しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「月の扉」  石持浅海 

2011年10月17日 | 読書
「月の扉」  石持浅海        光文社文庫

沖縄・那覇空港。
7月16日、20時発羽田空港行、琉球航空8便を3人の男女がハイジャックする。
携帯電話やパソコンに忍ばせた小さなナイフで、3人の乳児を人質に取る。
3人は柿崎修、真壁陽介、村上聡美。
石嶺孝志が主催する、不登校児童などを癒すキャンプで助手をしていた。
その石嶺が誘拐の容疑で逮捕、勾留される。
3人の要求は、石嶺を午後10時半までに、那覇空港の滑走路まで「連れてくる」こと。
そんな中、人質に取った子どもの母親がトイレで死体となり発見される。
真壁はその事件の真相解明を、乗客の一人、座間味に委ねる。





タイムリミットのハイジャック中に起こった殺人事件。
解決を任されたのが、座間味のTシャツを着た青年。
一般人にこんな推理が出来るのか。
後で、この青年の身元が明かされるのかと思ったが、それはなかった。
犯人側から書かれているので、何故ハイジャックをしたかも少しずつ分かってくる。
3人が「師匠」と呼ぶ石嶺孝志は、誰もが魅了されるカリスマ性充分な人物。
宗教の教祖になれば、救世主になれる存在。
しかし、本人にその気はない。
実際にキリストなどの救世主はそういうものだろう。
自分の癒しの力をお金に換えたりはしない。
そんな存在が社会に登場した時、周りの人間はどうするだろう。
ハイジャックや殺人事件の他に、そんなことも考えさせられる。
ニュータイプの登場は受け入れられるか、排除されるのか。
ラストは、ちょっとしたドンデン返しと、ファンターな余韻。
実際にドンデン返しがなく、その時を迎えたらどうなっていたか。
それが見たかった。
しかし、「師匠」が自分とほんの少数の仲間だけで再生の世界に行ってしまうのは、なんだか寂しく感じる。
そんな能力のある人は、自己犠牲の精神も持っていて欲しい、と考えてしまうのは、自分勝手だろうか。
多くの人を救ってあげられるのなら、そうしてあげて欲しい、と。

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