随縁記

つれづれなるままに、ものの歴史や、社会に対して思いつくことどもを記す

西村真吾弁護士法違反事件

2005-11-30 12:27:08 | 社会批評
最近では珍しい硬骨漢の政治家と思っていた、民主党衆院議員の西村真悟容疑者が弁護士法違反事件で逮捕された。
逮捕されて真実が徐々に明らかになってきた。
西村真悟容疑者が、鈴木浩治容疑者に弁護士名義を貸して、政治資金としての裏金を作るために利用したという構図から、一転して完全に鈴木浩治容疑者から、西村真悟容疑者が
利用されていた構図が明確になった。

以下の「  」内は、報道の抜粋である。
「西村真悟容疑者の弁護士法違反事件で、西村容疑者が自らの法律事務所元職員・鈴木浩治容疑者に弁護士名義を貸していたとされる1998~2004年に、鈴木容疑者が扱った交通事故の保険金受け取り総額は約10億円に上ることが29日、大阪地検特捜部や大阪府警の調べでわかった。」
「鈴木容疑者は保険金額の30~50%を依頼人に請求し、少なくとも3億円を超える報酬を得ていたことも判明。「報酬は保険金額の10%」とした西村容疑者との約束を破って、上積み報酬分は隠しており、弁護士名義が「示談屋」に悪用されたことを浮き彫りにしている。」
「交通事故の示談交渉などの非弁活動(無資格の弁護士活動)を開始。西村容疑者とは、日本弁護士連合会が定めた弁護士報酬規定(当時)に準じ、保険金額の10%程度を報酬として受領し、両者で2等分することで合意していた。しかし、鈴木容疑者は、事務所経費を自分の報酬分から負担していたこともあり、実際には、依頼人に対し、保険金額の30~50%の報酬を請求。
 西村容疑者が事務所口座から「名義貸し料」などとして受け取ったのは計3400万円で、残る巨額の報酬は、鈴木容疑者の実入りになっていたという。」

やっばり、所詮は二世議員か、と嘆息せざるを得ない。
政治家として最も大切な金銭感覚が、やはりずれているとしか言いようがない。
なぜ、収入を堂々と申告しないのか、なぜ裏金が必要なのか不思議でならない。
また、かならず裏金を作ると、いつかは必ず露見するという事に気がつかないのだろうか。
わずか3400万円の裏金で、衆議院議員西村真悟、そして弁護士西村真吾の二つを同時に失い、社会的な制裁を受ける。
持っていた志の高さと比較して、あまりにも情けない金銭感覚の差に愕然とする。

やはり、国会議員になると、何処かで人間としての思い上がりが生まれ、世の中をなめてしまったのだろう。
以下は、勝手な西村真悟容疑者の心のなかの想像である。

「名を知られた衆議院議員の俺を騙すやつは居ないはずだ」
「周りに居るのは、皆俺の信奉者ばかりで、俺の脚を掬う奴なぞいるはずがない」
「交通事故の示談で、弱者に対して保険会社から保険金を支払わせるのは社会正義だから、代理人を使っても特別悪いことではない」

そう思っていただろうが、世の中には幾らでも人を利用する才知に長けた者がいる。
弁護士という職業は、まさに社会正義の番人としての重要な責務がある。それをないがしろにして、国政のほうが重要だという言い訳は通用しない。
この期に及んでも、弁護士の資格は捨てるが、まだ国会議員を辞めるとは言わない。
良識有る市民としての資格がないのに、この事件と国政は別だとか言うのは可笑しい。

鈴木容疑者は、「西村真悟法律事務所」という知名度を最大限活用し、相手を威嚇して常識では通用しない、保険金額の30~50%の報酬を依頼人に対し請求していた。
多分、通常の交渉では保険金が下りないケースでも、「西村真悟法律事務所」という名前に屈して保険金が下りたケースもあるだろうと推測できる。

西村真悟容疑者は、潔く弁護士法違反を認めているというなら、潔く国会議員も辞職するべきである。
ここで見苦しい断末魔を演じると、二度と再び政治の舞台には上がれない事だけは断言できる。かつて、西村真悟に清き一票を投じた者として、強く勧告したい。



デジタルHVテレビ

2005-11-28 13:19:21 | Weblog
我が家にデジタルHVテレビがやって来た。
普段、ニュース以外にはあまりテレビは見ていない。
しかし、寝室のテレビが寿命が来て、突然画面が消えることを繰り返すようになった。
テレビの外側をと叩く、また映像と音声が復活するという不思議な現象をみるようになった。次第にその間隔が短くなり、画面が突然消えて、強く叩いて画面が復活しても、またすぐに画面が消える。

つい、癇癪を起こして、テレビを買い換えることにした。
妻と二人で大型家電店を見て回ると、なんと液晶のHV大型画面のテレビがズラリと陳列されていて、従来のブラウン管てれびやアナログテレビは申し訳程度に品揃えされている。
いろいろ迷ったが、結局デジタルハイビジョンのBS・CSチューナー内蔵の液晶テレビを買った。

デジタル放送が始まっているのは知っていたが、さほどに興味を持っていなかったが、いざデジタルハイビジョンを買って、じっくり見る画面は実に美しい。
今までBSチューナーも無いテレビだったから、アナログの一般放送しか見たことがなかったのに、いきなり見られるチャネルが一気に増加した。
それに、BSの有料放送のWOWOやCSのスカパーなどの多チャネルの有料放送まで、契約すれば見ることが出来るようになった。

テレビを自分でセットアップする時に、電話回線の接続があり、なぜ電話回線を繋ぐ必要があるのか不思議に思ったが、デジタル放送は双方向のチャネルである事に気がついた。
番組放送に視聴者として意思表示し番組参加することができるようになっている。

