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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

心筋シンチマスターガイド

2010年04月29日 20時11分18秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
今週は所用で大学に行けなかったので、撮像済みの心臓MRIを見に大学へ行ってきました。ちょうどbon先生が当直だったので、いろいろと核医学のオススメ本も聞くことができました。
包括的な心臓画像診断をする上で、重要な柱のひとつである核医学。医局や読影室などに昔の本はたくさんあるのですが、意外と新しい本は出ていないみたいです。「心筋シンチ 本」と検索してもこの本だけしかありませんでした。

心筋シンチマスター・ガイド
中川 晋,石田 雄一
診断と治療社

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マスターガイドのシリーズは他にも色々出ていて、コンパクトさが特徴的です。この本に関しては、総論、各論、症例集と非常に使い勝手の良い構成になっていました。認定医試験や専門医試験の勉強にも良いと思います。まずは自分で買おうっと。

使える!?確率的思考

2010年04月09日 23時12分17秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 先日、鹿児島へ行ったときに新幹線の中で読んだ本です。

 確率に対して、学生時代のトラウマが残っている方ってそんなに少なくないですよね?確率や統計学というのは、なんだか、理解することで人生がひとランク上に上がるんじゃないかな?という淡い期待が膨らむのが、今になってもあきらめきれない理由です…

 帯には、「学校で教わらなかった、確率的思考を身につけることで、一生役に立つものの見方を提供しようとしている」とあります。この帯に釣られて買ってしまいました。

使える!確率的思考 (ちくま新書)
小島 寛之
筑摩書房

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 学者の書いている新書なので、確率や統計の基礎についてわかりやすく述べられています(例えば、標準偏差)。そして、それぞれがどのように発達してきたかを、例をあげて説明してくれています。ASiRで見かけたモンテカルロ法や、話題のベイズ理論も、いったい何なのかがわかった気がします。

 面白かったのは第6章。「確率の日常感覚はゆがんでいる」でした。

 さて「統計的に10回に一度故障する機械が、10回使用する前に故障することと、10回使用した後に故障する確率」は五分五分でしょうか?

 答えを言いたいけど、言いません。興味のある方はこっそり聞くか、本書を読んでください。ちなみに、「幾何分布」がキーワードです。この「幾何分布」を理解すると、「世界をみるうえで冷静な判断力」が与えられるそうです。それから、あのいまいましいe(自然対数の底、またはオイラー定数)にも少し親近感が湧きます。

 本書は後半に向かって盛り上がり、最終章では「不確実性下における選択の正しさとは何か」まで踏み込んでいきます。さまざまな確率や統計に基づいた理論を紹介していきながらですが、最終的には文学的、哲学的な考察に帰結します。

「それで結局どうなの?」という見方をするヒトもいるかもしれませんが、それは各人のなか(あるいは社会環境まで含まれる)にあるものではないか?と思えるようになりました。
 筆者は「合理的な選択」と「正しい選択」の問題について、地道に研究を続け、少しでも解答に肉薄したい、と言っています。こういう、研究者の「姿勢」を学べたのが、一番の収穫だったかもしれません。

特集 縦隔疾患の画像診断-基礎から最新情報まで-

2010年02月08日 23時03分37秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 この一年は胸部の担当になって、勉強する機会をもらったのですがやはり縦隔疾患は苦手意識を残したままになっていました。

 もう少し早く出ていれば…と思った一冊でした。

画像診断 Vol.29No.13

学研メディカル秀潤社

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 縦隔疾患についても、臨床的に重要なことが多くあるのですが、カンファレンスなどに参加していないと、なかなか何が重要なのかを学ぶことができません。若年者の縦隔腫瘍で、胚細胞性腫瘍と悪性リンパ腫を挙げるのは比較的簡単ですが、治療の流れを聞くと単に羅列するだけのレポートではあまり役に立たないかもしれません。もちろん、画像診断だけで治療をするわけではありませんが、生検などに際してより正確な診断の手助けになるとは思うのです(検体量の示唆、挫滅しやすいなどの予想される組織の特性、前もって免疫染色をどのていど準備してもらうか、など)。
 この特集では、「術前情報として必要な画像」に始まり、各項目で疾患ごとに重要な事項がまとめられています。
 
 更に、たまに聞かれて答えに困る、胸腺についてもまとめられています。P1516-1523 「正常胸腺と胸腺過形成」です。加齢に伴うサイズ・形態の変化、過形成の鑑別の仕方など、成書を熟読していれば困らないのかもしれませんが…、ともかく、この場所に書いてある!という拠り所を見つけた気分です。

