 2105 B566644-7 A 農業 非工 富裕   G Im
センリス     2108 B671633-A F 非工               Se 国家首都
ドラダン     2202 A400369-B S 真空 非工          Im シアン統治
ペリアー     2203 A633966-B N 非農 貧困          Im シアン統治
パックス・ルーリン   2204 A402231-E N 真空 非工 氷冠   G Im 星域中心
ライスク     2304 X413730-7   非農 氷冠      R G Im
カラズ       2306 E311959-A N 工業 非農 氷冠 A G Im
マーゲン     2309 C543550-9 M 非工 貧困          Se
アイラント   2402 BAC0789-9   砂漠           A G Im
アレクシン   2405 B000420-C   小惑 非工          Im
 パックス・ルーリン星域には16の世界があり、総人口は602億人。最大人口はクリスリオンの500億人で、最高技術レベルはパックス・ルーリンの14です。

(※原文に合わせて人口倍率や小惑星帯数、恒星スペクトル型は省略し、貿易分類は「クラシック」仕様に統一しました。なお、この本では「貿易・投機表」で使用しない貿易分類(海洋・砂漠・真空など)は記載しない傾向が見られたため、その点は改めています。国籍コードについては、Im:帝国、Na:非加盟、Cs:帝国属領、Cz:ゾダーン属領、Bl:ベルガード領、Se:センリス領、となっています)
(※基地コードMは、現在では「海軍基地機能を含まない軍事基地」の意味で使われています。そのため、T5SSで海軍基地を持っているセンリスにはコードF(軍事基地および海軍基地)を割り当てました。本文中ではベルガードにも「海軍」があることになっていますが、T5SSでは海軍基地がないことと、設定上の「海軍」としての規模から見て、コードFを割り当てる程でもないと判断しました)


10ページ:地球類(追記)
 世界データにおける「地球類」は、他の『トラベラー』サプリメントでは使用されていません。

20ページ:RPV(遠隔操作無人車両)(訳語変更)
 原文では「RPV Drone」となっている無人機であり、少なくとも車両ではないため、訳文を「RPVドローン(遠隔操作無人機)」とします。発行当時と異なり、現在ではドローンという言葉が普及したことによる対処です。

20ページ:通信用ジャンプミサイル(修正)
 項目全体を削除します。よって、17ページの「3/5.装填準備室」にある通信用ジャンプミサイルは全て「RPVドローン(遠隔操作無人機)」と置き換えます。
(※ルール上、100トン未満の「小艇」はジャンプできないと考えるのが自然です。この『リヴァイアサン』は巻末の著作者表記を見ても判る通り、GDW社ではなく英国のGames Workshop社の作品であり、設定解釈の齟齬が生じてしまったのです)

22~23ページ:ライブラリ・データ(修正)
 ここに記載されている艦船全ての『宇宙海軍』仕様のUSPデータは、1980年版『宇宙海軍』による修正が入る前のものです。

海洋世界の遊牧民 Adventure 9: Nomads of the World Ocean
 修正はありませんが、日本語版に同梱されていた「ソロマニ・リム宙域図」にはT5SSによる変更があるかもしれません。

◆トラベラー・アドベンチャー(1988年)
トラベラー・アドベンチャー The Traveller Adventure
12ページ:アラミス星域(修正)
 最新版の星系データはここにあります。

112ページ:政府指定商船(R型)(追記)
 日本語版ではR型商船の性能に関する記述が丸々省略されています。詳細については基本ルールブックか『商船と砲艦』を参照してください。

119ページ:テュケラ運輸・RT型長距離旅客船(修正)
 運航に必要なエンジニアは「5名」なので、乗組員は「13名」となります。また、運べる一等船客の数は「13名」です。建造費用は「MCr511.29」です。

119ページ:テュケラ運輸・AT型貨物船(修正)
 運航に必要な乗組員は「14名」で、「3名」の一等船客を運べます。建造費用は「MCr801」です。

119~120ページ:インペリアル運輸・TI型輸送船(修正)
 「ジャンプドライブ-W、通常ドライブ-W、パワープラント-W」を備え(加速度性能の変更はありません)、船荷は「1104トン」積めます。建造費用は「MCr748.8」です。

120ページ:インペリアル運輸・TJ型輸送船(修正)
 建造費用は「MCr808.2」です。

120~121ページ:アケラット運輸・ヘラクレス型貨物船(修正)
 船名は「ヘラクレス級大型貨物船(AH型)」に改められました。船荷は「4069トン」積め、建造費用は「MCr989.01」です。

121ページ:オベルリンズ運輸・CT型貨物船(修正)
 船荷は「413トン」積めます。運航に必要なエンジニアは「4名」なので、乗組員は「10名」です。建造費用は「MCr401.49」です。

131~132ページ:宇宙船・ヴァルグル海賊船(VP型)(修正)
 運航に必要なエンジニアは「2名」なので、乗組員は「9名」です。建造費用は「MCr184.86」です。

132ページ:ヴァルグル自由貿易商船(VA型)(修正)
 運航に必要な乗組員は、「パイロット兼航宙士、エンジニア、医者、砲手2名」の計5名です。建造費用は「MCr68.49」です。

132ページ:ヴァルグル探査船(VJ型)(修正)
 運航には「パイロット兼航宙士、エンジニア、医者」の「3名」が必要です。建造費用は「MCr47.43」で、建造に「11ヵ月」かかります。

豪商 Book 7: Merchant Prince
16ページ:技能取得表(修正)
 「自由貿易商船(の3つあるうちの一番右)」の出目5で得られる「スチュワード」を「パイロット」に変更します。
(※自由貿易商船の道に進むと〈パイロット〉を得られない問題に対する対処です。なお日本語版では「自由貿易商船」と書かれた項目が3つ存在しますが、これは原文では2行に渡って書かれていたものが1行に省略された影響です。元来「Free Trader」の項目の下には、左から順に「Life」「Service」「Business」と分けて書かれていました)

26ページ:貿易上の分類表(修正)
 コード「非水」の大気は「A-C」です(※なぜなら大気D・E・Fには通常の水があるからです)。

◆トラベラー・ロボットマニュアル(1989年)
ロボット Book 8: Robots
15ページ:車輪:サスペンション(修正)
 「少なくとも胴体容積の15%」ではなく、「少なくとも胴体容積の1.5%」です。

16ページ:移動装置:サスペンション(反重力、AC)(追記)
 エア・クッション(C)が利用できるようになるのはTL7、超重作業用反重力(D)が利用できるようになるのはTL9、重作業用反重力(E)が利用できるようになるのはTL10、軽作業用反重力(F)が利用できるようになるのはTL12です。
 註:表の数値は1ユニットに対するもの(本文を参照のこと)。

