しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「刑事の怒り」  薬丸岳 

2020年09月30日 | 読書
「刑事の怒り」  薬丸岳  講談社  

4話からなる短編集。
夏目信人刑事シリーズ、第4弾。

「黄昏」
東池袋署から墨田区錦糸署へ異動の辞令を受けた夏目の東池袋署の最後の事件。
アパートで母親の遺体をスーツケースに入れて3年間隠していた女性が自首する。
母親の年金を使い込むような事もなく、その理由が分からなかった。

「生贄」 
公園の男子トイレの個室内で腹を刺され死亡している若い男性が発見される。
やがて、1人の女性、バーテンダーをしている佐倉咲が自首して来る。
警察が聞き込みで話を聞いた1人だった。
佐倉は自首する前に、SNSにこの事件についてのメッセージをアップしていた。

「異邦人」
ベトナムからの留学生が強盗傷害で逮捕される。
しかし、日本語もまだよく分からないのに、自分の生活範囲から離れた場所での犯行に夏目は疑問を抱く。

「刑事の怒り」
在宅治療で、脳挫傷による意識障害で人工呼吸器が必要な患者の人工呼吸のチューブが外れて死亡する。
母親が1人で16歳の息子、高村準を看ていたケースで、事件性はないか、捜査が入る。
夏目には娘の絵美のことが重なる。
絵美は10年の昏睡状態から目覚めたが、まだ自発的な活動はなかった。
夏目の異動と共に、錦糸町の明誠病院に転院していた。
絵美の担当の看護師の茉優が、最近錦糸病院に入院していた恋人、西野慎吾を高村準と似た状況で亡くした事を知る。
準の担当病院が錦糸病院だった。







夏目刑事のシリーズ。
もう4作品目なのだが間があいていることもあり、自分の中であまり印象を残していない夏目刑事。
今までの感想文を振り返り、思い出す。
「カレーライス」に登場した裕馬も出て来る。
これから先、裕馬との係りがまた出て来ると言う事だろうか。
物語は、それぞれ社会問題を含ませたもの。
事件だから悲惨だが、事件は解決しても、社会問題はどう解決していくのか見えない。
社会の歪みがこれからもこのような事件を起こしていくのだろう。
「生贄」は男女間の考え方や感情の持ち方の違いが、埋められないものなのだ、と。
夏目も男だから、錦糸署で組んだ女性刑事本上との温度差が感じられる。
本上とのやり取りはまだ緊迫感があって興味深い。
「異邦人」は、もっと国の政策で何とかしなければならない問題を含んでいる。
「刑事の怒り」は、刑事と言うより、夏目自身が関係者の立場だから怒るのだろうとも思うが。
これは関係者だからではなく、社会全体で考えて行く必要がある。
「価値のない人間なんていない」。


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