また、有料放送への申し込みなども、テレビ画面の操作で、その申し込み内容を電話回線を通じて送信することができる。

現在まだデジタル放送が開始されて間がないから、それほど従来のテレビと異ならないが、将来的にはデジタル放送は、自分の見たい番組を自分の見たい時間に見ることが出来るようになる。
例えば、7時のニュースを8時40分に最初から見る事が出来るようになるだろう。

テレビの番組表もテレビのメニューから確認出来るし、番組予約や録画もすべてテレビ側から設定できる。
まだ充分に理解していないテレビの機能もあるようだ。

子供の頃、まだ家庭にテレビが無くて、電器屋の街頭テレビでプロレスを見たあの白黒テレビ時代から考えると、まさに隔世の感がある。
いずれにしても、テレビの時刻表に人の都合を合わせていた時代から、人の都合で録画しなくてもテレビの放送が見られる時代が近づいている。





耐震強度偽造問題

2005-11-26 11:40:25 | 社会批評
前回も触れたが、姉歯建築士の耐震強度偽造問題は、日々報道されているが、その広がりは留まるところを知らない。
 
 25日の報道では、国土交通省による聴聞に対し、「鉄筋減らせ」と指示されたと姉歯建築士は、3社の実名挙げたという。
 鉄筋減らしに関し、姉歯建築士が名指ししたのは、建設会社「木村建設」(熊本県八代市)、開発会社「ヒューザー」(東京都千代田区)、不動産会社「シノケン」(福岡市)の3社である。
 同省の説明によると、姉歯建築士は数年前、3社のうちの1社からの依頼で、構造計算書を作成したところ、「鉄筋量を減らせ」と指示され、計算書を作り直した。
しかし、再度「もっと減らせ」と迫られ、「これ以上減らすと安全性に問題が生じる」と反論したが、「それなら、ほかの設計事務所に代える」と言われた。
 このため「仕事がないと生活に困るので応じた」といい、これが偽造に手を染めたきっかけだったと主張した。
その後、他の2社からもコストを下げるよう指示があったという。
 偽造した構造計算書を検査した指定確認検査機関「イーホームズ」(東京都新宿区)については、「(検査が)通ってしまってびっくりした」などと話し、「(検査機関は)甘いところと厳しいところがあって、甘いところを使うようにした」と明かした。

 無論、建築発注元は、姉歯建築士の発言を全面否定しているが、ほぼ間違いないと思われる。
建築発注元は、マンションなどを出来るだけ安く建築し、出来るだけ高く販売したい。だから一番コストがかかり、表面からは判断しにくい基本的な構造部分でのコスト削減を指示したのだろう。
外装のデザインや設備や内装などの見栄えの部分でコスト削減すれば商品価値が落ちて販売価格に影響すると考えたのだろう。
耐震強度に必要な鉄筋を、きちんと入れたか否かは、外見からは判断できない。しかし、基本構造に手抜きをするということは、建物の耐震強度に直接関係し、耐震性が低いということは、住民の生命を脅かすことに直結する。

耐震構造に素人の建築発注主が、いくら無謀な要求を突きつけたからと言って、建築基準法に定める耐震強度の五割以下というのはひどすぎる。
 いくら受注競争が厳しいからと言って、建築物の基本構造部分で手抜きしてコスト削減を行えば、住民の生命を危うくする重大な犯罪である。
 姉歯建築士は、建築発注元に対して、これ以上鉄筋を減らすと安全性に問題が生じると抵抗したが、「それなら、ほかの設計事務所に代える」と脅されて屈したと述べている。
 
本当にそうだとすると、現在の報道はまだまだ氷山の一角にすぎない事になる。
つまり、姉歯建築士のように受註欲しさに、施主の言いなり発注元の言いなりで手抜きの構造設計をした建築士が多数存在する可能性が高い。
だから、姉歯建築士も「それなら、ほかの設計事務所に代える」という脅しにあっさり屈したのだろう。

報道されている問題の建築主は、近代的設備や見栄えばかりがよくて、耐震強度に直結するが表面からは全く見えない「建物の信頼性」を犠牲にして「砂上の楼閣」を建築していたことになる。
 
 人間にとって最も基本的で最も重要な「衣」「食」「住」に関して、偽装等で素人を騙して、生命の安全を脅かす行為は断じて許されない。
 まして住まいは、個人財産の中では最大のもので、一生を懸けてローンを組んで買うものである。その財産と生命共に脅かされている人々が出てきた。
 しかし、現在表面化しているのは、「姉歯」関与の物件ばかりである。

 「姉歯」関与以外の、隠れていて表面化していない第二、第三の耐震強度偽装マンションなどが存在するはずだ。
 この機会に全てのマンション住民は、設計図の再検討と、設計図通りに建築されているか、徹底して調査するべきであろう。

 問題が発見すれば、速やかに国土交通省や地方自治体とともに、対策を法律で講じる道を開くべきだと思う。
 空前のマンションブームに支えられて、次から次へと新しいマンションが建築されてきたが、日本でこのように基本構造に手抜きのあるマンションが平気で建築されてきたということに、ひとりの日本人として驚きを隠せない。
 マンション業界は、まさに言葉通りの「砂上の楼閣」ではないかと疑いたくなる。

 つまり、日本人の仕事に対する無責任さが、ここまで来たかと思わずにはいられない。
本来、建築物というのは長年月にわたって残るもので、自分の仕事に誇りと自信をもって後世に残していくものが建築ではなかったか。
 寺院などの木造建築では、棟梁がいて伝統の匠の技を伝承してきた。彼らにはまさに隠れた部分に創意工夫をして、建物を長く後世に残すことを誇りにしていた。

