バイエルの謎ー日本文化になったピアノ教則本
安田寛 著 音楽の友社
先日読んでみておもしろかったのでご紹介します。
昔から日本で使われ続けていた<バイエルピアノ教則本>を作った人フェルディナント・バイエルについて、その生い立ちなど詳しいことを著者が突き止める過程と、突き止めた結果見えてきた、バイエル教則本の意味についてなど、とても興味深い内容が書かれていました。
私も小さい頃、バイエルでピアノを習いました。導入はバイエルではなく、色音符を取り入れた教則本だったと思います。その本が終わって、黄バイエル(バイエル下巻のことで、当時表紙が黄色だったので、黄バイエルと言っていました。)を先生からもらった時には、とてもおねえさんになったような気がして、嬉しかったのを覚えています。バイエル、ブルグミュラー、ソナチネアルバムと、その当時のごく普通の道を歩んできたと思うのですが、ある時からバイエルは批判されるようになりました。自分が小さい時に弾き続けてきたものは、良くないものだったのか・・・と思うと少し悲しいような気がしたものですが、それと同時に、バイエルのすべてが良くないわけではないだろうと思っていました。なぜなら、大好きだった曲、子ども心に感動を覚えた曲、心を揺すぶられた曲がバイエル教則本の中に何曲かあって、その時の気持ちをいまだに覚えているからです。
今は数え切れないほどの教則本があり、ピアノ講師になりたての頃、どの教則本を使おうかと、楽譜の棚の前で何十分も悩んだものでした。子どもの年齢や性格によって、その子にあった教則本は違ってくると思いますが、いろいろな教則本を使ってみてわかったことは、どれも一長一短あるんだなぁということです。結局は、指導者がどういう目的を持って、どのように指導するかということなんだとおもいます。
ご紹介した本の内容から離れてしまいましたが、「バイエルの謎」、とても興味深い内容だったので、読んでみてください。