 ちなみにRefresher Courseは、
 頚椎症-外科的治療に関連した画像診断-
 です。こちらも、漫然と見がちな(ごめんなさい)頚椎症に主眼をおいた一編です。

 それにしても、学年が上がるごとにカバーしなければいけない範囲の多さに愕然とします。基礎的な勉強や、スタディもしたいけれど、読影の基となる画像診断の勉強をおろそかにするわけにはいけないし…昔は時間の使い方なんて考える必要ないよ、と思っていたけれど、最近なんだか時間がないなぁと思うことが多くなってきました。

アクノレッジメント

2009年12月14日 23時52分28秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 読もう、読もうと思ってずっと寝かせて置いた本です。狙っていた機会を逸してしまったのですが、何とか時間を見つけてザッと斜め読みしました。

 特にコーチングを行うという立場でもないのですが、こういった本はどちらかというと、自分にあった学習の仕方を学ぶのに良いのではないかな?と思って買ってみました。結論からいうと、別に教え方、教えられ方の本ではありませんでしたが。

〈NJセレクト〉 コーチングのプロが教える 「ほめる」技術
鈴木 義幸
日本実業出版社

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 タイトルは簡単に「ほめる」技術、とありますが、コーチングの分野でそれよりも広く用いられるアクノレッジメントという概念を紹介しています。帯にあるように、アクノレッジメント=存在承認。
 ヒトを4タイプに分類し(それほど簡単ではないのは、重々承知です)、それぞれに合ったアクノレッジメント法も紹介されています。あぁ、なるほどなと思うことがたくさんあります。織田信長はスーパーコントローラー、明智光秀はアナライザー傾向のあるサポーター、とか。

 「ほめる」技術、を使ってヒトをコントロールしよう!という本ではありません。アクノレッジメントを通じて、よいコミュニケーションを行っていこうというのが目標のようです。そうすれば、仕事やその他の面でもより良く過ごせるのではないか?と。

 自分がどのタイプなのかをテストするサイトも紹介されています。まだトライしていませんが、興味のある方はどうぞ。
 Test.jp

MRI勉強の辞書

2009年12月11日 22時49分21秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 久々の図書紹介。といっても、新しい本ではありません。
 いつも使っている割に、載せたことがなかったなぁと思いまして。

MRIデータブック
土屋 一洋
メジカルビュー社

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 普段から手元に置いて、辞書のように使っています。論文を読むときには重宝します。使っていないメーカーでスタディを組まれているとシーケンスをはじめ、独特の呼び名があったりするので結構助かります。簡単にですが、原理や他メーカーでの類似シーケンスも載せてくれています。
 MRIの勉強を始めたばかりの時は、基礎的な原理だけでなくて実際使える勉強も並行していかなければならないので、一冊もっていると良いですよ!

特集 3T MRIの臨床-頭部の使えるシークエンス-

2009年09月08日 22時11分05秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 久しぶりの図書紹介です。
 先日の九州MRI研究会後に、読み返してみました。
 特集 3T MRIの臨床-頭部の使えるシークエンス- です。


画像診断 Vol.28No.10

秀潤社

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 3T MRI装置も、臨床的に使用できるようになって、もう数年でしょうか。いや、僕が放射線科医になった年に、SIEMENS MAGNETOM Trio(& Avanto)が稼働しだしたので、まだまだ最近のこと(!)だと思います。

 3T装置は、一般臨床のDr.からは、CTの多列化と同様に「素早く、綺麗な絵が撮れるようになったんだろう」思われていることが多いのですが、そんなことはなく、市販車からF-1に乗り換えるような難しさがあるようです。
 まず、高磁場の物理特性を理解して、それ故に作り出された様々なシークエンスを理解して、上手く症例を選んで…

 僕らくらいの若手でも、MRI当番をしていると、新しい3T装置で撮ってください、といった依頼を受けることがあるので(最近は減ったかな…)、目的に適った絵を撮ってもらうために、この辺りを理解する必要があります。

 本書では、サブタイトルに「頭部の…」とあるので、ちょっと手が伸びづらいのですが、長縄慎二先生、青木茂樹先生らによる論文
「頭部3T MRIにおけるボリュームデータSPACE,true FISPなど T1強調画像,拡散強調画像」
 は、日常診療ですぐ使えそうなことがたくさん載っています。とてもオススメです。MRI指示出しの苦手意識が減るかも…