 いつの間にか、日本人は仕事への誇りを無くし、目先の利益ばかりを追求するようになった。挙げ句が、他人の生命・財産すらも危険に晒してでも、己のみの利益を追求するという実に「あさましい」実態となっているような気がする。

 姉歯建築士の関与した強度偽装問題で、ここに三日に報道された見出しをいか列挙しておく。
 ■「姉歯」関与の偽装32棟に、台東区・長野県も見逃す
 ■強度偽装マンションの元請け設計会社社長が行方不明
 ■ヒューザー、公的支援なければ破産も検討
 ■木村建設東京支店長「姉歯氏に裏金作り協力させた」
 ■建築士免許更新制に、分野別認定も…国交省検討
 ■公明が緊急対策申し入れ、民主は視察…強度偽装問題
 ■「姉歯」関与の横浜のマンション、調査待たず分譲中止
 ■静岡のホテルも営業休止へ…姉歯事務所が構造設計
 ■マンション11棟408戸、退去勧告へ


姉歯建築士の構造計算書偽造問題

2005-11-22 11:44:16 | 社会批評
 姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)が、元請け若しくは下請けとして構造計算を行った、首都圏のマンションなど21棟の耐震強度が偽装されていた問題で、国土交通省は21日午前、17棟の耐震強度の再計算結果を公表、すべての建物が耐震基準を満たしておらず、16棟(完成済み13棟、工事中・未着工3棟)は、震度5強の地震で倒壊の恐れがあることを明らかにした。
 
 構造計算書は、重力や風圧、地震などの外部からの力に建造物が耐えられるために必要な、鉄筋の本数や柱の太さを計算した書類で、建築士が作成する。
 荷重に対して部材の断面に働く応力や部材の変形度合いなどを計算した数値を示す。柱や梁(はり)、壁などの部材の材料を決める構造設計図の適正さを証明する書類で、建物の複雑さで異なるが、一般にA4判で数十ページ以上となる。
設計者は建築確認申請時、構造計算書を含めた設計書類を行政や指定確認検査機関に提出する。

構造計算は、建築物が震度6弱の中規模程度の地震で損壊しないか、震度6強~7の地震でも生命を守られるか等を、コンピューターを使って算出する。
ところが姉歯建築士は、本来入力すべき数値の半分程度のデータを入力して算出し、正規の書類と混在して提出していたという。
つまり偽造された構造計算書では、地震が起きた時に水平方向にかかる圧力を半分程度で計算し、必要な鉄筋の本数が少なくなるよう改ざんしていたのである。

構造計算書は、マンションやホテルなど一定の規模以上の建物については、建築基準法に基づき、建主は建築確認をする際に、行政機関か民間確認検査機関に設計図とともに提出することが義務付けられている。
建築確認とは、建物の建築開始前に、構造や設備の計画が建築基準法などの法令に適合していることを確認する手続きである。
市などの建築主事か、国土交通相や都道府県知事が指定した、民間の確認検査機関に申請して審査を受けなければならない。

一方、姉歯建築士が偽造した構造計算を、元請け設計事務所が確認しないまま、国指定の「確認検査機関」に提出し、さらに行政機関から委託を受けている民間確認検査機関のイーホームズ(株)が、ずさんな建築確認検査を行ったため、ほとんどフリーパスで耐震強度偽造が罷り通るという事態を招いたことになる。

建築主は、出来るだけ建築コストを押さえる設計を希望するが、一般の一級建築士に依頼しても正規の構造計算をするから、基本的な建築コスト削減にはならず、内装費用の削減程度しか提案できない。
ところが、姉歯建築士が構造設計し、耐震強度偽造を行った建築物件の建築確認検査がフリーパスで通った。次回も建築確認検査がフリーパスで通った。
こうなると、姉歯建築士は偽造に自信を持ち、次々に低コストで建築可能な構造設計を行ったと思われる。

一級建築士は毎年約5千人も誕生し、市場ニーズを上回る多くの有資格者が存在し、受注競争となっている。
このような状況の中で、建築コストを押えることが出来れば、建築設計依頼を受注できるという思いから、つい姉歯建築士は耐震強度偽造という、あまりにも無責任な暴挙を行って、低コストで建築できる構造設計で建築確認申請を通した。
このような状況で、全国から姉歯建築士に依頼すれば建築コストを押さえられる、設計依頼が殺到した。
こうなると、姉歯建築士は泥沼にはまって身動きが取れなくなったという事であろうか。
しかし、憲法でも保証されている基本的な「生命」と「財産」を危険に陥れた、その責任の重さは、万死に値する。

そして民間確認検査機関のイーホームズ(株)は、耐震強度偽造を見抜けなかったのではなく、本来の確認検査機関としての再計算などを行わなかったとしか言いようがない。
すべて「無責任の連鎖」がこのうよな重大な事態を招いている。
 
工事中や未着工の4棟についてはまだ証が終わっていないが、設計図を見れば一目で強度不足がわかる物件もあり、大部分が住民退去や取り壊しなどが必至の状況である。
取り壊しや住民退去にかかる費用負担は巨額に上ると見られる。
 
国土交通省では、各建物の実際の耐震強度が、必要な強度の50%程度以下だと、建て替えや大規模な補修が必要になると判断している。
東京・墨田区や江東区などにあるマンションと、中央区にあるビジネスホテルなど8棟の建物では、耐震性が基準の30%未満から40%程度しかなく、震度5強程度の地震が起きた場合、いずれも倒壊する恐れがあるという。
一部には、なんと建築物自体の自重にさえ耐えられない、10年程度で自壊する恐れがあるという信じられない構造設計物件もあるという。
これらの建物について、国土交通省は、補強工事だけで耐震性を確保することは難しく、大がかりな免震工事や最悪の場合建て替えが必要になるとみている。