16ページ:移動装置:変速機(脚、キャタピラ、車輪)(追記)
 消費電力は「脚」が「0.4kW」、「キャタピラ」が「0.3kW」、「車輪」が「0.2kW」です。

17ページ:付属装置表(追記)
 利用できるテックレベルに関する記述が抜けていました。加えて「触覚センサーは全ての腕や触手に内蔵されています」を追記します。また、この表の数値は腕1本あたりのものです。

 腕:超軽	TL8
   軽	TL7
   中	TL6
   重	TL5
 触手:超軽	TL12
    軽	TL12
    中	TL11
    重	TL10

18ページ:応用プログラム表(明確化)
 21ページにあるように「輸送機器」は特定の技能を選択する必要があるため、以下に示します。
 ATV(容量1、Cr300)、反重力機器(容量2、Cr400)を表に追加します。一番わかりやすいのは平面移動をするもの(地上や水上)をATVに、三次元移動(水中や空中、そして反重力)を反重力機器で動かすとするのです。

19ページ:キャタピラ:サスペンション(修正)。
 「少なくとも胴体容積の20%」ではなく、「少なくとも胴体容積の2%」です。

33ページ:著作者表記(追記)
 「Design:」に「Gary Thomas」を追加します。

101ロボット 101 Robots
 現時点で英語版の正誤表は制作されていません。

20ページ:ウェイトレスロボット(修正)
 挿絵の「主部」と「従部」が逆になっています。

46ページ:AB-101(修正)
(誤)シュド+シャム会議
(正)シュドゥシャム会議
(※同項目の「テオドール・クレンシュタイン博士」も、タクテクス誌の「グランドツアー」連載時の訳に合わせて「テオドア・クレンスタイン博士」とするべきかもしれませんが、誤植とも言い難いため注釈扱いとします)

トラベラー書式集 Supplement 12: Forms and Charts
 日本語版に修正はありません。

(※『トラベラー・スタートセット』のルールブックとチャートブック、そして『偵察局』において、星系の水界度を「規模」と「大気」のどちらをDMとして決定するかという違いが生じていますが、現時点でどちらが正しいという結論は出ていないため本稿では深入りしないものとします)

2018年のトラベラー界隈まとめ

2019-01-03 | Traveller
 来るべき『トラベラー50年史』(鬼が笑う)に向けて、備忘録代わりに2018年のトラベラー界隈の出来事(主に出版物)をまとめておきます。
  • グレゴリー・リーの死去で執筆者が絶えたかに見えたTraveller5にまさかの新作。『Gazelle-Class Close Escorts』はタイトル通りに懐かしのガゼル級巡洋艦をT5ルールとデッキプランで徹底解説。シリーズ化の計画もあるようだが続刊は未定。
  • ローレン・ワイズマン追悼本『GROGNARD: Ruminations on 40 Years in Gaming』の電子版も発売。投資者特典だったJTAS Online復刻版の一般販売は現時点ではなし。
  • その『GROGNARD』の投資者特典だったJTAS Online復刻版が『GURPS Traveller 3 CDROM』に収録されてFFEから一般販売される。また『Traveller HERO CDROM』も販売開始(これにはこれまで幻だったAvenger Enterprises作品が収録されている)。
  • 歳末恒例?の電子版『Starter Traveller』無料セールが今年も行われる。なお、終了期日は全くの未定。

  • 年初から立て続けに「Great Rift Adventure」シリーズの『Islands in the Rift』『Deepnight Endeavour』『Flatlined』、『Marches Adventure 2: Mission to Mithril』『Reach Adventure 5: The Borderland Run』とシナリオ群を展開したMongoose Publishing。2018年を今後の「第五次辺境戦争モジュール(仮)」に向けて足場固めの年と位置づけていたはずだったのだが、2月発売予定だった『Element Class Cruisers: Ship Builder's Blueprints』が11月までずれ込んでしまったことで、発売予定だった『Shadows of Sindal』『Behind the Claw』『2300AD 第2版』といった製品が軒並み無期延期に。
  • 12月になってようやく『Naval Adventure 1: Shakedown Cruise』『Traveller Companion』が発売された。特に後者は2016年の第2版移行時から発売予告されていたものであり、2年越しでようやくお目見えとなった。待たせただけあってその内容の濃さから、発売後は販売サイトDrivethruRPGの総合売り上げ1位に君臨する大ヒットに。
  • 実のところマーティン・ドハティ(通称MJD)1人しか執筆者がいない、という脆弱さが顕になったわけだが、ファンの間では「MJDが1人『しか』いない」ことに衝撃が走った(笑)(注:ドハティはその仕事の速さと量からクローン複数人説が以前から囁かれていた(もちろん冗談で))。
  • TAS(Travellers' Aid Society)では、かつて『Traveller Chronicle』誌に参加していたChristopher Griffenによるシナリオ『Iron Spine』『Tktk Convergence』『Makergod』、ティモシー・コリンソンの新作シナリオ『Ashfall』『Ashfall II: Under the Dome』、『2300AD』のコリン・ダンによる小物データ集「Edge of Space」シリーズ、El Cheapo Productsによるペーパーフィギュア集などが出されたものの、特筆すべきものは特になく(特筆すべきほど酷い製品はあったが…)。
  • 「Foreven Worlds」シリーズのJon Brazer Enterprisesが丸1年の沈黙を破ってTASに復帰。『Single Ship: Gannet Armed Cargo Transport』を公開。
  • Cehepus Engine向けにコツコツとデッキプラン集を出していたPyromancer Publishingが、9月以降なぜかTASに鞍替え。
  • 『Traveller Starter Set』がオリジン賞候補に選出されるも落選。
  • 「Traveller: Liftoff」の資金調達に失敗してから活動休止状態だったドイツの13Mann Verlagが、8月に同じくドイツのPrometheus Gamesの傘下に入ることで合意(製品出荷再開は11月からだった模様)。今後、未発表のままだったMongoose版トラベラー初版翻訳製品を出してから第2版に移行する旨も公表。

