しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「マルベリーボーイズ」 ドナ・ジョー・ナポリ

2009年12月31日 | 読書
「マルベリーボーイズ」 ドナ・ジョー・ナポリ    偕成社
 THE KING OF MULBERRY STREET    相山夏奏・訳

1892年、ナポリ生まれのユダヤ人少年ベニアミーノは9歳の時、密航してアメリカ、ニューヨークへ来る。
母親が新しい革靴を履かせ貨物船に乗せたのだ。
新しい靴のおかげで、パドローネ(イタリアからの移民を手引きし、アメリカで働かせて金を巻き上げる仲介人)から逃れることが出来る。
イタリア移民が多く暮すマルベリーストリートに向かう。
ベニアミーノはアメリカでは、ドム・ナポリと名乗ることになる。
母親も一緒だと思っていたドムは、始めはナポリに帰ろうとする。
ドムは青果店の手伝いをして食べる物を手に入れ、1人で生活している少年ガエターノや、パドローネの元で働かされている、ピエトロと知り合う。
自分で生きる方法を見つけながら、ドムはニューヨークの生活に馴染んで行く。
そしてお金を稼ぐ方法を思いつき、実行して行く。




今までの物語をモチーフにした物語とは違うもの。
2人の祖父がモデルになっているが、これは物語。
しかし、サンドイッチを売って稼ぐ方法は、実際に祖父が行なったものらしい。
物語かも知れないが、きっと他にも同じようなことがあったのだろう。
パドローネも元で子どもが犠牲になることも。
いったい何人のピエトロがいたのだろう。
母親が船に乗せる前にドムに伝えたのは「生きのびること」。
そんな教えや育った環境が、ドムがしっかり生きることに結びついていた。
「与えられたら、与える」が友達を作る。
「なにごとも見た目が肝心。どんなものでも、綺麗にならべる価値はある。たとえすぐに食べられてしまう料理でさえ」
が、仕事を得ることになる。
9歳でとてもしっかりしているように感じるが、ひと昔でも子どもは今よりもっとしっかりしていた。
19世紀ではもっとしっかりしていたのだろう。
年々幼くなっているが、それに伴い大人も幼くなっている。

ひとつの歴史を知ることにもなるが、物語としても充分面白い。
まだまだドムの生き方を続けて見て行きたいと思った。
とても感動出来る物語。


作者の「あとがき」がある。
母方の祖父、ロザリオ・グランディネッティはカラブリアからアメリカにやって来たペンキ職人。
アメリカに来て名前をフランチェスコに。
父方の祖父、ドメニコ・ナポリーロ。1888年1月24日生まれ。
5歳の時、イタリアのナポリから密航してニューヨークに。
サンドイッチ売りの商売を始める。そして、ごく若く時にビジネスマンとして成功を収める。
スラム街ファイブポイントで25セントで買った長いサンドイッチを4つに切り、ウォール街でひとつ25セントで売る。

物語では、ガエターノが言う、「ここの人間はお金の価値を知らない」。
子どもでも自分の力で生きていける時代。
だから逞しい。


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