中原聖乃の研究ブログ

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マーシャル諸島の言語はたった一つ

2015-05-06 18:49:38 | マーシャル諸島の紹介

 

 ヴァヌアツ共和国という国が赤道より南の太平洋上にあります。ブータン王国とならんで「幸せだなあ」と考える国民の割合が世界一高い国とも言われていますが、海域面積(排他的経済水域)68km²、国土面積12200km²、人口20万人の国に、100を超える言語が話されています。方言ではなく本当に通じないため、植民地時代に生み出されたピジン語が共通語として用いられています。なんとニューギニア島(西半分がインドネシア、東半分がパプアニューギニア)には言語が850もあると言われています。

 それではマーシャル諸島はどうでしょうか。海域面積は213万平方キロメートル、国土面積は181km²、人口は約5万人です。ここにどのくらいの言語集団がいるのでしょうか。

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 答えは一つです。こんなに広い海域にたった一つの言語しか存在しないのです。なぜヴァヌアツは一つの言語につき2000人程度の話者しかおらず、マーシャル諸島では5万人もの人が一つの言語を話しているのでしょうか。

 それは災害時の対処の仕方の違いにありそうです。干ばつや台風といった災害はヴァヌアツでもマーシャルでもやってきます。20153月ヴァヌアツを大きな台風が襲ったことは記憶に新しいことと思います。

 災害時の対処として、ヴァヌアツなどの火山島では土壌も豊かで豊富な食料の収穫が見込めることと、一人当たりの土地が広いことで、余剰の土地を利用できる可能性はないでしょうか。他方、海抜2メートルしかないマーシャル諸島の環礁では、災害に襲われるとひとたまりもなく、一つの環礁の資源だけでは長期にわたる生存は難しかったはずです。だから危機的な災害時には助けてもらう、あるいは思い切って移住をする必要があったのでしょう。もちろん見ず知らずの人に助けてもらうのは、さすがに気が引けますから、普段から広い海域に散在する島々の間で知り合いを作ろうとしたのではないでしょうか。この交流が言語を一つにまとめていったのだと私は考えます。

 マーシャルでは「はじめに言葉ありき」というよりも、「はじめに行いありき」そして、いつのまにか「言葉ひとつになりぬ」なのです。

 


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