 この他にも、3T-MRIの物理特性はもちろんのこと、MRA, MRS, 造影, SWI, ASLなどについても載っています。ASLについては、当院でも結構な数が撮像されているので、原理等に興味のある方は、公式HPのPDFも見てください。


 さて、この記事を書くきっかけともなったGEのCubeについては、IDEALも含めてフリーのPDFがあったので、リンクを貼っておきます。
中上 将司: IDEAL,Cubeを中心に . 日放技学誌, Vol. 64, No. 12, 1600-1603, (2008)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrt/64/12/1600/_pdf/-char/ja/
 

MRIの基本 パワーテキスト

2009年08月12日 21時50分17秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 お盆体制のため、比較的ヒマな日々を過ごしてます。
 ローテーターもとてもヒマそうです。申し訳ないくらい。

 前回の推薦図書に続き、またMRIの本です。

MRIの基本 パワーテキスト第2版―基礎理論から最新撮像法まで
レイ・H. ハシェミ,クリストファー・J. リサンチ,ウィリアム・G.,Jr. ブラッドリー
メディカルサイエンスインターナショナル

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 それにしても、よくわかってないのに「推薦とかしてもよいのか!?」とも思うのですが、このくらいのレベルのヒトにも役に立つんだ!と感じてもらえれば良いかなと…

 さて、実はこの本は研修医時代に買ったものです。かれこれ4年ほど前でしょうか。
 なんとなく前半部分を読んではいたのですが、どれほどわかっていなかったのかが、最近身に染みるようになってきました(そして、乾いた畑に雨が染みこむように理解が進んで…となっているのかは疑問)。

 前回の本の紹介の所から進んだ点。そして、この本で理解できていなかった点をちょっと書いてみようかと思います。おかしなところがあれば、訂正していただけると、非常に幸いです。

①NMR信号は磁気モーメントのどの成分なのか?(まさにkhさんに正しく疑問点を整理していただけました)
 →xy平面の成分

②なぜ、NMR信号の大きさが、上向き凸の曲線が途中で下向き凸の曲線に変わるイメージで説明されるのか?
 →90°パルスで励起されたスピンは、縦緩和によりMz成分が回復していく。と、同時に(それよりも早く)横緩和でMxy成分が減少していく。このとき、Mxy成分の減少がFIDとして観測される。
 TR時間をおいて、再度90°パルスでスピンを励起すると、その瞬間のMxyは、TR時間で回復したMzと同じである。
 そして、そこから始まる横緩和で、再度Mxyが減少するが、この横緩和を(つまり位相の分散)を1/2TE時間だけ起こさせておいて、180°パルスで再収束させるとスピンエコーを得ることが出来る。
 したがって、縦緩和で回復した信号が(上向き凸の曲線)、横緩和して(下向き凸の曲線)、その組織の信号として得られる。

 いかがでしょうか?

 それにしても、疑問点がいったいどこにあるのか?それがわかることが大事なんだなぁ、ということを実感する日々です。まるで、正常あるいは異常がわからなければ「気付く」こともできない読影みたいです。
 最近ちょっと読影の勉強がおろそかになってますが、メラメラとMRI熱が高まってきて、鉄のアタマが暖まっているようなのでRFパルスを打ちこんでみようかと思っています(意味不明ですね)。

 ひとまず、次はfast spin echoと、Gradient echoの基本を押さえてみようかな?でも、その前に周波数エンコードと位相エンコードを勉強しなきゃならなさそうかな。そうなると、傾斜磁場とバンド幅とFOVが…

 大変そうです。またご助言をいただけるとうれしいです。

MRIの本

2009年08月10日 21時08分47秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 ひさびさの推薦図書です。
 医局の本棚で見つけた本です。なんと、10年以上前の本で、OHP(!)用のバージョンもあるそうです。

図解原理からわかるMRI
モリエル ネスエイバー
医学書院

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 これまで、数册のMRIの本を紹介してきましたが、「また新しいのを買っても良いな」と思えるような本です。比較的薄い本なのですが、講義用スライドを元にしているためか、非常にテンポ良く読み進めることが出来ます。MRI物理学から、ハードウェア、さまざまなパルスシーケンスの解説まで、とても充実した内容です。今までの本とは、ちょっと違った雰囲気で、「なんだか行けそうな気がする~」と思います。

 それにしても、MRIの勉強って難しいです。大体の場合に於いて、ある事柄を理解したつもりになって進んでいって、すこし応用がでてきたところで「やっぱりわからないや」とつまずくパターンです。本を代えてみて、「あぁ、そうだったのか」と気づけることもあるので、我慢強くやってみようとは思うのですが。ま、どれほど読影力につながるのかはわからないので、ある意味、趣味みたいなものになるのかな?

