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週刊 最乗寺だより

小田原のほうではなく、横浜市都筑区にある浄土真宗本願寺派のお寺です。

勝田山 最乗寺
045-941-3541

三千世界のカラス

2011-10-16 03:20:59 | 仏教小話

先日のこと、徒歩で町内を移動していると、茂みに群生しているカラスウリに目が止まりました。

        

赤い実が鮮やかなカラスウリ。
小さな頃は、その名前を聞いても漢字変換できずに、「烏瓜」ではなく「カラス売り」だと思っていました。

好奇心で赤い実を割ると、中に白くて四角い粒粒が、納豆のように糸をひいていたのを覚えています。
外見からして、きっと甘い果実なんだろうと期待していたのに、なんとなく裏切られた気分になりました。

さて話は飛びますが、烏(カラス)というと思い出したのは、この都都逸(どどいつ)。


  三千世界の烏を殺し ぬしと朝寝がしてみたい


幕末の志士・高杉晋作、または木戸孝允(桂小五郎)の作と言われています。

落語の『三枚起請』にも出てくる都都逸ですが、これは遊女の気持ちを詠っていて、「朝を知らせる全ての鳥を殺して、あなたのそばでずっと寝ていたい」という女心を表現しています。

しかし、私が注目したいのは「三千世界」という言葉。
これは「三千大千世界」という仏教用語が元にあります。

「三千大千世界」とは、古代インドの世界観による全宇宙のこと。
須弥山という高い山を中心に、東西南北にそれぞれ大きな大陸があり(四大洲)、また須弥山を囲む円状の九重の山と、その間にある八つの海(九山八海)があります。
そこが私たち人間などが住む所と考えられていて、さらに上の淫欲と食欲にとらわれた色界、下の地獄を含む世界までを「一小世界」とします。

この小世界を1000集めて「中千世界」
中千世界を1000集めて「大千世界」
大千世界は大・中・小の3種の千世界からなるので「三千大千世界」

そして、三千大千世界は1000の3乗、10億の世界からなり、これが1人の仏の教化する範囲といわれ、三千大千世界は「一仏国土」とも呼びます。

想像することさえ困難なほど、大きな大きな世界観です。
これを踏まえて先ほどの都都逸を読み返してみると・・・、あなたはどんな女心を感じましたか?