22日の新聞報道によると、千葉県の姉歯建築設計事務所立ち入り調査によると、過去10年間に22都道府県で合計194件の構造設計に関わっていることが判明した。
耐震強度偽造物件は、さらに大きく全国的に拡大するという、最悪の事態になりそうな状況である。

過去様々な住宅建築に絡む手抜き工事が問題になったが、今回は個別の個人住宅事の手抜きのレベルではなく、大型のマンションやホテルなどの構造設計と耐震強度偽造の問題であり、被害者の数は過去例を見ない大規模な事態と言わざるを得ない。
住宅は個人の買い物としては最大のもので、何度も住宅を買える人はあまりいない。その住宅のマンションに基本的な構造設計に手抜きがあって、低コストで建築された代償が住民の生命の危険というあまりにも理不尽な話しである。

 新たな耐震偽装ホテルの存在が21日に判明し、強度偽装問題が拡大の様相を見せる中、「国や自治体は損害賠償の責任を負わないのか」という疑問が、クローズアップされてきた。
 最高裁は今年6月、民間の指定確認検査機関が行った建築確認は、自治体が行ったものとみなすとの決定を出している。
「あくまで民民問題」とする政府幹部の見解に対し、一部の建築主は「責任は全面的に行政にある」と主張している。
自治体関係者からも「賠償を求められたら、責任を負わされる可能性がある」との声が出始めている。
 最高裁決定を受け、自治体の責任を追及するケースも予想される。
すでに、建築主の1社の「サン中央ホーム」(千葉県船橋市)は、「最高裁判例では、建築確認申請の許可権者はあくまで市であり、市に責任がある」とするチラシを住民に配布している。
 これに対し、横浜市は、「今回の件では、設計事務所や指定確認検査機関に責任があるほか、指定をした国にもその責任の一端があるのではないか」と主張している。


村上ファンドのマジック

2005-11-11 13:11:17 | 経済
株式取得をテコにして、上場企業に容赦なく株主価値の向上を迫るのが、村上ファンドの手法である。株式の持ち合いに安住して、ぬるま湯の企業経営をしてきた経営者にとっては、まさに脅威の存在である。
日本の経営者は、友好的企業との持ち合いによる安定株主に守られて、長年短期的業績に一喜一憂することなく、長期的な企業の成長を目指してきた。

アメリカの企業は、極端に言えば四半期毎の業績に左右され、一年も業績低迷すると経営者の首が飛ぶ。
日本の経営者は、その点恵まれて長期的な経営戦略をとる事が出来たと言える。
しかし反面、ぬるま湯の企業経営となり、いたずらに内部留保を積み増し、株主利益を無視して保有している資産に比較して非常に株価の安い企業が増加した。

04年7月に明星食品株の8.17%を取得して、本社ビルなどの固定資産や持ち合い株の売却等で増配を要求した。紆余曲折はあったが、最終的には04年9月の連結決算が前期比27%減にもかかわらず、年間配当を8円から15円に増配した。これを受け手村上ファンドは12月に全株売却している。

今年4月には、株式10%を保有した大阪証券取引所に対し、「内部留保を積みます必要性を明確に説明できない限り、すくなくとも年間の税引後利益相当額(1株あたり2万円)を株主に還元すべきと迫り、大阪証券取引所も05年3月の年間配当を、4,000から9,000円に引き上げさせた。

村上ファンドの戦略は、株式取得にあたって、対象企業の資産や財務状況に加えて、その企業の属する業界事情まで一から洗い直す。
許認可事業であれば、直接その許認可権限をもつ役所に、その規制なども調査に出かけている。

自らの投資ファンドについても、金融庁のお墨付きをもらっている。
村上ファンドを構成する投資ファンドの一つ、MAC2000投資事業組合が、金融庁に法令解釈を照会している。
投資事業組合が、10%以上の株式を取得しても、議決権は組合の投資家の出資比率に応じて分配されるため、証券取引法上の主要株主にあたらないと主張し、金融庁は村上ファンドの主張ほぼ認める見解を示している。
これによって、村上ファンドの行動はより隠密正を持つ事が出来るようになっている。

村上ファンドの業績の伸びは目覚ましい。司令塔である経営コンサルタント会社のM&Aコンサルティングと、MACアセットが中核で、その周辺には約10のさまざまな投資ファンドが存在している。
急成長は、ファンド規模の拡大が支えている。投資家が資金運用の判断をすべて投資顧問会社に任せる「投資一任勘定」を、MACアセットが結んだ資産の残高が急拡大している。
02年3月の615億円が、05年3月には1653億円となり、05年6月末には1795億円に拡大している。
しかし、それすら氷山の一角かも知れないと言われていて、実像は投資ファンドの「匿名性」の厚い壁に守られて検証は困難である。

村上氏の講演では、「ファンドの情報の公開をあえて制限している。規模が大きくなるほど開示を止めました」と明らかにしている。
講演では「多くても1兆円くらいが自分で運用できる限界だ」と言い、虚像と実像が入り交じってカリスマ性をますます高めている。

証券取引法のルールを研究し尽くし、そのギリギリを突く村上ファンドの手法は批判も多い。
これに対して、村上氏は「証券取引法や金融のルールは、イエスかノーで、道徳の世界ではない。ルールの枠組みのなかで、どう戦っていくかが根本だ」と言い切っている。
周到な準備にもとづき、米国的な白か黒かの価値観で攻め続ける村上ファンドは、「法律違反でなければ、何をやっても良いのか?」という日本的な経営者に新たなる経営の視点を要求し続けている。