 ちなみに、今わからなくなったこと。
・NMR信号は、どの成分(縦?横???)からくるのか?
 そもそも、この疑問自体が非常に初歩的な事であるのはわかるのですが、ある種のグラディエントエコー系のシーケンスで、スポイラーというものを考えたときに、再びわからなくなってしまいました。画像コントラストと、縦磁化成分、横磁化成分の関係ってなんだ?と。

 混乱しています

 今日は当直を譲って貰ったので、ヒマだったらこの本を読んで考えてみることにしましょう。

MRIの本

2009年06月08日 22時30分11秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 自分でMRIの勉強をしていると、スピンの挙動(歳差運動、RFパルスをかけて、倒して…)とそこから発生する信号、その信号をどのように得て、どのようにk空間を埋めて(k空間??)、画像化するのか?という基礎の基礎で何度もつまづいています。

 何冊か本を読んで、漸く「スピンエコー:SE」が一体どのようなものであるのかが、想像できるようになってきたかな?と思えるようになってきました。

 そんなわけで、なんとなく「難しそう…」と、避けていたこの本にも手を伸ばすことができました。

MRI「超」講義―Q&Aで学ぶ原理と臨床応用
アレン D. エルスター,ジョナサン H. バーデット
メディカルサイエンスインターナショナル

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 MRIの勉強をするヒトにとっては、有名な本の一つだと思います。
 まだ全て読めているわけではありませんが、基礎の物理学的なところで、目からウロコが落ちたので、ご紹介しています。

 これまで読んでいた本との違いは、コマの動きに例えられているプロトンのスピンについて、キチンと量子力学の観点からもふれられている点でした。もちろん、波動方程式などは、大学時代に少し聞いたことのある程度で、とてもキチンと理解はできませんが、「なんか、誤魔化されているような気がするんだよな…」という感じは解消されました。ただし、本文中に量子力学の観点にこだわりすぎなくてもいいですよ、と書かれているのも良かったです。

 じっくり、じっくり読んでいきたい本です。

 ちなみに、SEのところでは、ハーンエコーというものが紹介されていて、よりSEを理解できるようになったかもしれません。あと、リフォーカスという現象は、SPACE法など最近の複雑なシーケンスを理解するのにも役立つのかなぁ、などと思ったりもしました。

 さて、k空間を理解できるようになるのはいつのことか…

胸膜中皮腫ならびにアスベスト関連疾患

2009年05月12日 23時15分54秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 カンファレンスで塵肺を提示したので、寄り道的に読んだ雑誌です。

画像診断 (Vol.27No.1)

秀潤社

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 少し前の雑誌で、買った当時は「なんのことやら…」という感じで、内容の良さがわからなかったのですが、今回読み直してみると、「あぁ、なるほどなぁ」と感じることができました。
 日常の読影で、疑問に思っていたことが書かれていたためで、そういうことに気付くようになった、というのは、多少なりとも進歩した証なのかな?

 たとえば、胸膜と平行な線状影 subpleural curvliniear lineについて
 (荒川浩明先生論文)

・石綿肺のHRCTで見られるsubpleural curvliniear lineは、呼吸細気管支領域の繊維化(小葉中心性のdot like opacity)が連なって見えるものである

・偽陽性の多い所見ではあるが、例えば、膠原病に合併した間質性肺炎で見られる胸膜下の線状影は、胸膜からの距離が遠かったり、dol like opacityが連なったものとは状況が異なる、などの相違点がある。

 といったところです。
 でも、勉強したつもりになっていても、いざ初見の画像を見ると所見を拾いきれないんです…。まだまだ。
 などと書いていて、心配になったのですが、subpleural curvliniear lineについては一般的な画像診断医の常識じゃないですよね!?

 ちなみに、石綿肺と特発性間質性肺炎の画像って鑑別が難しいなぁ(もちろん、病歴の情報が全くない段階で)と思っていたのですが、実際、イギリスと日本から出ている論文は、相反する内容となっているようでした。さまざまなバイアスがからんでいる可能性がありますが、「やっぱり難しいのね。」と、ちょっぴり安心してしまいました。