しましましっぽ

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「こわされた少年」  D・M・ディヴァイン 

2015年02月19日 | 読書
「こわされた少年」  D・M・ディヴァイン   現代教養文庫     
 HIS OWN APPOINTED DAY        野中千恵子・訳

16歳の弟イアンが行方不明になったと、姉のアイリーン・プラットがシルブリッジ警察に届けに来る。
イアンは2日前から家に戻っていなかったが、それは結婚してリヴァプールにいる姉の家に行ったと思っていたからと。
しかし、それは間違いで、大きなスーツケースとイアンの物が無くなっていて家出のようだった。
イアンはプラット家の養子で、その事を知った1年前から様子が変わり反抗的になったと言う。
アイリーンは、イアンは実の父親のコールマンに会いその影響を受けているからで、今回も父親の所に居ると推測していた。
しかし、コールマンの所には、イアンの自転車があるだけでイアンはいなかった。
イアンの消息が掴めないまま、イアンの謎の行動が少しずつ明らかにされていく。
やがてイアンは誰かを強請って、大金を手にしていたとの疑惑も出て来る。
それはイアンらしくはないと、アイリーンはイアンを捜し続ける。







今までも家族間のモヤモヤがもつれて事件になっていた。
今回も16歳の子どもから端を発した出来事が、物凄い事になる。
イアンは冒頭だけ登場するだけだが、イアンの存在が不気味なほど強烈だ。
何故行方不明になり、何故見つからないのか。
毎週水曜日には何をしていたのか。
お金を沢山使えたのは何故か。
常に大きな何故が頭の上に浮かびながら、アイリーンと同じ気持ちで見つかると良いと思いつつ。
そして、父親のアンガスと母親のマーガレットにイライラしながら。
プラット家の様子を考えると、なんと人間関係が難しいのだろう。
アンガスの存在は、家族とはとても言えない。
しかし、ジャネットに言われた時、アイリーンの「やっぱり父親だから」と思う気持ちは分からない。
そんなにも割り切れない物だろうか。
家族だからって、一緒にいて不幸になるなら、別々になってもいいと思うが。
人間関係の難しさを、とことん見せられた感じもする。
しかし、10何年も母親からは愛情いっぱいに育てられた少年。
溺愛だったとしても、姉たちが嫉妬するほどの愛情を与えられいた。
それを感じてもいただろうに。
それがたったひとつの事で引っくり返ってしまうのも悲しい。
父親も愛情がないとは言えチェスをしたり、普通の暮らし方だったのではないだろうか。
反抗期という事もあるかも知れないが。
アイリーンは、コールマンの影響と言うのだが。
頭が良いイアンなら、コールマンの気持ちも表面とは違う事を、直ぐにでも気が付くのではないだろうか。
目撃してしまった悲劇なのかも。
タイトルが、その悲しさを表している気がする。

警察の中でも人間関係がギクシャクして、お互いが悩みあっている。
世の中、上手く行かないことばかりだ。
それでも、折り合いを付けて行かなければならない。
今までのディヴァインの中でも、より繊細な物語で心に残る。
今回は犯人が誰か最後まで予想も付かなかった。

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