  • 依然として活発なCepheus Engine陣営。Moon Toad PublishingからはPrint on Demand対応の再編集版ルールブック『Cepheus Engine RPG』、拡張宇宙船設計ルール『Spacecraft Design Guide』が、Stellagama Publishingからは軽量版ルール『Cepheus Light』が公開されるなど、OGLを活かした派生ルールも出された。
  • Gypsy Knights Gamesの「Clement Sector」シリーズは、『Wendy's Guide 第5巻』『Manhunters』『Grand Safari』『Anderson & Felix Optional Components Guide』『Unmerciful Frontier』『21 Organizations 2nd Edition』『Hercules-class Heavy Freighter』と快調に出されたものの、同社が秋以降に新作ゲーム『Action Movie Physics』に注力したため、9月発売の『Hell's Paradise』の次が12月発売の『Artificial』と月刊ペースが崩れてしまった。
  • Zozer Gamesは昨年末開始の「Hostile」シリーズを展開。宇宙ステーション資料集『Pioneer Class Station』、異星生物設定集『Alien Breeds』、無料設定資料集『HOSTILE Technical Manual』、海兵隊資料集『Marine Corps Handbook 2215』、初のシナリオ『Hot Zone』、加えて同一時間軸の地球上を描いた独立ゲーム『Zaibatsu』が出された。Zozer Gamesは他に、『Fast Magic』『Archaic Firearms』『Low Tech Weapons』とCE用ファンタジー系資料集も出している。
  • Stellagama Publishingは看板の「TSAO」シリーズ自体はシナリオ『Signal 99』のみに留まり、『Trauma Surgery』『Cybernetics』『Uranium Fever』『Piracy and Privateering』、そして前述の『Cepheus Light』『Cepheus Light: Traits』といったルール面の開発・拡張に力を注いだ。
  • Baggage Booksが参入。星系内ジャンプ技術で太陽系の隅々まで冒険の舞台とした『Into the Dark』、異星人によって地球から追放された人類の末裔がTL5装備と謎の「ゲート」で銀河系を探検する『Outcast』といった独創的な設定集を発売。
  • また今年もMichael Brownによるショートシナリオの数々や、FSpace Publicationsによるデッキプラン集が出され、Azukail Games、CyborgPrime Publishing、Alphecca Publishing、Tangent Zero、Old School Role Playing、Verdigris Pressといった新規参入社も加わった。

  • Battlefield PressがKickstarterで募っていた『Spacecraft 2000 to 2100 AD (40th Anniversary Reprint)』が資金調達に成功する(ただし残り15時間で7%足りないというギリギリの状況だった模様)…が、Chepheus Engine版「Terran Trade Authority RPG」の制作には額が届かず(Starfinder版は制作決定)。ちなみに同社のCepheus Engine化資金募集は、2016年の「Double Spiral War(Expanded Edition)」、2017年の「Cold Cash War」に続いてこれで3連敗となった。
  • Mongooseが乗り込み戦ミニチュアボードゲーム「Vanguard: Boarding Actions in the Fifth Frontier War」の資金募集を始めるも、目標額に到達する見込みが立たずに5日後に中止。
  • Horizon Gamesによるデジタル版『Traveller Customizable Card Game』の資金募集が始まるも、こちらも目標額に到達する見込みが立たずに期限まで5日を残して中止。
  • 2016年7月発売予定だった『Squadron Strike: Traveller』が、2年遅れでようやく販売にこぎつける。

  • 隔月刊ファンジン『Freelance Traveller』の第90号(11/12月号)が、編集人の身内の不幸により欠番となる。第91号(2019年1/2月号)は12月29日に無事発刊。
  • エンプティ・クォーター宙域専門誌『Stellar Reaches』は2016年冬以来となる第27号(2018年春号)が発行されたが、なぜかファイルが22分割されるという謎の構成で困惑させられた(200頁越えしているとはいえ…)。
  • Robert Pearceによる非公式デッキプラン集『Starship Geomorphs』が話題を呼ぶ。特定の船・建物の内部構造を表すのではなく、モジュール単位で様々な用途のデッキプランを自由に組み合わせられるのが最大の特徴。
  • いつの間にか当サイトがWikipediaの「トラベラー(TRPG)」の項目に掲載されていた(笑)。

 2019年も各社で様々な新作が計画されており、まだまだ我々を楽しませてくれそうです。特に今年は日本語版(ホビージャパン版)発売35周年にあたる年でもあり、当方も頃合いを見て何かしらの企画を……できたらいいですねぇ(大汗)。

1/4スケール「スピンワード・セクター」を作る

2018-10-10 | Traveller
 宇宙の広大さが『トラベラー』の売りではあるのですが、プレイヤーが持てるようなジャンプ-1~2の低速船では逆にその広大さを持て余す局面もなくはないかと思われます。特にジャンプ-1のA型(R型)商船だと動く範囲をどうしても選ぶことになりますし。レフリーにしても設定(と準備)の乏しい星々に寄り道されないか、と不安にかられることもしばしでしょう。
 じゃあ公式資料が豊富な星だけを押し込んで1星域作ればいいんじゃないの?…ということで、スピンワード・マーチ宙域の美味しいところだけを縮尺1/4で濃厚に抽出した、言わば「スピンワード・セクター」を作るに至りました。

 ……というのは後付けの理由で、この企画は2011年まで遡ります。当時、私は『第五次辺境戦争』を模したミニゲームの研究開発をやっていて(それが後に『Grenzkrieg: Spinward』として公開されます)、ミニゲームに相応しい規模の縮小版宙域図を制作した際の副産物として出来上がったのが1/4スケールのスピンワード・マーチ「星域」でした。
 あくまでネタだったのでそれからどうすることもなかったのですが、先日「新訳最新版スピンワード・マーチ宙域」を制作した際に、資料探しの途中で懐かしいこれらのファイルが目に留まり、7年経って新資料も出てきた今ならもっと洗練した形で「星域図」が作れるんじゃないか?と思ったわけです。そして出来上がったのが、これです。


 今回の企画は「Xボート網を形作るのに必要な星系」「惑星図など公式資料が多い星系」「シナリオの舞台となった星系」を中心にして、8×10ヘクスの星域図でスピンワード・マーチ宙域を再現したものです。80ヘクスに56星系を押し込んだのでかなり窮屈に見えますが、星系作成システムにおける「星域密度:濃密(1Dで3+)」で期待値から少し多めな程度です(とはいえ帝国内にこれだけ「濃い」星域はなかなか無いですが…)。1ヘクスは縮尺1/4なので当然4パーセク程度ですが、色々な所で空間の歪みが発生しているのはご愛嬌ということで。また、Xボート網の全体的な密度が上がることで星域図がA・Bクラス宇宙港や高人口世界や水のある世界ばかりとなるのも否めませんが、スピンワード・マーチ宙域は特にCクラス以下の宇宙港で低技術の世界が多くてSFゲームらしさが削がれていたのも事実であり、これは良し悪しでしょう。

 実際にプレイに活用する人はいないでしょうけど、使うとするなら宇宙船のジャンプ能力に応じて1回の星系間移動で以下のような時間がかかることにすればいいでしょう。燃料消費についてはややこしくなるので、従来通りのジャンプ1回分と同じ量で済むとします。そして増槽による「ダブルジャンプ」は禁じ手です(本来ジャンプ-1では行けなかった星に行けるようになっているので、それで勘弁してください)。

ヘクス数





 1 4週間
2週間
2週間3週間
1週間2週間
1週間2週間3週間
1週間2週間2週間

 ただ、隣の星まで2週間も4週間もかかるとなると、旅客輸送では冷凍(二等)寝台の活用が進みそうな気がします。その辺の調整を始めるときりがないので今回は見なかったことに……(大汗)。

