随縁記

つれづれなるままに、ものの歴史や、社会に対して思いつくことどもを記す

新聞の選挙予測報道

2005-09-11 10:46:44 | 政治
今日は衆議院選挙の投票日で、当然ながら投票してきた。
今夜遅くから開票が始まり、テレビは選挙報一色になる。刻々と開票結果が速報され、僅かな開票率で早ばやと当選確実が打たれる。出口調査などで有る程度の情報を得ているから、可成りの精度で、当確が打てるらしい。
楽しみでもあり、どのような結果がでるか恐ろしい気もするのである。

さて問題は、昨日までの新聞の、選挙予測調査報道のことである。
殆どの新聞の結果予測では、「自民党有利」、或いは「安定多数確保」となっている。
選挙予測調査の結果が、なんだか、少し違うのではという感じを持った。そんな筈はないはずだ、というのが正直な感想である。

今回の衆議院選挙は、解散からして郵政民営化が否決されたという事を理由とした、報復的とも言える異常な解散であり、従って自民党が分裂した選挙である。
この選挙で自民党が平穏に終わるはずがない、というのが私の読みである。
郵政民営化に反対したと雖も、自民党として実績のある政治家が、37人も自民党から非公認となった上に、対立候補を立てられている。
マスコミはこれを刺客候補、落下傘候補として取り上げ話題となった。しかし、この刺客候補が全員当選するなんて、日本人の良識からはあり得ないと思う。

一般国民にとって、緊急の課題でもなく、特段生活に直結するような重要課題でもない、議論の多い法案一つで国会が解散された。
「郵政民営化に賛成か、反対か」だけを絶叫する小泉首相に、国民の大多数が支持し、刺客候補が全員当選するなんて絶対にあり得ない。
考えられる事は、反対派議員が、同情と過去の地元利益誘導の実績が評価されて、かなり善戦すると思われる。

無論、刺客候補で人気が高く、マドンナ旋風で幾人かは当選するかも知れない。しかし、比例区を除く小選挙区ではせいぜい一人か二人ではないかと思う。
つまりは、旧自民党の反対派議員と、刺客候補の票の食い合いで共倒れとなり、民主党に有利になる地域がかなり出るのではないかと思っている。

私見ながらも、共産党はその特異な考え方から、凋落に歯止めは掛からないと思っている。社民党も、もう時代に取り残されていて、期待を担うパワーがなく惨敗すると思っている。
そして公明党は、自民党と連立を組んで与党化したことで、独自性が失われて魅力を失い、
学会員以外は投票しないだろう。だから、現状維持は困難で若干減少すると思われる。

そうすると、新党が思いの外善戦するとしても、どう考えても民主党が躍進しなければ辻褄が合わない。特に、良かれ悪しかれ、劇場型選挙として近来珍しく関心を集めた国政選挙となるはずである。
ところが、新聞のランダムな電話による世論調査では、どこも自民党有利の結果がでて、そのように報道されている。

選挙は毎回「浮動票」とか、「無党派票」の動向にかかっている。
その無党派の意見が世論調査に現れていないような気がする。無党派は都会に多く、現役のサラリーマンや自営業者などである。
ウィークデーに調査を行うと、共働き家庭が多くまず電話に出る確率が低い。日曜日に調査しても、朝から家族そろって出かける可能性が高い。

必然的に、電話による聞き取り世論調査で被調査者になるのは、圧倒的に保守的傾向が強い、時間的にゆとりのある年齢層に集中している可能性が高い。
その世論調査の結果を、選挙の投票日前に大々的にこぞって大新聞が報道すると、
「今度こそは、世の中を変えるチャンスだ」
と選挙に行く気になっていた無党派層が、
「やっぱり、自民党が強いな。期待して選挙に行っても結果は同じことか」
元々政治に不満を抱きながらも、結果としてまた政治無関心派になってしまう可能性がある。

選挙予測報道は、往々にして「アナウンス効果」があると言われている。
新聞の世論調査の結果を見て、勝ち馬に乗る心理が働き、さらに無党派層は、逆に無力感から選挙に行かないというマイナス行動を生み、結果として新聞報道が裏付けされる事もある。

小泉自民党に逆風が吹いている筈の衆議院選挙で、まるで自民党に追い風が吹いているような、自民党有利の選挙結果を予想して報道すれば、そのような結果になる確率が高まる。

日本の大新聞が、日本の未来を危うくする可能性がある。
なぜなら、結果に偏りが予想される電話世論調査の結果だけを取り上げて、選挙をする前に「自民党が有利」と報道すれば、ますます政治無関心派が増大し、独善的な政権がつづき、政治はますます利権癒着の構造がつづいて、政治の荒廃が続くだろう。

今回こそ、無党派層が立ち上がり、国民を小馬鹿にしたような、
「郵政民営化に賛成か?それとも改革に反対か、が問われているのです」
と叫ぶ、扇動的な詭弁を弄する小泉自民党へ、反対の意思表示をして欲しい。

本当の政治改革とは、やはり二大政党化を一旦成し遂げるべきだと信じている。
選ばれた政権政党が、もし公約に反して独善的になるなら、次の選挙で野に下るという選択肢が持てる二大政党ならば、国民の重要関心事項を政府が裏切ることは決してできない。
その二大政党化の流れに、水を指すような選挙予測報道は、流れを止める可能性がある。

どんなに知恵を絞った選挙予想の調査でも、必ず偏るという事実がある。大新聞が、その予測調査を大々的に報道するのは、世論形成につながる可能性がある。
つまりは、日和見の無党派層の出鼻をくじく結果をもたらす可能性があると思う。

今夜から明日にかけての選挙結果が、大新聞の選挙予想結果を覆して、良識のある無党派層が立ち上がった姿を見たいものである。