フランスの非常事態宣言

2005-11-10 11:51:01 | 政治
フランスで広範囲に拡大した、イスラム系移民の若者による暴動に対して、フランス政府は11月8日に12日間の非常事態を宣言した。
非常事態法が適用されるのは、アルジェリア独立戦争当時の1955年に公布されて以来二度目であり、今回のイスラム系移民の若者による暴動の深刻さを物語っている。

移民の若者による暴動の発端は、少年二人が10月27日に、警察に追われて感電死するという事件を機に発生している。
フランス社会の底辺の貧困層を形成している、400万人のイスラム系移民の若者によるフランス社会に対する不満が、一気に爆発し日々拡大した。主要地方都市からパリ近郊までに波及し、8日現在で車両放火の累計は約5,000台、逮捕者1,200人に達している。

吹き荒れる暴動は、アルジェリアなど北アフリカからフランスに移住した移民の二世・三世の若者によって引き起こされている。
貧しかったアルジェリアの人々は、フランスの移民計画によってフランスへ移住し、それなりに肉体労働や単純労働ながらも安定した仕事を確保して、フランス社会に同化していった。

その移民の二世・三世は、フランス人としてフランス語でフランスの教育を受けながら、仕事は単純労働にしか付けないという差別を受けている。しかも、失業率は全国の10%弱に対して、主要地方都市郊外の移民居住地区では20%~30%に達し、高卒でなければ、失業率は5割にもたっするという。移民居住地区では貧しく、子供を高校へ通わせることすら困難で、平均年収もフランス人平均の四割程度で1万ユーロー(140万)しかない。

失業や社会差別や貧困で、移民居住区では麻薬密売や強盗などの犯罪が発生すると、他の地区よりも大きく報道され、移民居住地区は白人の足が遠のき、ゲットー化が進んでいるという。
移民居住地区に住んでいるというだけで、いろいろ差別を受けるという。
フランスの教育を受けて育った、移民の二世・三世の若者達は、フランス社会で大きな矛盾と絶望感の中で、不満のエネルギーを爆発させた。
単に一過性の一時的感情的な問題ではなく、事態は相当深刻な問題を孕んでいるようだ。

この暴動騒ぎに対して、フランスのサルコジ内相の「彼らは社会のクズ」発言が、火に油を注いだようだ。社会のクズを意味するracailles は、非常に強い侮蔑的な言葉であり、若者の大反発を招いているという。

フランス社会の矛盾したイスラム移民の同化政策と、移民の二世・三世の失業や貧困対策の無策が招いた結果なのである。
若者達は、社会から排除されているという絶望感を抱き、経済的な不正義感を募らせている。
さらには、警察とイスラム系移民との緊張関係がある。
フランス政府が、イスラム移民の同化政策で、2002年に抑圧的な新政策を導入したことにより、状況は悪化している。
つまり、フランスの伝統的価値感を押しつけ、イスラム教の教えに従って女子がヘジャブ(スカーフ)を着用して学校へくるのを法律で禁止した。

出口のない失業による貧困と、根深い社会的差別に、若者の絶望感による不満のエネルギーが蓄積されている。
ヨーロッパで最大の400万人とも言われる移民を抱えるフランス社会は、移民の経済的苦境に対する根本対策を本気で取り組まないと、大変な事態に陥るだろう。
アルカーイダなどが介入してくれば、車を焼く暴動程度では収まらず、大規模な自爆テロに発展するだろう。
その構造的な矛盾に気がつかずに、「彼らは社会のクズ」発言をしたサルコジ内相こそ、フランスの抱えている深刻な状況を象徴していると言える。


企業のM&A

2005-11-09 01:23:59 | 経済
楽天による、TBSの大量株式取得による経営統合提案、そして村上ファンドによる阪神電気鉄道株式の大量取得など、相次ぐM&Aの動きが活発となり、ニュースを賑わしている。
上場されている株式は、当然誰でも何処の会社の株式でも買うことが出来る。
だから、上場企業の経営者は、安定株主を確保しながら同時に株価の動向を常に把握して、今だれが株を買っているかに注意を向けている。
そうでないと、TBSのように突然19%も株を取得されて、経営統合提案を受けることになる。

そこで、一体会社とは誰のものかを考えてみたい。
株式会社は無論株主が資本を出して、経営者が企業の実務を担当して収益を上げ、株主へ利益還元するというのが基本構造の話しである。

しかし、むろん企業は株主と経営者だけでは成立しない。
経営とは、社会に価値ある商品やサービスを、組織として体系的に継続的に提供することとである。
だから、実務を担当する従業員の創意工夫や、顧客満足を継続して提供できる必死の努力、そして製品の原材料や技術サービスを供給する取引先が必要となる。
さらに重要なのは、継続的にその企業が提供する商品やサービスを、消費する顧客が必要である。

このように企業が成立するためには、資本家とそれを元手に企業を経営する経営者とその従業員、そしてその企業活動を支える取引先、さらにその企業が提供する製品やサービスを消費する顧客から成り立っている。
だから、資本家が単に資金を出したから、企業は資本家のものという単純なものではない。

資本がなければ無論企業の形は出来ないが、企業という組織の形を作っても、そこで働く従業員の努力とその総和が生み出す商品価値、すなわち企業価値がなければ企業として存在はできない。
企業に働く従業員の日々の創意工夫と、顧客満足をうる商品やサービスの提供価値によって企業の利益が生まれる。

つまりは、資本だけあってもなにも価値は生まれない。
従業員がいても、あるいは商品が有っても、働く意欲が少なく不平不満が多いと、顧客満足を得る商品やサービスの安定供給が出来ず、クレームが多発して利益を上げることが出来ずに企業価値を失い、やがて資本家の株式は紙くずと成り果てる。

