しましましっぽ

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「天使のゲーム」 カルロス・ルイス・サフォン

2018年05月06日 | 読書
「天使のゲーム」 カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫    上・下巻
 EL JUEGO DEL ANGEL              木村裕美・訳

1917年、バルセロナ。
17歳のダビッドは、雑用係を務めていた新聞社から、短篇を書くチャンスを与えられた。
1年後、独立したダビッドは、旧市街の“塔の館”に移り住み、執筆活動を続ける。
ある日、謎の編集人から、1年間彼のために執筆するかわりに、高額の報酬と“望むもの”を与えるというオファーを受ける。
      <文庫本上巻裏表紙より>

ダビッドが契約していた出版社が放火されて経営者が亡くなり、刑事にマークされる生活が始まる。
いっぽうで移り住んだ“塔の館”のかつての住人ディエゴ・マルラスカが不審な死に方をしていたことがわかり、関係者を訪ね歩くダビッド。
調べていくうちに、マルラスカと自分に複数の共通点が見つかり、彼を襲った悲劇に囚われていく。
       <文庫本下巻裏表紙より>








『風の影』の続編だが、時代はこちらの方が前。
「忘れられた本の墓場」も登場。
出だしはあまり面白く感じられない。
どの登場人物にもあまり魅力を感じられず、その行動にも納得が行かない事が多いから。
ダビッドもクリスティーナも、ペドロ・ビルダも。
アンドレアス・コレッリが登場し、ダビッドが“塔の館”に住むようになってやっと物語は動き始める。
それは、ダビッドが塔の前の持ち主のディエゴ・マルラカスを調べ始めるから。
起こる事件と、たくさんの死。
何だか、『風の影』の展開にも似ている。
ただ、こちらは少しずつホラーの様相も出て来る。
怪しげなコッレリは悪魔なのではと思わせる。
ダビッドが依頼されたのは、新しい宗教を書くこと。
拒否する気持ちがありながら、ダビッド自身がその事に惹かれているようだ。
ただ、そのダビッドが書いている内容がはっきり書かれていない。
それを読んでみたい気がするが。
この物語はダビッド・マルティンの一人称で書かれ、暗い結末が暗示されている。
だから読んでいても気持ちは暗くなる。
唯一、明るくて元気なのがイサベッラ。
「センペーレと息子書店」も出て来て、『風の影』との時代の兼ね合いで考える。
この時代もセンペーレと息子だけなのだ。
そして、イサベッラとこの書店の繋がりが最後に分かる。
謎はたくさんあり、それがそのまま、謎として終わって行く。

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