しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「償い」 矢口敦子

2011年04月02日 | 読書
「償い」 矢口敦子     幻冬舎文庫

36歳のホームレスの男は、前の自分日高英介という固有名詞を捨てようとしていた。
日高英介は脳外科医だったが、妻と3歳の息子を失っていた。
そして、それは自分の責任だと思っていた。
ある夜、住宅火災の第一発見者になり、不審者として警察に連れて行かれる。
取り調べの刑事、山岸徹男と火事のことを話す日高英介は鋭い観察力を見せる。
山岸は日高を犯人だと思ってはいなかった。
しかし、この町を離れず、連絡が取れるように昼間は図書館に居るように言い渡す。
それが切っ掛けで、日高はその町の図書館に入り浸る。
そしてこの町で起こった殺人を知る。
そんな時、中学3年の1人の少年と出会う。
どこかで会ったことがあるような気がしたが、草薙真人と言う名前を聞き思い出す。
それは12年前に日高が命を救った少年だった。
日高はその思い出があったので、ホームレスになった時、1度来ただけのこの町に来たのだった。




静かな町で起こった、放火に殺人。
日高が探偵役として、調べ推理をしていく。
読者を惑わせる雰囲気や記述がある。
ケムに巻き、ハラハラさせながら、思ってもいない結論に持っていくという手法。
少々、無理が出てしまう所も見えるが。
真人は、人の悲しみが見えると言う。
悲しみに心が泣き叫んでいるくらいなら、生きているより死んだ方が幸せだという考えが出てくる。
他人が誰かの運命を決め付けることに、とても違和感と嫌悪感を覚える。
自分の判断が間違いないと、どうしてそんなに自信を持てるのだろう。
そんなことで、真人が好きになれないので、最後もあまり感動は出来なかった。
悲しみの中で死ぬより、幸せな時に死ねたらその方がいい聞くと、それを実行しようとするのは、余りにも幼すぎ。
後、謝罪するのに、目の前で死ぬ人がいるだろうか。
それがポーズだったとしたら、余計に死なない気がする。
目の前で死んだら、それは嫌がらせだ。
しっくりこない心理が幾つか出て来る。

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