企業価値とは、経営者のリーダーシップと従業員のたゆまぬ努力と創意工夫と、それを支える取引先企業群や地域社会とのコラボレーションによって価値が生み出される。
現代では、一企業単独だけで、完結した商品を創り出すことは、およそ不可能である。
企業を取り巻く人々が、すなわち従業員と取引先企業とその商品やサービスで満足をうる顧客とで創り出す、独特の企業文化が価値を持つのである。

だから、勝手に株式を買い集めて、大株主だから言うことを聞けというM&Aの強引な手法には問題が多い。
最近のM&Aの動きには、株主の権利だけが主張されていて、そもそも企業は社会的な存在であるという認識が希薄である。

最近の強引なM&Aの強引な手法は、企業文化や風土を無視して、資本だけの論理で買収するのは、M&Aの先進国のアメリカでも、結果として失敗することが多い。
松下電器産業が、アメリカの映画・娯楽産業の大手のMCAを買収した(1990年)が、失敗に終わって95年に売却している。
買収した当時は、ハードとソフトの融合で新しい企業価値を生み出すとしていたが、ハードとソフトという全く違った文化風土で育った異質の企業同士では、融合は困難であった。

国内でも長い歴史と独特の企業文化を有する企業と、インターネット関連のように歴史が極端に短く異質の文化風土の企業では、コラボレーションは特に困難である。
楽天の三木谷社長は、TBSとの企業統合によって、アメリカのAOLタイム・ワーナーのような企業統合を目論んでいると思われる。

しかし、鳴り物入りで合併後したAOLタイム・ワーナーは、期待した合併効果は得られていない。
両社の株式総額は3500億ドル(約36兆8725億円)、売上高は合計300億ドル(3兆1605億円)という巨大な企業統合であったが、結果としては双方が大きく売上を減少させている。

2005年09月、タイムワーナー社が、同社のインターネット部門であるAOL(アメリカ・オンライン)を、マイクロソフト社に売却する交渉を進めていることが米国のメディアで報じられた。
ITバブルの絶頂期、AOLはIT企業の旗手として時価総額が急成長し、2001年1月にタイムワーナー社の買収に成功し、AOLタイムワーナーが誕生している。
しかし、ITバブルの崩壊後、インターネット部門の成長が鈍化し、合併後の企業名からAOLを外す事態に追い込まれた。
そして、AOL創業者のキース会長も事実上、合併後の業績不振を理由に更迭された。

当初はAOLが、タイムワーナーを飲み込んだ合併であったのに、最後はAOLがタイムワーナーから追い出されるという皮肉な結末を迎えることを意味している。
ITバブルの崩壊後、ドットコム企業の倒産が相次いだ時期もあり、最近は再び回復傾向にあるが、そうした中で報じられた今回のニュースは、時代の移り変わりを象徴しているのかもしれない。

このような結末を楽天の三木谷社長はどう捉えているのだろうか。
一時の成功で、思い上がるは自己の破滅を迎える事を肝に命じる必要がある。
多くの成り上がりの企業経営者が、企業を支えてくれている従業員や取引先との信頼関係や企業文化を忘れ、時に顧客満足さえ忘れて独善に陥って、没落した経営者が実に多い。

企業の価値を誤解して、企業をまるで完成した商品のように簡単に売り買いすると、とんでもないことになることを知るべしである。


ハンセン病補償法訴訟 その二

2005-11-08 09:29:29 | 政治
「ハンセン病補償法」は、らい予防法(1996年廃止)に基づく、国の隔離政策を人権侵害と認めたハンセン病国家賠償訴訟熊本地裁判決(2001年5月)を受けて、元患者の被害回復のため2001年6月に施行された法律である。

戦前・戦後の時期や国籍、現在の居住地を問わず、一度でもハンセン病療養所への入所経験があれば補償対象となる。入所時期に応じて1,400万~800万円が支給され、今年1月1日までに3、445が支給を受けている。

「ハンセン病補償法」は、その前文に「ハンセン病の患者であった者等の、いやし難い心身の傷跡の回復と、今後の生活の平穏に資することを希求して、ハンセン病療養所入所者等がこれまでに被った精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図り」とある。

それ故、国内については私立の療養所の入所者も補償の対象とし、また米軍占領下で日本政府の施政権の無かった旧琉球政府が設置した施設の入所者も対象としている。
前文に掲げた法の精神を素直に受け止めれば、日本が施政権を有し、その下で設置された台湾、韓国の療養所の入所者も、当然に補償の対象となるはずである。

しかし、政府は法の「その他の厚生労働大臣が定めるハンセン病療養所」という条文で、授権された権利を行使するにあたって、この法の精神をないがしろにして、日本の統治時代の韓国.台湾の療養所の入所者を除外した。

この為、日本の統治時代の韓国.台湾の療養所入所者のハンセン病訴訟が行われたのである。政府は、ハンセン病療養所入所者に、不合理な苦難と苦痛を与えたという責任に加え、この韓国.台湾の療養所入所者を無視するという二重の責任を負わなければならない。

政府が設置した「ハンセン病問題に関する検証会議」メンバーで、日本のハンセン病研究の第一人者の藤野富山国際大助教授は、当初から原告側を支援している。

藤野助教授は、「韓国の療養所では、貧しい食事で護岸工事やれんが造りなど重労働を課せられたうえ、少しでも仕事を休むと罰として断種手術を受けさせられ、麻酔なしで手術を受けるなど、日本と同等かそれ以上に過酷だった」と紹介している。

台湾訴訟については
「当然の判決で、意義を国は謙虚に理解するべき。控訴することがハンセン病回復者に対する人権侵害行為であることを自覚し誠意ある判断を」と評価している。