 では、ここからは各星系の設定資料がどこから得られるかを解説していきます。前提として、『GURPS Traveller: Behind the Claw』には宙域内全星系の設定が(量の多少はあれど)掲載されているので、本稿では基本的に省略しています。また、星系名の頭に「◎」印がある星系は、マングース版『Spinward Marches』に詳細設定が載っています。そして文中、『Journal of the Travellers' Aid Society』はJTAS誌、『Travellers' Digest』はTD誌と略しています。


◎クロナー 0101 A6369A5-D Z 高技 高人 810 Zh F8V 星域中心
 ゾダーン領辺境方面の中心拠点として名高いですが、詳細な設定はと言うと『Behind the Claw』を経てマングース版『Spinward Marches』まで特にありませんでした。

ザマイン 0106 C897977-A 工業 高人 223 Da M3V
マイア 0107 A665A95-C M 高技 高人 緑地 110 Da K6V 国家首都 アスラン1割
 基本的にダリアン連合領内で設定の記載があるのは『Alien Module 8: Darrian』(およびマングース版『Alien Module 3』)ぐらいです。

◎ミリアム 0109 B9998A6-A B A 514 Im G6V
 ここには位置的にイメープ(B564500-B)を置くべきですが、マングース版『Spinward Marches』に詳細設定があるこちらを採用しました。

キャンドリー 0110 C593634-8 非工 R 920 Im F6V M3V ドロイン世界 太古種族遺跡
 同じドロイン世界としては隣接するアンドー(C695735-9)の方が有名ですが、これだけ重大な設定がありそうな星なのに公式設定はほとんど存在しません。一方キャンドリーはGURPSの『Alien Races 3』に惑星図を含む詳細な設定があるため、こちらを採用しました。

シパンゴ 0201 A886865-C Z 高技 富裕 緑地 121 Zh G2V クロナー統治
 マングース版『Spinward Marches』に海軍基地の規模が大きいことが記されている程度で、全くと言っていい程に設定が整備されていない星系です。ちなみに『Expedition to Zhodane』によると、第二次辺境戦争前まではここに帝国の星域首都が置かれていたそうです。

ニンジャー 0202 A311666-C Z 高技 非工 非農 氷結 410 Zh A4V 軍政
 さほど設定はありません。マングース版『Spinward Marches』でもここは、「海軍基地の規模は哨戒艦や連絡艦程度が寄港する小さなもの」とだけ書かれているぐらいです。

ケリオン 0204 B554788-9 Z 農業 804 Zh G6V シェオル母星
 星系自体の設定はほとんど無いのですが、知的種族シェオルについてはGURPSの『Alien Races 1』に詳細があります。

ノーシー 0206 B4326BB-C M 高技 非工 非農 貧困 A 620 Da M2V
◎ダリアン 0207 A463955-G 高技 高人 225 Da G1V D ダリアン人母星 アスラン数%
 『AM8: Darrian』(およびマングース版『AM3』)を参照してください。ダリアン星系に関してはGURPSの『Humaniti』に惑星図が載っています。

カリン 0209 A767768-C A 高技 農業 富裕 緑地 A 410 Im G7V 軍政
 JTAS誌19号掲載のアンバーゾーン・シナリオ「Small Package」の目的地となっています。

ウォンスター 0210 B555741-7 N 農業 A 910 Im M0V
 Challenge誌38号掲載の「Boarding Party」の舞台…ではありますが、表題通りの乗り込み戦シナリオなので特に関係はありません。
(※なお、ミリアム、カリン、ウォンスターに関してはかつてTraveller Mailing Listsにてそれぞれ非公式設定が起こされています)

ファーリーチ 0301 A200400-B Z 真空 非工 A 415 Zh M3III M0V
 シナリオ『Tripwire』に記載されているのが最も詳しい設定です(『Behind the Claw』での記述とは相容れないため、1105年設定なら『Tripwire』の方を採用した方が良いでしょう)。

◎ジュエル 0302 A777999-C A 工業 高技 高人 623 Im G7V
 色々な資料で言及されることの多い星ではありますが、設定の掘り下げという意味では弱く、シナリオの舞台となったのは『Tripwire』ぐらいです。

ユートランド 0303 C573464-7 非工 410 Na M0V アーデン統治
 シナリオ『Expedition to Zhodane』の序盤の舞台です。『Tripwire』にも記述があります。

◎アーデン 0304 B5549CB-9 高人 A 110 Na G4V M5V
 「出国ビザ」型シナリオの元祖である「Stranded on Arden」(現在は電子版『Double Adventure 7』に収録)の舞台です。簡単ながら『Spinward Marches Campaign』『Tripwire』にも記載があります。また、宇宙港の様子についてはマングース版『Starports』に書かれています。

◎グラム 0306 A895957-C M 工業 高技 高人 603 Sw F2V M2V 国家首都
ナルシル 0307 B574A55-A M 工業 高人 224 Sw G6IV M0V
 GURPS版『Sword Worlds』に惑星図込みの詳細な設定があります(※同名のマングース版に惑星図はありません)。

カラドボルグ 0308 B565776-A S 農業 富裕 710 Im F7V M0V M4V
 ソードワールズ史に何度もその名が登場しますが、設定自体は『Behind the Claw』や『The Bowman Arm』に簡単にあるのみです(またGURPS版『Sword Worlds』には「カラドボルグ伯はルーニオン公の臣下」という記述があります)。またTD誌16号掲載のシナリオ「Sword of Arthur」の舞台でもあります。

◎ボウマン 0309 D000300-9 S 小惑 低人 831 Cs M0V
 マングース版『Spinward Marches』や『The Bowman Arm』など様々な資料に記載はありますが、GDW版『Beltstrike』が最大最良の情報源です(※マングース版『Beltstrike』は別物なので間違えないでください)。

タルソス 0310 B584620-A 農業 非工 202 Cs K9V
 GDWのモジュール『Tarsus』ひとつあれば全て事足ります。

ディノータム 0403 B739573-A N 非工 324 Im M2V
 JTAS誌22号掲載のアンバーゾーン・シナリオ「Ventures Afar」の起点となり、『Spinward Marches Campaign』内の「Hundreds of Worlds」でも訪れています。

◎ガーダ=ヴィリス 0405 B978868-A S 512 Im M3V 傀儡政権
 傭兵シナリオの代名詞『Broadsword(ブロードソード)』で有名な星であり、『Spinward Marches Campaign』内の「Hundreds of Worlds」にも関わっています。
(※ヴィリス本星が無いので「傀儡政権」に設定を変更しています。ガーダって何?というツッコミを回避するために、いっそのこと初めから星系名をタヌース(Tanoose)にしてしまうのも良いかもしれません)

