人あまりの時代になりました。中高年世代となった私も他人事ではありません。この手の本も目にすることが本当に多くなりました。
著者の副島隆彦氏はやや過激にこの現実を分析検討しています。
むかしマクロ経済学の教科書で、一国や企業の生産力は ソフト×ハード×労働力 で表現する記述があったように思います。
現在は技術ノウハウが発展しすぎてソフト・ハードのレベル・投入量が大きくなり、需要を満たすために必要とされる労働力はどんどん小さくなっていきます。単純作業はソフト・ハードで置き換えられ、ソフトやハードを管理するような高度な技術だけが要求されています。
極論すれば100人いたら高度なスキルを持つ10人が働けば十分な時代です。その一方で労働は生活の糧を得る手段としてだけではなく、社会参加の手段としても非常に重要です。現代の問題はモノ不足ではなく仕事不足で、仕事が社会全体にいきわたらないことがあげられます。ソフトやハードはいったん作ってしまえば維持費くらいなもので、相対的に高価な労働への需要が不足してしまうことは市場経済では解決できない問題かもしれません。
カール・マルクスは資本主義が高度に発展した後に社会主義が到来することを予言しましたが、20世紀前半のロシア革命は発展段階的にマルクスのいう社会主義ではありえないとする考え方があります。市場経済では解決できなさそうな問題に直面した現在の先進国の対応こそ社会主義への移行段階かもしれません。
モノ余り・仕事不足という現象は、見方をかえれば余り働かなくても生活ができる夢の時代の到来であり、深刻な雇用問題は経済という下部構造の変化に政治や社会がうまく対応できてないだけなのかもれません。(マルクス的表現は今の時代においてはいささか古臭くも聞こえますが)
この本は厳しい現実ばかり書いてあるので、問題解決的な明るい視点も盛り込んでほしかったと思います。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます