しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「虚夢」 薬丸岳 

2009年11月18日 | 読書
「虚夢」 薬丸岳    講談社

札幌市内、雪の積もる公園で通り魔事件が起こる。
犯人は21歳の専門学生、藤崎。3人を殺害、9人に重軽傷を負わせる。
藤崎は統合失調症と診断され、犯行時は心神喪失であったとして不起訴になる。
事件の被害者に三上孝一の妻佐和子と3歳の娘留美がいた。
留美は死亡し、佐和子は背中を刺され重症だったが命は助かる。
しかし、佐和子は事件後PTSD(心的外傷後ストレス障害)となり、孝一は佐和子の希望で離婚する。
それから4年、突然佐和子から藤崎を見たという電話を受ける。
たった4年で、藤崎が自由になっていることに衝撃を受けるが、佐和子の言動には異常な感じがあった。
事件後、佐和子も統合失調症と診断されていたのだ。
幻覚を見た可能性もあったが、孝一は藤崎を探し始める。



物語の性質上、明るいラストは想像出来なく辛い気持ちで終わるかと読んでいた。
しかし、後味はそれほど悪くない。
物語としての面白さも充分にあった。

結論の出る物語でもなく、考えさせられることが多い。
被害者の傷は癒えるものではないが、罪を犯した側の人物にも何とか良い方に向かって欲しいを思えた。
病気なら、治療で治るなら、そうなって欲しい。

最後の佐和子の行動は、佐和子が決意したものとは違ったが、あれが人間の本来の姿だと思う。
簡単に人を殺せるものではない。
そう思いたい。
人を殺せる人間は、その時点で何らかの心神喪失の状態にあると思う。
悩みを見せない人間はいるが、悩みがない人間はいない。
それと同じで、心の病は多かれ少なかれ、誰もが持っているものだろう。
この物語にも、心を病んだ人達が多く登場する。

刑法39条。
どこまで罪として認め罰を与えるか。それを決めるのは人間。
どんな状況であろうと人を殺し罪を犯したなら、罪の償いはしなければならないのではないだろうか。
心の病が治ったからと言って、直ぐに自由な生活に戻るのは、やはり理不尽な気がする。

しかし、人間の精神の強さや心を安定させる力は、どこで決るのだろう。
辛い試練に、誰もが心は壊れるわけではない。
持ち堪えている人の方が多いと思う。
最近の子は切れやすいと言うが、そうならない方法や精神を鍛える方法はあるのだろうか。
まずは健全な身体でいる、と言うことはあると思うが。

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2 コメント

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Unknown (トラ猫にゃ)
2009-11-19 22:30:52
びっくり!ワタクシも同じタイトルでブログを書いている者でございます(^◇^;) 猫と本が好きなものでして・・・。この本は私も以前読みました。後味があまりよくなかったです。どうもこの作家さんは性に合わない気がしました。
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ホントだ!びっくり(笑) (しましましっぽ)
2009-11-20 16:19:38
>トラ猫にゃさん
コメントありがとうございます。
トラ猫にゃさんのブログ見て来ました。
先輩ですね、よろしくお願いします。

もっと後味の悪いのも想像していたので、それほどでもなかったです。
テーマがテーマだけに、後味は良くなりようがないかも知れませんね。
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