サクノス 0406 A775956-C M 工業 高技 高人 801 Sw F9V M3V
 グラムなどと同様に『Sword Worlds』が最大の情報源です。またTD誌20号掲載のシナリオ「The Hiawatha Gambit(ハイアワサ・ギャンビット)」の舞台でもあります(※1117年設定なのでそのまま流用はできませんが)。

◎ミスリル 0407 E568000-0 未開 001 Sw F4V 保護世界
 シナリオ『Mission on Mithril(ミスリルでの使命)』で有名な星です。先日マングース2版対応のリメイク版『Mission to Mithril』も発売されました。
(※なお、Xボートはここを「飛び越して」いることに注意してください)

ダトリリアン 0408 E427633-8 非工 801 Na M1V
 T20時代にAvengerから『System Guide 1: Datrillian』が出されていましたが、これが現在でも最大級の資料となっています。また、マングース2版の『Bowman Arm』にも簡単な設定紹介があります。

ウォルストン 0409 C544338-8 S 低人 302 Cs M2V ヴァルグル7割
 惑星図を含む詳細な設定はマングース2版のシナリオ『High and Dry』(マングース初版時代は『Type S』)にあります(※惑星図を含まなければマングース2版の『Bowman Arm』にも記載があります)。またTD誌15号収録のシナリオ「Mistaken Identity」の舞台にもなりました。

◎パヴァビッド 0410 C6678D8-6 緑地 A 701 Na K7V
 シナリオ『Divine Intervention』の舞台となる星です。神権政治の独立星系という興味深い設定なので採用しました。

イフェイト 0501 A646930-D B 工業 高技 高人 800 Im K4V 太古種族遺跡
 過激派組織アイン・ギヴァーの活動が盛んなことで有名な星系ですが、意外にも詳細と言えるほどの設定はありません(各種資料を繋ぎ合わせるとそこそこの量にはなりますが)。JTAS誌掲載のアンバーゾーン・シナリオ「A Dagger at Efate(ダガーの帰還)」「The Birthday Plot」の舞台でもあります。

◎リジャイナ 0502 A788899-C A 高技 富裕 703 Im F7V BD M3V アミンディー母星2割 ヴァルグル数% アスラン数%
 数々のシナリオ(『Imperial Fringe』『Kinunir(キンニール)』『Twilight's Peak(黄昏の峰へ)』『Secret of the Ancients』)の起点となり、まさに初期『トラベラー』の中心地だったこの星ですが、それが故にか設定の整備が進んだのは実はごく最近で、マングース版『Spinward Marches』を経て『Traveller5』の有料広報誌『Imperiallines』の第6号まで待たねばなりませんでした(※惑星図は先にDGPの『World Builders Handbook』に掲載)。

◎ダイナム 0503 D100535-A 真空 非工 201 Im A4V
 本来Xボートが通過するのはダイナムン(B674632-9)の方ですが、シナリオ『Across the Brightface(焦熱面横断)』で惑星図を含む詳細な設定があるのでこちらをねじ込みました。JTAS誌8号ではアンバーゾーン・シナリオ「Crystals From Dinom」も掲載されています。GURPS『Star Marcs』には傭兵チケットが掲載されています。

ランス 0505 A879533-B A 非工 710 Im F5IV M1V
 裂溝に浮かぶ交通・国防の要衝ですが、『Behind the Claw』以外にこれといった設定は載っていません。

アダビッキ 0507 A57189B-B N A 801 Im K8V M8V
 古くはJTAS誌20号掲載の「偶然の遭遇」で登場する女艦長の故郷として設定されていたものの、これまで近隣のイアニック(E560697-5)やウォードン(B756486-B)と比べて設定量では押されていました。しかしマングース2版の『Lunion Shield Worlds』でようやく詳細な設定が用意されたのです。

マータクター 0510 B562732-B S 110 Im G1V
 コンピュータゲーム『Star Crystal 1: The Volentine Gambit』の舞台となっていましたが、入手が容易な形で詳細な設定が用意されるのは『Traveller Compendium 2』収録のシナリオ「Spinward Fenderbender」までかかりました。

ヨーバンド 0601 C7C6503-9 非工 非水 220 Im M3V
 シナリオ『Shadows(シャドウ)』の舞台として有名です(逆にこれが設定の全てでもあります)。

シオンシー 0602 X000742-8 小惑 非農 R 714 Im F6V
 『Kinunir(キンニール)』収録のシナリオ「The Lost Ship」で訪れる星系です。レッドゾーン指定の理由は『The Traveller Book』では「小惑星帯の航行が危険なため」としていますが、それはもちろん表向きでしょう。『キンニール』やGDW版『Beltstrike』でも書かれていますが、この小惑星帯は太古種族の最終戦争で破壊された惑星の痕跡であり、『Regency Sourcebook』では遺物狙いの勇敢(もしくは無謀)な者が入り込んでいるとの記述があります。
(※ただ、この設定だと人口7は明らかに過剰です。1の誤植と拡大解釈してUWPを「X000100-8」と変更した方が良いかもしれません)

キーノウ 0603 C792348-7 S 低人 213 Im M3III M2V 刑務所
 これまでは岩だらけの特に設定のない星でしたが、突如としてマングース版『Prison Planet』にて惑星図まで用意された刑務所星系となりました。現在の公式設定(T5SS)には認められてはいませんが、今回の企画でのみそれを反映させています。

ルーニオン 0606 A995984-D A 工業 高技 高人 810 Im G5V
 LSPの宙域本社やルーニオン経済大学の存在などで知名度は高いものの、意外にもこれまで設定がほとんど用意されたことのない星系です。

マラスタン 0608 D868764-5 S 低技 農業 富裕 A 924 Im K7V 保護世界
 『Mercenary(傭兵部隊)』では「部族抗争による内戦状態」だった星が『メガトラベラー』以降では「皇室御用達の自然保護星系」に変更されました…が、驚くべきことにGURPS版設定では「内戦状態」と「自然保護星系」の両方ともが有効とされています(水界8なので別大陸の話とすれば何とか…)。T5SSによる政治形態変更で内戦設定は使いづらくなりましたが、武闘派のレフリーがここを血生臭く演出しても決して設定無視ではないのです。

◎グリッスン 0609 A000986-F A 工業 高技 高人 小惑 非農 811 Im K9V
 最初にここの設定が載ったのはTD誌15号でしたが、現在ではGURPSの『Planetary Survey 4』が最も詳細な資料となっています。

ジェセディピア 0701 C775300-7 低人 611 Im F4V ヴァルグル3割
 『The Traveller Adventure(トラベラー・アドベンチャー)』で有名な星ですが、同時に『Alien Realms』収録のシナリオ「Prosperity for the Taking」の起点でもあります。正式に発売こそされませんでしたが『Traveller: Liftoff』の付属シナリオ「Escape from Outpost 14」の舞台もここでした。またJTAS誌18号では、この星原産の生物として「キノボリクモジシ(Tree Lion)」が紹介されています。