そのうえで、藤野助教授が入手した、1934~38年のハンセン病患者隔離政策に関する公文書の中で、「官公立癩(らい ハンセン病)療養所長会議出席者」の中に、小鹿島療養所長、台湾楽生園長の名前が記されていることを示し、両施設とも日本の国立療養所であったと証明した。

「ハンセン病問題に関する検証会議」の参加者の1人で、従軍慰安婦問題などに取り組む「めんどり会議」の堀江節子さんは
「日本の植民地だったからには、日本人と同じ補償をするべきで今回の韓国判決は不当だ。
補償の対象は、日本が統治していた地域のすべての患者に及ぶのは当然で、本判決は至極当然の事理を認めない不当な判決である」としている。

11月4日厚生労働省は、韓国と台湾の「ハンセン病訴訟」の原告らを包括的に救済する方針を固めたと報道された。
政府が設置した「ハンセン病問題に関する検証会議」の最終報告は、
「日本の隔離政策の一環であり、日本の患者と同様の人権侵害を受けた」と結論を出した。
厚生労働省は、この報告書の線に沿って基本方針として救済すべきと判断したとある。

ただ、あくまでもハンセン病訴訟としては、台湾判決に対しても控訴するという。
あくまでも、韓国と台湾の療養所の入所者は「ハンセン病補償法」の対象外という姿勢を貫くという。
その上で、特別に人道上の救済措置を講じて「ハンセン病問題に関する検証会議」の最終報告に基づいて和解をするという姿勢である。

その理由は、日本政府(厚生労働省)が一度判断した事には間違いがないという面子を保ちながら、一定の譲歩をして検証会議の報告に従って救済するという複雑な手法をとる。
「ハンセン病補償法」では、入所時期に応じて1,400万~800万円が支給されている。
そこで、韓国と台湾の療養所の入所者は「ハンセン病補償法」の対象外であるとして控訴して争うが、特別に人道的配慮で超法規的に和解するとしている。
そうする事で、日本国内の療養所入所者の半分程度の金額の和解を目指しているという。
法の平等の精神をないがしろにする行政の判断で、なんという姑息な手段であろうか。

このような日本国政府の手法が、中国・韓国の反発を招き、「過去の日本の歴史に目を背けるものである」と批判されつづけ、戦後60年も経過したのに未だにシコリが取れないのである。

現代の行政訴訟に於いて、本当の社会正義の実現にとって、日本の官僚の自己防衛意識が大きな障害になっている。


ハンセン病補償法訴訟 その一

2005-11-07 00:28:20 | 政治
東京地裁で10月25日にあったハンセン病訴訟判決で、韓国訴訟が原告(入所者)側敗訴、台湾訴訟が勝訴という、相反する結果が出た。
同訴訟は、日本の統治時代に韓国・小鹿島(ソロクト)慈恵医院(現・小鹿島病院)、台湾・楽生院(現・楽生療養院)に強制収容された入所者が、「ハンセン病補償法」に基づいて補償を求めたもので、ほとんど同じ条件なのに正反対の判決が出た。

裁判の判決という「正義」とは何か、を考えさせられる事件である。
本来その時代の社会正義というのは、それほど人によってかけ離れた結論が出るというものではない。
しかし、今回のハンセン病訴訟判決では、まるで正反対の「正義」が示された。

旧厚生省の無作為で、長年隔離政策のまま放置され続けたハンセン病療養所の入所者の、長年にわたって被った精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図るために補償する「ハンセン病補償法」が成立している。
議員立法として、人道上の緊急課題として成立させられた法の精神を考慮すれば、誰が考えても日本の統治時代の韓国・台湾などの療養所の入所者も当然含めて補償すべきものである。
台湾訴訟の判決は、その法の精神を汲んで、
「(補償に)国籍や居住地による制限もない」として、原告の勝訴とした。
これに対して、韓国訴訟判決では、
「外地療養所の入所者に対しては、必ずしも支給が予定されていたということはできない」 「1931年の旧らい予防法が、韓国では施行されておらず、小鹿島(ソロクト)慈恵医院を「(ハンセン病補償法の対象となる)国立療養所と解釈する余地がない」
と判断している。

この韓国訴訟での原告敗訴の判決は、明かに政府への配慮を重視した、非常に政治的な判決と言わざるをえない。
本来、裁判というのは三権分立の精神に従って、政治的配慮とは無関係の「社会正義」を判決で示すものでなければならない。

しかし、国家賠償をともなう訴訟では、殆どの一般人の感じる「社会正義」とは異なる判決、即ち国に有利な判決が多いのはどうした事か。
ハンセン病韓国訴訟は、事実上日本の植民地支配の責任を問う裁判でもあり、その意味で政治的配慮を伴う条件が揃っている。 
韓国訴訟の判決は、ハンセン病訴訟の原告側の勝訴となると、小泉首相の靖国参拝をはじめ、従軍慰安婦問題、強制連行など他の問題にも大きな影響を及ぼすだろうと、裁判長が判断した結果に基づいたもので、非常に政治的な判決といえる。
しかし、このような政治的配慮を裁判官が行うと、社会正義は何処かへ消えてしまう。

また、ハンセン病訴の原因となる、厚生労働省の日本統治時代の韓国・台湾の療養所の人々を救済しないのは、過去の日本の歴史に目を背けるもので、日本政府が「ハンセン病隔離政策」の根幹にあった「排除の論理」をいまだに精算できていない事を内外に示すことに他ならない。 