ディアン 0703 C9A769D-8 非工 非水 A 202 Im K5V
 星系としての設定は『トラベラー・アドベンチャー』や『Behind the Claw』で簡単に触れられている程度ですが、GURPS版『Starports』でここのCクラス宇宙港が図解されています。

フューラキン 0704 A674210-D 高技 低人 810 Im G3V
 シナリオ『Twilight's Peak(黄昏の峰へ)』で惑星図を含む詳細な設定が公表されています。

◎ライラナー 0705 A434934-F A 高技 高人 810 Im M2V
 オラヴやアルベラトラといった歴代皇帝の出身地であり、ライラナー工科大学で名高いこの星ですが、マングース版の登場まで星系自体の設定はほとんどありませんでした。マングース版『Starports』では宇宙港の様子も記載されています。

キャレイ 0707 C579221-9 低人 910 Im M2V M2V
 『Behind the Claw』以外に特に記述はありませんが、胞子植物で満たされた惑星という設定がSF心をくすぐります。

プリリッサ 0709 B985588-6 農業 非工 510 Im K4V
 近隣には傭兵チケット「Thunder on Zyra」のザイラ(B555448-7)や、太古種族の遺跡を持つトラルサ(B590630-6)があるのですが、それらを押しのけて採用したのはひとえにここが騎乗動物キアン(Kian)の原産地だからです。キアンについてはJTAS誌9号か、マングース2版の『Garden Worlds』を参照してください。

ロビン 0710 C00059C-C 高技 小惑 非工 A 202 Im M2V
 GDW版『Beltstrike』に設定が載っています。

◎ジュニディ 0801 B434ABD-B W 高人 A 210 Im F7V M2V ルルウィロリィ母星5割
 『トラベラー・アドベンチャー』に詳しい情報が載っており、『Alien Realms』収録のシナリオ「Prosperity for the Taking」の舞台でもあります。

アラマンクス 0802 B657974-7 高人 緑地 210 Im G0V
 『トラベラー・アドベンチャー』に惑星図を含む詳細な設定があります。また、『傭兵部隊』収録の「The Dream Ticket(夢のようなチケット)」、JTAS誌24号掲載のアンバーゾーン・シナリオ「Embassy in Arm」の舞台でもあります。

◎アラミス 0803 A6B0556-B A 砂漠 非工 710 Im M2V
 『トラベラー・アドベンチャー』に都市地図を含む詳細な設定があります。

セレピナ 0804 B434456-9 A 非工 201 Im M2V
 『Behind the Claw』ですら1行で済まされた程に設定のない星ですが、一方で「アラミス侯はセレピナ伯の臣下(よってアラミス圏は実はライラナー公領)」という設定もあったりします。あくまで非公式ですがファン作成のウェブサイトもあるので、そこから設定を拝借するのも良いかもしれません。

◎ヴェインジェン 0805 C686854-5 低技 富裕 緑地 520 Im G1V M0V チャーパー1割 研究基地γ
 シナリオ『Research Station Gamma(研究基地ガンマ)』で有名な星です。後に『Alien Realms』収録のシナリオ「The Casteless」の舞台にもなりました。

◎モーラ 0806 AA99AC7-F A 工業 高技 高人 112 Im F0V 宙域首都
 宙域首都でありながらGDW時代はほとんど手付かずだったこの星ですが、GURPSの『Behind the Claw』や『Starports』を経て、マングース版以降は一気に設定の整備が進みました。シナリオでは『Of Dust-Spice and Dewclaws』『A Festive Occasion』(『Traveller Compendium 2』に載録)の舞台となっています。

◎ネクシーン 0807 C97A443-8 S 海洋 非工 801 Im G9V M2V ネクシー人数%
 GURPSの『Humaniti』にて惑星図(といっても海ばかりですが)を含む設定が記載されています。

カタルル 0808 B552665-B B 非工 貧困 201 Im M0V M9V 軍政
 『Regency Sourcebook』などでカタルル基地がXボート等のパイロット訓練所として有名なことが記されていますが、それ以上の情報はこれまでありません。

◎トリン 0809 A894A96-F A 工業 高技 高人 101 Im G0V
 現時点では『Behind the Claw』と『Spinward Marches』に設定を頼るのみです(合わせると結構な量になりますが)。


 低速宇宙船でどこまでも行けて、小惑星あり海洋惑星あり非水惑星ありと様々な環境も体験でき(無いのは砂漠ぐらいでしょうか)、数々の冒険のネタもぎゅっと詰め込んだこの「スピンワード・セクター」。公式にこだわりつつ美味しいところだけ頂いてしまおうとしたのですが、いかがでしょうか?

新訳最新版スピンワード・マーチ宙域UWPデータ(概要)

2018-09-20 | Traveller
 全ての旅人の故郷、スピンワード・マーチ宙域――。この約40年間で星の数ほどの冒険の舞台となり、様々な悲喜劇が繰り広げられてきました。
 さて、歴史の長いRPGにはよくあることですが、背景世界の設定が後から後から追加されていくうちにどうしても旧来のものと矛盾を起こしがちです。『トラベラー』も例外ではなく、むしろ矛盾の多さで言えば業界随一と言っても過言ではないのですが、とにかく『トラベラー』の代名詞とも言えるスピンワード・マーチ宙域にも過去何度も調整が入っています。ざっとまとめると、

1979年:『Supplement 3: The Spinward Marches(スピンワード・マーチ宙域)』
 全ての原点。設定年代は帝国暦1105年。

1985年:『The Spinward Marches Campaign』
 標準惑星書式(Universal Planet Profile)に星系の「所属国」「人口倍率・小惑星数・ガス惑星数(PBG)」「主星・伴星のスペクトル型」の欄が追加され、貿易分類も改定された。同時にリジャイナの技術レベルなど一部星系のデータ修正も行われた。設定年代は帝国暦1112年頃となり、一部星系のアンバーゾーン指定などに変化が見られる(が、同梱の宙域図は旧来のものを踏襲)。

1987年:『MegaTraveller: Imperial Encyclopedia(帝国百科)』
 UPPが標準個人書式(Unlversal Personallty Profile)と混同しやすかったので「標準世界書式(Universal World Profile)」に改められ、貿易分類の表記法など現在にまで至る表記形式がこの時点でほぼ固まる。基本的に『Spinward Marches Campaign』の情報を(誤植も含めて)踏襲したが、設定は反乱勃発後の帝国暦1117年に改定。

1992年:『Domain of Deneb System Data』
 雑誌『MegaTraveller Journal』第3号に収録。表題の通りデネブ領域4宙域(スピンワード・マーチ、デネブ、トロージャン・リーチ、レフト)のUWPをまとめた。設定年代は帝国暦1120年となり、(前年発行の第1号収録の宙域図では)国境線やXボート網に一部変化が見られるが、UWP面での変化は特に見当たらず。
 ちなみにこれは、1989年にパソコン通信GEnieで公表され、後に「Sunbane」と呼ばれる既知宇宙UWP集をそのまま引き写したものなので、この版特有の誤植(星系名の誤記、ガス惑星の数の間違いなど)が存在する。

1995年:『The Regency Sourcebook』
 『Traveller: The New Era』の帝国暦1201年設定の追加と同時に、『Imperial Encyclopedia』の帝国暦1117年設定に一部追記も。反乱期のデネブ領域のUWP集としてはこれが定本と言っていいと思われる(一応誤植はないとされているが、やはり一部に過去の資料とデータの差異があるのは否めない)。

1998年:『GURPS Traveller: Behind the Claw』
 設定は「反乱の起きなかった」帝国暦1120年。ルール移行により従来のUWPによる記述は廃止され、表記法以外にも従来のものとは数値の一部に差異が見られる。宙域内全星系の詳細設定を網羅した意欲作だったが、大胆過ぎる新設定や知的生物の追加には批判もあった(また、大量の誤植も問題となった)。

2008年:『The Spinward Marches』
 ルールのマングース版移行によりUWPが復活(したが、表記法は『Supplement 3』時代に戻った)。著者は『Behind the Claw』と同じだが、詳細な星系解説は1星域につき2星系に絞られた。

2008年~:Traveller5 Second Survey(T5SS)
 2005年頃からCitizen of the Imperium(CotI)で続くUWP改定の機運を受け、有志によって星系データの見直しが行われる。当初は「Spinward Cleanup Project」というスピンワード・マーチ宙域に絞った企画だったが、次第に全時代の既知宇宙全星系を対象にしていき、加えてTraveller5でUWP書式が全面的に変更されたこともあり、「公式設定の」全UWPはT5形式に改められていく。

2018年?:『Behind the Claw』(未発売)
 マングース第2版ルール対応のデネブ領域資料本。UWP(の数値)はT5SSを踏襲すると思われる(2012年発売の『The Solomani Rim』以降、MongooseはT5SSを「公式設定」として採用しているので)。

 このように情報の拡充と微調整が繰り返されてきたわけですが、特に「Traveller5 Second Survey」による変革は大規模なものとなりました。T5SS自体も数度の改定を現在まで経てきていのですが、現時点では以下のような修正がなされているようです。

・小規模(低重力)で濃大気の世界の補正
最新の科学的知見を反映して、規模4以下で大気がある星を対象に惑星規模の大型化がなされています。同時に、大型の真空世界の規模を縮小する措置も行われています。

・技術レベルの調整
帝国内のTL16星系は全て排除されました。また、低人口や低宇宙港で高技術だった世界は軒並み引き下げられ(特にソロマニ・リム宙域では影響大)、貿易分類「未開」の世界ではTLが自動的に0となりました。他にも、大気が呼吸不可にも関わらず低技術であった世界がTL8~9まで引き上げられ、設定上隔離されていない低技術星系が全般的に底上げされています。

・恒星のスペクトル型の修正、および超巨星や恒星規模Dの排除
環境が良さそうで人口の多い世界には、G型K型の安定した恒星が割り当てられました(その逆に辺境星系にM型が割り当てられることもあります)。同時に、M5V型より暗い星系は少し「明るく」補正されました(ルールでは主要世界は可住圏(ハビタブルゾーン)に置かれますが、M5Vより暗い恒星には可住圏自体がないためです)。また、規模Dの矮星の排除により連星系ですらなくなったところもあります。例外として、リジャイナ星系などは元々設定として矮星を伴星として持っていたので維持されています。

・一部世界の名称変更、誤植修正
Kwai Ching(1040)→ Kuai Qing、Keltcher(2639)→ Keltchner
星域図などでBevyと誤植されることが多かった座標3216の星系は、Beveyに統一されました。

・統治元が曖昧だった政治コード「6」の星系の明確化
政治6で統治元が不明だった多くの星系が「軍政」と明言されました。また、統治元情報がかなり変更されています。

・後に作られた設定に合わせてのUWP補正
ヴィクトリア(1817)の大気コードは濃厚(9)から超濃厚(D)になりました。『偵察局』発売までは大気コードDがなかったのと、JTAS誌第2号掲載の設定が反映されたものと思われます(規模6の星が大気Dになることはないので明らかに意図的な修正です)。また、マラスタン(2231)は後に帝国保護星系の設定が付加されたため、それに合わせて修正が入りました。もはや『傭兵部隊』にある状況は使用できません。

・人口倍率の補正
貿易分類「荒涼(人口0・政治0・治安0)」の世界は人口倍率も0になりました。『ミスリルでの使命』などで訪れるメタル・ワールズの世界に影響が出ますが、「シナリオの時点ではたまたま人がいた」と解釈すればいいでしょう。

・Xボート路線の修正
ルーニオン星域にあった「ジャンプ-5」航路は、方角を変えてジャンプ-4になるよう補正されました。同時にアダビッキ(1824)~イアニック(1924)間のXボート航路は廃止されました(Xボートは基本的にEクラス宇宙港を経由しないためです)。

・アンバー・トラベルゾーンの新基準
従来の設定によるものに加え、「政治と治安の値を足して20以上」の星系が一律にアンバーゾーンになりました。政権が独裁的かつ極高治安の星系への注意喚起という意味では頷けます。

・2~3星系規模の「恒星間国家」の排除
おそらく1105年当時の「アーデン連邦(Federation of Arden)」が恒星間国家扱いされていなかったことを踏まえて、極小規模の国家が星系図上では排除されたものと考えられます。スピンワード・マーチ宙域では影響はないように見えますが、後に設定が整備された「ガルー共和国(Republic of Garoo)」や「ミューエイ帝国(Mewey Empire)」はUWP上では恒星間国家扱いされていません。

 これだけを見ればかなり合理的な修正が行われたと思えますが、副作用もありますし、意図不明のものや勇み足とも思える改変も行われています。そしてT5書式は情報量が大幅に増やされた上に貿易分類も全くの別物になったのですが、そもそもそれはTraveller5で遊ばなければ単に互換性のない情報に過ぎないのです。
 もう一つ問題なのは、今後マングース社から出てくる「公式設定」は前述した通りT5SSに準拠したものとなります。既に第2版ルール対応の『The Bowman Arm』や『Lunion Shield Worlds』では新UWPに対応した設定が公開され始めていて、「公式設定」を取り入れ続ける限りではこの流れはもはや不可逆なものと言えます。
(※もちろん懐かしの『トラベラー・ハンドブック』のようにレフリーが独自の解釈で各星系の設定を起こすことや、『Behind the Claw』設定で遊び続けることが妨げられる訳ではありません)