このような非人道的な韓国訴訟の判決は、社会正義を実現するはずの裁判官が、政治的配慮をすることで、社会正義を抹殺するに等しい。
このような政治的配慮を行い、自己保身に走る裁判官は、やはり弾劾されるべきだと考える。


小泉首相靖国参拝

2005-11-06 01:25:34 | 政治
第三次小泉内閣が発足して、新しい閣僚も活動を開始しているが、今あえて靖国問題を取り上げる。
今年も(10月17日)小泉首相は靖国神社を参拝した。
従来こだわってきた八月十五日を避け、今回は拝殿にも登らず記帳もせず、しかも礼服も着用せずに一般参拝者と同じ方法で参拝した。今回はあくまでも私人としての参拝を演出した参拝であった。

報道によると、中国の李外相は中国外務省に阿南駐中国大使を呼びつけ、首相の靖国参拝について「中国政府と中国人民は、強い憤慨を表明する」と抗議している。両国関係修復のため今週末まで最終調整されていた町村外相訪中も中止なった。
阿南大使は「私的参拝だ」と釈明したが、「良識有る人はそのような弁明を受け入れられないだろう」と反論している。

第三次小泉内閣が発足してからも、中国外務省は、「問題の解決は、靖国神社参拝を止めることだ。特に首相、外相、官房長官の靖国参拝を認めることはできない」と更に釘をさしてきた。

韓国の青瓦台当局者は、小泉首相の靖国神社参拝を受けて、十二月に開催予定の日韓首脳会談の先送りを明らかにした。両首脳は年二回程度、交互に相手国を訪問するシャトル外交を展開していたが、今日以降は日程を検討しているとは言えないとしている。

首相の靖国神社参拝に対する、小泉首相の頑固さと、外交音痴にも驚いているが、中国と韓国のあまりの執拗な過剰反応にも、いささか驚きを禁じ得ない。
無論、確かに、過去に侵略戦争を起こした側と、被害を受けた側との意識の差かも知れないと思いつつも、やはり少し過剰反応ではないかと思う。

両国に対して、過去に何度も謝罪し、二度と過ちを繰り返さないと誓っている。
当然戦後賠償も実施しているし、戦後は平和を誓い、経済面で緊密な関係を維持してきた。
戦後、日本人は軍国主義から解放されて、持ち前の器用さと勤勉さと創意工夫によって、経済大国として復興を果たした。
そして、侵略戦争で多大な迷惑をかけた東南アジアに対して、経済力に見合うODA開発援助も実施して、それなりに貢献してきている。世界からも日本の平和路線は認められ、国連でも重要な役割を果たしている。
中国と韓国は何故に、戦後60年も経つ今日、これほどにも靖国問題を事々しく取り上げるのか。

中国や韓国の一般国民にはそれほど関心もない事柄を、外交の重要課題に取り上げているのには、何か違う別の政治的意図を感じざるを得ない。
中国と韓国ではその抱えている内政の課題は異なるが、兎も角も深刻な内政の問題が表面化しないように、民族感情という非常にネガティブな感情に訴えて、国民の意識を外へ向けている。

中国は今、経済の急膨張期にある。人件費の安さで、世界の工場としてその役割は重要なものとなってきている。
しかし、経済の急膨張に伴い、中国社会の歪みと亀裂は深まる一方である。
都市と農村、沿海部と内陸、そして個人間と、あらゆるところで経済格差が拡大している。
貧困農民や失業者など、社会的弱者の抗議行動は昨年、10年前の7倍以上の7万4000件にも上った。

政府直属の研究機関の最新報告は、格差拡大をはじめとする社会的、経済的問題を今後5年間放置すれば、体制を揺るがす危険水準にまで悪化する、と警鐘を鳴らしている。
中国共産党の第16期中央委員会第5回総会は、「あらゆる手段を尽くして農民収入を増やす」ことを確認したが、都市と農村の収入格差は3倍強に広がっている。一朝一夕には解決できないであろう。

あらゆる問題の根底にあるのが、共産党の一党独裁という、閉塞(へいそく)した政治体制である。中央や地方の党幹部の職権乱用や腐敗に対する不満は募る一方である。
そこで、どうしても民族感情を煽って、国民大衆の不満をそらす必要から、日本叩きを続けているとしか言いようがない。

急成長している中国経済にとって、将来のエネルギー不足も大きな課題である。そこで、なりふり構わず東シナ海で進めている天然ガスの開発問題がある。
東シナ海の海底地下資源開発に関する日本の抗議を、靖国問題を外交上大きく取り上げて、日本を牽制する道具にしているとしか思えない。

小泉首相の考え方にも一理あるが、単なる公約では済まされない重大な外交問題となっているのは事実である。
中国は、冷静に「靖国問題」を上手に外交戦略として利用し、日本牽制に利用している。 
両国とも経済関係でいえば、抜き差しならぬ関係ができ上がっている。日中どちらも相互依存関係を崩すと、世界的な大混乱を招くだろう。
双方が、それぞれの政治的立場をもう少し配慮して、双方ともが冷静な大人としての関係を持たねばならない。

米紙ニューヨーク・タイムズは、小泉首相の靖国神社参拝を「無意味な挑発」と批判する社説を掲載した。
社説では靖国神社が「韓国や中国で日本が働いた残虐な行為について非を認めない見解を広めている」としたうえで、その参拝は「日本の戦争犯罪の犠牲になった人々の子孫を意図的に侮辱するものだ」と断じた。
また、「日本が帝国主義的な征服に再び乗り出す懸念はだれも現実には抱いていない」としながら、「こうした挑発は中国が経済の極めて重要なパートナーになり、最大の地政学的な課題にもなりつつある時代には無用のことに思える」と指摘した。
 そのうえで「今こそ日本は20世紀の歴史に向き合うべきだ」としている。