 そこで、T5SSの新設定を受け入れつつ『メガトラベラー』で採用されたUWP書式に差し戻し、貿易分類はマングース版に準拠させ、どうしても納得のいかない部分は独自に調整を加えた「最新版の」日本語対応スピンワード・マーチ宙域UWPデータを公開します。星系名の翻訳に関しても、過去の自分の訳も含めて全面的に見直しを行いました。


アルファ象限(クロナー、ジュエル、ケリオン、ヴィリス)
ベータ象限(リジャイナ、アラミス、ランス、ライラナー)
ガンマ象限(ダリアン、ソード・ワールズ、ファイブ・シスターズ、第268区)
デルタ象限(ルーニオン、モーラ、グリッスン、トリンズ・ベール)
(※象限(quadrant)とは、宙域図を中央から4分割して4星域を一纏めにし、「左上」から順にアルファ、ベータ、ガンマ、デルタと呼ぶやり方…なのですが、別に行政単位ではなく、マーティン・ドハティ(Martin J. Dougherty)の著書ぐらいでしか見かけない表記法です)

【注釈】
国籍コードについて
 Im:第三帝国
 Cs:帝国属領
 Zh:ゾダーン領
 Cz:ゾダーン属領
 Da:ダリアン連合
 Sw:ソード・ワールズ連合
 Na:非加盟中立
 XX:未入植(非加盟中立)
(※前述の通り、アーデン連邦、ガルー共和国、ミューエイ帝国といった小国は国籍コードを持たず「Na」扱いです)

星系首都について
 T5SSの古い版では「星域首都=星域公爵がいる星」と定義されたため、星域公爵が設定上置かれていないジュエル、アラミス、ヴィリス、ランス、第268区域、ファイブ・シスターズの各星域から星域首都が削除されていました。現在の版ではジュエルと第268区域を除いて「星域公爵がいる」ことにされて星域首都が復活していますが、これでは旧来の設定と矛盾してしまいます(その上基準が不明確です)。
 そこで、旧来の設定を上書きする新設定ができるまでは星域図上では赤字で記し、「星域首都」ではなく「星域中心」と注釈欄に記載することにします。首都ではなくても星域行政の中心地であることには変わりはないからです。同様に、帝国外の星域の中心地も「星域中心」の表記を使用します。

知的種族について
 (minor)とのみ書かれている知的種族を明確化し、1105年の時点で未発見である種族の記述は削除しました。既に絶滅している種族に関しては「絶滅」と記載してもいます。なお、UWP上では人口比1%未満の種族は省略されるようなので、どんな星系でも記載のない種族が居住している可能性は十分にあります。

太古種族の遺跡について
 『Spinward Marches Campaign』で太古種族遺跡の所在は明確化され、『GURPS Traveller: Alien Races 3』で追加されましたが、T5SSで更に増やされています。T5SS追加分についてはシナリオのネタバレを含むため、一旦UWPから外してこちらに伏せておきます。ただし、太古種族の遺跡というものはたいてい大学や海軍・偵察局の厳重な管理下にあり(もしくは見つかってすらいない)、観光地として一般開放されているものはそんなにないことは頭の隅に置いておいてください(例外として、イフェイトの遺跡は見つかって早々に盗掘に遭って既に何も残っていないため、遺構が観光地化されていても不思議ではありません)。

T5SS追加分
ダリアン(0627):設定上太古種族の活動痕跡あり。ただ、この星に目立った施設がないからこそ最終戦争の戦禍を免れた、という設定もあるため、大した遺跡ではないかもしれない。
リジャイナ(1910):『Adventure 12: Secret of the Ancients』の続きにあたる「Grandfather's Worlds(Challenge誌27号掲載。内容については『Behind the Claw』にも記載あり)」で語られた重大な秘密に関することと思われる。
シオンシー(2306):小惑星帯は太古種族によって破壊された惑星の痕跡と考えられていて、ある意味でこの星系自体が遺跡。ちなみに星系内には遺物狙いの輩が多数入り込んでいて、時折反物質の爆発事故が起きているとか…?
コルフー(2602):設定不明。おそらく遺跡は未発見。
フューラキン(2613):『黄昏の峰へ』参照。1105年時点では未発見であり、おそらく今後も見つかることはない…はず。

独自に削除したもの
ピクシー(1903):『AR3』において、遺跡の存在が「帝国政府(および偵察局)によって秘匿されている」と明言されているのでUWPから削除。


貿易分類について
 貿易分類の区分けについてはクラシック版・メガトラベラー・TNE・T4・T20・マングース版のそれぞれで微妙な差異があり、今回はそれらの中庸な点を探って採用しています。また、貿易分類の種類については最新のマングース版を採用していますので、旧来の貿易ルールを使用する場合は「高技」「低技」「緑地」を読み飛ばしてください。
 貿易分類「Garden」についてはマングース初版とマングース第2版で解釈が異なるのですが(更にはCepheus Engineでも)、2版以降の設定解釈がTraveller5準拠になることを考慮し、T5と同様の解釈である2版方式を採用しました。それに伴い、これまで「肥沃」としていた訳語を「緑地」に変更しています(2版及びT5において貿易分類Gaは「地球型惑星(T-Prime)」を指すため)。また、メガトラベラー以降で「低人」に「非工」が必ず付随してしまう問題に対処するため、「低人は人口3-」「非工は最低4+」に分割しています。

(2024.07追記)『Mongoose Traveller Core Rulebook Update 2022』に準拠させました。ただし、(前の版から修正されていない)「非水」の条件である「大気10+」は誤植と判断し、従来通り「大気A~C」で判定しています。


【参考文献】
Journal of the Travellers' Aid Society #2,#12 (Game Designers' Workshop)
Supplement 3: The Spinward Marches (Game Designers' Workshop)
Adventure 6: Expedition to Zhodane (Game Designers' Workshop)
Double Adventure 2: Across the Bright Face (Game Designers' Workshop)
Traveller Adventure (Game Designers' Workshop)
Spinward Marches Campaign (Game Designers' Workshop)
Alien Module 8: Darrian (Game Designers' Workshop)
MegaTraveller: Imperial Encyclopedia (Game Designers' Workshop)
Regency Sourcebook (Game Designers' Workshop)
MegaTraveller Journal #1,#3 (Digest Group Publications)
GURPS Traveller: Behind the Claw (Steve Jackson Games)
GURPS Traveller: Alien Races 3 (Steve Jackson Games)
GURPS Traveller: Sword Worlds (Steve Jackson Games)
GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
Spinward Marches (Mongoose Publishing)
Tripwire (Mongoose Publishing)
Alien Module 3: Darrians (Mongoose Publishing)
Spinward Marches 1: The Bowman Arm (Mongoose Publishing)
Spinward Marches 2: The Lunion Shield Worlds (Mongoose Publishing)
Traveller Map
Traveller Wiki